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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第246話 冒険者の会話を盗聴しよう③

『何なのアイツ! ほんっとうに最悪!』


『本当にね。私なんて、さっきアイツが女の人を切り刻んでいる現場を目撃したのよ。マジあり得ないくらいキモかった』


『……周りにバレてないでしょうね?』


『知らないわよ! でも、現場は誰もいなかったし、死体も血も残らず全て処分させたから、多分大丈夫だと思うわ』


『そういえばアイツって、犯した後で殺して、さらに死体を犯すんでしょ? マジであり得なくない?』


『えっ? 死体にもするの? うわっ、マジさいてー。多分私がその現場を目撃したら、その場でアイツを殺しそうだわ』


『アイツさ、教室でも何考えてるか分からなかったけどさ。あのまま日本にいたら凶悪犯になって捕まってたんじゃないの?』


『いや、アイツにそんな度胸はなかったって。卒業後は部屋からでない引きこもりがお似合いだって。こっちに来て、力を得たからあんな風になったに決まってるよ』


『教皇様も何であんな奴を一緒に召喚したんだろうね』


『私達と教室の席が近かったからでしょ。召喚時の教皇様の声はみんな聞こえたんでしょ』


『いきなり選ばれし者だもんね。あの時は驚いたわよ。もしかして漫画やゲームのように魔王を倒せとか、世界を平和に……とか言われたらどうしようかと思ったわよ』


『似たようなことはさせてるけどね』


『確かに。でも、誰かを殺してこいとか簡単な命令ばっかじゃん。私らめっちゃ強くしてもらったし、楽勝じゃん』


『日本に比べると、料理は不満だし、電気はないから不便で仕方ないけど、その分好き勝手できるのはいいよね。人殺したって怒られないとかどんだけよ』


『いや、人殺したらこの世界でも捕まるからね。……私ら以外だけど』


『そういえば、アイツの天使って、過去に誰も取り込めなかった奴でしょ。実はアイツ、メチャクチャ強かったりして?』


『ないない、アズラエルだっけ? 聞いたことない天使じゃん。それより私のサリエルの方が強いって』


『いや、サリエルも日本にいたときに聞いたことないから。私のレミエルもヒミカのアリエルも似たようなもの。教皇様のメタトロン様と、七大天使以外は全部同じよ』


『確かにプラナ様や教皇様と比べると他は全部同じかもしれないけどさ』


『でもさ、真面目な話どうする? アイツがいたら絶対に今回の任務失敗するよ』


『あれほどこの町では大人しくするように言ったのに……。まさか町に入ったその日のうちに問題起こすなんてね』


『プラナ様に報告して、殺していい許可貰う?』


『駄目に決まってるでしょ! やるなら事故にみせかけて殺すわよ』


『そしたら私らの評価下がるじゃん。アイツのせいで評価が下がるのはちょっと……』


『でもさ、アイツのことは関係なく、プラナ様に現状報告はしといた方が良くない?』


『……いや、まだ止めときましょう。あのパシリ天使が死んじゃったから、通信回数に制限が付けられたじゃない。今はまだ憶測でしかないんだから、せめてもう少し確定情報を集めてからにしましょ』


『じゃあとりあえず、明日は私とヒミカがバルデス商会に行って、領主にアポ取ってくるわ』


『本当に出来るの?』


『出来なかったらスバルの言うように、脅しプランに変えるだけよ』


『あっ、そうだ。バルデス商会はスマホを持ってるのよね? ならそれを奪っちゃえば通信に困らなくない?』


『今の分を使いきったら、通信手段がなくなるのよね。確かに別の通信手段は必要よね。この町で必要な情報を集め終わったら、帰る前に、バルデス商会を壊滅させときましょうか』


『なら、スマホ以外に役に立つものを持ってそうだし、色々と持って帰ろうよ』


『そうね。そのためにも、まずは領主から話を聞かないと駄目ね。だから、スバルはトビオの監視をお願いね』


『ねぇ、マジで私が監視するの?』


『だってスバルが商会の方に行かないって言ったんじゃない。それにトビオを放置してると、また問題を起こすよ』


『あーもう、仕方がないわね。まぁ要は部屋から出さないようにすればいいわけよね』


『逃げられなければどうでもいいわよ。最悪足の骨でも折っておけば動けなくていいんじゃない?』


『あっ、それいいかも。もし言うこと聞かなそうだったら、そうするわ』


『じゃあ私らも解散しましょうか。バルデス商会って、ずっと並んでるらしいから、明日の朝食後すぐに向かうわよ』



 ――――


「……シオンくん。もう話は終わったよ。だから、その殺気を沈めなよ」


 俺はトオルに肩を叩かれ正気に戻った。


「えっ!? あ……すまん。殺気を出してたか?」


「そらあもう。話を聞いてたらいきなりブワッと殺気を出しよるんやもん。ウチなんて汗ブワー流れるし、チビりかけたで」


「……まぁ、俺が全面的に悪いけど、二十を超えた女性がチビるって表現はどうかと思うぞ」


「そうだよミサキちゃん。バッチいよ」


「バッチい言うな! 本当にチビっとらんわ!」


 ミサキとレンのやり取りを見て、俺の中にあった負の感情が霧散していく。こういうとき、仲間がいて良かったと実感できるな。


「もう大丈夫みたいだね。シオンくんは黙っているときほどガチで怒るからね。……まぁ今回は怒る理由は分かるけど」


 怒る気持ちは分かる……じゃなくて、怒る理由は分かる……か。トオルらしいな。

 俺には三人が話していた内容に、どうしても聞き逃すことが出来ない部分があった。


『教皇様も何であんな奴を一緒に召喚したんだろうね』


 召喚。この四人はゲートの事故ではなく、召喚されてこの世界にやって来た。

 そして召喚された時に声が聞こえたとも言っていた。

 似たような状態でこの世界にやって来た人物を俺は一人だけ知っている。


「なぁ。スミレは教皇に召喚されたと思うか?」


 スミレは俺達と違い、召喚されてカラーズにやって来た。それに、召喚時に『ロストカラーズを救え』って声が聞こえたと言っていた。

 今回とかなり類似している。それに、教皇はロストカラーズの復興を狙っている。全てが一致している。


「教皇がスミレくんを召喚したか……これだけじゃ、判断は出来ないね。だけど、異邦人を召喚できる魔法を何人も使えるとは思えない。本人じゃなくても、何かカギは握ってると思うよ」


