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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第196話 ドウェインから話を聞こう

「ちょっとシオン君。何勝手に出て行ってるんだい! あれから本当に大変だったんだよ! いきなり腕が生えてくるって大騒ぎだったんだから」


 俺が戻ると、早速ホーキングに糾弾された。叫び声から察してはいたが、やっぱり大騒ぎになっていたようだ。うん、やっぱり逃げて正解だったな。

 ここは拘置所の尋問室。部屋の中にいるのはホーキングとレムオン。それとこの拘置所の刑務官の三人、それと俺だけだ。


 ノーマンとリンは隣の部屋にいるらしい。あれだ、刑事ドラマとかでよくある取調室の隣でマジックミラーになっている部屋だ。

 まぁここではマジックミラーなんてものはないから普通に格子付き小窓で中を覗けるようになっているだけだが。あっ、その小窓からリンが覗き込んで俺と目が合う。そしてピース。……何考えてるんだ? ちなみに隣から声を発するのは御法度らしいので、リンも話しかけてはこない。


 本来なら護衛の為、ホーキング達と一緒にこっちの尋問室にいるべきなんだろうが……連中を一人でボコボコにしたのがリンだ。彼女が一緒の部屋にいると怖がって話してくれないかもしれないという配慮だ。


「はっはっはっ。そんな大騒ぎなんて大袈裟な。俺はちょっと治療しただけじゃないですか」


 とりあえず、ホーキングの糾弾には笑って誤魔化す。


「無くなった腕を治すのはちょっととは言わないよ!」


 ですよねー。


「ま、まぁそれでも、無事に治ったなら、別に不利益はないですよね?」


「そうだね。ちょっと対応に困りはしたけど、お陰でスムーズに話を聞けてるよ」


「なら良かったじゃないですか」


「……まぁシオンくんが良いならいいよ」


 ん? なんか含みのある言い方だな。


「えと、何か……」

「それよりも。戻ってきた理由はなんだい?」


 ……何か俺にとってマズいことがあるようだが、どうやらはぐらかす気らしい。

 多分教えてはくれないだろうし、ここでしつこく聞き出そうとしたら、逃げたことに対して、ぐちぐちと文句を言われそうだ。

 まっ、どうせ大したことじゃないだろう。


「えっと、トオルと連絡を取ったんですけど、その件でマフィアの話を聞きたくて……」


 俺がそう言うとホーキングも興味を示した。


「へぇ何が聞きたいんだい? 既に何人かは尋問済みだから、もしかしたら答えられるかもしれないよ」


 既に何人かこの部屋で話を聞いたらしい。話を聞いた者に関しては、戻ると話を合わされる危険があるので、元の牢に戻らずに、別の階の牢へと移るらしい。まぁ当然だよな。


「実は連中が探している物が見つかったらしいんです」


「何だって!? 一体何だったの?」


「それはまだ教えてくれませんでした。でもトオルの口調から間違いないと」


 まさか玉手箱でした。とは言えない。ってかそのネタが分かる人がいないか。

 中身も不明だから言わなくて……。ん? 今ふと思ったけど、玉手箱の中身といったら、年を取る煙? まさかね。


「俺が聞きたいのは、連中は捜し物の中身を知っているのか。そもそもその探し物について教えてくれたのは誰か。それから探し方。この三つです」


 あともう一つ。マフィアが流したという毒の話があるが、それは後回しの方がいいだろう。


「一応僕も探し物については聞いてみたんだよ。そうしたらさ、彼らも詳しいことは知らないみたいでね。上から価値のある財宝が眠ってる的な話を聞かされて、探すように命令されてたみたいなんだよ」


「ってことは、連中は自分たちが何を探しているか、中身どころか、形も分からず探してたのですか?」


 それって仮に発見しても、それか目的の物か分からないんじゃ……。

 じゃあ、そもそもトオルは何でマフィアの探し物が玉手箱って分かったんだ? 探している本人が知らないのに、目的のものかなんて分からないんじゃ……中身を知れば分かることなのか?


「それが……探し方が独特でね。船から探査用の道具を投げ入れると、その付近に目的の物があったら、光って反応するらしいんだよ」


 毒だ! 直観的にそう思った。その探査用の道具が、魔物の理性を封じて狂乱にさせている毒に違いない。

 ってことは、連中はそれを毒だと知らずに撒いてたのか。いや、もしかしたら本当に探査用の道具で、探索時に毒が発生する。単純に副作用なんじゃ……。

 だとすれば、魔物を狂乱にするのが目的じゃなくて偶々だったのか? ……まだ判断は出来ないな。


「その道具って、今ここにあります?」


 毒関係なら俺が調べれば分かるはずだ。だがホーキングは首を横に振る。


「僕達が調べた人は持ってなかったね」


 もしかしたら船に置きっぱなし……いや、貴重品の可能性もあるから、毎回支給されるとかかもしれない。少なくても下っ端が持ってる訳がないのかな。


 ここにいるのは百人のゴロツキ。それから数人の冒険者。

 持ってるはずない……でもこの中にも百人のまとめ役としてのリーダーはいるよな。

 それが誰かは流石に分からないけど、少なくとも冒険者の方のリーダーなら誰か知ってる。


「ドウェインから話が聞けないですか?」


 俺と初めて会った時は海から帰って来たばかりだった。もしかしたら持ってる可能性もあるかもしれない。

 正直俺は嫌われてるから、ちゃんと話してくれるかどうか……俺も隣の部屋に行った方が良いか? でも、質問はしたいな。


「彼か……本当は彼にはもっと後で話を聞こうと思ってたんだけど……いいよ。次は彼を呼ぼうか」


 多分リーダー格は後でにしようと思ってたのか。それとも冒険者を後回しにしてたのか。分からないけど、どうやら今から話を聞けるみたいだ。



 ――――


 刑務官に連れられて尋問室にやって来たドウェインは特に拘束もされてなく、普通にしていた。

 ちょっ!? 危険じゃないの! せめて手錠……はあるかどうか分からないけど、普通は両手が使えないように手と体をロープで縛ったりするでしょ。

 もし暴れたり、刑務官が人質になったりしたらどうするつもりなの?


