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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第201話 白状しよう

 俺と一緒にマフィアと戦うチームと、トオルと一緒に海で魔物を捕まえるチーム分けを考えることにした。


「僕は参加しないよ」

「デューテ! どうしてだい? プラナに接触できるチャンスじゃないか」


 真っ先にデューテが参加しない意思表示を行う。デューテは俺達と行動を共にすることになっているが、正式な仲間とは言い難い。だから参加しないと言うのも分かる気がするが、リュートの言う通り、プラナに会えるかもしれないチャンスだ。デューテだってプラナには会いたいはずだ。


「……僕は水と相性が悪いんだよ」


 あっ……俺の毒と一緒で、デューテの場合は漏電の恐れがあるのか。別に手伝うのが嫌なわけじゃなかったのね。


「あー。それじゃあ仕方がないね」


 これにはリュートも、少しばつが悪そうだ。


「シオンのマフィアの方も戦力は必要ないんでしょ? それでなくても、あまりSランク冒険者が他国にいるのはマズいから、僕はプラナが現れるまで待機してるよ」


 確かにSランクって言ったら、自国で英雄レベルの扱いだ。別に自国から出ては駄目という訳でもないだろうが、色々と手続きとか面倒なのか? ……あれ? だったらリュートは最初から旅行に参加できなかったんじゃ?


「そっか……僕はシオンと行動しようと思ったけど、それならトオルさんと行動しようかな。アイラはどうする?」


 どうやらデューテは参加しなくても、リュートは参加するらしい。


「私は……【月虹戦舞】だからシオンと一緒に行く」


 アイラは俺について来るのか。リュートが少しだけ羨ましそうにしてるぞ。


「ねぇねぇ。いつ連絡が来てもいいように、皆が行ってる間、僕は城に居てもいいよね?」


 ……デューテは、もしかしてそれが目的なんじゃないか? 城から出ても遊びに来る度に、ここの生活が良かったって言ってたもんな。


「あとは姉さんとセラ達だけど……どうする?」


「全員で行くと流石に城がスカスカよね。私が行くからセラ達は残りなさい」


「えっ姉御……どうしたんです? いつもなら俺達に行けって言うのに……」


 うん。俺もセラ達が行くと思ってた。


「だって竜宮城よ竜宮城! タイやヒラメが踊ってるのよ!」


 なんだ。竜宮城に行きたいだけか。やっぱり姉さんは姉さんだな。


「サクラくん。残念だけど、タイやヒラメは踊ってなかったよ。代わりに、ニンフのネーレーイスやマーメイドが居たよ。昨日の歓迎の宴では美しい踊りを見せてくれたんだよ」


「トオル……どういうことじゃ?」


 あっ、流石に他の女性を褒めるとエキドナも怒るよな。


「タイやヒラメは踊らないのね……でもいいわ! 竜宮城って興味があるし!」


 トオルが詰め寄られている間に、姉さんはトオルの方に行くことを決めたようだ。

 ってことで、俺の方にラミリアとアイラが。トオルの方にはエキドナと姉さんとリュートか。トオルの方が人数が心もとないかもしれないが、ゼロもいるし、戦力的には十分だな。


「シオン様。ルーアン以外の町も毒が出回っているのですよね?」


 ルーナからの質問だ。レムオンの話では他の港町のゴロツキが海賊まがいなことをして、毒を撒いているはずだ。


「ああ、本来ならそっちまで手を回したいところだけど、流石に人手が……な」


「では、情報だけでも手に入れるために、遊撃隊に潜入させましょう」


 ふむ。遊撃隊か。


「確かにルーアン以外にプラナが現れるかもしれないし、遊撃隊が行ってくれたら転移が使えるようになるもんな」


 プラナが別の町に現れても遊撃隊なら無茶はしないだろうし、転移登録してくれたら、行ったことはなくても俺達も転移できるようになる。


「それではサクヤとシグレとセツナの三人を派遣しましょう。レムオン様、後程町の情報を伺っても宜しいですか?」


「あ、ああ。構わぬが……今でなくてよろしいのか?」


「ええ、会議が終わってからで構いません。それに……もう随分と遅くなっております。本日は皆様この城へお泊りになってはどうでしょう?」


 なっ!? 泊り……だと。んなことになったら逃げれなくなるじゃないか!


