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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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閑話 リュート&アイラ対プラナ&クロム

今回までリュート視点になります

「クロムの相手は僕がする! アイラは隙を見てシオンとサクラさんに今の話を……」


「ふふっ。お二人とも逃がすわけないでしょう」


 いくらプラナでも、自我のないクロムと二人だけでは僕達を抑えられるわけない。


 僕はクロムに向かって駆け出す。クロムは弓使い、近接戦は見たことがない。クロムは自慢の魔弓を持つと弓が剣に変型する。


 えっ!? そんなの見たことない。


「ふふっ。リュートさんは知らないかもしれませんが、クロムさんが持っている武器は魔武器。普段は弓の形をしていますが、剣や槍に変型する武器です。ケインさんがいたからクロムさんは後方にいましたけど、実は近接戦も出来るのですよ」


 僕とクロムが剣を合わせていると、後ろでそんな声が聞こえる。そんなの……パーティーに居たときに聞いたこともなかった。


「……でも、いくらクロムと言えど剣では負けるはずがない!!」


 実際、クロムの剣捌きはどこか頼りない。確かに素人ではないが、それでも達人レベルの弓と比べると見劣りする。


「へぇ。リュートさんも中々やりますね。クロムさん。少し距離を置いて……」

「貴女さっきからうるさい」


 クロムから目を離せないので何があったか分からないけど、多分アイラだ。アイラがプラナに攻撃したんだ。


 クロムは指示されたように距離を取ろうとする。だけど、そんなことさせない! 元々速さだけはケインと互角以上だったんだ。後方にいたクロムに遅れをとるはずがない。


 僕は下がり始めたクロムを一閃。肩からバッサリと斬りつけた。間違いなく致命傷だ!


「やった!」


 そう思ったけど、まだクロムは立っている。普通なら立っていられないはずなのに……あっ! もしかして自我がないから痛覚もないのか?


「あらあらクロムさん。リュートさん相手に怪我なんてして……本当にしょうがないですね」


 プラナはクロムの傷口に手を当てると、その傷口が瞬く間に消え去る。やはり回復はされてしまうか。


 そうだっ! さっきアイラがプラナに攻撃しかけてたけどどうなったんだ? 僕は辺りを……と、僕のすぐ後ろにいた。


「アイラ、さっき何したんだい?」


「あの女に向かって矢を放った。だけど防御魔法に阻まれた。あの防御魔法厄介」


「プラナはパーティーの回復役だった。自身が倒れるわけにはいかないから、防御魔法だけはガチガチに固めてるんだ」


「……そういうことは早く言って欲しい。知ってればもっと威力を出してた」


「ごめんごめん。でも今の見たでしょ。彼女は仲間を一瞬で回復できるんだ。彼女を倒さない限り、クロムは何回も立ち上がってくるかもね」


 痛覚もないってことは一撃で殺さない限り終わらないってことだろう。

 早く終わらせて皆のところに報告に行かないといけないのに……。


『シーーーオーーーンーーー!! トーーーオーーールーーー!!』


 僕が困っていると、外から大きな声が辺り一面響き渡る。えっ? 誰?


「……エキドナ」


「えっ!? それ本当?」


 アイラは僕の問いにコクンと頷く。

 僕もエキドナさんには何度か会って話したこともあるけど、流石に声を聞き取れる程ではない。


 それにしても……シオンはエキドナさんまでは呼んだんだ。英霊ってそれほどの相手なんだ。もしかしてデューテはもう……。


 そして一瞬の輝きの後、さっきまで外で鳴り響いてた雷が全て止んで静寂に包まれた。えっ!? どうなったの?


「そんな!? ……まさか」


 声がした方を振り向くと、プラナが先程までの作り笑顔と違い、驚きの表情を浮かべていた。


「シオンが勝った」


 アイラがそう呟く。


「分かるの?」


「シオンの気配は感じる。それに……あの人の驚き方を見れば想像はつく」


 確かにプラナが取り乱すのはここに来て初めてだ。なら……シオンは英霊に勝ったんだ!


