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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第197話 招待しよう

 尋問室を出ると、丁度隣の部屋からノーマンが出てきた。リンはいない。


「リンは?」


「万が一に備えて、このまま見張りを続けるそうです」


「そっか。じゃあちょっと話せるところに行こうか」


 流石にここで話す訳にもいかないから俺とノーマンは場所を移動することにした。



 ――――


 無事に個室を借りれたのでそこを使用させてもらうことにした。

 部屋には誰もいないが、念のためキューブを使って部屋の中を防音にさせてもらう。やっぱりトオルの魔法は便利だな。


「さてノーマン。お前一体どんな説明をしたんだ? ドウェインがまるで別人になってたぞ」


「特別なことは言っておりません。元々裏切られたショックを受けておりましたから、そこにこちら側へ協力するように呼び掛けただけです」


 何でもないように言うが、それ多分俺が……いや他の誰が言っても、ああはならない。やっぱりノーマンは詐欺師――教祖の器があるかもしれない。ノーマンを教祖とした宗教団体。考えるだけで恐ろしい。


「それに一番はやはりエリクサーですね。シオン様が惜しげもなく使用したのが決め手ではないでしょうか」


 俺がエリクサーを使ったことよりも、それを平気で五千万なんて言ったのが決め手のような気がする。


「まっとにかく協力的で助かったよ。それで例の空の瓶はあった?」


 この部屋に入る前に、ドウェインの私物は預かってきた。ただ中を少し確認したんだが、もうグチャグチャ。その為、思わずノーマンに丸投げしてしまった。

 ノーマンは特に何も言わなかったけど……これってやっぱりパワハラかな? 後で訴えられたりしないよね? もしそうなら……責任とって城主引退のチャンスか!? ……うん、無理だね。


「他にそれらしきものはございませんので、恐らくこれかと」


 ノーマンが取り出したのはコルクで栓がしてある十センチくらいの小さな瓶。小瓶って言ってたけど、想像以上に小さいな。


 俺はコルクを抜いて中を見てみる。やはり空っぽだ。


「少しくらい水滴が残ってないかと思ったけど、全然ないな」


 さっきの話だと特殊な液体みたいだから、もしかしたら普通のサラサラした水じゃなくて、ドロドロした粘着性のある……スライムみたいなのかも! 俺はスーラを見ながらそういう結論に達した。


《むむっ。シオンちゃんまたよからぬこと考えてない?》


(よからぬことって……いや、この瓶の中の液体ってどんなのだったのかな? って考えてただけだよ)


 ノーマンがいるから念話で答える。


《それで私をジッと見つめるのは不本意なの! でも……私に任せるの!》


 おおっ、スーラの任せるの! だ。

 前回の釣りはまさかの裏切りだったが、今回は期待していいのか?


 スーラは小粒の分身を作ると、瓶の中に入った。……何をしているんだ?


《瓶に付着した成分を調べてるの!》


 ああ、鑑識みたいな感じか。確かに瓶に何かしら付着していてもおかしくはない。しかし本当にスーラは多才だな。


 考えてる間にスーラの分身が小瓶から出てくる。そして本体と融合をした。スーラは情報を精査してるのか、ピタッと動かなくなった。



《…………シオンちゃん!! 大変なの!!》


 しばらくすると、突然スーラが叫びながら肩から降りる。そしてピョンピョンと跳ねながら、大変さをアピール。こんなスーラはかなり珍しい。


「大変って……何が分かったんだ?」


《この小瓶の中身……あの時の天使の魔力を感じるの!!》


「何っ!! あの時の天使って……もしかしてプラナのことか!」


 あの時の天使ってことは俺の知っている天使のはず。俺が知っている天使はプラナ達しかいない。


《そうなの。あの戦いで感じた魔力と同じ魔力なの》


 あの戦いの時、直接は戦ってないが、天使姿のプラナが魔法を唱えるのは何度か見ている。だからスーラがプラナの魔力を間違えるわけない。


「一体どういうことだ? 何でプラナの魔力が?」


 マフィアに何か関係があるのか? でもプラナはずっと黄の国に……って違う! マフィア達が海を探し始めたのは一年前から。プラナが黄の国から出て行ったのは一年と少し前。

