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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第209話 マフィアの真実を知ろう

 いつの間にか部屋に来ていたリン。全く気配をなかった。流石は遊撃隊といったところか。


「本物は地下に……ってどういうことだ?」


 尋ねながらも、目の前のボスがホムンクルスの偽者で、地下に本物って言われたら大体の状況は分かる。


「そうっスね。シオン様と別れた後から説明するっスね。私が地下に降りるとそこは真っ暗だったっス。そこで私は……」


「簡潔に頼むぞ」


 何か全部を説明しようとしていたようだから釘をさす。リンは若干不満そうだ。


「……奥に部屋があって、そこに本物が拘束されていたっス。酷いもんだったっスよ。両手足を金属製の杭で打ち付けられ、全く動けない状態にされてたっス。その状態で一年間、死なないように魔法陣で生命維持だけに特化した魔法を使われてたっス」


 嫌悪感剥き出しでリンが説明する。実際の状況を見てないが、かなり酷い状況なのは理解できた。


「……会話は出来たのか?」


「殆ど意識はなかったっスけど、ヒカリ様のポーションを使って、何とか会話ができる程度にはさせたっス」


「解放はしなったのか?」


「下手に解放して罠の魔法陣があったら大変っスから」


 なるほど、解放したら発動する罠の可能性もあるのか。


「話を聞いたら、自分が三代目アーノアって言ってたっス。見た目はそこに倒れている人と同じっスね。……翼は生えてないっスけど」


「それで、ボスは何て言ってたんだ?」


「何も知らなかったっス。一年前にいきなり捕まって監禁させられ、動くことも死ぬことも適わず、発狂することも許されない。ただただ死にたいって言ってたっス」


 俺はリンの説明を聞きながら憤りを感じた。


「……おい、お前たちは何でボスを生かしていたんだ? そもそも、そのホムンクルスって一体何なんだ」


「ホムンクルスとは我々が造り上げた人工生命体で生き物ではない」


「……ゴーレムみたいなものか?」


「あんなものと一緒にしないでもらいたい!」


 少し怒気を含んでダリオが答える。自白剤状態で何でも話すけど、こういった感情も表現できるんだな。普段使わないから知らなかったよ。

 しかし、怒っているのはこっちの方だ、


 この後ダリオが詳しく説明してもらった。


 ゴーレムには魔核という魔石を加工した物を利用しているのだが、ホムンクルスにはそういった核や魔石は使用していないらしい。

 そもそも天使が魔物や魔族を毛嫌いしているのに、魔石を利用した生命体を創るはずがなかった。

 だからダリオもゴーレムと比べられると腹が立ったようだ。


 ホムンクルスは、製作時に天使の組織を組み込んでいる。そのため、先程のように天使化することが可能のようだ。

 ホムンクルスは上位の天使種に逆らえないようになっており、天使の尖兵として利用される。

 尖兵っていうと聞こえがいいが、要は奴隷のように駒として扱うってことだ。


 ホムンクルスには自我がない。ただ命令にのみ従う。これもゴーレムと同じだ。


 そこで、実験として三代目アーノアが利用された。アーノアの自我をコピーして、ホムンクルスに宿らせる。

 ……他人の意思をコピーする。天使の中にそれが出来る奴がいるそうだ。


 ホムンクルスは元々空っぽのため、コピー元であるアーノアの記憶や性格、仕草が全てそのまま。だから周囲も全く気がつかない。

 俺に怯えていたのもそれが理由だったんだ。本来のアーノアがあんな性格だったんだ。


 そして自分より上位の天使、ダリオの命令には一切逆らえない。マフィアを裏から完全に自由に操ることが出来たって訳だ。


 そして、天使と融合しているわけではない。元々取り入れているだけだ。そのため天使モードでもキラキラしない……か。ようやく少し謎が解けたな。


「なぜ本物のアーノアを生かせてるんだ?」


「コピー元が死ぬと取り込んだ意識も死んでしまう。その為、生かしておく必要があったのだ」


「だからあんな非人道的なことをしていたっスか!!」


 これほど怒りを露わにしているリンは初めて見る。


「リン気持ちは分かるが少し落ち着け」


「……申し訳ないっス」


「お前は偽者のアーノアを仕立て上げてマフィアを牛耳っていた。そこまでは間違ってないな?」


「ああ」


「じゃあ次だ。この町でそのことを知っている奴は他にいるか?」


「いや、この町に送られてきたのは私だけだ。マフィアもそのことは知らない」


 じゃあ俺達の存在は、この二人が居なくなればバレることはないな。


 その後も俺とリンは可能な限りの疑問をぶつけてみた。



 ――――


 マフィアを使ってやっていたことは、予想通り海の中にあるかもしれない英霊を探すこと。

 ガブリエルの毒は魔物の自我を失わせる効果がある。自我を失った魔物は凶暴性が増す。特に洗脳して命令させる効果はないそうだ。

 また、同じ天使の魔力が近くにあると共鳴し、魔法主であるガブリエルに場所が伝わる。

 毒は半月に一度、伝令の天使が届けてくれる。ダリオと同じエンジェルの階級だそうだ。


「もし毒で自我を失った魔物を元に戻したら、ガブリエルに気づかれるか?」


「そんなことは知らん」


 まぁそうか。寧ろ知っていた方が驚きか。それに毒の内容を知っていただけで十分だ。


「じゃあ次だ。敵の幹部……名前付きの天使は何人いる?」


「分からない。私はプラナ様の(しもべ)だから何人いるかなど知りようがない」


「じゃあ知ってる名前だけ今答えろ」


 ダリオはいくつかの名前を言っていく。メタトロン、サンダルフォンなど俺でも知ってる名前から、カマエル、ラグエルとよく知らない天使の名前。他にも知らない名前がいくつか登場した。


