表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
268/468

第190話 平穏を終えよう

「協力……ですか。何となく内容は分かりますけど、何でしょう?」


 ホーキングが言った協力とは、まず間違いなくマフィアの件だろう。


「恐らくシオン君もお察しの通り、マフィアに関してなんだ」


 やっぱりそうだよね。排除を手伝って欲しいって感じかな。


「まずはマフィアについて説明しようか。僕も聞いただけなんだけど、マフィアは僕の爺さんの代に設立されてね。最初は数人の漁師が集まっただけの、ただの漁業組合だったんだ」


 あっマフィアってそんなに昔からあったんだ。てっきり最近出来たとばかり思ってたよ。しかし何で漁業組合がマフィアに?


「僕の父の代くらいからかな。組合が縄張りを主張し始めたり、組合に参加しないと市場の使用権を認めなかったりし始めたんだ。流石にこれは拙いとなったらしく、父と商業ギルドが組合を解散させたんだ」


 ああ、その組合が暴走しちゃった感じか。解散はまぁ当然の処置だろうな。寧ろ解散だけで済んでよかったと思うべきなのか?


「そこで解散させられた中の一部がマフィアを作って父と対立。その時にすぐに潰せればよかったんだろうけど、向こうの方が一枚上手でね。水面下で密かに活動してたみたいなんだよ。父が気づいた時には既にかなり大きくなっててね。今に至るってわけさ」


 解散じゃなくて、ちゃんと粛清しないと駄目だったパターンだね。とにかくマフィアの成り立ちは分かった。これからが本題かな。


「当時のマフィアの活動はそこまで大っぴらじゃなかったんだ。向こうもやり過ぎて、また潰されたくはなかったみたい。それは僕の代になっても、そうだったんだ。でも、ここ一年くらいかな。マフィアの動きが活発になったんだ。勢力を拡大しようと町中に絡み始めた」


 ガロンさんの店もその中の一つなんだろうな。


「なんで急に?」


「それは分からないけど、さっき少し話したように、連中は海で何かを探しているみたいなんだ。そのためにこの町を手中に抑えて、全ての船を手に入れようとしているんじゃないかな、と僕は思ってる」


「……海で探し物って何かは分からないの? 一年前から活動でしょ? 例えば一年前に沈没した船とか、お宝が眠っている噂とか……」


「僕も色々と調べたんだけどね。結局何も分からなかったよ」


 ふーん。それさえ分かれば対応も出来そうなんだけど。


「流石にこのままじゃ……と思って、レムオン君に相談したんだ」


 ここでレムオンの登場か。領主のホーキングが相談する相手……。


「あの……そのレムオンさんは何者で?」


「レムオン君とは貴族学校の同期でね。今は王都で役職に就いてるんだ」


 ちょっ!? 思った以上にとんでもない人だった。ってことは俺の存在が青の国の王にバレたも同然ってことだよな? どうしよう……ってか、貴族学校? そんなのがあるのか。


「そうしたらレムオン君がね。他の港町でも同様の事件が起こってるって言うんだよ」


 おっと話はまだ終わってなかった。


「同様の……って、マフィア?」


「そうではない。一部のゴロツキが海に出て何かを探し始めた。最近では探すだけではなく、一般の船も襲い始めた」


「それってもうただの海賊じゃあ……」


「まぁそうだな。とにかく国中のゴロツキが一斉に海で何かを探し始めたのは事実だ」


 その手段として海賊行為やマフィアの勢力拡大か。


「それで俺に何をして欲しいんです?」


「もちろんマフィアの壊滅に力を貸してくれると嬉しいよ」


 やっぱりそうだよな。


「でも、それ以上に力を貸して欲しいのは、その後なんだ」


「その後?」


「うん。マフィアを壊滅するとなるとね、怪我人が出たり、船が壊れたり、他にも色々と支障を来すかもしれない。状況次第では、国に払う税金は少し減額してくれるようレムオン君が交渉してくれるらしいけど、さっきシオン君が言ったように、復興には何かとお金が掛かるんだ。だから復興の援助、物資や技術提供をお願いしたいんだ」


 てっきり戦力だけと思ってたからこの提案には驚いた。

 ……復興の援助事態はバルデス商会を経由すれば問題ないと思う。バルデス商会も商売だから無料とはいかないまでも、格安で商品を提供する形をとればいいだろう。

 ついでに数の子を始め、こちらには浸透していない加工技術。それから海藻の有効活用なども提供すればいい。


「バルデス商会を使えば復興の手伝いは出来ると思います。ですが、黄の国の……他国の商会がこちらで活動しても問題ないのでしょうか? 下手したら侵略とみなされないですか?」


 他国の商会が自国で稼いでいたら面白くは思わないよな。


「それは私から陛下に説明しよう。元々黄の国とは友好的であるから、問題はないと思う。それに黄の国の内乱後の繁栄に、陛下も興味を持っておった。その技術が手に入ると言えば断ることはあるまい」


