日常編 魔物狩り
「今日はここで狩りをしていただきます」
俺、トオル、姉さんの三人は初めてツヴァイス平原に来ていた。今までは説明だけで足を踏み入れたことはなかった。
どうやら今日の訓練はここで狩りのようだ。獲物を狩るというのは初めての経験だ。
「獲物は魔物のみ。動物は禁止です。獲物に応じてポイントを与えます。魔法は攻撃魔法以外は使用してかまいません。ですが、攻撃は武器か素手で行うようにしてください。また、倒したらすぐに素材と肉に解体をお願いします。特に血抜きはすぐに行わないと、せっかくの肉が美味しくなくなります。素材や食材にならない魔物も魔石は必ず回収してください。なお、食材に使用するため、魔物に毒を感染させないよう十分にお気をつけ下さい」
最後のは俺への忠告だ。ってことは防御にも毒を使えないってことだ。……俺の魔法すべて封じられてないか?
「皆様には一人ずつメイドがついて行きます。仕事としては解体した食材や素材を運ぶ係です。また、解体は初めてでしょうから、解体のみは手伝うように指示しております。ですが、戦闘には参加させません。もし緊急事態になった場合は助けを求めて下さい。ただその場合は失格となり、最下位にさせていただきます」
ルーナの後ろには三人のメイドがいる。おそらく彼女らが付き添いなんだろう。流石に魔物の解体なんて経験がないからちょっと不安だったが、解体を手伝ってくれるなら安心だ。
「時間は夕方十七時まで。それまでに戻ってきてください。遅れたらその分ポイントからマイナスさせていただきます。それから一番獲物が少なかった人が罰として居残り訓練をしてもらいます」
「獲物ってのは大きい方がいいのか? それとも強い方がいいのか?」
肉の量でいえば草食の大型の魔物を倒せばそこまで強くないだろう。
「強さ、大きさ、魔物のランクや狩猟難易度から総合的に判断いたします。また難易度以外にもレア種ならポイントが高いです」
どの魔物がどのランクとか全く知らないから何とも言えないな。まぁ出会った魔物を退治すればいいだけだな。
「はいはーい! 珍しい魔物はテイムしたらポイントになる? 倒すの勿体ない魔物とかは手懐けたいんだけど」
姉さんが元気に手を上げる。姉さんは魔法でテイム出来るからな。
「ではテイムもポイントといたします。ですが、この訓練は実戦経験と生命を絶つ訓練も兼ねておりますのでテイムのみではポイントにしません。必ず狩りも行って下さい」
地球ではやらなかった命を絶つ行為だ。カラーズに来たからには出来るようにならないとダメだろう。
「了解。シオン、トオル、言っとくけど負けるつもりはないからね」
一番やる気があるのは姉さんだ。戦闘訓練自体はついこの間から始めたのに、何故こんなにも自信があるのだろうか?
「では、それぞれ移動を開始してください」
ルーナの一言で俺達は別々の所へ走り出す。
姉さんは森の方へトオルは草原の方へ行くようだ。俺も草原の方へ行くとしよう。
「あ、シオン様」
俺が走り出すと後ろから竜車で追いかけてきたメイドが話しかける。
えーと、確か彼女はアレーナだ。
「どうしたアレーナ?」
「スーラさんをこちらへ。シオン様の修行ですので預からせていただきます」
いつも通り肩に乗っており、一緒にいるのが当然だったから忘れてた。
「そっか、じゃあスーラ。アレーナと一緒に後ろから見ていてくれ」
《分かったの! シオンちゃん、美味しいもの期待してるからね!》
「ああ、任せとけ」
俺はそう言ってスーラをアレーナに渡し、移動を再開する。
とはいったものの、一体どこへ行けばいいのか? 姉さんもトオルも何で初めて来た場所なのに、あんなに自由に動けるんだ?