「いやいや、会議が終わったらすぐに戻らないと心配するし……」


「僕達は別に日が変わるかもしれないって言ってきたし、明日の朝に帰っても問題ないよ。それに興味があるしね」


 くそっ!? ホーキングめ。完全に泊まる気になってやがる。


「じゃあ俺はミサキ達が心配だから先に……」


「まさかお客様を置いて行くはずはありませんよね?」


「……はい」


 どうやら逃げることは不可能のようだ。なら……。


「よし、じゃあせっかく皆が集まってるんだし、今日は宴会かな。大変な時だけど、一日くらい良いよね?」


 酔いつぶれて全て忘れる作戦に出よう。


「悪いけど、僕とエキドナはすぐに竜宮城に戻るよ。サクラくんとリュートくんはどうするんだい?」


「じゃあ今から準備するから三十分だけ待って!」

「僕もすぐに準備してくるよ」


「ってことだからさ。宴会は遠慮させてもらうよ」


 くそっ、トオルめ奴、裏切ったな。……まぁ忙しそうだから仕方がないけど。


「私も宴会は歓迎したい所ですが、流石に城に戻らなくては……」

「私もノーマンと話さねばならぬので、酒は控えさせてもらう」


 女王とラスティンまで裏切るとは……。


「シオンさん。流石に往生際が悪いですよ。諦めて怒られたらどうですか?」


 ラミリアまで……って、ラミリアは最初から敵だった。


 俺はルーナの方を見る。してやったりとした表情を浮かべている。……はぁ。これは徹夜で正座コースかな?



 ――――


 現時点で会議室に残ってるのは、ヒカリとデューテ、アイラ、ラミリアの四人と、リュートと姉さんの準備を待っているトオルとエキドナの二人だけだ。

 女王とラスティンは帰った。二人もこれからさらに忙しくなるだろう。

 レムオンとホーキングは青の国の情報を教えるためにルーナと一緒に別室に行った。遊撃隊と打ち合わせするらしい。

 出て行く前にルーナに『逃げないで下さいね』と、念を押されて逃げることは本当に不可能になってしまった。


「平和かと思ってたら、また慌ただしくなっちゃったね」


 ヒカリが悲しそうに言う。彼女は戦闘要員ではないため、いつも待つ側だ。多分いつも不安に思っているに違いない。


「でも天使は放っておけないからな」


 今回のトオルの話で、敵の目的がロストカラーズの復興だと分かった。ってことは、もしロストカラーズの入口がこの城にあると分かったら、間違いなく攻めてくることになるだろう。


「そうだよね。それにしても天使の目的もロストカラーズの復興だったんだね」


「ああ、驚いたな」


 それに虹の七色じゃなくて七大天使だったってことにも驚いた。七って共通点はあるけど……。


「……ねぇ。今の話はどういうことだい?」


 俺とヒカリの話を聞いたいたのか、トオルが尋ねる。いつもよりも真剣な表情だ。


「えっ? どういうって……さっきトオルが言ってた天使達の目的だろ?」


「そうじゃなくて、今ヒカリくん『天使たちの目的も』って言ったよね。『も』ってどういう意味だい?」


「あっ……」


 ヒカリがしまったって顔をする。多分俺も同じ反応をしたけど……今の反応が決定的だな。


「……別にただの言い間違いじゃないのか?」


「シオンくん。今の反応でそれはないよ。どうやらシオンくん達も僕に隠していることがあるようだね。まったく人には散々隠し事して……って、言っておいて酷いよね」


 まるで攻守が逆転したように、今度はトオルが俺を問い詰める。


「シオン。もう隠してたって無理だって。それに別に隠す意味もないんだし、白状しちゃえば?」


 デューテが駄目押しの発言をする。諦めるの早いだろ!


「あれっ? デューテくんも知ってるのかい? ルーナくんも知ってるのかな?」


 ……これは観念して話した方が良いな。


「ルーナは知らない。知ってるのは俺とヒカリとアイラ。それからリュートとデューテの五人だけだ」


 あとスミレもだけど、スミレはちょっと立場が違うから別にいいだろう。


「んん? なんだか不思議な組み合わせだね。冒険者パーティーだったらラミリアくんやリンくんが知ってないのはおかしいし、ヒカリくんが知っててサクラくんやルーナくんが知らないのもおかしいね」


