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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第224話 進化先を知ろう

「あー楽しかった!」


 そりゃあティティは楽しかったろうよ。


「おいティティ。生なら生って最初から言えよ!」


 絶対に事前の打ち合わせが必須だろ!


「えー、だって内緒の方が絶対にビックリするじゃん」


「ビックリしなくていいんだよ。しかも進化先は有料とか……ブロマイドとか絶対に売れないだろ」


《そんなことないの! バカ売れなの!》


 知らん知らん。スーラの意見なんて無視だ無視。


「スーラさんは可愛くて人気者だからきっと売れるよ! それに自称親友さんは買ってくれると思うよ」


 ……確かにリースなら買うかもしれない。


「言っておくけど、サインを書かせる時間はないからな」


《それなら大丈夫。任せるの!》


 そう言うとスーラは分裂して分身を一体呼び出す。


《この子に書かせればいいの。私の分裂体だから、直筆で間違いないの!》


 ……こんなことで進化後一発目の任せるの! は聞きたくなかったよ。


「ったく。どうするんだよ。このままなら本当に俺宛にクレームが来るじゃないか!」


「心配しなくても皆ネタって分かってくれるって。それよりも今から調べに行くんでしょ? 勿論ついてっていいよね?」


「……まぁ別にいいけど。トオルも調べるまではいいかな?」


「というか、もう少し詳しい説明が欲しいんだけど? さっきの大分はしょってるよね?」


 確かにトオルにはちゃんと話しておきたい。


「勿論話すけど、かなり時間がかかるから、向こうについてからにしよう。どうせ姉さんやリュートも聞きたがるだろうし。とりあえずスーラの進化のお陰で薬が完成したって分かってれば十分だよ」


「あの……向こうでってことは、わたくしには詳しい説明はないので?」


「いや、ルーナは一緒にラース達の話を聞いたからある程度分かるだろ?」


「そりゃあそうですが……」


「ならいいじゃん。ルーナが考えている通りのことだよ。もしそれでどうしても聞きたいことがあるなら、ティアマトを治してから聞くよ」


 それでもルーナはまだ何か言いたそうだったが、渋々納得してくれた。

 そういうわけで俺たちは城のコントロールルームへ行くことにした。



 ――――


「ではスーラさん。こちらに来てください」


《シオンちゃん。ちょっと行ってくるの》


 スーラが俺の肩からルーナの元へと行く。これからスーラの身分証を発行する。

 そこに種族が表示されるはずだ。もし新種なら(??)で表示される。そして新種ならここで登録されれば自動的に冒険者ギルドや他の身分証発行システムにも登録される。

 毎回思うが、このシステムは意味が分からないくらい高性能だ。かなり昔からあるシステムで、人間や魔族にも浸透している。一体誰が作ったシステム何だろうか?


「はい、発行出来ましたよ」


 魔力を流すだけで発行されるからすぐに発行される。


「まずはスーラさんが確かめてください」


 ルーナは内容を見ずに発行されたカードをスーラに渡す。


《早速確認するの!》


 スーラは喜んで確認するが……スーラの体がハッキリと分かるレベルで萎れていく。


「ス、スーラ? ど、どうしたんだ?」


 このままだと干からびてしまいそうだぞ?


