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ロストカラーズ  作者: あすか
幕間
239/468

日常編 エキドナと模擬戦②

 【毒包囲】の中で大爆発が起こった。流石に中にいたエキドナは無傷ってことはないはずだ。


 ただここで油断したら駄目なのは、ルーナとの模擬戦で学習した。やったと思った時が一番危ないんだ。

 地上に降りた俺はすぐに次の魔法を唱える準備をする。


 【毒察知】……見た目はさっきエキドナに張った【毒包囲】と同じような魔法だ。俺の周囲五メートルを球状のバリアで覆う。

 これには防御としての機能はない。単純にこの中で動いている物を察知するだけだ。


 小さな虫、透明物、魔法、この中にあるものなら何でも察知できる。

 探索するのには便利そうだが、その情報量は膨大のため、非常に使いづらい。それからもう一つこの魔法には致命的な弱点がある。

 俺の魔法は毒魔法。今のこの空間は毒に覆われてしまう。

 この魔法で敵を攻撃するわけではないので、毒自体の効果は、無害のものにしてある。


 ただし無害とはいえ毒であることには違いない。

 この魔法の中に入ると、何か魔法が発動していると感づかれてしまう。

 だから今回のように迎え撃つ時には有効だが、潜入捜査などには向かない。まだまだ改良の余地がある魔法だ。 


 今回は入ってくる情報の中から、俺に近づく不審な物だけ注意すればいい。それにこの情報はスーラにも共有できるようにしている。

 その為、怪しいものはスーラも調べてくれるはずだ。


 現状スーラはほぼ五分間飛びっぱなしだったので戦力外。また魔法が使えるようになるまで、しばらくインターバルが必要だ。

 だが察知には俺の魔力しか必要としないので、スーラも確認は出来る。


 その察知に明らかに怪しい動きをする物体が確認された。それは地中からやって来る……。


《シオンちゃん! 下から何か来るのっ!?》


 スーラも気がついたみたいだ。


(ああ分かってる)


 細長いミミズのような生物?

 ……いや、これはエキドナの魔法だ! あの時と……トールの時と同じ植物の蔓に違いない。

 レンから聞いた話じゃ、エキドナは植物と話が出来てお願いを聞いてくれるようになったらしい。


 しかしこんな砂漠に植物なんか……いや、今はそれを考えてる場合じゃないな。この植物に関しては申し訳ないが、帰ってもらおう。


 俺は地中に毒魔法で除草剤を召喚。散布した。

 すると、こちらに近づいて来た植物の蔓と思わしきものが一斉に逃げていく。


 エキドナが召喚した植物だったら無理だったろうが、現存する植物なら自分に被害があってまでエキドナに従うわけがない。


 それにしても……現時点では、まだ【毒爆弾】の爆発による紫の煙で【毒包囲】内は覆われているため、エキドナの様子は分からない。

 しかし、こんなことが出来るなら、エキドナはやはり無事だったようだ。


 引き続き【毒察知】で注意深く周囲を確認しつつ、スーラの回復を待つ。俺もいつでも魔法が唱えられるように魔力を練って待機する。


 バリリィンッッ!!