道に迷うとか考えないのか? そう思うと不思議で仕方ない。が、考えたら俺もスーラのことがなければ当てもなく駆けだしていただろう。
とりあえず辺りを見渡してみる。魔物の姿は見えない。もう少し奥に行かないと出てこないのだろうか? 俺は魔物がいそうな場所を探してを歩き始める。サバンナのライオンは岩の上に寝ているイメージがあるよな? 木や岩がありそうな場所を探すことにした。
――――
しばらく歩いたところで、目の前に何かがいるのが見えた。
「あれは……何だ?」
どうやら集団でこっちに向かってくる。かなり多いな、軽く二桁は超えていそうだ。見た目はダチョウ? だが、かなりでかい。……ってか速い! もの凄いスピードだ。
俺は魔法で剣を召喚する。ルーナが銀のナイフを出した要領で、俺は毒の武器を召喚することが出来るようになっていた。もれなく毒が付与されてしまうが、これは毒でもマヒ毒だ。痺れる以外の効果はない。
「あれはロードランナーですね。集団で行動している魔物です。飛べない鳥ですが、走るスピードが速く、捕まえるのが困難な魔物です。比較的温厚で殺意に敏感な魔物ですが……何か怯えているようですね。追われているのでしょうか?」
ロードランナーか。子供の頃に見たアニメのイメージしかない。確かにいつも素早く走ってた気がする。
「じゃあ追われている方と追っている方、両方まとめて頂いちゃいましょうか!」
俺はロードランナーの方へ向かおうとした。
「ちょっと待ってくださいシオン様。ロードランナーは出来るだけ殺さずに、気絶させてくれませんか?」
「ん? 何でだ?」
「ロードランナーの肉は落ち着いている時の方が美味しいんです。今のように動いている状態で絞めても美味しくありません」
そういえば以前漫画でダチョウはリラックスしている時に絞めないと美味しくないって読んだことがある。ロードランナーもダチョウと似たような姿してるから同じなのかもしれない。
「なら一旦眠らせるか。追ってきているのが何か解らないが、そっちを倒してからゆっくりとロードランナーは捌くとしよう」
俺は【毒の霧】を唱える。この霧は様々な毒を付与させることが出来る霧だ。今回付与した毒は催眠ガス。それをロードランナーの進行方向に発生させる。すると、霧を抜けてきたロードランナーが次々と倒れていく。
どうやら無事に眠ってくれたようだ。多分二時間は寝ているだろう。これで、こっちは後でゆっくり処理すればいい。
問題は今から来る方だ。ロードランナーがあれだけ慌てて逃げる相手だ。強い魔物に違いない。俺はロードランナーが来た方向を確認するが、まだ姿が見えない。スピードの差がありすぎてロードランナーが撒いてしまったのか?
一瞬そう思ったが、どうやら相手はまだ追いかけてたらしい。前方から一体の大型魔物が姿を現した。
何だあれは……遠くても解る。ゆうに七、八メートルはありそうだ。
「あれはアーケテリウム? なんでこんなところに?」
「知ってるのか?」
アーケテリウムなんて魔物は聞いたことがない。
「硬い皮膚を持つ巨大な魔物です。ツヴァイスで見かけたという報告は聞いたことがないのですが……」
どうやらかなりのレア魔物のようだ。これとロードランナーを退治すれば、最下位どころか、寧ろトップかも知れないな。
見た目はサイというかトリケラトプス? 恐竜に近い魔物だ。
しかし、どうやって退治する? 攻撃魔法と毒が駄目なら武器しかないが、今召喚しているマヒ剣ではとてもじゃないが斬れそうにないぞ?
向こうもこちらに気がついたようだ。こちらを見ると「ぼおおおぉぉぉ!」と雄叫びを放つ。
そしてこっちに向かって炎の弾を放ってくる。
「魔法使うのか!?」
俺は慌てて避ける。【絶対防御】を出す余裕はなさそうだ。あんなのに当たったら一発で死んでしまう。
ってロードランナーは? と後ろを見るとどうやら炎は別の場所を通ったようだ。
しかし、いつ今の魔法が来るとも限らない。急いで片をつける必要があるな。
まずは斬れるかどうかだ。どうやらスピードはそんなに速くなさそうなので、大回りでアーケテリウムの後ろへ回り込む。
とりあえず一番柔らかそうな尻尾を斬ってみる。勢いよく剣を振り下ろす。……カキンッと剣がへし折れる。
「いやいや、無理だから。尻尾でこの硬さってあり得ないって」
誰もいないのに思わず声に出してしまう。これ無理ゲーじゃね?
