第153話 ウェイバリーへ向かおう
「ではこれからウェイバリーに向かうのか?」
「ああ、近日中には出発する。一応期日は一ヶ月後なんだけど、色々とやりたいことがあるからな」
俺はデューテが帰った後、すぐに領主の館へ行き、今回の顛末について説明した。
デューテから聞いた果たし状の期日は一ヶ月後。
正確には来月の一日。それを過ぎると女王が魔族と結託した裏切り者として国民に向けて宣戦布告する。
俺達は車があるから十分間に合う期間だが、馬車での移動を考えたらギリギリだと思う。だから寧ろデューテ自身が間に合うのか? と心配になる。
まぁ、俺達が修行中に城にいるケインに会って戻ってこれるのだ。
転移ではないだろうが、彼女は彼女で馬車よりも早い移動方法は確実に持っているのだろう。
「それで、その決戦に挑むのは本当に貴方達だけで宜しいのか?」
「ああ。向こうはケイン達しかいないみたいだから、大人数で行く必要はない」
ケインが必ず連れて来いと言ったのは俺と姉さんとリュートの三人。その三人は強制参加でそれ以外は自由にしていいと言われた。
領主は自分の私兵を出すつもりだったようだが、恐らく足手まといにしかならない。
「一応、ウェイバリーに俺達を呼んで、その間に攻めいる可能性がない訳ではないから、一応戦力は残しておいた方がいいと思うぞ」
俺達や姉さんをウェイバリーにおびき寄せて、その間に攻める罠かもしれない。まぁ万が一にもないとは思うが……でもケインの思惑ではなく過激派側ならあり得る話だ。
特に姉さんが女王の護衛から外れることを狙っている可能性は高いのかもしれない。姉さんの代わりを用意したほうがいいかもしれないな。
よし、ハンプールにセラ達、姉さんの代わりにリンを待機させよう。
過激派の集団なら今のセラ達でも問題ないだろうし、女王の方もレベルアップしたリンなら守りきれるだろう。
「それで、お願いがあるんだが、しばらくの間ノーマンを貸してほしい。もちろん決戦前には帰すから」
「ノーマンを? どうしてだ」
「色々とやりたいことがあるって言っただろう。期限までの間に、まだ行ってない穏健派の町を回ろうと思ってな」
現在ハンプール以外に俺達が訪れた穏健派の町は俺達がまだ修行中だったためヴォイス達が待機している。彼らには申し訳ないがもう少し待機してもらって何かあった時の対処に回ってもらう。
ただ、俺達が回ったことがない穏健派の町に関しては何の対処もしていない。
もし敵が本当に反乱を起こした場合、出来るだけ対処できるように転移の登録だけはしておきたい。
その為には町の交渉役としてノーマンが居てくれると助かるのだが……。
「こちらとしては構わんが、貴重な時間をそんなことに使っていいのか?」
「もう修行は粗方終わってるから。後は自分達で頑張ってもらえばいい。だからもうやることは特に残ってないんだ。本当なら今日にでもウェイバリーに行ってさっさと全てを終わらせたいと思うくらいだ」
「そういうことならこちらからお願いしたいくらいだ。ついでに商品も広めてくるといい。先日の委託販売も中々好評だったみたいじゃないか」
前回の盗賊を引き取ってもらった町で行った商業ギルドでの委託販売。
仲介料がある分、若干割高だったが、特にトラブルもなく、卸した分は数日で完売したとのこと。
確かに今回も時間がないが、この方法なら色々な町で商品を広めることが出来るか。
「そうだな。じゃあ、可能な限りバルデス商会を宣伝しながらウェイバリーへ向かうことにするわ」
――――
「なんて言うか……いつも通りだね」
若干呆れたようなリュートの呟き。
現在移動中のワンボックスに乗っているのは俺とノーマン、リュートの三人。もう一台のキャンピングカーには【月虹戦舞】の三人とミサキとレンという女性陣。結局いつものメンバーだ。
「まぁ、ウェイバリーに着くまでは今までと何も変わらんからな」
正直ミサキとレンは来る必要はなかったのだが、『町で委託販売をするんやったらウチらがおらんとどうするんや』とミサキが煩かったので仕方なく連れてきた。二人もノーマン同様ウェイバリー前でお別れだ。
まぁそれまではのんびり皆で楽しく旅をすればいい。
と、思っていたのだが……。
「どうして盗賊だけは一向に減ってないんだよ!!」
相変わらず車を走らせてると次々と盗賊が現れる。
「どうやらデューテが僕達に賞金をかけたみたいだね」
盗賊を捕まえて取り調べをしたところ、どうやら王子達の懸賞金は取り外され、新たに鉄の車と中にいる人物に莫大な懸賞金がかかっていた。
もしかして、シクトリーナのことがバラされた!? と少し慌てたが、シクトリーナはおろか、【月虹戦舞】やリュートなど、車の中の人……俺達の詳しい詳細は何故か明かされて居なかった。
「僕達の詳細な情報が明らかにされてると、逆に盗賊達は仕掛けてこないよ」
なるほど、確かにリュートの言う通りだ。いくら懸賞金高かろうとも、誰が好き好んで魔族やSランク冒険者に喧嘩を売るかってことだ。流石の盗賊も金よりも自分の命の方が惜しかろうて。
かといって、明かされてなくても少し調べたら車がバルデス商会の所有物でリュートと【月虹戦舞】が護衛をしていることは分かる筈。
要はそれすら調べない馬鹿な盗賊がこいつらってことだ。
きっと賢い盗賊や慎重な盗賊は潜んでいて襲ってこない。もしくは罠など搦手を使ってくるはずだ。
そう考えるとハンプールの町やバルデス商会の方は少し不安だな。後でセラ達に警備を強化するように言っておこう。
「くそっ、あのお子ちゃまめ。今度会ったら覚えてろよ」
全くデューテのタチの悪さと言ったら……今度は目の前でビールを飲むだけじゃ済まないからな。
「シオンが大人げない真似をするから反撃を食らったんだよ」
「いや、ビールの仕返しにしては対応が早すぎる。これはハンプールに来る前にやってたはずだ」
まだあれから数日しか経ってない。だからケインから話を聞いた後に懸賞をかけたと考えるのが自然だ。
「まぁ盗賊は少なくなるのは良いことだし、地道にウェイバリーまで行けばいいか」
「でも、あんまり盗賊を狩ってると本当に盗賊狩りの二つ名になるかもね」
……それは本当に勘弁してほしいな。




