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ロストカラーズ  作者: あすか
第一章 魔王城散策
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日常編 ヒカリの朝

 今日は珍しく、いつもより早く起きてしまったので、散歩をすることにした。

 いつも一緒にいるスーラはまだ寝ていたので、今日は久しぶりに一人だ。

 いつも肩にいるからいないと思うと少し寂しいな。



 ――――


 特にやることもないので、俺は城の外に出てみる。結界より外に出るとルーナがうるさいので、城壁内までしか移動できない。


 んー! 思いっきり伸びをする。今日も天気がいいな。こんなにいい天気の朝だとラジオ体操とか気持ちいいかもな。

 俺は鼻歌交じりにラジオ体操をした。流石に二番以降は覚えてないので一番のみだが。

 ってか、一番もよく覚えてたな。小学校の夏休みと中学の体育の時間くらいしかやってないぞ。高校の体育は……うん、確かやってない。


 俺が気持ちいい汗をかいたと満足していると、遠くの方から笑い声が聞こえてくる。

 あっちは確か家畜小屋か? 多分ヒカリだろうと思いながら家畜小屋の方へ向かう。


 そこには案の定ヒカリが動物達と戯れていた。


「おはようヒカリ。朝から頑張るなぁ」


 まさか人がいるとは思わなかったんだろう。突然話しかけられてヒカリはビクッとなる。が俺の顔を見るとすぐに笑顔になる。


「あっシオン君、おはよう。誰もいないと思ってたからビックリしちゃった。今日は早いね。どうしたの?」


「いや、なんか目が覚めちゃったから起きただけ。さっきまでそこでラジオ体操してたんだ。そしたら笑い声が聞こえたから……ヒカリはいつもこんなに早いのか?」


「偶にかな。メイドさん達と交代で起きてるんだ。それにしてもラジオ体操かー懐かしいね!」


「俺も覚えているか不安だったけど、一番は完璧に出来たよ。やっぱ体は覚えてるもんだな」


「へぇ。今度私もやってみようかな?」


 今度と言いながらも、早速両手を上げて深呼吸を始める。


「あ、そうだ。いつもポーションありがとうな。毎日ルーナにボコボコにされてるから助かってるよ」


 ルーナとの模擬戦をした後は、必ずヒカリのポーションにお世話になっている。


「私は戦わないから……それくらいしか出来ないしね」


 ヒカリは申し訳ないように言う。


「ヒカリは気にしすぎなんだよ。ヒカリがいるだけで俺達がどれだけ助かってるか」


 でもこれ以上言ってもヒカリはさらに恐縮するだけだろう。だから俺は話を変えることにした。



「ヒカリは朝はどんなことしてるんだ?」


 家畜の世話は任せっきりだからどんなことをしているか分からない。


「朝は小屋の掃除と餌やりと搾乳や卵の回収かな。今は太郎達を洗ってあげてたの」


「太郎達?」


「うんこの()のことだよ。太郎と花子とジョセフィーヌ」


 なんで一人だけ横文字なんだろう? 気になるが、これは多分気にしたら駄目なやつだ。


「大変だろう? ヒカリに任せっきりでごめんな」


 そう言うとヒカリはブンブンとてを振る。


「メイドさん達にも言ったんだけど、私が好きでやってることだから全然大変じゃないよ」


 メイド達もヒカリが世話をしなくてもいいと言ってたそうだ。それをヒカリが自分がやりたいからと言って世話をしているようだ。


「私ね。最近こっちに来て本当に良かったなぁって思うんだ。地球じゃ勉強ばっかりだったでしょ。遊びもカラオケや買い物ばかり。合コンは柄じゃないから断ってたし……シオン君達とのサークルは楽しかったけどね。でもね、今はこう生きてるって思うんだ。働いてるからそう思うだけかもしれないし、地球でも農業をしたらそう感じたかもしれないけど、なんか人間じゃない色んな人達がいて協力し合って暮らしてる今が、私はすごく好き!」


 地球では得られなかった満足感。それとシルキーやリャナンシー、ケットシー。魔族でも皆で仲良く生活出来る。ヒカリにはそれが何よりも嬉しいことなのだろう。


「ねぇシオン君。シオン君はそのうちスミレちゃんを探しに行っちゃうよね? もしかしたらここには戻って来ないのかな? 地球にいたときの私だったらきっと一緒に行くって言ってた。足手まといって分かってるのにね。でも今は多分一緒に行こうって誘われても断るかもしれない。勿論スミレちゃんには会いたいし、シオン君と一緒にいたいけど、でもここの皆と一緒にいたいと思う。たった数ヶ月した住んでないのにおかしいよね」


 この世界に来て一番成長したのはヒカリかもしれないな。強さとかじゃなく人間的に大人になったんだと思う。


「ヒカリは強くなったな。置いていかれた気分だよ」


「えええ!? 何言ってるのシオン君!」


 俺はどうだろう? 少しは変わったのか? 変わったようにも思うし、変わってないようにも思う。

 どっちとも言えないが、ただもう日本では生活できないと思う。生活は日本の方が便利だけど、それだけだ。ヒカリも言ってたが、こっちの生活の方が充実感がある。

 今はまだ数ヶ月しか経ってないし、ソータの様に嫌なことを経験してる訳じゃない。これから嫌なことがあって、この世界が嫌いになるかもしれない。でも後悔だけはしないようにしよう。


「さて、これ以上邪魔しちゃ悪いか」


 思わぬヒカリの成長に満足した俺は、朝御飯を食べに行こうと思った。


「あ、私もこれで終わるから一緒に行こうよ!」


 そう言うとヒカリは魔法を唱える。


「そーれ! みんな今日も頑張ろう!」


 その言葉と同時にヒカリの前にサッカーボールくらいの大きさのオレンジ色の玉が出現する。そしてそれを上空に放り投げる。玉は上空で止まって動物達を照らしていく。

 この光を浴びていると力が湧いてくるようだ。

 動物達が病気もなく元気なのはこれのお陰だろう。

 改めて感謝しつつ俺達は食堂へ向かった。


 食堂で待ちぼうけにされたスーラが、不貞腐れて一日話もしてくれなかったのはまた別の話だ。

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