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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第157話 トールの遺跡を探索しよう

「ここがその【トールの遺跡(ダンジョン)】か。これはもう……遺跡(ダンジョン)っていうよりも城じゃないか」


 てっきり【ジンの遺跡(ダンジョン)】のような洞窟タイプの遺跡(ダンジョン)かと思ったら、夜魔城タイプの城だった。


「ちょっと……この建物って、もしかして【ビルスキルニル】じゃないのかい?」


 トオルはこの建物を見て一人興奮状態だ。


「おい。なんだよそのビルなんとかって」


 俺は流石にトオルと違い、にわかだから本当に有名なのしか知らない。

 トールのことだって北欧神話で出てくる雷の神様でミョルニルって鎚を持っていることくらいだ。それもゲームで知っているからにすぎない。

 あと……父親がオーディンだったっけ? うーん。その辺も曖昧だな。


「【ビルスキルニル】って言うのはね、トールが住んでたとされている宮殿なんだ。一説によると部屋数が五百四十室もあるとか……」


 五百四十!? 俺はあらためて目の前の宮殿を見る。


「……確かに大きな宮殿だけど、そんなに部屋があるようには見えんよなぁ」


 見た目は精々シクトリーナ城と同規模だ。……あっでもシクトリーナは侵入者部屋は四十九部屋が四階。それだけで二百部屋か。五階と居住区エリアも考えると、あながち五百四十部屋も無理ではない……か?

 でも、シクトリーナは一部屋が学校の教室程度の大きさしかない。

 トオルの言うような有名な宮殿がそんな小さな部屋だらけってのは興ざめだぞ。


「うーん。じゃあ違うのかなぁ? ……もしかしたらロストカラーズに【ビルスキルニル】はあったのかもね」


 ああ、そうか。遺跡(ダンジョン)ってことは元はロストカラーズの住人の筈だ。

 ならトオルの言う宮殿はロストカラーズの方に違いない。ここは箱舟でやってきて新しく作った宮殿になるのか。


 まぁここが何であれ【トールの遺跡(ダンジョン)】で、中で敵が待ち構えていることは間違いない。それに最難関の遺跡(ダンジョン)であることも……ん?


「あれっ? なぁリュート。この遺跡(ダンジョン)って最難関で攻略者はいないんだよな?」


「うん確かにそう言われてるね」


「じゃあデューテはどうなんだ? 彼女はこの遺跡(ダンジョン)は苦でもなんでもない。寧ろ強くなるんだろ? 攻略出来るんじゃないのか?」


「うーん、どうだろうね? その辺りは詳しくは聞いてないけど……確かにデューテなら攻略は可能かもね」


 そっかぁ。なら既に攻略済みでミョルニルはないかもな。いや、元から無かった可能性もあるが……でも目ぼしいお宝もないのかな? 少し……いや、かなり残念だ。


「二人とも……気持ちは分からないでも……いや、全く分からないけどさ。本来の目的を忘れてない? 元々探索じゃなくて決戦に来たんだからね?」


 リュートが本当に分かってる? といった感じで聞いてくるが……二人? 気になって横を見ると、トオルも同じようにガッカリしていた。考えることは同じだったか。


「貴方達……本当にいい加減にしなさい。緊張感なさすぎよ。そうやって油断してると、いつぞやの時みたいに足元を掬われかねないわよ」


 リュートだけならともかく、姉さんにまで言われるとは……いや、今日の姉さんは朝はともかく出発してからは真面目だ。それに、確かに油断して一回手痛い目にあってるのも事実だ。よし、真面目に行こう。



