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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第195話 トオルから話を聞こう

 ドウェインの腕を治した俺は、大騒ぎになった牢屋から逃げ出した。


《シオンちゃん。これからどうするの?》


 うん。どうしようかねぇ。


 俺は今一人だ。

 ノーマンとリンはホーキングの所に残っている。

 どうやらノーマンは、昨日のうちにラスティンに連絡して、ハンプールはマフィア壊滅に協力をすることに決めたらしい。

 もちろん協力といっても、戦力的意味じゃなく物資支援的意味だが。

 その為、ノーマンはホーキングと共に行動するらしい。ノーマンが残るならと護衛としてリンをつけた。それとオマケのスーラの分身。

 ノーマンは必要ないって断ったんだけど……やっぱりねぇ。


「やっぱり手っ取り早くマフィアを潰しちゃおうかな?」


 それが一番簡単な気がしてきた。


《でも、それじゃあこの町の為にならないって、前に言ってたの》


 そうなんだよな。自分達のことは自分達でやらないと、守られることを覚えてしまうと成長しなくなってしまう。


《シオンちゃん。分からないことがあるの》


「なんだ? 何でこの国の為にならないかか?」


《ううん。それは何となく分かるの。そうじゃなくて、今回は黄の国の時と何が違うの?》


「ん? どういう意味だ?」


《シオンちゃんは内乱の時は先頭にたって戦ってたの。今回が駄目ならあの時も駄目なはずなの》


 なるほど。スーラの言いたいことはよく分かる。

 黄の国の過激派と率先して戦ったのは俺たちだ。今回みたいに町の問題は町の人でってことなら、黄の国ことは黄の国で何とかしないとってことになる。


「うーん。ちょっと難しいな。あの時は成り行きでやっちゃった部分もあるからな。気がついたら手遅れだったような……」


 マチルダを助けたり、王子と王女を匿ったり。

 気がついたらドップリ嵌まってた感じだ。


《それなら今回も既に手遅れなの》


 確かに。すでに手遅れな気もする。でもあの時は俺たちだけが頑張ったわけじゃない。


「スーラ。確かにあの時は俺たちが戦ったけど、それだけじゃない。ラスティンや女王がしっかり作戦を立ててくれた。ミハエルさんがいたから行商ができた。ノーマンがいたから俺たちがよその町でも活動できた。それにリュートだって戦った。今は皆仲間かもしれないけど、あの時は黄の国の住人として頑張ったんだ」


《今回はホーキングちゃんやレムオンちゃんが頑張らなくちゃ駄目なの?》


「そういうこと。今ホーキング達はマフィアを倒そうって頑張ってるだろ。そこに俺だけでマフィアを倒したら、ホーキング達は次に同じことがあったら、また俺を頼ってしまうかもしれない。だから、一緒に頑張るのはいいけど、一人で頑張るのは駄目なんだ」


 そしてその一緒に戦う時間があるかどうかが分からないから困ってる。

 それこそ今すぐホーキング達がマフィアを潰すぞってなったら手伝えるんだけどな。数日後じゃあ俺がここにいるかが分からない。


《ままならないの》


 ……本当そう思うよ。



 ――――


《シオンちゃん。ホリンちゃんに乗ってどこにいくの?》


 俺は現在ホリンに乗って町の上空にいる。


「いや、目的地がある訳じゃないんだ。トオルに連絡しようと思ったんだけど、中々いい場所がなかったから……ここなら誰にも聞かれないじゃん」


 出来れば下に降りてゆっくりと話したいんだけど、あまり町から離れたくはなかったし、誰にも聞かれたくもないからね。

 それにここなら町を見渡せる。何か問題があればすぐに駆けつけることも出来る。


《シオンちゃん。高いところを怖がっていたのが嘘みたいなの》


 実は今でも怖いんだけどね。まぁホリンに乗るのは慣れたし、自分でもスーラを使って飛ぶようになったら大分良くはなった。

 ただ、今でも恐怖を抑える魔法を自動で発動してるけどね。


「ホリン。今からトオルに連絡するから、町の上空を適当に飛んでてくれ。異変があったら通話中でも教えてくれよな」


《畏まりましたマスター》


 ホリンは本当にできた相棒だよな。どこかの告げ口するスライムもどきに比べたら……。


《えいっ!! なの。シオンちゃん。なんか邪なこと考えてたの!》


 スーラが体当たりをかましてくる。本当に勘だけはいいんだから。


「スーラ。そんなに暴れると……落ちても知らないぞ」


《私はシオンちゃんみたいにドジじゃないから落ちないの》


 俺も落ちねーよ! ったくスーラのやつは……まぁいい。

 俺は気を取り直して、トオルのケータイに連絡を入れた。


『シオンくんかい?』


 幸いなことにトオルはすぐに出た。繋がらない可能性が高いと思ってたんだけど……もしかして結構余裕ある?


