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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第182話 船を呼ぼう

 領主の好奇心により、無事に船に乗ることが出来るようになった。


 ただし領主の船扱いだとしても、港の管理をしている商業ギルドに報告はしないと駄目らしい。というわけで、商業ギルドに戻ってきた。


「この人達から船を買うことにしてね。試運転をしたいから使用許可をくれるかな?」


 たったこれだけなのだが、さっきとは違い無事に許可が下りた。

 ただ仮に船を買わなくて、俺達に使わせなさいなら、問題が発生するらしい。正直何が違うか俺には理解できない。まぁ融通が利かないお役所仕事ってこういうことなんだろうな。


 因みに、さっき俺達の前に立ち塞がったマフィアの連中がまだ何名か残っていたが、特に襲ってくることはなかった。

 恐らく俺がホーキングと一緒にいたからだろう。

 慌てて去っていったから、多分彼らのボスに報告に行ったと思うんだが……。

 しかし、これで俺達は否が応にも領主派ってことで認識されちゃったな。


 うん? もしかして、これがホーキングの狙いだった? ……まさかね。



 ――――


 想像以上にスムーズに許可が下りたので、トオルにメールして港で落ち合うことにした。


 港に着くとそこには既にトオルとゼロ。それにガロン夫妻とカタリナがいた。


 あらかじめ、領主であるホーキングとその友人のレムオン。それに付き人が一緒に来ることを知らせていたので、皆には驚きはなかったようだ。

 まぁガロン夫妻とカタリナはガチガチに緊張していたけどね。それでも来るんだから……食への欲求が高いんだろうな。


「それでシオン君。君達の船はどれなんだい? それらしいのは見当たらないけど……」


 ホーキングが周囲を見ながら言う。まだ出してないから見当たらないのは当然だ。


「じゃあ早速呼び出すから待っててください。あと普通の漁船ですから期待はしないでくださいね」


 俺がガロンに頼んだのは釣りとその場で簡単な料理ができる漁船だ。

 よく考えたら人数も伝えてないので、下手したら定員オーバーじゃないのか? まぁ出してみれば分かるだろう。


「呼び出す?」


 ホーキングは意味が分かってない。まぁ普通はそうだろうな。


「特別な魔道具に収納してるんです。まぁ見ていてください」


 俺はドルクから送られたカードを海に向かって投げる。恐らく二十メートル級の漁船だと思うが、念のため少し遠目に投げた。多少遠くて港から離れても問題はないしね。


 投げたカードが海に落ちると……一瞬にして俺達の周囲が暗くなる。突然現れた障害物のせいで太陽が完全に隠れたせいだ。

 その障害物は……全長百メートルは優に超えているであろう巨大な船。俺の予想していた漁船とはかけ離れていた。


「な、な、な……なんじゃこりゃあ!!」


 ちょっと!! どう見ても漁船じゃないじゃないか!! えーっと、あれだ! 豪華客船ってやつだろこれ!!

 えっ? ドルクはなに考えてるの? 俺ちゃんと漁船って言ったぞ!!


「シオン様。一体なにを考えておられるのですか?」


 ノーマンの声がいつもより低い。これ、かなり怒ってないか?