 ……本当はアイツら今すぐに問い詰めたい。

 そして、教皇がいる白の国へ行きたい。

 そして、もし本当に教皇がスミレを召喚したのなら……。


「召喚のことは一旦置いとこう。それより、他にも重要な話があったよな」


 これ以上考えたら本当に止まらなくなりそうだ。せっかくここまで準備したのに、俺の我が儘で全て無駄にするわけにはいかない。


「召喚の他に重要な話は三つ。一つは敵は通信の手段が限られてること」


「やっぱりあの伝令の天使が通信手段だったみたいだな。回数制限ってことは、魔法結晶か、魔道具の魔力補充が出来ないってことだよな?」


「恐らく魔道具の方だね。あの天使は手鏡みたいなの使ってたから、多分それの魔力の補充じゃないかな」


 確かに使ってたな。ってか、パシリ天使って呼ばれてたのか。あの三人は本当に口が悪いな。


「頻繁に連絡出来ないのは助かるな」


 どうせ後で報告されるかもしれないが、その時と今とでは話の重要度が違う。もし今連絡したら、バルデス商会の情報が全面に出る。

 でも、ドライ海峡の話が出ると、そっちの方が最優先にされ、バルデス商会のことは報告忘れや重要度が低くなる。


「二つ目は彼女達の天使の名前。全員が名前持ちの天使だったね。それから彼女達はこっちに来てからまだ一年経っていない」


「……アズラエルだな?」


「そう、僕が以前盗聴した時、アズラエルはシオンくんにって考えていた。それが、今はトビオって人に入ってる。ってことは、僕が盗聴した後にこっちに召喚されたってことだよ」


「……スミレとの間にかなりの誤差があるけど、その間にも召喚ってされたのかな?」


 スミレが召喚されたのが六十年くらい前だ。もし教皇がスミレを召喚したのなら、その間他にも召喚した可能性がある。


「そこが気になるよね。それこそ教皇が召喚したかもしれないし、スミレくんを召喚した人から最近教わった可能性もある。単純に別人の可能性も残ってる。それに、天使を宿してるくらいだから、寿命も長いよね。五、六十年くらい一瞬の出来事と感じて、何もしなかったかもしれない。出てきてないだけで、彼女達だけでなく、間に他にもたくさんいるのかもしれないよ。だけど、今考えるのはそういうはなしじゃなくて、トビオって子。アズラエルを宿してるってことは、かなり危険な人物だよ」


「……アイツも紫の属性なのかな?」


「その可能性もあるし、違うかもしれない。でも、アズラエルは死の天使。例えば近づくだけで死ぬ魔法が使えるかもしれない」


「そんなチート……ないことはないか」


 今まで散々特殊な魔法を見てきた。死の天使っていうくらいだ。確かに近づいたら死や、結界内を死滅させる。目が合うと死ぬ。あっ、だから普段は髪で目を隠し……いや、あれは素だな。


「彼に近づくときは、必ず何か対策をしないと危険だね。シオンくん。即死耐性の効果のある防御アイテム作れない?」


「……お前、それかなりの無茶振りだぞ」


「それは分かってるけど、即死って、攻撃ってより呪いって印象じゃないか。なら即死耐性の防御結界を自動で張れるアクセサリーとか……」


「……出来ないことはない。けど、それには相手の属性と魔法の性質を知らないと作れない」


 俺だけなら、魔法を直接使えばいいから目の前でも対策は可能だが、道具になるとそうはいかない。ガブリエルの魔法を解毒したのと一緒だ。詳しく調べないと、防ぐ魔道具は作れない。


「防ぐ魔道具を作るために、その魔法を受けないといけない。ジレンマだねぇ」


「スーラ、トビオの属性は分からないか?」


《分身体は検査カードを持ってないから無理なの》


 やっぱり無理か。


「僕もモニター越しじゃ確認できないね」


「トオルも無理か。じゃあやっぱり近づいて属性と魔法を確認しないと、作ることは出来ないな」


「じゃあ、ひとまず皆は彼には絶対に近づかないように」


 だな。それが一番の対策になる。まぁトビオが暴走して町全体に死の結界とか使うともう終わりだな。


「……やっぱり今のうちに殺すか?」


 かなり物騒な提案なのだが、それだけトビオは危険だ。

 それに、トビオの行動……同じ元日本人として、いや日本人としてじゃない。人間として間違っている。


「いや、これは三つ目の話だけど、彼女達は穏便に情報を仕入れようとしている。なら、しばらくは様子を見て、ドライ海峡の情報を流すべきだよ」


「それは三人の考えだろ? どう考えてもトビオは聞きそうにないぞ」


「そうだね……でも、少なくとも明日はスバルって子が見張るから大丈夫じゃない? だから……明日には白の国に一旦お帰り願おうよ」


 明日でお帰り……どうするんだ?

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