表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
205/468

閑話 サクラの侍女生活②

今回はサクラ視点の話です。前回の閑話の続きになります。

 私がここに来て随分経ったわ。

 最初は新鮮な気持ちで働いていたけど、最近は……ちょっと疲れちゃったわね。


 女王は相変わらず優しいし、仕事自体は大変じゃないけど、やっぱりこの間の訓練場の件が悪い方へ伝わっちゃって、周りの目がさらにキツくなったのが地味に堪えるわ。


 中でも城の侍女長がね……名前は知らないから、心の中では勝手にお局って呼んでるけど、彼女から来るプレッシャーが半端ないのよね。

 サクヤから聞いたんだけど、その侍女長はマチルダがいなくなった後、サクヤが来るまでの短期間だけだけど女王の側仕えになったらしいわ。

 だけど、すぐにサクヤにその地位をとられ、今また私にまで……そりゃあ悔しいでしょうけど、それで当たられる私も困るわよ。



 ――――


「女王陛下っ! 失礼ながら申し上げますと、この者は陛下の側仕えとして相応しくないと存じます」


 ある日ついにお局さんが女王に直訴した。


「あら? サクラさんはよくやってくれてると思いますよ」


「いいえ。ずっと見ていましたが、この者の働いている姿勢は侍女としてあるまじき態度だと言わざるを得ません」


 失礼ね! ちゃんとルーナからの教えは守ってるわよ。まぁ即席で練習しただけだから及第点だったし、たまに気が抜けてるときもあるけど。


「まぁサクラさんは侍女になったばかりだから多少はね」


「でしたら、慣れるまでは下で働かせればよいのです。何故いきなり陛下の側付きに……しかもこの者はあろうことか、陛下に城の案内までさせたという話ではないですか!」


 あぅ。やっぱりその話になっちゃうわよね。


「あら、あれは私から散歩に行きましょうと提案したのですよ」


「それでもっ! 場所を決めたのはこの者だったという話ではないですか! しかも英雄をみたいと我が儘を申して、陛下をあのような汚ならしい場所へ……」


 今まで笑顔だった女王がお局さんのピクっと反応する。


「汚ならしい? 何を言っておるのですか。あの人達はこの城を……この国を守るために毎日、汗を流しながら必死に頑張っているのですよ。私は彼らを尊敬こそすれ、汚ならしいと思ったことなどありません」


 いやいや。そうは言っても、やっぱり汗と男の臭いが酷い場所だったわよ。用事がなければ行きたくはない場所だったわ。


「っ!? しかし……」


「第一、城の清掃は貴女方侍女の仕事ではありませんか? あそこを汚ならしいと言うのなら、それは貴女の仕事がなされてない証拠では?」


 あっ、あの訓練場の掃除は侍女がやるんだ。

 もし私なら……ミサキの魔法を借りるしかないと思うわ。あの魔法、地味に便利よね。自分は勿論、回りもキレイにすることが出来るし、臭いもちゃんと消臭できるもの。一度知ったら手放せなくなっちゃったわ。私もあんな魔法を覚えてみたいものね。


「あ、あそこは私の管轄では……」


「確か貴女は侍女長でしたよね? 本来、他の侍女をまとめる立場にある筈です。掃除がなされてない場所があれば、それは貴女の監督不行き届きではないのですか?」


「えっ、そ、そんな……」


「それに、貴女は先程サクラさんの態度を指摘しましたが、侍女の先輩としてアドバイスはしたのですか? そもそも貴女、これまで一回もサクラさんの名前すら呼んでいないのはどういうことでしょう」


 確かにこの者とかそういった表現しかされてない気がするわ。


「全く……上に立つものが下に教えず、粗ばかり探しているとは……。これは貴女の進退を考えなくてはならないようですね」


「っ!? し、仕事が残っていたのを思い出したので、これにて失礼します!」


 あらあら女王に言いくるめられて逃げ帰っちゃった。

 女王は私と目を合わせるとパチッとウインクをする。……私よりも年上のくせに一々可愛いわね。


 それにしても……お局さんには悪いけど、正直ちょっとスカッとしたわね。でも、これのせいで今度は女王の評判が落ちちゃったらどうしよう。……私も少し気合いを入れ直して頑張らなくっちゃ!