「結構いるな。降臨している七大天使も合わせると十体以上いるんだな。これに、まだ英霊状態の天使もいるんだろ? そっちの名前は分からないのか?」


「分からない。が、一体や二体ではないのは確かだ」


 俺が知っているだけでもセラフィエルとアズラエルがいる。天使じゃないのもリリスがいる筈だ。ったく敵の戦力が多すぎて嫌になる。


「天使に関しては以上かな。あと何かあったっけ?」


 あまり思い浮かばなかったので、俺はリンに聞いてみた。


「【月虹戦舞】のことはどれだけ知ってるんスか?」


 ああ、俺達の情報か。確かに聞いておいた方がいいか。


「闇ギルドに聞いたこと以外には知らない」


 どうやら本当に黄の国の件は知らなかったようだ。そういえば闇ギルドで思い出した。


「どうしてラピスラズリを雇ったんだ? お前たちの方が実力が上なんだから雇っても仕方がないだろ?」


「私が出る幕はないと思ったからだ。危険を冒して無駄に力を使う必要はない」


 要は俺達と同じってことだ。下手に力を使って正体がバレる危険があるより、ラピスラズリを雇って穏便にすませる気だったと。確かに俺の実力を見謝らなければそれで良かったはずだ。


「俺達のことをプラナに報告したか?」


「していない。闇ギルドでSランクの魔物を倒したと聞いたが、雇った連中で十分だと思った」


 こいつの中で俺はどれだけ過小評価を受けてたんだろう?


「それに、伝令の天使が来るのがは十日後。その時にお前たちか、雇った二人を器候補に献上する予定だった」


 あっ、元々伝令でしか連絡を取る手段がないのか。そりゃあ俺たちみたいにケータイなんかないもんな。

 そして、俺達とラピスラズリ。勝った方を器として……か。ラピスラズリの方は条件を満たしてなさそうだけど、それは分からないか。


 とにかくプラナ達は俺がここにいることを知らない。それを知るのは早くても十日後。この時間の猶予もありがたい。色々と準備と対策が立てられそうだ。



 ――――


「んで、お前は今は人間か? それとも天使か? どっちの意識があるんだ?」


 ホムンクルスの方はキラキラしてない理由が分かったけど、ダリオの方はまだ分かってない。


「人間か天使かと言われれば元は人間で、今は天使だ。意識というのは恐らく降臨の話だと思うが、私は降臨ではなく進化でエンジェルになっているから元々意識は一つしかない」


「進化だと?」


 また変な話になってきたぞ。


「ああ、ホムンクルスと同じく天使の素養を注入することで、エンジェルへと進化することが出来る」


 エンジェルへは英霊の降臨じゃなく、種族のエンジェルへの進化……。


「それは……無理矢理進化させられたのか?」


「志願制だ。器の素質がない聖教徒は教皇様の慈悲により、人間よりも高位の存在のエンジェルへと進化することが許されている」


 本当ならダリオは今よりもずっと弱かったんだろう。それが人間からエンジェルになることで力を増した。

 聖教徒が何人いるか知らないが、もし全員がエンジェルになるんだとしたら……。


「……教皇は何者だ?」


「教皇様はメタトロン様だ」


 メタトロン……俺でも知ってる有名な天使。日本のゲームでは他の天使より上位の存在だ。コイツがトップか?


 教皇について色々と聞いてみたかったが、ダリオもこれ以上のことは知らなかった。一教徒にとって、教皇は雲の上の存在。話す機会なんて皆無だろう。



 ――――


 他にも細かい質問、毒の在処等を聞き出し、ダリオに聞くことは全て終了した。


「長かったが、最後の質問だ。お前が死んだらプラナに気づかれるか?」


「いや、私が死んでも気づかれることはないと思うが……!?」


 答えながら俺の意図に気がついて顔が青くなるダリオ。

 必死に何かを訴えようとするが、自白剤の効果で必要なことしか話せない。


「お前には一つ誤らないといけないことがある。俺は殺す相手は無意味にいたぶらなくて、一思いに殺すことにしてるんだ。だけど、お前には情報を引き出すためにいたぶった。だから……ごめんな」


 ダリオは逃げることも出来ず、嫌々と涙を流しながら首を振る。

 俺はそのダリオと、未だ眠っている偽者のアーノアにトドメを刺した。

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