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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第240話 世にも不思議なスライムの生態を知ろう

 さっきから俺と話をしているスライムの代表は、自分のことをデモンスライムと言った。

 デモン……デーモンのことかな? 種族名の響きだけで言えば、アークスライムスライムよりよっぽど強そうだ。いや、角もあるし、見た目もスーラよりは強そうだな。


 このデモンスライム。このスライム達の長であるが、固有名はないらしい。シルフのショコラみたいに、呼ぶ人間自体がいないから必要ないのかもな。


 とりあえずこのデモンスライムに話を聞いてみた。

 まずこの島はスライムの島。生き物はスライムしか存在しないらしい。


 ただし、そのスライムの種類は千差万別。

 デモンスライム以外にも、珍しいスライムがたくさんいた。

 例えば、翼が生えたバードスライム。あらゆるものに擬態するカメレオンスライム。

 影に潜むシャドースライムなど、存在すら聞いたこともないスライムもいた。


 そんな多岐にわたるスライムの中でも、特別な存在がアークスライムだった。


 アークスライムは本当にスライムの支配者のようで、一つの時代に一体しか存在することが出来ない種族らしい。アークスライムになる条件は、この世界にアークスライムが現存してないこと。圧倒的な強さのスライムであること。この二つらしい。


 俺は、先日ラミリアと仮説を言い合ったことを思い出した。その時は進化した場合と、元々アークスライムだった場合、この二種類を考えていたが、進化の方が正しかったらしい。


 ただ、俺達の考えていた進化とは別物のようだった。

 スライムは基本何でも食べることが出来る。

 そこで、今までに食べたものや強さによって変化するらしい。硬い物を食べ続けたら、亀の甲羅のような硬い表面を持つタートルスライムに。海の中のものを食べ続けていればマリンスライムに。


 今説明しているデモンスライムは、過去にこの島にやって来た悪魔族と戦って勝利し、取り込んだらしい。……魔族を倒せるスライムって滅茶苦茶強いんじゃないのか?

 俺達の考えている進化と別物と言うのは、進化する際に前のスライムのことを完全に忘れてしまうらしい。なので、進化で成長ではなく、生まれ変わって別のスライムに変化という感じらしい。

 だから進化というより、別の種族に転生ってイメージに近いのかもしれない。

 このデモンスライムも悪魔族と戦った記憶も存在しないらしい。転生した時に他のスライムから聞いて知ったことのようだ。


 でもスーラは記憶があったけど?

 デモンスライムもその理由は分からなかったけど、恐らくアークスライムだかららしい。アークスライムはスライムの支配者。アークスライムがこの世界に現存していたら、スーラはアークスライムじゃなくて別のスライムになっていたらしい。

 そういえばスーラも自我が無くなるかもって言ってたし、知らなくても本能的に感じる部分があったのだろう。なら……もし、アークスライムが現存していたらスーラの自我は無くなって、別のスライムになっていた。そう考えると一気に恐ろしくなった。


《……シオンちゃん。私新種じゃなくてアークスライムで良かったの》


 本当にそうだよ。


《我らとしては、偉大なる王にこの島のスライムを導いてもらいたいのですぞ》


「でもお前ら最初、スーラのことアークスライムって知らなかったじゃん」


 俺がアークスライムって言って驚いてたもんな。


《たとえアークスライムでなくとも、その溢れんばかりの王の気品は隠すことが出来ませぬ》


 要はスーラのカリスマに惹かれた訳か。


「スーラ。こんなに慕われてるんだ。同じスライムとして王になってあげたら?」


《やなの! 私は王じゃないの!》


 なんか、いつも以上に強情だな。俺に出会う前はシクトリーナでスライム達のボスをしていたんだし、トップに立つのが嫌いなわけじゃないだろう。何か他に原因があるのか?

 しかし、いくらスーラが断っても、このスライムたちを放置する訳にもいかないな。


「なぁお前らはスーラと一緒にこの島でまったり暮らしたいのか? スーラはこの島には住まないと思うぞ」


《我らスライム一同、王のお役に立つためなら、何処へでもお供いたしますぞ》


 ……スーラにその価値があるか激しく疑問だが、スライムたちはこの島よりもスーラを優先するみたいだ。なら……。


「よし! お前ら纏めて全員俺達の仲間になれ」


《ちょっとシオンちゃん!? 何を言い出すの!》


 スーラは驚き叫ぶ。


《仲間とは……どういうことですかな?》


「このスーラはな。この世界の敵である天使って凶悪な敵と戦っているんだ。その為に人間や魔族、エルフなど色んな種族と手を結んでいるんだ」


《おおっ!? 流石は王。そこのウルフを従えているだけではなく、他の種族でさえも配下にしているとは!》


 ……配下とは一言も言ってないのだが?


《王の敵である天使とやらの討伐。是非とも我らにも協力させて下され!》


「もちろん歓迎する。が、お前達は人間や他の種族と仲良く共存できるか?」


《我らを襲わない限り共存はお約束しましょう》


「それから、この島は天使との対決で戦場になると思う。だから敵に攻め込まれても大丈夫なように城を建ててもいいか? もちろんお前たちの棲み処や大事な場所に関しては関与しないことを約束しよう」


《元々我らに棲み処は存在しませぬ。ですが、我らの生まれる場所だけはそのままにしていただければ》


 生まれる場所? ……ああ【魔素溜まり】のことかな。棲み処が存在しないってのは、この島にはスライムしかいなくて、外敵がいないから自由に過ごしていたのかな。


「分かった。【魔素溜まり】に関しては破壊しないように注意しよう。後でその場所を教えてくれ」


 スライムの【魔素溜まり】なら迷惑にはならないだろう。


「お前達にはこのスーラと戦ってもらう軍団と、人間と協力して生活してもらう軍団に分かれてもらおうと思う。互いにスーラとは一緒にいることは出来ないかもしれないが、それがスーラの為になると思ってくれ」


 強そうなスライムは戦ってもらって、普通のスライムは建設で出たゴミの処分に回ってもらおう。出来れば完成した城塞都市の常駐スライムとして活躍してもらいたい。


《それが王の為になるのならば、我らは喜んで離れて暮らしましょう》


「よし、じゃあ決まりだな。スーラもそれでいいよな?」


《……一つだけ条件があるの》


「何だ?」

《何でしょう?》


 俺とデモンスライムが同時に尋ねる。どうでもいいけど、コイツにも名前が欲しいな。


《私を王と呼ぶのは止めて欲しいの! どうしてもって言うなら女王にするの! ……クイーンでもいいの》


 ……もしかして、ずっと嫌がってたのは王って言われてたからなのか? 最初から女王って言われてたら簡単に解決してたんじゃ?


《おおっ!? 我らには性別がありませんでしたので、気付かずに申し訳ございません。ではこれよりクイーンと呼ばせていただきます》


《……悪くないの》


 やっぱりそれが原因なのかよ! じゃあそれをさっさと言えよ!!


 とにかく、大量のスライムを仲間にすることが出来た。中には魔族に匹敵するスライムもいるようだから色々と楽しみだな。

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