考えている間もアーケテリウムの尻尾がこちらに襲いかかる。俺はバックステップで範囲外へと離脱する。
う~ん、やっぱり魔法を使わないと無理そうだ。武器は剣だとさっきみたいに折れそうだから、もっと威力のありそうな武器、斧とか? 寧ろ斬るんじゃなくて、打撃はどうだろう? モーニングスターのようなトゲトゲボールもありか?
そもそもアイツ硬すぎだろ。どこか柔らかいところはないのか? 腹の部分なら柔らかいか? いやいや、下に潜り込んだら下手したらペシャンコだ。
考えているうちにアーケテリウムはUターンしてこっちに向かってくる。さっきの炎を出されたら面倒だ。俺は照準を合わせないように動き回りながら考える。
くそっ、なんだかイライラしてきた。これも全部アイツが硬すぎるのがいけないんだ。あの硬い皮膚さえなければ……硬いのって皮膚だけかな? 中の肉はどうだろう? おそらく皮膚よりは硬くないだろう。なら皮膚をどうにかすれば斬るのは容易いはず。
俺はさっきと同じように後ろに回り、今度はアーケテリウムの背中に乗る。そこで俺は魔法で何でも溶かす酸を出す。これは攻撃魔法じゃないよね?
すると硬く覆われている皮膚がジュワッと音を立てて溶けていく。よし! これなら上手くいきそうだ。皮膚まで神経が繋がってないのか、アーケテリウムにダメージを受けた様子はない。ただ、背中に乗った俺が鬱陶しいのか、暴れ馬のように振り落としにかかる。
何とか振り落とされないようにしながらも、首の皮膚を溶かしていくと、ようやくピンク色をした部分が現れる。これがアーケテリウムの肉だな。思った通り柔らかそうだ。
ただ、この一部分だと、首を切り落とすことは出来なさそうだ。首全体を溶かすのには時間が掛かり過ぎる。
俺は長い槍を召喚する。これだけの巨体だ。槍を刺した程度じゃ致命傷にはならないだろう。そこでこの槍にはマヒ毒を付与した。これなら体中にマヒの効果が現れるだろう。
早速俺はアーケテリウムに槍を刺す。アーケテリウムは前足を高く上げ、うめき声を出すが、それも一瞬のことだった。おそらく全身が麻痺して声も出せなくなったのだろう。巨体なのでマヒになるのに時間が掛かると思ったが、そう時間が掛からずアーケテリウムは横に崩れ落ちる。
少し様子を見るが、ピクピクと微かな動きを見せるだけで起き上がる気配はない。死ぬ気配もないのでやはり致命傷でもないのだろう。
今のうちにと首回りを溶かしていく。今度は振り落とされる心配もないので、俺は一気に溶かしていった。首回りの皮膚が綺麗になくなるのを確認して、今度は大剣を召喚する。これならいけるだろう。
俺は一気に振り下ろすと、特に抵抗もなくすんなりとアーケテリウムの首を切り落とすことが出来た。
「ふぅ。疲れた」
俺はその場に座り込んだ。そこにアレーナがやってくる。
「お疲れ様でした。まさかお一人でアーケテリウムを倒されるとは思いませんでした」
「何? じゃあアレーナは俺が負けると思ってたわけ?」
「と言いますか、最終的には攻撃魔法で退治すると思っておりました。それよりも早く血抜きをしないと鮮度が落ちるばかりですよ」
「……これを血抜きするの? え? どうやって?」
血を抜こうにも、こう大きくてはぶら下げれることも出来ない。
そう考えてると、スーラが竜車から飛び出してくる。
《仕方ないから、今回はやってあげるの!》
そう言うとスーラはアーケテリウムの断面部分に吸い付き血液だけを吸い取り始める。うん、確かに血抜きだな。
《シオンちゃん、地面に大穴作れる? 出来れば作って欲しいの》
血抜きをしながらスーラが言ってくる。毒魔法に穴を開ける方法はないが、やりようによっては何とかなるか?
