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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第203話 マフィアの話を聞こう

「まさか本当に朝まで説教コースになるとは思わなかった」


 あれからすっかり元通りになったルーナは、俺が冒険者ギルドでやらかした件、目立つクルーズ船で釣りをしたこと、リンを放置しての宴会、そして何よりキャバクラに行く計画を考えていたことで、朝までみっちりとお説教を受けた。


 正直ギルドは正当防衛だと思うし、クルーズ船は完全にトオルとゼロの所為だ。リンは……一応、連絡時に助っ人の有無を聞いたし、キャバクラに関しては行こうかと思っただけで実行してない。殆ど理不尽な冤罪だと思うんだが……まぁ落ち込まれるよりはいいけどね。



 ――――


「さて、これからどうする?」


 俺達はシクトリーナで朝食を食べた後、ルーアンへ戻ってきた。

 行きと違い、アイラが新しくメンバーに加わっている。


 まずはホーキングの屋敷でリンとノーマンと合流して、マフィアの対策について話し合うことにした。

 正式にマフィアの壊滅に協力することになったんだから、詳しく話を聞かなくてはならない。


「いきなり現実に引き戻すね。もうちょっと余韻に浸らせてくれてもいいじゃない」


 余韻って……竜宮城ならともかく、シクトリーナに来たくらいで大袈裟な。


「喜んでくれたなら何よりだ。ただ、また来たかったら、その現実の問題を解決してからになるけどな」


「そうだったね。今度は城下町を案内してもらわなくちゃ!」


 もはやもう一度城に行くために、マフィアを壊滅しようとしてないか?


「じゃあシオン君にもアーノアファミリー掃討作戦の概要を説明するよ」


 アーノアファミリー……そういえばマフィアとしか聞いてなくて、名前すら知らなかった。



 今のボスは三代目アーノア。

 ホーキングの祖父が領主の時に初代アーノアが組合を設立。

 領主がホーキングの父に変わった時点で、組合が調子にのって、解散させられた。

 そこに二代目アーノアが、マフィアを設立。アーノアファミリーとして、水面下で活動。

 ホーキングの代になり、アーノアファミリーが、表に出て、勢力拡大に乗り出す。

 一年前に二代目が急死して、三代目になり、海で探し物を開始する。同時に、強行的に町を占拠し始めた。



「昨日の話を聞いちゃったら、二代目の急死ってのも、何か作為的なものを感じるね」


「ガブリエルがマフィアを裏から掌握するために、二代目を殺し、三代目を就任させた? 三代目と二代目って、血筋的には同じなの?」


「一応、二代目の子供だね」


「じゃあガブリエルが送りつけた訳じゃないのか。でも、世代交代した方が配下を潜入させたり、洗脳するのは簡単かもしれないな」


「その線はあるかもしれないね。三代目になったとき、幹部もかなり変わったらしいから」


 その辺りは昨日の尋問で聞いたらしい。


「その中にガブリエルの配下みたいなのはいそう?」


「それは分からないね。でも外からやって来た幹部もいるみたいだから、可能性が高いだろうね」


「そういえばガブリエルの毒。魔法だから一ヶ月しか持たない筈なんだ。だから、こまめに補充をする必要がある。幹部の中に、月一間隔で町を出入りしている人物がいれば、かなりの確率でそいつだと思うんだが……」


 問題は素直に町の門を通っているかどうかだ。履歴が残る門を使うよりも、誰も知らない裏口を作って、そこから町を抜け出している可能性が高い。


「あまり期待はできないけど、後で門の出入りリストを確認させるよ」


 ホーキングもあまり当てにはしてないようだが、一応調べてくれるらしい。


「えっと、今はレムオンさんが呼んだ兵を待ってるんだっけ?」


「ああ、五十程精鋭を呼んでいる。あと数日で着くと思うのだが……」


「この町からは僕の私兵と常駐兵で百、それから一般兵を三百準備してるよ。もう少し人数を集めようかとも思ったんだけど、これ以上増やしちゃうと、気付かれる恐れがあったからね」


 ホーキングの私兵は傭兵扱い。常駐兵はこの町で兵士として働いている人。職業兵士ってやつだ。一般兵は、普段は別の仕事をしている人。有事の際には兵士として登録される、特別志願兵というらしい。

 レムオンの五十人は特別な訓練を受けた王国騎士。精鋭って言うくらいだからかなりの戦力になるだろう。


「敵の数は?」


「三百から五百って所かな」


「結構差があるな。三百と五百って倍くらい違うぞ」


「ファミリーの構成員自体は三百なんだけど、ファミリー外からの敵が何人いるか分からないからね」


 先日捕まえたドウェインやゴロツキのような下っ端のことか。確かにあれが全てではないだろう。


「シオン様。私からもいいっスか?」


 リンが発言の許可を求める。


「ん? なにかあるのか?」


「昨日、シオン様がいらっしゃらない間にマフィアについて調べたんスけど、連中闇ギルドに接触してたっスよ」


「闇ギルド? なにそれ?」


 まぁニュアンスでなんとなく分かるが。


「裏世界で活動している人専用のギルドっスね。黄の国でシオン様に賞金を掛けたり、違法な奴隷取引や暗殺者、盗賊などが活動してるっス」


 デューテが接触していた場所だな。そういえばその闇ギルドをどうにかするために旅に出てたんじゃなかったっけ?