「いや、違うんだノーマン。俺は普通の漁船を頼んだんだ。本当だって……」


 しかしノーマンの疑いの目は晴れない。くそ……本当にどうしてこんなことに。


 ってか皆は!? ……と思ったけど、ホーキングやレムオン、ガロンさん達まであんぐりと口を開いて驚いている。

 それどころか、俺達のことを遠巻きに見ていた人達も突然現れた巨大な船に騒然としている。


 そりゃあ俺だって驚いてるんだ。他の人間はもっと驚くよな。


「シオンくん。このサイズの船を出すならそう言ってくれないと、危うく大惨事になるところだったよ」


「トオルまで……。だから違うん……って、大惨事?」


 一瞬トオルの言ってる意味が分からなかったが……よく考えたらこんな巨大な船がいきなり出てきたら、反動で一気に波が押し寄せてくるよな。

 どうやら誰にも気がつかれないように、トオルが魔法で防いでくれたようだが……トオルが冷静でいてくれて本当に良かった。


「すまん。本当に助かったよトオル」


 危うく大惨事になる所だっただけに俺は素直に礼を言った。


「シ、シオン君。こ、これは……」


 ようやく我に返ったホーキングが尋ねるが……俺にもさっぱりだから説明のしようがない。


「すいません。なんか手違いで漁船じゃなくて、客船を呼んじゃったみたいで……今、漁船がないか確認するんでもう少し待っ……」


「素晴らしい船じゃないか!! 早速乗ろうよ!」


「えっだから違っ……って、聞いてないですね」


 ホーキングは俺の返事を聞く前にさっさと客船へ近づく。


 しかし……ドルクは一体何を勘違いしてこんな船を造ったんだ? というか俺が頼んだのは昨日の夜だ。確かに材料が必要になるだろうから、出発する前に伝えはしたが……流石にドルクの錬金術でも、一日でこんな船が完成するとは思えない。その時からこの船を準備していた? 使うか分からないのに?


「さっ、シオンくん。領主様も待ってるみたいだし、このままボーッとしていても仕方がないから、早くレスポールに乗ろうよ」


 確かにこのままここにいても仕方がないな。それに犯人は見つかったしな。


「……分かった。入ろう。それからトオル。中に入ったら詳しく説明してもらうからな」


「はははっ一体何のことかなぁ?」


「お前……なんだよレスポールって!! 全く隠す気がないじゃないか!!」


 ったく、全部トオルの仕業かよ!! 滅茶苦茶焦ったっての。


「いやぁ、実はね。シオンくんから旅行の話を聞いてから、出発まで数日時間があったじゃない。だから慌てて準備をしたんだ。ゼロくんやドノバンくんも協力してくれてね。良い感じに完成していると思うよ」

「うむ。結構苦労したんだ。感謝するんだぞ」


 コイツ、偉そうに……確かにゼロのいる夜魔国には、鉱山を始め資源が沢山ある。ゼロが協力したのなら材料の心配はいらないか。そしてあの変態ゴーレム技師もグルなのか。

 あいつもなまじ才能を持っているから困る。トオルとドノバンを組ませたら、本当とんでもないことになるな。


 というか、だからトオルは俺が船を出した時に、あんなに迅速に行動できたんだ。くそっ、感謝して損した!

 まぁ今回はトオル達が一枚上手だったということで、諦めるしかないか。



 ――――


「ようこそ【娯楽の船】レスポールへ。ワタクシは皆様の旅のお世話をさせていただきマス、試作品メイドゴーレム一号、イチカと申しマス」


 船に入ると、あの変態ゴーレム技師が作ったメイドゴーレムに出迎えられた。


「ああイチカくん。お世話になるよ。……他の子は?」


「ニコとミユは只今出航の準備をしておりマス。シホはワタクシ共の代わりにマスターのお世話をしておりマス」


 シホ……確かロリッ子メイドゴーレムを作るって言ってたけど、完成したんだ。ってかイチカも随分と話し方が流暢になってるぞ。まだ語尾や所々怪しい部分があるけど、全部がカタコトだった以前に比べると雲泥の差だ。


「シ、シオン君。か、彼女……今自分のことゴーレムって言わなかった?」


「えっええ。彼女はゴーレムですが……」


 って、しまったなぁ。ゴーレムって言ったら普通は石で出来たゴツくて命令に従うだけの存在だもんな。人型で、ましてや喋るゴーレムなんてシクトリーナにしかいないはずだ。


「これがゴーレム……まるで人間ではないか」


「お客サマ。その言葉はワタクシ共にとっては最高の誉め言葉でございマス」


 そう言ってレムオンに微笑みながらお辞儀をするイチカ。その仕草にさらに驚愕の表情を浮かべるレムオン。

 確かにイチカの仕草はとてもじゃないがゴーレムには見えない。


 正直これ以上驚くようなことはしてほしくないんだけど……って、考えたらこの船、俺達の技術がづんだんに使われている機密情報の塊じゃね?


 さっきまでは魔道具って誤魔化すことが出来たけど、これはもう誤魔化せないよな……はぁ。なんて言い訳しよう。

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