俺は地面に手を付き【毒罠】と魔法を唱える。すると目の前に毒の沼地が出来上がる。今度は【毒解除】を唱える。すると毒の沼地だった部分が空になる。およそ深さ一メートル位の穴が出来上がる。
「スーラ、これでいいか?」
《もう少し深くしてほしいの!》
もう少し深くか……俺は同様の操作を三回ほど繰り返した。
作業が終わってスーラを見ると、いつもは手乗りサイズのスーラが俺よりも一回りくらいデカくなっていた。
「ス、スーラさん?」
俺は驚きのあまりに少し後ずさる。スーラは気にせずに穴の方へやってくると、口から血液を吐き出す。全て吐き出すとスーラは元の大きさに戻った。
《血はあんまり美味しくないから捨てちゃうの》
ゴミでも美味しいと言っているスーラにも苦手なものがあるようだ。血は苦手、覚えておこう。ただ、本来なら血を捨てるのはもったいない行為らしい。特にアーケテリウムのようなランクの高い魔物の血は魔道具や薬の素材に使えるらしい。だが、今この城には研究者はいないので使わない。薬だって俺が魔法で出すことが出来る。そもそもこれだけの血を保管するための道具を持って来ていない。
スーラは首の方にも取りかかるとさっきと同様に血液を抜き取り穴へと捨てる。
さて、スーラのおかげで血抜きは完了したが、解体はどうしよう?
「アレーナ、解体は手伝ってくれるんだよな? これどうすればいいと思う? ってか、どうやって持って帰る?」
どうみても竜車には乗せられない。乗せれる分だけ乗せるか? でも残りがもったいない。
「そうですね。流石に私もこれを捌くのには骨が折れそうです。時間もありませんし、今回は応援を呼びましょう」
そう言うとアレーナは狼煙を上げる。
「しばらくすると応援が来ますから,その間にロードランナーの方を処理しましょう」
「そうだな。……でも、ロードランナーどうするよ。ここで絞めてもいいけど、肉が大量すぎて勿体なくないか? 生きたまま捕らえた方が良いんじゃないか?」
流石にアーケテリウムの肉と一緒にロードランナーの肉は多すぎるだろう。姉さんたちも肉を持って帰ってくるだろうし、いくらなんでもこんなに大量の肉は保存が出来ない。
「そこはお任せします。一応テイムも許可されてますので、連れて帰っても問題ございません」
どうやら手伝ってはくれないらしい。まぁ仕方ないか。俺はロードランナー達の所に行く。
ロードランナーはまだ寝ているようだ。でも起きたらきっと逃げてしまうだろう。
もしこれが言葉が通じる相手なら言うことは聞かせられるのだが、そうでない場合はどうすればいいのか。
姉さんならテイムでなんとか出来るのだろうが……俺にテイムは出来ない。いや、テイムでなくてもチャームみたいな幻惑というか精神を操ることは出来ないか?