 ――――


「ふぅ。本当にサクラさんが入れてくれるお茶は美味しいですね」


「この茶葉はシクトリナーナから取り寄せたからですよ」


 私は謙遜してはいるが、実は温度や蒸らす時間など多少は考えて入れている。うん。お茶くみなら誰にも負けない自信はあるわ。


 最近はこの時間になると女王とティータイムに入る。女王が私の入れたお茶を飲むのが最近の楽しみみたい。

 紅茶の日もあれば、コーヒーの日もあるけど、今日は日本茶。緑茶とお団子を用意したわ。女王は紅茶とクッキーの組み合わせがお気に入りみたいだけど、和菓子も嫌いじゃないみたいだわ。


 コンコン。


 私達が二人でお茶していると珍しく執務室をノックが聞こえる。


 普段は女王の執務の邪魔をしないためか、周りが敵しかいないからか訪れる人は殆どいないけど……何か急用かしら?


 私は休憩から侍女モードへと素早く切り替えて執務室の扉を開く。


「えっ……」


 私はそこに立っていた人物を見て驚いた。


「ケイン……様?」


 思わず呼び捨てにしそうになったのを慌てて修正する。えっ? 何でこんなところにいるの? ……あっ、もしかして襲撃かしら!?


「……敵と見るなりすぐに警戒する。やはりただ者ではなかったか」


 あちゃー。もしかして試されちゃったのかしら? これはマズったかもしれないわね。


「な、何のことでしょう? 私はただ、英雄ケイン様が目の前にいらして驚いていただけですわよ。ホホホ」


 ……我ながら苦しい言い訳ね。


「下手な芝居はよせ。あの時は半信半疑だったが、こうして目の前で対峙すれば分かる。上手く隠しているようだがそれでもお前から感じるプレッシャーは強い」


 やっぱり上手く隠していても達人クラスになれば、相手の隠している能力くらいは分かるわよね。これじゃあ流石に誤魔化しは効かないわね。


「サクラさん。せっかくですので中へ入っていただきましょう」


「えっでも……」


 流石に危険すぎやしない?


「ケイン様もここで暴れるような真似はしないでしょうし……何かあったらサクラさんが守ってくださいますよね?」


 んもう。そう言われたら断れないじゃない。仕方ないわね……まぁケインがここに来た理由も気になるし別に構わないわよね?


「…………どうぞ」


 そう言って私はケインを部屋へ招く。

 テーブルの上にはさっきまで私と女王がお茶してた残骸が残ってるわ。

 ケインはそれをジッと見ている……どうしよう? お茶を入れた方がいいかしら? でも流石に今私がここを離れるわけにはいかないわよね。


 それ以前に敵に茶なんて出す必要ないわよね。もし、仮に必要だとしたら何処かで隠れて見ているシグレがフォローしてくれるでしょう。



 ――――


「それで、ここに来た本当の目的は何? まさか私の存在を確認をしたかっただけとか言わないわよね?」


 私は女王の隣、ケインは正面の椅子に座らせたわ。


「……その通りだ。あの時お前から感じたプレッシャーは今まで感じたことがない程強かった。それが勘違いかどうかを確かめたかった。それと、あの時俺に何をしたか問いただしたかった」


 私としてはプレッシャーなんて放ったつもりはなかったけど、初めて見たケインに無意識の内に何かを発していたのかもしれないわ。それにキューブで調べたことも気が付いていたみたいだし……流石に何をされたかは分かってないみたいだけど。