「まぁ別に本当に秘密ってほど秘密じゃないからね。関係者にそれとなく説明しただけだよ」


「それで……教えてくれるのかい?」


「別にいいけど……どうせならルーナや姉さんも聞きたいって言うだろ。それに話し始めたらそれなりに時間のかかる話だし……どうする?」


「勿論聞いてから帰るに決まってるよ!」


 忙しいんじゃなかったのかよ! 全くトオルの探究心は底なしだな。



 ――――


「ちょっと! 準備が終わったってのにまた会議ってどういうことよ!」


 さあ出発! とばかりに準備してきた姉さんが憤る。


「シオン様……一体どういうことでしょう?」


 同じく呼び出されたルーナも少し不機嫌そうだ。ホーキングとレムオンはシャルティエに任せて来たらしい。


「さあシオンくん。城の関係者は揃ったからちゃんと白状しようね」


 俺の目の前にはトオルとエキドナとラミリア。それに姉さんとルーナ。

 俺の後ろにはヒカリとデューテとアイラとリュート。そして何故か俺だけ正座させられていた。


「あのー。何故に俺……いや、わたしだけ正座なのでしょうか?」


 ヒカリ達だって共犯の筈だ。


「どうせ他の人はシオンくんから口止めされていただけだよね。なら悪いのはシオンくんだけじゃないか」


 くそ……俺はトオルが隠し事しても正座をさせなかったぞ。


「じゃあ話すけど……本当に大した話じゃないからね?」


 俺は念を押して話始める。


 スミレがカラーズに召喚されたという事実。召喚主は不明。

 召喚された理由が虹の属性を持っていたから。虹の属性はロストカラーズを復興させる能力を秘めていた。

 だがスミレは召喚された時、虹の七色ではなく紫の欠けた六色だった。不完全な属性と、カラーズに来てからの虐待で、この世界に絶望してロストカラーズの復興を諦めた。

 そもそも何万年前に失われたロストカラーズを何故今頃になって復興させようとしたのか。それはシクトリーナに転移扉が出来て、ロストカラーズの封印が解かれる危険性が出来たからだ。

 このままではシクトリーナの転移扉からロストカラーズの死が溢れ出てしまうかもしれない。

 ロストカラーズを復興させるためには虹の属性だけじゃなく、虹の七色を持った七人でも代用が効くらしい。

 そのため俺は七人の虹のメンバーを集めることにした。赤のアイラ、橙のヒカリ、黄のデューテ、緑のリュート、それに紫の俺の五人が現在のメンバー。残りは青と水色の二人を集めれば七色が揃う。


「大体こんな感じなんですが……ねっ? 大したことないでしょ?」


 話し終わって恐る恐る尋ねたのだが……目の前の五人が発している空気が怖くて正面を向けない。


「こ、こ、こ……これが大したことないですってぇ!! シオン、あなた何考えてるのよ!」


「いや、だってさ。封印が解かれる可能性って言っても、何十年、いや何百年先の話の可能性ってことだよ。別に今慌てる必要もないよ。それに話しちゃったら虹のメンバーを集めようってなりそうじゃん。なんかさ、スミレを召喚した奴の言いなりっぽくてさ。探すのを旅の目的にしたくなかったんだよ。だから知り合った人で偶々属性があって、それなりに強い人がいたら誘うつもりだったんだよ」


 デューテとリュートがまさにそれだ。


「……シオンくんに言い分は分かったよ。確かに僕に言うと、真っ先に七人揃えようって言っただろうね」


「だろ? それが嫌だったんだよ」


「それにしたってスミレの事くらい話してもいいじゃない! ゲートに巻き込まれたんじゃなくて召喚だったなんて……召喚主は分からないのね?」


「分かってたら真っ先にぶっ飛ばしに行ってるよ」


 スミレを不幸にした奴だ。たとえそれが神だったとしても、許されるわけがない。


「いくつか聞きたいことがあるんだけどいいかい?」


「ああ、何だ?」


「まず、シオンくんの紫とヒカリくんの橙はレアだからいいとして、残りの三人の基準は何なんだい?」


「アイラはスミレからの推薦だ。アイラはスミレの虹から赤属性を全て取り込んだから通常よりも強い能力を持ってるだろうからって。デューテとリュートも強いし、トールとショコラと融合すればかなりの戦力だからな」


「シャルティエくんやミサキくんは? ミサキくんは青だし、シャルティエくんは水色って言ってもいいんじゃない?」


「少し考えたけどな。ミサキは仲間になった時は完全に戦力外だったし、今も戦闘要員ではないからな。シャルティエーーシルキーはロストカラーズって遠い所で何処まで戦力になるか分からないからシルキー達は外した」


「なるほどね。それで、シクトリーナは本当に大丈夫なのかい?」


「それは分からない。スミレもすぐの話じゃないように言ってたし、本当に解かれるかも怪しいレベルの話だ」


「了解。色々と気になるけど、確かに今すぐじゃないなら後回しで良いかもね」


「だろ?」


 俺が同意すると姉さんにギロっと睨まれた。


「あまり調子に乗らないの!」


「はい。すいません」


「とにかくまずは青の国と海魔王をどうにかして……それから天使とロストカラーズについて調べようか」


「そうだな」


「……もう他に隠し事なんてないよね?」


「ないっての!?」


 むしろお前に言いたいよ俺は。


 でも、これで皆もロストカラーズについて知ってしまったな。別に何かあるって訳じゃないけど……やっぱり共有したことで、本当の目標になってしまった気がする。

 それと……この会議中ルーナがずっと黙っていたのが俺には気になった。

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