 すると突然、エキドナを閉じ込めていた【毒包囲】が大きな音を立てて割れる。

 エキドナが中から叩き割ったんだ。……これが出来るなら俺の【絶対防御】も壊せるってことだ。やはり油断はできないな。


 【毒爆弾】に付与された毒は酸。エキドナに毒のダメージは薄いと思ったため、空を飛ぶための翼を狙った。翼が傷つけば空中戦は出来ないだろう。

 実際エキドナは爆発のダメージと煙に込められた酸の効果で、体中が傷だらけ、翼や服も溶かされボロボロになっている。

 ……この場にトオルがいなくて良かった。もしトオルにバレたら殺されそうだ。


 エキドナはゆっくりと地上に降りてくる。落ちてこないってことは、ボロボロになっても飛ぶ機能は失われていないと考えた方がよさそうだ。


「捕まっとるかと思うたのじゃが……どうやらサボテンの根は無事に退けたようじゃな」


「あれ……サボテンの根だったのか」


 確かにこの砂漠……この付近にある植物はサボテンくらいだ。しかしサボテンの根っこは想像できなかったな。


「先程の攻撃も中々じゃった。妾に対する遠慮も甘えもなかった。それに、その後の隙もない。随分と成長したのう」


 ヤバい。ルーナの模擬戦やナーガの時と、指摘や怒られてばっかりだったから、エキドナに誉められるとメチャクチャ嬉しい。


「じゃがこの程度で満足してもらっても困る。というか、少し褒めただけで油断しすぎじゃ!」


 うっいかんいかん。別に油断したつもりはないのだが、緊張感はなくなってしまってた。でもそうか。こういう一瞬でも弛緩したら、それが油断に繋がるか。


 地上に戻ったエキドナは人間形態に戻った。

 全てが入れ換わるため、体だけじゃなく、ボロボロになった服も全てが元通りだ。そういえば槍も消えている。あれも洋服などと同じ本来の姿の装備品だったのか?


 それに殆どなかったかもしれないが、もしかしてケガのダメージもなくなってしまったのか?

 まぁ人間形態になることで、翼は無くなったから飛ぶことはもう出来ないだろう。


「もうあっちは終わりなのか?」


「別にあのままでも良かったのじゃが、地上戦ではこっちの方が戦いやすいからの」


 エキドナは以前、魔法を使う際は本来の姿の方がいいが、肉弾戦の方は二本足の人型の方が動きやすいと言っていた。

 ってことは今からは肉弾戦か。エキドナは姉さんとガチでやり合って勝てるくらい肉弾戦も得意だ。

 一方俺は肉弾戦だけなら姉さんには勝てない。魔法を使わなかったら間違いなく勝てないだろう。


「!? シオン! 時間がない。一気に終わらせるぞ!」


「時間がない?」


 突然慌てたようにエキドナが叫ぶ。なんだ? これも油断させるための作戦か?