昔漫画で傀儡にする毒があるのを読んだ気がする。ロードランナーが寝ているうちにやってしまおう。勿論後遺症が残らない程度で。結果発表まで持てば、その後は姉さんか他の人に任せるか、必要ないなら逃がせばいいだろう。逃がしても特に害はなさそうだ。
俺はロードランナーに洗脳の魔法をかけていく。起きたときに俺の命令に従うようなら成功だ。
「ロードランナーは起きたら俺に従うようになっていると思う。このまま連れて帰って、飼うか、殺すか、逃がすかは相談しようと思う」
俺はアレーナの所に戻ってそう報告する。
「そうですか。では、まもなく回収部隊が来るようですので、もう少しお待ち下さい」
どのみちロードランナーが起きるまではここを動くことができない。それに最下位にはならないだろうからこれ以上狩る必要もない。俺はゆっくり待つことにした。
しばらくするとメイドが数人やってきてササッと解体すると何も言わずに去って行った。わずか数分の出来事呆然としてしまう。俺があれだけ苦労した皮膚も簡単に切断していく様には驚いて声も出なかった。
その後はロードランナー達を率いてルーナの所へ戻った。ロードランナー達は起きたら無事洗脳されていた。若干目付きが怪しいのもいたが気にしない。後で魔法を解けば後遺症はないだろう。
因みに帰る際、背中に乗せてもらうと、そのスピードの速いこと速いこと。あやうく振り落とされるところだった。
――――
「では結果発表を致します」
時間になり全員が帰ってきた段階でルーナが発表する。
「まずシオン様、八メートル級のアーケテリウムはA級の魔物です。よく倒せました。それからロードランナーはD級の魔物ですが、その素早さから捕獲難易度はB級、それが二十匹生け捕りです」
うん、まずますの数字じゃね。
「次にトオル様、トオル様はシーサーペントにレモラ、ヴォジャノーイって……一体どこに行ってたのですか?」
はぁ、とルーナは呆れて大きなため息を吐く。
「いや、僕の魔法で海の中に潜れるかな? って思って。自分の周りを空気でコーティングしたら出来たんだよ!」
トオルは興奮したように答える。どうやらトオルは海の中を探検していたようだ。
「それで海の魔物を退治したわけですね。解りましたトオル様は一旦保留にします」
「最後にサクラ様ですが、ハンババにミルメコレオ? ハンババがAでミルメコレオがC級魔物ですが……シオン様のアーケテリウムもそうですが、この二匹もツヴァイスに居た記録なんてありませんよ。それからジャイアントビーをテイム。こちらはB級ですね。その関係でアントビーも一緒にテイムですか」
「ええ、なんか女王蜂だったみたいで、オマケが沢山ついて来ちゃった。ミルメコレオはなんか大きな蟻地獄みたいなところにいたわよ。蟻地獄にライオンが引っかかっていたのかと思って、びっくりしたわ。ハンババは普通にいたわよ。森の主っぽかったけど」
姉さん森の主を倒しちゃったんだ。ミルメコレオは上半身がライオンで下半身が蟻の魔物だ。……蟻地獄に引っかかってたのか?
「まぁツヴァイスは広大な土地ですからわたくし達も詳しくは調べておりません。まだ未知の魔物がたくさんいるかもしれませんね。今後も定期的に行っていきましょう」
どうやら定期的な訓練にツヴァイスの探索が加わりそうだ。
「それでは今回の順位ですが、一位はサクラ様、最下位はトオル様、ルール違反でシオン様。ですのでトオル様とシオン様には別途特別訓練を行っていただきます」
「ちょ、ちょっとなんで俺がルール違反なんだ?」
「まず狩った魔物の難易度の順位はアーケテリウムAの中位、ハンババAの下位、シーサーペントB上位、ジャイアントビーとヴォジャノーイはB中位、ロードランナーがB下位、レモラとミルメコレオがC、アントビーはDです。成績だけ見るとシオン様が一番、サクラ様が二番、トオル様が三番でしょうか。でもトオル様のシーサーペントは十匹でしたからトオル様が二番、サクラ様が三番ですね」
「ならなんで……」
「ですがトオル様は海の中、今回はツヴァイス島での勝負でしたので、海の中は対象外とさせていただきました。ですのでトオル様は点数なしですね。シオン様はアーケテリウムにマヒを使いましたよね? わたくしは最初に申したはずです。食材になるため毒は禁止ですと。マヒになったまま倒しておりますので、あのままあの肉を食べると体が痺れてしまいます。これでは食材になりません。今回はスーラさんが血抜きの際にマヒ毒も抜いてくださいましたので問題ございませんが、今後はご注意下さい」
――――
俺達二人に課せられた特別訓練は魔物に殺さずにこの島を出ること。ただし出口の扉はいつもと違う場所に設置したので探さなくてはならない。
………俺達が島から抜け抱けたのはそれから三日経ってからだった。
ちなみに、ロードランナーは何かに使えるかもと洗脳を解除して姉さんの能力で正式にテイムした。今はツヴァイスでジャイアントビーやアントビーと一緒に放し飼いしている。