 黄の国から出て行った後にすぐに活動を始めたら計算上はおかしくない。


 ちょっと待て。さっきトオルは何て言った? 俺がマフィアが海を探索し始めた時期を説明した時……『一年前……うん。時期も一応一致するね』確かそう言った。


 じゃあトオルもこの件にプラナが絡んでいることに気がついていたんだ。

 俺は急いでトオルのケータイに連絡する。


『シオンくん。どうしたの? まだそんなに時間は経ってないけど、もしかしてもう何か分かったの?』


「ああ、少しだけな。それでトオルに聞きたいことがある」


『なんだい?』


「この件にプラナは絡んでいるのか?」


『プラナかどうかは分からないけど、多分天使は関わってると思うよ。でもシオンくんが言うってことは、何か証拠が見つかったの?』


 コイツ……あっけらかんとしやがって。


「何かじゃないだろ! 天使が絡んでると思ってたんなら、どうして教えなかった!!」


『さっきも言ったでしょ。まだ仮説だって。それに教えないって言ってないよ。僕はシオンくんがマフィアを調べたら話すって言ったよ。マフィアが証拠を持ってると思ったからね』


 ……確かにそんなこと言ってた気がする。でもじゃあマフィアが証拠を持ってなかったら話さなかったってことじゃないのか?


『それで? シオンくんは何を掴んだのかな?』


 なんか釈然としないが、教えないことには次に進まない。俺は昨日リンが捕まえたところから、さっきドウェインに聞いたこと、今スーラが調べた情報をトオルに伝えた。



 ――――


『へぇ、そんなことがあったんだ。確かにあの船を手に入れることが出来たら探索にはすごく役に立つかもしれないね』


「まぁ奪ってもイチカ達がいないから動かないけどな」


『一応あれの操縦は、ただのゴーレムだから命令するだけで動かすことができるんだよ。まぁ同じゴーレムのイチカくん達なら、コントロール室に行かなくても遠隔操作出来るんだけどね』


 俺達とイチカ達の違いは直接か遠隔かの違いだけらしい。


『あと小瓶に入っている液体が、恐らくプラナの魔法だろうね。黄の国の過激派や冒険者を洗脳した魔法と同じじゃないかな』


 プラナは治療と称して様々な人間を洗脳、眷属化していた。今回は探索の道具と称して海の魔物を洗脳して眷属にする気だったのか?


「ってことは宝探しは嘘だったってことか?」


『それはちょっと違うけど……流石にかなり重要な話だから、直接会って話をしたいかな』


 そういえば玉手箱の件があったな。

 それにトオルの言う通り、天使の話となると一旦合流した方がいいかもしれない。


「俺の方はいつでもいいけど、どこに集まろうか?」


『僕の方は今すぐは厳しいかな。……今日の夜に城に集合でどうかな? どうせなら皆にも話した方が早いでしょ』


 確かに……マフィアだけならともかく、天使と戦うなら人手が欲しい。


「分かった。じゃあ何人か声をかけて待ってるよ」


『僕もゼロくんとエキドナに話しておくよ』


 ゼロは関係者だし、エキドナも内乱時の関係者だ。問題ないだろう。


 俺はトオルとの通話を終える。


「とんでもないことになりそうですね」


 ハンズフリーで会話をしていたからノーマンにも今の会話は聞こえていた。ノーマンも黄の国の内乱の件は知っているので、天使の存在は知っている。


「ああ。まさかプラナが関わってるとはな」


「目的は何でしょうね」


「分からん。だが放っておくのはヤバい。俺は城に戻るけど、ノーマンはどうする?」


 今回は黄の国は関係ないのでノーマンやラスティンは関わる必要はない。


「恐らくこのままここに残ることになると思いますが、まずはラスティン様に報告をしたいと思います」


「そっか。じゃあ俺はリンやラミリアに連絡とるわ」


 リンはホーキング達の護衛でこの町に残ってもらおう。



 ――――


「……別にいいっスけど。でも今回個人行動ばかりで面白くないっス」


「いや、お前は元々遊撃隊なんだから、殆ど通常業務と変わらないだろ?」


 リンにホーキングの護衛と留守番を頼んだんだけど……確かに今回のリンは損な役回りが多いな。


「せっかくの休暇なのに、仕事と同じことをするのは嫌っス」


 ……まるで【月虹戦舞】の活動を休暇みたいに言ってるけど、違うからな?