《……新種じゃなかったの》


「……それだけ?」


 心配して損した。どうやら落ち込んだだけのようだ。進化してから落ち込み方にも凝ってるな。


《それだけって何なの!? すっごく期待してたのに……オンリーワンじゃなかったの》


「まぁまぁ。そう簡単に新種なんかになれないって。んで、何スライムだったんだ? やっぱりポイズンスライムか?」


《アークスライムって書いてるの》


「アークスライム? 聞いたことないな。ルーナとトオルは知っているか?」


「わたくしも聞いたことがありません」

「僕も知らないね。まぁアークって言うくらいだから、スライムの中では最上位に近いんじゃないかな?」


「アーク……アークエンジェルとかアークデーモンとかよく聞くけど、そもそもアークってどういう意味なんだ?」


「アーク……正確にはアーチ、arch何だけど、偉大なとか、統治者や支配者って意味だよ。だからアークスライムならスライムの統治者ってことかな」


「じゃあスーラはスライムで一番偉いスライムなのか?」


《私偉いの?》


 おっ、偉いって言われて、萎れていたスーラが回復してきたぞ。


「まあ一番偉いかどうかは分からないけど、上位種なのは間違いないよ」


「わたくしもアークスライムの情報を調べてみますね」


《分かったの! 新種じゃなかったのは残念だけど、我慢するの》


 偉いと分かったらこれだ。まったく現金なやつだ。


「そういえば、もし新種だったらスーラはどんな種族名を付ける予定だったんだ?」


《ヴァイオレットスライムなの! さっきのティティちゃんのヴァイオレットって単語が気に入ったの!》


「なんか言いにくい名前だな。それならいっそのことバイオスライムでいいんじゃないか?」


 バイオって確か生命とか生物とかって意味だっけ? でもゲームの印象で毒系のイメージがある。


《やーの! なんかカッコ悪いの! シオンちゃんは名付けのセンスがないから黙ってるの》


 ……案を出しただけなのに、何でそこまで言われなくちゃいけないのか。


「まっ、どっちにしろ新種じゃなかったんだから諦めるしかないな」


《次に進化するときは絶対に新種なの!》


 ……まだ進化する気なのか? 絶対に懲りてないだろ。


「それにしても……進化ですか。わたくしも頑張ればアークシルキーになれるのでしょうか?」


 アークシルキーって……。なりたいのそれ?


「ルーナ様! アークシルキーよりハイシルキーの方が良くないですか?」


 ティティまで……ハイシルキーって、ハイエルフみたいなもんか?


「……もう好きにしてくれ。トオル、俺達はティアマトの所に行こうか」


「そうだね。じゃあシオンくんはルーアンからホリンくんに乗って、最初にティアマトに会った場所に行ってもらえるかな」


「なんだ? 一緒に行かないのか?」


 竜宮城に行けるのをちょっと期待したんだけどな。ってか、それならわざわざ迎えに来なくても……。


「最初は一緒に行こうかと思ったんだけど、会って気が変わったよ。今の二人はゼロくんが言うように、毒が漏れるのが怖いよ。特にスーラくんは進化したばっかりで魔力の制御も慣れてないようだしね」


 ……コイツのせいか。俺はチラリとスーラを見る。


《シオンちゃん。何を考えてるか大体予想は付くけど、トオルちゃんは二人って言ってたの。シオンちゃんだってまだ共鳴に慣れてないから同じなの》


「共鳴?」


「ああ、さっきはしょった話だよ。ちゃんと後で説明するから今は気にしないでくれ。じゃあホリンに乗ってすぐに行くよ。三十分後位でいい?」


 クルーズ船で一時間の距離だ。ホリンなら三十分も掛からないだろうけど、念のため少し多目に見積もっておく。


「こっちも準備をするから一時間後にしよう。言っておくけど、目立たないように来てね」


「分かってるよ。透明化して行けば大丈夫だろ」


 ついでに魔力も消しておけば目立つことはないはずだ。俺はホリンに連絡を取って集合場所へ向かうことにした。



 ――――


「ったくティティのやつ。何が『時間があるなら撮影会しよう!』だ。お陰でギリギリじゃないか!」


 トオルが準備に戻り、俺もルーアンに向かおうとしたら、ティティからブロマイド用の写真が欲しいと言われて急遽スーラの撮影会が始まった。

 お陰で二十分も時間を無駄にした。

 だから慌ててルーアンに行き、ホリンに乗って集合場所に向かっている。


《ごめんなさいなの》


 スーラはノリノリで撮影されてたから深く反省してほしい。


「まぁなんとか間に合いそうだからよかったけど、気をつけないとな」


《分かったの》


 うーん。進化してからのスーラは落ち込みかたが激しいぞ。青紫だから少しネガティブなのか?


「まぁいい写真が撮れてたら、それを使ってモンスターカードの非売品シークレットでも作ろうか」


 何かの景品とかに使えそうだ。


《それいい考えなの!》


 おっ、元気になってくれた。立ち直りも早いな。


《スーラさんはマスターといつもお側にいれて羨ましいです。私も進化してもっとマスターのお役に立ちたいです》


 あー今度はホリンが拗ねる。進化って、ホリンは既に上位種でしかも新種なんだから十分だろ。


「ホリンも十分役に立ってるよ。今だってホリンがいないと目的地にすら着けないんだ」


《でも私もマスターと共鳴してみたいです》


「それは流石に……白と紫じゃ真逆といっていい属性だし」


 俺にとっては弱点だしな。


《やはり私も進化して紫の属性になりたいです》


《へへん。羨ましいでしょ》


《…………》


 スーラは余計なことは言わんでよろしい。ほら、スーラが自慢するからホリンが落ち込んでるじゃないか。

 結局飛行中の間、俺はホリンを宥めることになった。

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