「あの……出来れば俺達のことは説明をしないでいただけると……」


「当たり前だ! むしろどうやって説明すればいいのか教えてほしいくらいだ」


 ホッ。どうやら王都で俺達のことは話さないでいてくれるようだ。将来的にはバレるだろうけど、それはもう少し落ち着いてからの方がいいもんね。


「そこなんだけどさ。黄の国の中枢はシオン君の正体を知ってるのかい? ノーマン君と行動を共にしているところから、ハンプールのラスティン君は知っているようだけど……」


「えーと。まぁ色々ありまして、女王は俺達のこと知ってます」


 それどころか、しょっちゅう温泉に入りに来たり、ウチの重要人物と息子を結婚させようと企んでたりしている。


「その色々を聞いてみたいものだねぇ」


「それは機会がありましたら」


 内乱の話は今ここで話す話題ではない。


「では、ひとまずは協力してくれると言うことで良いかな?」


「復興の援助はバルデス商会に聞かないと……ですけど、多分大丈夫だと思いますよ。ただ壊滅の協力は考えさせてください」


「……駄目なのかい?」


 復興援助は俺がいなくても、バルデス商会のミサキやレンに頼めばどうとでもなる。が、マフィアを潰すとなると、俺が動くしかない。

 そうなると、事前準備やホーキングやレムオン達と作戦会議や、味方との連携の練習。

 実際作戦完了までを考えると、間違いなく一日や二日で終わることではない。もしその作戦中に、トオル達から応援が来たら……俺は迷わずそっちに行く。

 申し訳ないが、この町よりも仲間の方が優先順位が高い。

 その時に、俺ありきで作戦を組み立てていて、いざって時にトオル達から連絡があったら……そういった状況が考えられるなら、最初から外してもらってた方がいい。


 こんなに面倒なことを考えなくても、俺が今からマフィアのアジトに行って全滅させればすぐに終わる話だろう。

 ホーキング側にも被害はでないし、復興なども必要なくなるはずだ。

 しかし、この町の当事者でない俺が一人でやったらこの町の為にならないと思う。多少犠牲はあるかもしれないが、この町のことはこの町の人間がやることだ。


 結論として、協力はしたいが戦力としては考えてほしくはない。

 その旨を二人に説明したら、一応納得はしてくれた。


「シオン君の言う通り、この町、この国のことはこの国の者が行わないと駄目だね。正直手助けはして欲しいけど、シオン君の方も大変そうだから、無理にはお願い出来ないしね。復興の手伝いをしてくれるだけでもありがたいよ」


「俺も連絡があるまではこの町にいるつもりなので、その間は簡単なお手伝いなら出来ると思いますよ」


「その時はよろしく頼むよ。あと、もしこの町を出て行く時は、黙って出て行かず、一言声をかけてほしいかな」


「そうですね。出て行く時は必ず一報入れることにします」


「それから……お互い無事に問題を解決したら、その時は改めて食事でもしようよ。シオン君には色々と聞きたいこともあるし、これからも良い関係を結びたいからね」


「ええ是非」


 俺は笑顔で答える。こちらとしても海産物を手に入れれる場所として良い関係を結ぶのは歓迎だ。

 こうしてホーキング達との話し合いは終了した。



 ――――


「じゃあ船を片付けるけど、忘れ物はありませんか?」


 話し合いが終わったので、港に入港して下船の準備をする。


「忘れ物と言うか、船の見学がしたかったねぇ」


 俺達が話し合いをしている間に、他の人は船の見学をしていた。


 どうやら水族館やプールなど見応え抜群だった様子。見学者は船の中にある大浴場とサウナを体験したらしく、それが大好評。ガロン夫婦や付き人さんも大満足だったようだ。


 それを聞いて、ホーキングやカタリナ話し合い組も見学したかったと悔しがっていた。正直俺だってまだ見てないから悔しいよ。


 けど、流石にもう遅い時間だからね。見学は諦めてもらうことにした。

 因みにホーキングはちゃっかり売店のお土産は購入している。付き人さんが両手に抱えきれないほどの量を持たされているのは何だか可哀そうになってくる。


「この度はご乗船誠にありがとうゴザイマシタ。またお呼びの際は、一時間前に事前にご連絡くだサイ」


 イチカ達は普段はドノバンのメイドゴーレムだから、急に船を呼び出すと準備が出来ないんだな。

 ……ってことは彼女達がいないとこの船動かないの? そのシステムは改善した方がいいんじゃないかな?


「あと、シオン様はお忘れモノがございマス」


 忘れ物? 特に何も持ってきてないから忘れるものなんてないと思うけど……。


「ひどいっスよシオン様。置いていくなんてあんまりじゃないっスか」

「シオンさん。出掛けるときは必ず声を掛けるようにって言いましたよね? 誰がエキドナ様に怒られると思っているのですか?」

「シオンさん。ウチに黙って旅行なんてズルいやんか。ウチかて美味しい魚が食いたいで」

「はぅぅ……」


 突然背後から四人の女性の声が聞こえた。振り向かなくても、誰がいるのかハッキリと分かる。

 ……どうやら俺の平穏な旅行は終了したようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