「アイラ。黄の国の闇ギルドはどうしたんだ?」


「別にどうもしない。シオンやバルデス商会には金輪際関わらないように注意しただけ」


「潰さなかったのか?」


「デューテが言うには、あれは必要悪だって。闇ギルドが無くなれば、悪人たちが無法になるから、無くしちゃ駄目だって」


 そういうものか。裏世界にも秩序があって、それに従っている。もしその秩序が無くなれば本当に好き勝手するってことか。


「じゃあこの町にもその闇ギルドがあるの?」


「……いや、僕も知らないけど」


 ホーキングも知らないらしい。


「闇ギルドは裏世界に関係ある人しか知らないから仕方がないっス。同じ裏世界だからといっても、マフィアとは無関係ですし、実際マフィアには荷担してないっス」


「その加担してない闇ギルドにマフィアが接触したの?」


「そうっス。目的は情報と戦力の補強っス。闇ギルドは金さえ出せば誰にでも協力するっス」


「……リンは詳しいな」


「赤の国に潜入していた時にお世話になったっス」


 リンは赤の国で一年くらい冒険者として生活してたもんな。情報収集のために闇ギルドを活用していてもおかしくないか。


「それで、マフィアは何を手に入れたの?」


「主に【月虹戦舞】の情報と護衛っスね。ボスの護衛として双子が雇われてたっス」


「俺達の情報って気になるけど……」


「シクトリーナに関してはバレてないか、トップシークレットか分からなかったスが、今回は話してなかったっス。冒険者ギルドで受けた依頼、ジンの遺跡(ダンジョン)の攻略やヴァスキ事件の詳細。それからバルデス商会のこと。それから自動車のことくらいっスかね。不思議な道具を使い、距離に関係なく色々な場所に現れる神出鬼没なパーティーって言われてたっス」


 マフィアにシクトリーナの情報は渡ってないみたいだが、闇ギルドが何処まで俺達のことを知っているのか今度調べてみる必要があるかもしれない。


「それから双子の護衛って?」


「兄と妹のコンビで活動している暗殺者らしいっス。かなり凄腕でSランク冒険者並みって説明だったっス」


「へぇSランク並みって凄いな。魔力は調べたのか?」


「兄が二万、妹が三万あったっス。兄の方が低かったっスけど、兄は戦士タイプみたいだったっス」


「二万と三万!? かなり凄いじゃないか!」


 三万って、Sランクの魔物の最低値と同じくらいだ。一般的にAランクの魔物の魔力値が一万以上、Sランクの魔物の魔力値が三万以上って言われている。

 まぁ魔力以外にも身体能力や特殊技能が魔物にはあるからそっちの方が厄介なことが多い。


 因みに冒険者の魔力値はAランクで五千、Sランク冒険者の最低ラインが一万だ。魔物と同じ基準にすると殆どの冒険者が基準を満たせないから、魔物に比べて基準値が低い。

 まぁ基本的に魔物退治はパーティー単位で行うから、個人で比べるものではないらしい。


 俺達と出会った頃のリュートが二万以上三万以下で、デューテが三万ちょっとだ。

 そのことからも、その双子がSランク冒険者並みっていうのも間違いではない。


「リン殿。その双子の名前は分かるか?」


 レムオンがリンに名前を聞く。もしかして心当たりでもあるのだろうか?


「個人の名前は分からないっスけど、ラピスラズリって呼ばれてたっス」


 ラピスラズリ……宝石かな? 俺にはその程度の感想しか浮かんでこなかったが、その名前を聞いたレムオンは驚いて息をのむ。


「レムオンさん、知ってるの?」


「ラピスラズリ……この国で活動している暗殺者の名前だ。依頼達成率百パーセント。金さえ払えばどんな依頼も引き受ける最悪の二人組。それがラピスラズリだ」


「依頼達成率百パーセント。スゴいな」


 それって失敗したことがないってことだろ。


「ラピスラズリが相手だとすると、私の兵も全滅する可能性がある」


「へぇ、じゃあ相当ヤバかったんだな」


「ヤバかった? ヤバいのはこれからだろう?」


「いや、間違ってないよ。だって……俺が手伝うんだからな」


 俺はレムオンに向かってニヤリと笑った。

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