第234話 今後の方針を語ろう
シエラの秘宝と似たものが欲しいならデューテに相談しろ?
「はっ? なんで?」
ここでいきなりデューテの名前が出てくる理由が分からない。デュラハンとデューテって何か関係があるの?
「デュラハンの秘宝は夜魔城に使われている物と同じものです。つまり、城タイプに利用されている遺跡と同じ物です」
この世界の遺跡はロストカラーズから箱舟に乗って来た者が拠点にするために作ったと言われている。だから洞窟タイプの遺跡だったり、城タイプの遺跡だったり様々だ。夜魔城もゼロの父親が建てたって話だった。ってことは……。
「そうか! 【トールの遺跡】か」
以前デューテ達と戦った場所。考えたらあそこで初めて天使や英霊の存在を知ったんだよな。
確かにあの遺跡には結界が張ってあった。結界の中では電磁波のようなものが充満していて、体が重くなった。そう考えたら、あそこの遺跡には核が使われているのかもしれない。
トールは今はデューテと行動を共にしている。そう考えるとあの遺跡は持ち主不在の廃墟って言えるのかな?
「もしデューテ様とトールがお許しになれば、あの城から核を回収できると思いますが……」
「でも、その核を使ったらあの電磁波まみれの結界にならないか?」
城にいるのにデバフにはなりたくない。……いや、デューテがいるなら俺達はデバフにはならないか。で、天使は空を飛べなくなる……あれっ? メリットしかない? いや、でも毎回デューテに頼むのもあれだしなぁ。
「それは核にトールの魔力を込めているだけなので、遺跡から取り出した時点で無属性に戻ると思いますが……そればっかりは試してみないと分かりません」
うーん、戻るのか? 例えば魔法結晶は一人が魔力を込めるとそれが登録されて別の人は魔力を込めることが出来なくなるけど……それと似たようなものじゃない?
まぁとにかくデューテとトールに交渉してみないと話にならによな。確かまだシクトリーナに居座っているんだよな? ちょっと話を聞いてみるか。
――――
《別に我はあの宮殿に未練はないから持って行っても構わぬぞ》
おおっ!? まさかこんなに簡単に了承を得られるとは……。
《だが我が魔力の入った核だとその性質の城しか作れぬと思うが》
「やっぱりそうなのか。なぁまだ使われてない核って何処かにないかな?」
《宮殿の宝物庫に使ってない核が残っていればよいのだが……なければロキのが余っているはずだからそれを使えばよかろう》
「えっ!? 宝物庫に余ってるの? ってかロキのって……何処にあるの?」
ロキの遺跡の話は聞いたことがない。
《奴は面倒くさがってな。我の所や息子の所に居候をしていた》
「ロキの息子?」
《ああ、実の息子ではなく義理のだがな。フェンリルという狼だ》
フェンリル!? フェンリルってロキの息子だったの? 俺は思わず物知りなトオルの方を見た。
「北欧神話ではロキとアングルボザって巨人との子供だね。三兄妹で長男がフェンリルで次男がヨルムンガンド、三番目が長女のヘルと言われてるよ」
……いつも思うけどトオルの知識は凄いな。しかしロキの子供が狼と蛇って……北欧神話の子孫関係ってどうなってるんだろう? しかもヨルムンガンドって、トールと死闘を繰り広げた相手だよな? でロキとは親友。これもう人物相関図が分からなすぎるぞ。
「って、確か【フェンリルの遺跡】ってハンプールの近くだったよな?」
ハンプールの近くには【フェンリルの遺跡】、【ウロボロスの遺跡】、【ジンの遺跡】の三つの遺跡があった。
俺は【ジンの遺跡】にしか行ってないが、普通の洞窟って感じだったな。そういえばあの遺跡で手に入れた人工遺物。クリスから回収した後、研究隊に渡してそれっきりだったな。どうなったんだろ? 後で聞いてみようかな。
「じゃあまずはトールの宮殿に行って核があるかどうかの確認。なければ【フェンリルの遺跡】に行ってみようか」
《では我とデューテも連れて行くがよい。ついでに我の武具も回収するとしよう》
武具ってやっぱりミョルニルかな? まぁ俺達としては案内役がいた方がありがたい。
「ねぇ【トールの遺跡】が無くなるなら、先に女王に一言言っておいた方が良くない?」
確かにデューテの言う通りだ。あそこは黄の国の領地。しかも難易度Sランクの遺跡。利用する冒険者は殆どいないとはいえ、知名度やら考えると、観光地的な役目はあるかもしれない。
それが無くなると国として困るかもしれない。うん、一応許可だけは取っておくか。
――――
『遺跡の能力は失われるかもしれませんが、建物は無事なのですよね? では何の問題もありません。むしろ安全になれば多くの人が入ること出来ますよね? それでしたら是非とも攻略してください』
早速女王に連絡して聞いてみたのだが……女王も軽いな。ってか、結界が無くなった宮殿を本当に観光地にする気だ。
とにかくこれで未使用の核が無くても、最悪宮殿の核を貰うことが出来る。
よし早速……って思ったけど、まだ皆に情報を共有してないし、トオルも忙しい身だ。
遺跡探索は後回しにし、全員と情報の共有。今後の作戦の方針を説明した。
ドライ海峡の城塞都市化には反対意見はなかった。ホーキングもドウェイン達を借りる許可も得た。
また、城塞都市以外にも大き目な港を準備する。レスポール以外の大型船を建造予定だ。それはクルーズ船だけでなく戦艦も建造予定だ。
正直ドルク達の負担が半端ないが、なんとか頑張ってもらいたい。
海魔王であるティアマトとテティスも協力してくれることになった。二人も今回天使の被害者だ。天使たちに対して思うことは沢山あるだろう。
まずはドライ海峡の海中を海魔王として制圧。第二の竜宮城を作りゲートで繋ぐ。きっと天使との戦いで活躍してくっるだろう。
因みにガブリエルの毒に侵された魔物は隔離した魔物は全て解毒が終わり、残りは現在まだ海中にいる魔物が残っているだけだ。それもテティスの部下が巡回で何とかすると言っていた。その為あと数日で姉さんとリュートはシクトリーナに、エキドナとトオルもシンフォニアに戻るとのこと。
ゼロに関しては一応一旦夜魔城に戻るつもりのようだが、多分しばらくは頻繁に行き来するんだろうな。
【魔力の共鳴】に関してはラースとリースの許可を得て、仲間たちに説明した。また、ラース達には天使のことを含む俺達のことに関してティティが全部説明したらしい。
どうやら過去の写真や映像、動画をキャメリアの魔法で漁って、かなり長編のドキュメンタリー映画を制作とのこと。流石に城の外での動画はないから、その部分は一部撮っていた写真とティティのナレーションで切り抜けたらしい。
かなり恥ずかしいが、お陰で俺達のことは知ってもらえたし、闇ギルドには帰らずに協力してくれることになった。二人も修行すれば今後リュートのように強くなるかもしれないな。
一方魔力の共鳴が似た属性としか出来ないことを知ってトオルと姉さんはかなり落ち込んでいた。
ただいつまでも落ち込んでいられないので、早く立ち直ってもらいたいものだ。
今後はリュート達は天使たちに備えて修行を始める。今度は姉さんやデューテ、ラースとリースも一緒だ。
俺は偶に付き合いはするが、遺跡から核を手に入れたり、城塞都市の建築の手伝いの方を優先する。ルーアンにも頻繁に顔を出して敵が侵入してないか確認しなくちゃいけないし……時間の余裕があるって話だったけど、やることが多すぎて全く休めそうにないんだけど?