「向こうにおったヴィネから念話で連絡があった。……ラミリアに気づかれて、ルーナとこっちに向かっとるらしいのじゃ。まもなく到着するじゃろう」


「何っ!?」


 ヤバい。これは絶対に正座でお説教コースだ。

 逃げる? ……無駄だ。今逃げても怒られるだけ。なら……。


「二人が来るまでがタイムリミットか」


 どうせ怒られるなら、二人が来るまでに決着を付けるしかない。


「そういうことじゃ。妾ももっと楽しみたかったのじゃが、こうなってしまっては一気に終わらせるぞ」


 時間がないならこっちも奥の手を出すしかない。

 奥の手と言っても、ルーナとの模擬戦でも見せたから、エキドナも知っている魔法。自身の全能力を一時的に限界以上に引き上げる【限界突破】。

 かなり強力だが、効果が切れると副作用で、しばらくの間戦闘不能になる諸刃の魔法でもある。


 俺は迷うことなく首筋に手を当て、魔法を投与した。

 普段の戦闘では悪手だろうが、後先考えなくていい今なら使える。

 まぁ本当なら戦闘後のことも考えないと意味はないのだろうが、せっかくのエキドナとのガチバトル。今後あるかどうか分からないのだから、全力を出しきりたい。


「シオン……それは悪手じゃぞ」


「分かってるよ。でも時間がないなら悔いは残したくない」


「まぁ気持ちは分からんではないし、嫌いでもない。よかろう。かかってくるがよい!」


 くそっこの状態でもエキドナに焦りはないか。だが、いつまでその余裕があるかな。

 俺はエキドナに向かって最後の攻撃をしかけた。



 ――――


「あの……ここは暑いでしょう? せめて説教は帰ってからにしませんか?」


 俺は二人にやんわりと進言するが、ルーナとラミリアに睨まれるだけだった。

 砂漠の正座って、砂の熱気で火傷しそうなくらい辛いんだな。知りたくもなかった事実を知りながら、俺とエキドナは砂漠のど真ん中で正座をさせられていた。


「それで……一体どういうことでしょうか?」


「いや俺は悪くないんだ。ちゃんとルーナにも報告しようと思ったんだが、エキドナが誰にも言うなって……」


 とりあえず全責任をエキドナに押し付ける。


「あっこらシオン! お主裏切ったな! お主だって賛成したではないか!」


「どちらが言い始めたなど、どうでもよいのです!」


「「はい、すいません」」


「大体ですね……」


 ああ……ルーナの小言が始まった。いっつも長いんだよなぁ。


(おいエキドナ。お前体大丈夫なのか?)


 俺はルーナに聞こえないように、小声でエキドナに話しかける。


 先程の人間形態での肉弾戦。約十分程度の戦いだったが、結局お互いに決め手にかけ、決着はつかなかった。

 いや、俺の【限界突破】の制限時間は殆ど残っていなかったから、ルーナ達が来るのがもう少し遅ければ、確実に負けてただろう。


 しかしエキドナは本来の姿、人間形態、共に俺の毒をかなり食らっている。俺に殴りかかる際も【自動防御】に拳で直接触ってたのだ。

 それだけで普通の人間なら死んでいるレベルだ。

 それを十分も触り続けて……他にも霧や雨、俺の拳をガードするのにだって全てに毒が付与されている。普通なら無事のはずがないんだが……。


(なに平気じゃ。妾は過去の実験で、毒に対する抗体が出来ておる。第一エリクサーを飲めば、受けた毒も、溶かされた翼も全て元通りじゃ)


(そっか……すまん)


 エキドナにとって辛い過去を思い出させる質問をしてしまったな。


(謝る必要はなかろう。じゃがシオン。お主の毒は素直すぎる)


(毒が……素直? どういう意味だ?)


 毒が素直なんて聞いたことがない。


(よいか。お主の毒は過去に食ろうたことのある毒ばかりじゃ。恐らく蠍やヘビ等を参考にしたのじゃろう?)


(ああ。色々な毒を調べてイメージしたけど)


(じゃから素直なんじゃ。今までは魔力の高さから抵抗出来る者はおらなかったかもしれん。じゃが、今後妾のように魔力も高く、その上抗体を持つ者相手じゃ苦労するぞ。せっかくイメージできるのじゃから、自分だけのオリジナル毒を開発せぬか。それならば妾も抗体を持たず、負けておったやも知れぬ)


 自分だけのオリジナルの毒……考えたこともなかった。


(それよりシオンの方こそ大丈夫なのか? あの魔法は副作用があるんじゃろ?)


(ああ。しばらく魔法は使えないが、体力の方はエリクサーでなんとか出来た)


 前回【限界突破】を使ったときは、エリクサーを飲んでも動くのがしんどかったが、今回はエリクサーを飲んだら動く分には問題なかった。

 前回ほど消費をしなかったのか、それとも慣れなのか……。


「お二人とも聞いておられるのですか!!」


「はいっ!」

「もちろんじゃっ!!」


 ルーナの怒り声に二人で同時に即答する。勿論俺もエキドナも聞いていない。


「ではわたくしが先程まで話したことを仰って下さいまし」


「えっ……まぁ俺が言ってもいいんだけど、今回はエキドナに譲るわ。ほら、ルーナに言ってあげて」

「んなっ!? シ、シオンお主また……」

「ん? 今勿論って言ったよな? ほれほれ? 早く答えてやれよ」

「シオンこそ『はいっ!』と元気よく答えとったではないか! シオンの方こそ答えるべきじゃ!」


「……全くお二人は何故そうなのですか!! いいですか、大体ですね……」


 ……どうやら説教は当分終わりそうになかった。

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