「いくら完全体ではないとはいえ、負けるはずが……」


「どうやらそっちの思惑とは違った結果になったみたいだね」


 僕がそういうと、プラナが見たこともない鋭い目付きでこちらを睨む。

 僕は思わず怯む。こっちが本性かな?


「……どうやら計画は失敗のようです。ですが、最低限もう一つは回収させて頂きます」


 もう一つ……!? ケインっ!!


「クロムさん貴方はここで足止めをお願いします。それから……」


 プラナが魔力を練ると地面に魔方陣が浮き上がる。

 その魔方陣から人のような影が……召喚魔法か? くそっ人を増やして足止めする気だな。


 僕はそれを止めようとプラナの方へと駆け出すが、クロムから弓が飛んできて邪魔をする。


「リューしゃがんで!」


 アイラの言葉に慌てて身を屈める。突如すぐ上をアイラの矢が掠める。

 矢は一直線に魔方陣の敵へと向かっていくが、防御魔法に阻まれる。


「……やっぱり駄目」


 多分さっきより威力を強くしたんだろうけど、それでも駄目だったよう。

 やがて、召喚が終わり現れた人物は……。


「う、嘘でしょっ!?」


 僕は現れた人物を見てこれ以上ないくらい驚いた。何で……何で彼がこんなところに?


「リュートさんは見たことがありますよね? この方はデューテさんの代わりに新しく見つけた器です。すでに英霊が降臨しておりますが、普段は便利ですので、この体で活動していただいております。今では私の眷属として、影となり活躍してくれてるんですよ。では、ディランさん、後はよろしく頼みます」


「畏まりました。プラナ様」


 そう言ってプラナは部屋から出ていく。


「ま、待てっ!!」


 慌てて追いかけようにも目の前にはクロムとディランがそれを阻む。


「リュー。知ってる人?」


「ああ、彼は僕達がSランクになる前からSランクだった冒険者。現SSランクのディランだよ」


 ディランは【時の咆哮】戦でSSランクの称号を受け取った後、行方が分からなくなっていた。

 元々ソロで活動している人で【時の咆哮】戦前も数年間行方知れずだったという話だから、行方が知れなくても気にする人はあまりいなかった。

 それにケインやデューテのように表に出て活躍するSランクがいたため、民衆からの興味は殆どがそっちにいっていたんだ。

 まさかプラナに囚われていたとは……それにプラナの話が事実なら彼はもうディランではなく、英霊だということだ。


 急いでプラナを追いかけて、ケインとサクラさんの所に行きたいのに……。


「リュー。焦るのは分かるけど、今は目の前の敵を倒すことだけ考えて。あと……彼のことを思うなら、止めを指してやるのも大事」


 ……クロムはこのまま生きていてもプラナの操り人形。そんな人生よりいっそのこと殺してあげる方が彼のため。

 アイラはそう言うが……本当に助けることは出来ないの?

 たとえ敵でも……クロムとの良い思い出はなくても、彼らは自分の意思じゃなく、無理矢理戦わせられてる。そんなのあんまりじゃないか!


「……出来ないなら私がやる。リューは後ろで見ていれば良い」


 そう言ってアイラが一歩前に出る。


「いや、僕がやる」


 いくら僕でもそれだけは譲れない。いや、アイラにだけ責任は負わせられない。


「ん」


 アイラが一歩下がる。僕に任せてくれるみたいだ。


「クロム……悪いけど一瞬で終わらせるから」


 僕は魔力を最大限まで練る。そして心の中で祈る。


(お願い! どうか手を貸してくれ)


 それに答えるように体が……力が増した気がした。


「行くよ。【神速剣】」


 練った魔力の殆どをスピードに注ぎ込む。残りはスピードに耐えられるように体と剣の耐久力に使った。


 僕の体はその瞬間だけ、何よりも早く動き……ディランが立ちふさがる前にクロムの首を切り落とした。

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