「シオン君は心配してるようだけど、彼らはもう大丈夫だよ」


 何が大丈夫だというんだ? コイツはさっき俺をぶち殺すって言ってた……奴と同一人物なのか?

 目の前にいるドウェインは憑き物が落ちたような顔をしている。そんなに腕が治ったのが嬉しかったのか?


「さっシオン君。質問しなよ」


「えっはい。え~と……」


「その前に一ついいか?」


 俺が質問をする前にドウェインが問いかける。


「えっと何?」


 なんか大人しいドウェインは調子が狂うな。


「その…………すまなかった」


 そう言って俺に向かって頭を下げる。……あのドウェインが謝ったぁ!?

 俺は思わずホーキングの方を見る。そして声には出さずに、目でどういうこと? って訴えてみる。


「彼はね。シオン君に腕を治してもらって感謝してるんだよ」


 どうやら俺が逃げ出した後、腕が治ったことに驚いてホーキングに問いただしたようだ。

 まぁもちろんホーキングに分かるはずもなく、説明はノーマンがすることになった。

 そのノーマンの説明がドウェインの琴線に触れたらしい。最終的には涙を流して感謝したという。


 その後、ドウェインは同じく捕まった仲間にマフィアと縁を切って俺達に協力するように呼び掛けたという。

 元々マフィアには騙され、犯罪者にされたんだ。未練がある奴なんかいなかった。その上、協力すれば減刑になるんだから全員協力的。縛らなくても暴れないって訳だ。

 ホーキングがドウェインを後回しにしたかったのも、牢の中では一種のカリスマを発揮していたからだという。


 あのドウェインがそんなになるなんて……ノーマンは一体どんな説明をしたんだ? きっとノーマンは一流の詐欺師になれるに違いない。


「俺のような奴の為に、五千万G以上の価値のある貴重な薬を使ってくれて本当に感謝する」


 五千万!? いくらエリクサーといってもボッタクリ過ぎじゃ……。それに貴重って言ってもウチに住んでいる『はぅ娘』は毎日ガブガブ飲んでいる。

 そういえば半分しか飲んでないけど、ちゃんと全快しているみたいだ。調べたことはないけど、エリクサーってどれくらいの量で効果があるんだろう。さっきはポーション瓶の半分だったんだけど、もしかしてもっと少なくても効果があるのかな? 例えばお猪口一杯分でも同じ効果があるなら、今度のホーキングのマフィア掃討戦でかなり助かるんだが……。


 いやいや考えるのは後だ。とにかく今はドウェインに話を聞かないと。しかし協力的なのは本当に助かるな。


 俺はさっきホーキングに聞いたことをドウェインにも聞いてみた。

 答えとしては殆ど変わらなかった。ドウェインも探し物の内容は知らなかった。

 そして、探索用の道具というのは、小瓶に入った特製の液体らしい。やはり毒の線が強いな。


「その液体の効果が発動したことは?」


「あったら既に探し物が手に入っている」


 そりゃあそうだ。


「その探し物なんだけど、一体どうやって知ったの? それからその道具はどうやって手に入れたの?」


「どちらも知らん。俺は上から海に出る前に小瓶を一つ渡されるだけだ」


 ドウェインも知らないか。それに海に行く時だけ一つ支給されるなら今は手元にない……はず?


「もしかして今持ってない?」


 一応聞いてみる。


「……空の小瓶ならあるぞ」


 やっぱり俺と初めて会った時に使用したみたいだな。でも、空瓶でもないよりはあった方が良いよね。


「じゃあ空瓶だけくれるか」


「捕まる前に持ってた持ち物の中に入ってるから勝手に持っていけ」


 あっ、捕まってるんだから今は持ってないよね。後でホーキングに聞いてみよう。

 それにしても、ドウェインは心を入れ替えたみたいだけど、口調はそのままだな。まぁあまり気にしないけどね。


 これ以上は聞くことはないかな?


「ホーキングさん。俺の質問は一旦終わりたいと思うんですけど、お二人はまだ質問されます?」


「そうだね。せっかくだから、マフィアの内情について色々と聞いておきたいね」


 マフィアのことについては別にいいかな。多分知ってた方が良いとは思うけど、それなら後でホーキングから聞けばいいだけだもんね。

 それよりは今の話をもう一度トオルに伝えたいな。あとリンとノーマンとも話がしたい。


「じゃあ俺は外に出ますね。ドウェインもありがとな。もしかしたらまた話を聞くかもしれないけど、その時はよろしく」


「あ、ああ」


 何故かドウェインはえらく驚いてる。俺が礼を言ったのが驚いたのかな? 俺だって相手がちゃんとしてれば礼くらい言うっつーの。

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