 ――――


【トールの遺跡(ダンジョン)】の敷地内に入ると突然体が重くなる。それになんだかピリピリする気がする。


「どうやらこの遺跡(ダンジョン)内には強力な結界が張られてるみたいだね。元からなのか、敵の結界かまでは分からないけどね」


「じゃあこの体が重いのは……」


「この結界のせいだね。恐らくここは今強力な電磁場の影響にあるんだよ。体が重いのは、多分強力な電磁波を体に浴びてるからじゃないかな」


「よく分からんが、ここだけ重力が強い訳じゃ……」


「重力場と電磁場は違うから重力が強くなったわけじゃないよ。うーん。何て言えばいいのかな」


「あっ、面倒くさい説明は別にいい」


 とりあえずここが電磁波の影響を受けていて体が重く感じるってことが分かれば十分だろう。

 トオルも別に説明したい訳でもなさそうだし、俺以外の三人も別に興味はないようだ。


「全員この程度なら動きに問題はないよな?」


 その質問に全員が問題ないと頷く。うん。伊達に思い装備で修行してないな。



 ――――


 宮殿の扉を開けると、目に入ったのはエントランスと正面に見える大きな階段。

 これだけでゲームのラスボスのダンジョンって感じでワクワクする。


「それで姉さん。国璽は何処に置けばいいの?」


「さぁ?」


「さぁって……えっ? 知らないの?」


 ケインから聞いたんじゃなかったのかよ。


「何で私が知ってるのよ。私はただ所定の場所に置いたら決闘開始としか聞いてないわよ」


 いや、そこは聞いてほしかったんだけど。

 ……少なくともこのエントランスにはそれらしき場所は見当たらない。それに、もちろんケイン達もいない。


 ってことは、もしかして場所探しから始めないといけないのか?

 流石に変な場所にはないだろうが……探索は終わった後にゆっくりしたかったなぁ。



 ――――


「……思いの外、早く見つかったな」


 二階に上がってすぐの大広間……玉座の間だ。そこの椅子の部分に国璽を入れてくださいとばかりに箱が置いてある。


「そりゃあ隠す意味がないもの。隠したらいつまで経っても始まらないでしょ」


 確かにそうだけど……探している時に罠を仕掛けたり、攻撃されないと油断したところに不意打ちをしたり、無駄に探索させて疲れさせたりすると思うじゃん。


 俺がそれを姉さんに言うと呆れられた。


「シオン。貴方いつもそんな捻くれた考え方してるの? ケインがそんなことするはずないじゃない」


 姉さんのケインに対する信頼はどこからくるんだろう? 俺も会ったらそう思うのかな?


「じゃあここに国璽を入れればいいんだな?」


 さて、ここは普通に入れていいものか?

 今回の勝者はこれを持って外にいけば勝利だ。俺達が戦っている時に敵の誰かが持ち出さないとも限らない。

 うん。やっぱり持ち逃げされない仕掛けは必要だな。


 俺は仲間にも内緒で罠を仕掛けることにした。

 多分相談すると姉さんが反対しそうだからな。

『そんなことしなくても正々堂々と戦えばいいのよ!』

 なんてことを言いそうだ。


 罠は箱を触ると毒に侵される魔法を仕掛けた。ただ、もし俺が負けて死んだ場合は誰も触れなくなるのは困る。

 その為、ないとは思うが……もし俺が死んだ時は魔法を自動解除されるよう設定。よし、これで大丈夫と。


「じゃあ後はケイン達が来るのを……って、うおおおおい! うっそだろおおお!!」


 俺が振り向いて仲間にそう言おうとしたら……仲間達の後ろ……部屋の中央上空にデューテが浮いていた。

 別に宙づりになっている訳でもない。完全に浮かんでる。

 そして、デューテの周りには大量の電気が……。


「入れたね? ……じゃあ始めるよ! 【雷神の雷】(トールサンダー)」」


 デューテの叫びと同時に、部屋の天井一面が光を帯びだす。そして考える間もなく雨のように雷が降り注ぐ。

 くそっ、俺一人ならともかく、全員を守る防御魔法が間に合わない!? 流石にこれを皆が食らったら全滅するぞ!


 しかし降り注いだ雷は俺達には当たらなかった。


「全く……シオンくんは油断しすぎだよ。こういうのはね、入れた瞬間が一番危ないんだよ。全く……僕が居なかったらどうするつもりだったんだい?」


 どうやらトオルが防御魔法を発動してくれたみたいだ。


「トオル……すまん。本当に助かった」


 接触の衝撃もなかったことから、トオルの防御魔法は恐らく空間を操作して雷を別の場所へ飛ばしたんだろう。

 あの雷……どこか別の場所で落ちたんだよな。トオルは行ったことある場所にしか繋げないから、恐らく俺の知ってる場所の筈……おい、大丈夫か?