「別に貴方に何か影響のあることはしてないわ。ただ、貴方が本当に強いのか確認しようとしただけよ」


「……そういうことにしておこう。どうやら影響のないのだけは事実のようだからな」


 流石に素直に信じてはくれないか。でも貴方の属性や魔力量を調べましたとは言えないものね。


「では次の質問だ。お前は……魔族か?」


「違うわよ!! どこからどう見ても人間でしょうが!!」


 この人はいきなり何言ってるの? 一体私のどこに魔族の要素があるのよ。


「お前のような覇気のある女は見たことない。人間の姿になれる魔族もいるからてっきり魔王かと思ったのだが……違うのか?」


 確かにエキドナやラミリアのように普通にしていると人間にしか見えない魔族もいるし、シルキーなんて肌の色が少し白いくらいでそれ以外は人間と全く変わらない魔族もいるから言わんとしたいこと分かるけど……。


「違うわよ。私が魔王なんて……言っておきますけど、私は過去に魔王と戦ったことがあるけど、私じゃ手も足も出なかったわ」


 あの時はガチじゃなくて模擬戦だったけど。確かエキドナと模擬戦したのって二年位前になるのかしら?

 あの時は魔法を使わない条件でも敵わなかったわ。今はどうかしら? ……恐らくまだ魔法があっても無くても敵わないわね。


「お前でも手も足も出ないのか……魔王というのはどれだけ強いんだ」


 ケインも驚いてるわ。


「さぁね。でも現存している魔王は、人が勝てる強さじゃないわよ」


 私はエキドナとルーナとカミラしか知らないけど、本当規格外だわ。

 多分頑張ったらカミラなら倒せるかもしれないけど……彼女もゼロに鍛えられてるみたいだし、きっとどんどん強くなるわよ。

 まぁ元々人間とは生きている時間が違うから仕方ない部分もあるかもね。


「では……」


「ちょっと待ってよ。さっきからそっちばっかり質問してるじゃない。次は私の番よ」


「……何だ? 言ってみろ」


 えっ? そんな簡単に質問に答えてくれるの? ヤバっ何も考えてなかったからそう素直に言われる困るんだけど……あっそうだ。


「貴方は何で過激派に与しているの?」


「俺はただ戦いたいだけだ。あいつ等は、俺にその戦いの場所を提供してくれる。ただそれだけの関係だ」


「じゃあ私達が貴方の希望を叶えると言ったらこっちに付くの?」


「それはない」


「何故?」


「俺が今一番戦ってみたいと思っているのがお前。それと魔王だからだ」


 あー。私達の味方になったら戦えないってことかしら。多分この人は模擬戦みたいなのじゃなくて、本当の戦いがしたいんだわ。


「じゃあさ。もう面倒だから過激派とか抜きにして戦いましょ。で、負けたらお互いさっぱり手を引くってことでどう?」


「どういうことだ?」


「だから、貴方は戦いたいだけなんでしょ? じゃあその場所を用意して。そしたら戦ってあげるわよ。その代わり負けたら過激派から手を引いてもらうけどね。こっちが負けたら、貴方には魔王と戦う場所を提供してあげるわよ」


「……悪くはないな」


「でしょでしょ。詳しい方法や日程なんかはそっちが決めていいからさ。それに貴方もお仲間さんがいるんでしょ? 話し合って決めていいわよ。その代わり、その戦いが始まるまで過激派の行動は控えること。いいわね」


 ケインは納得したのか、席を立とうとする。


「……ねぇ貴方はさっき戦いたいだけと言ってたけど、それってこの国を混乱に巻き込んでまでやりたいことなの?」


「俺はこの国が……いや、この世界が嫌いだ。だからこの国がどうなろうと知ったことではない。寧ろこの手で滅ぼしてやりたいとすら思っている」


 ケインはそれだけ言うと今度こそ本当に出て行った。

 初めて見た時から何となく感じていたけど、やっぱりケインは……。


 数日後、シオンから果たし状を受け取ったと連絡があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