「ああトオル。今大丈夫か?」


『うん。丁度会議も終わったところだったからタイミングが良かったよ』


「会議ってことは、無事に海魔王に会うことが出来たんだな」


『うん。ゼロくんが亀さんに発信器を付けてくれてたからね。追跡しやすかったよ』


 ゼロのやつ、そんなことしてたのか。


『それでね。やっぱりしばらくは帰れそうにないんだ』


「……大変そうなのか?」


『うん。詳しい説明したいけど、ちょっと時間が掛かっちゃうから、今は簡潔に話すね』


 ちゃんと聞きたいけど……仕方がないか。


『まず昨日の喧嘩だけど、ゼロくんの指摘通り、ティアマトには自我が封じられた一種の狂乱状態だったみたい』


「狂乱状態……理由は?」


『それは後で説明するよ。それでね。今この海では、その狂乱状態の魔物が増えているんだよ』


「えっ!? ティアマトだけじゃないのか?」


『うん。至る所で目撃されてるんだよ』


 それってかなり拙い状態なんじゃ……。


『何でそんなことになっているかと言うと……それをシオンくんに調べて欲しいんだ』


「調べて……どういうことだ?」


 俺に何が出来るって言うんだ?


『実は原因と理由、黒幕全て分かってはいるんだ。まぁ知ってるのは僕だけなんだけど』


「ちょっと待て!! 意味が分からない。全部分かってるなら俺は何を……それにお前だけってゼロは? 海魔王は?」


『僕は元から知ってる事があったから、それを繋ぎ合わせて答えが分かったんだ。で、まだ誰にも言ってないから……』


「いやいや知ってるなら言えよ! 自分だけ知って教えないってのはお前の悪い癖だぞ」


 トオルは秘密主義だ。俺は未だにトオルからプラナ達の秘密を教えてもらっていない。


『まだ仮説の域だからね。その仮説が本当に正しいか判明したら、ゼロくん達にもちゃんと説明するよ。その仮説の裏付けをシオンくんに調べて欲しいんだ』


「……一体何を調べればいいんだ?」


『マフィアだよ』


「はっ?」


 なんでここでマフィアが出てくるんだ?


『昨日の釣りの時に領主さんが話してたよね? 連中が何か探しているって』


「ああ」


『マフィアが何を探していたか。そして探すために何をしていたかを教えて欲しいんだ』


「そういえばトオル達が出て行った後聞いたんだけど……」


 俺はトオルにマフィアたちが何かを探し始めたのは一年前。この町以外でも同様に海で何かを探し始めたゴロツキが増えていることを説明した。


『一年前……うん。時期も一応一致するね』


 どうやら今の情報はトオルの仮説を裏付けるものだったらしい。


「トオル……俺にも教えてくれないのか?」


『さっきも言ったけど、まだ仮説だからあまり話したくはない……んだけど、協力してもらうから、仕方ないね。でも本当に確実じゃないからね』


 おっどうやら話してくれる気になったみたいだ。


『マフィアやゴロツキ達が海で探し物をしているって言ってたけど、その方法が今回の海の魔物の異変の原因だと思っている。恐らく彼らは……海に魔物を洗脳する毒を流してるんだ』


「なっ!?」


 洗脳? 毒だと!?


『そして連中が探している場所が僕が今いるこの場所――竜宮城なんだ』


「りゅ、りゅ、りゅ……竜宮城!?」


 ちょっとトオル。マジでどこにいんの!?


『ゼロくんが助けた亀の案内で来たから、まるでおとぎ話みたいだね』


 はははって笑っているけど、一体どこからツッコめばいいのだろうか。


「えーっと。海の異変はマフィアが毒を流しているのが原因で、マフィアの探し物は竜宮城ってことでいいのか?」


『正確には竜宮城にある玉手箱を探してるんだけど、中身についてはシオンくんがマフィアから話を聞いてから話すね』


 玉手箱だと? 本当に竜宮城なんだ。


『それよりさ。この竜宮城なんだけど、あの浦島太郎も来たことが……』


 急にトオルがテンションを上げて語りだす。いや、その話も興味あるけど、今は絶対に関係ないよね!!


 無駄知識を語りだしたトオルからは、これ以上情報は聞けそうもないのでさっさと通話を切る。


 トオルの言うことが確かならマフィアから話を聞く必要がある。……とりあえず俺はホーキング達の所に戻ってドウェインから話を聞くことにした。

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