「「すごい……」」


 アイラとリュートが同時に感嘆の声を上げる。あの雷が一瞬にして無くなったんだ。驚くのも無理ないか。


「トオル、本当に助かったわ。正直トオルが居なかったらと思うとゾッとするわ」


 落ち着いてあらためて礼を言う。本当に下手してたら全滅してた。決して油断していたつもりはなかったんだが……もっと慎重に行動すべきだったな。


「ちょっとぉ!! どうして今ので無傷なの?? 絶対におかしいじゃないのさ!!」


 デューテの怒りはごもっとも。不意打ち気味に絶対に回避できない魔法を唱えて無傷だ。相手からしたら理不尽だと感じてもおかしくはない。


「……ねぇ。あの子がシオン達の言ってたデューテって子?」


 ……ああそうか、俺とリュート以外デューテを見るのは初めてか。


「ああそうだ。【雷神】デューテ。今の攻撃からも分かるように雷の魔法を使う」


 まぁ俺も実際に魔法を見るのは初めてだが……【雷神】の二つ名から容易に想像がつく。それにしても【雷神】の名は伊達じゃないな。


「シオン……貴方、あんな子供を相手に、大人げない真似をしたの? と言うかお酒なんか飲ませちゃ駄目でしょ!」


 えっ? 何言ってるの? さっき真面目にって言ってた人は何処の誰でしたっけ?


「いや、姉さん……今はそんなこと言ってる場合じゃ……」


「ねぇなにこのオバサン。人のこと子供なんて馬鹿にして!」


 ええっ? デューテもそこツッコむの!? しかも姉さんに向かって禁句を……。


「お、オバサン!? なんてこと言うのこの子は!?」


 案の定、敏感に反応する姉さん。ってかどっちが年上だよって話だ。


「落ち着いて姉さん。彼女……姉さんより年上だから」


「えええっ!? 嘘よね?」


「いや、本当。アラサーらしいよ」


「……嘘でしょ? どう見たって中学生じゃない。……人間?」


 どうやら姉さんも俺と同じように、魔族かなにかだと思ったようだ。


「残念ながら普通の人間みたいなんだ」


「嘘でしょ……」


 もう一度同じ言葉をつぶやく。大分ショックが大きいみたいだ。


「ぷぷぷ。オバサンそんな見た目して僕より若いんだ。随分と老けてるんだね」


 ちょっと!! これ以上姉さんを煽らないで!?


「な、なぁんですってー!! ちょっとそんなところにいないで降りてきなさいよ!! 私が相手になってやるわ!」


 おいおい、姉さんはケインとやるんだろう。


「ふふっ、残念だけどオバサンの相手は僕じゃないんだよ。僕の相手は……君だよシオン。散々バカにしてくれたお礼。たぁっぷりとしてあげるよ」


 どうやらリュートが言ったようにデューテは俺を目の敵にしているようだ。まぁ俺の方もデューテが相手予定だから丁度いいけど。


「そこまでだデューテ。俺は挨拶しか許可してないぞ」


 デューテが早速攻撃を……という所で声が掛かる。


 声がした方を向くと……入口には三人の冒険者が立っていた。

 その中で声を発したのは、一人だけ異様な雰囲気を身に纏った黒髪の男性。……奴がケインか。

 確かに日本人だと言われれば、どことなく面影を感じる。


 それにしても挨拶ってのはさっきの雷の事か? 些か過激すぎやしないか?


「ご、ごめんよケイン。でもあのオバサンが……」


 デューテは三人の方へ近付きながら謝る。あのデューテが素直に謝るとは……。


「言い訳はいい。それよりもだ……」


 ケインは俺達の方を見てこう言い放った。


「よく来たな。さぁ殺し合いを始めよう」

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