「まっ今回の件が終わったら、また旅行に行くからそのとき楽しめよな」


 現在ラスティンの所で頑張ってるハンナと帰ったら旅行に行く約束したもんな。ハンナ、ちゃんと役に立ってるかなぁ?


「そんな簡単に次の旅行に行けるんスかねぇ?」


「えっ? どういう意味だ?」


「どういう意味も何も、昨日ルーナ様に連絡して怒られたんスよね? 前回みたいにしばらく外出禁止とか言われなかったんスか?」


「…………わ」


「わ?」


「わ、忘れてたああああ!!!」


 ヤバいヤバいヤバい。連絡するの完全に忘れてた。


「シ、シオン様……もしかして連絡しなかったんスか!? なんでっ!!」


「何でって、酔ってたからに決まってるだろ!! お前だって昨日の惨状を見ただろ!」


「見たっスけど、私はてっきりあの後連絡したものと……」


「バッカだな。リンと一緒にお茶漬け食べた後は、気持ちよく夢の中だ」


「そこ胸張って言われても困るんスけど……。でもどうするんスか? 多分ルーナ様は過去最大級に怒ってるっスよ」


 過去最大級……。俺、帰ったら殺されるかもしれん。ヤバい。一気に帰りたくなくなった。


「リン。何かいい方法はないか? 昨日連絡できなかった言い訳……そうだ! マフィアに絡まれてそれどころじゃなかったってのはどうだ?」


「何人の手柄を横取りしようとしてるんスか! と言いますか、リン様やレン様がいるんだから嘘ついてもすぐにバレるっスよ!」


 ミサキやレンに口裏合わせてもらうように……いや、駄目だ。レンはすぐに顔に出て嘘がつけないタイプだし、ミサキは面白がって寧ろ嬉々として話すだろう。

 そしてラミリアの存在が……あっ更にキャバクラ問題まであった。

 これは言い訳は無理だな。なら、怒られないような状況を作れば……。


「……そうだ! 客を連れて帰るってのはどうだ? 客の前ではルーナは怒れないだろ?」


「……それ、ただ単に問題を先送りにしているだけのようっスけど……第一客って誰を連れて帰るんスか?」


 そこが問題だよな。ここで知り合った人物って、ガロン夫妻に娘のカタリナ。それからホーキングとレムオンだ。


「……カタリナしかいないかな?」


「……この上女性を連れ帰ったら自殺行為もいい所っスよ」


 確かに。別にやましいことがなくても、話を聞きそうにない。ガロン夫妻は俺達の正体すら教えてないので論外。ホーキングとレムオンはトオルの話も若干関係があるから立場としては問題ない。が、こんな大変な時期に城に来るなんて真似ができるはずがない。


「とりあえずホーキング達に話をするだけしてみようかな」


「もう全力でルーナ様から逃げる気っスね」


 リンは呆れてるが……過去最大級の怒りが待ってるんだ。逃げるのは当たり前だろ!



 ――――


「えっ!? シオン君の城に招待してくれるの!! 行くに決まってるよ!」


 まさかの即答だった。


「……本当ですか? 忙しいんじゃ……」


「そんなのどうだっていいよ!」


 いや、良くないだろ!! そういえばホーキングはトオルと同じで、興味があることに対する探求心が何よりも勝る人だったな。まぁ俺としては来てくれたらルーナの隠れ蓑になるからありがたい。


「ねぇレムオン君も行くでしょ?」


「……其方が行くなら、ひとりでここに残っても仕方ない」


 どうやらレムオンも来るらしい。


「シオン様。お二人が行かれるなら私はどうするっスか?」


 リンは護衛をする必要が無くなったが……。


「リンは残っていてくれ。多分ミサキとレンは残るだろうし、町の様子が分からないままだと困るからな」


 ミサキとレンは話し合いには参加しないだろうから戻る意味はない。ラミリアは……どうだろう? 多分エキドナも参加しそうだから、リンが残るならラミリアは一緒に戻りそうだ。


 この後、ラミリア達にも報告したら、案の定ミサキとレンは残って、ラミリアは帰ることになった。ミサキ曰く『何で来たばっかなのに、一時的だとしても帰らなあかんねん!』だそうだ。

 これで帰るメンバーが決まった。一応帰る連絡を……通話じゃ怖いのでメールで送っておく。うう、本当に大丈夫かなぁ。

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