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ロストカラーズ  作者: あすか
第一章 魔王城散策
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第19話 新しいメイドさんと話をしよう

「あのールーナさま? どこですかー?」


 俺達がしばらくの間、話し込んでいたら外から女性の声が聞こえてきた。


「ようやく来たみたいです。申し訳ございませんが、呼んでくるので少し失礼します」


 ルーナは立ち上がってキャンピングカーを出ていった。


「あっルーナさま! って、なんですかこれ! 建物なんですか? すごい!」


 外を覗くと、十代後半くらいの、小柄でショートカットの女の子がいた。


 服装はルーナと同じ白のメイド服。肌の色も白く精気のない肌、やはりこれが、シルキーの特徴なのだろう。

 しかし髪の色はルーナと違い、銀髪ではなく薄い青髪だった。どうやら髪の色はシルキーとは関係ないようだ。


「シャルティエ、少し落ち着きなさい。はしたないですよ!」


「あ、すいませんルーナ様。でもいきなりこんなもの見せられたら、誰だって驚きますよ」


「まったく、あなたときたら……まぁいいです。お二人にあなたを紹介しますから付いてきなさい」


 ルーナさん、怒っているけど、あなたも昨日は似たようにはしゃいでましたよ?


「はーい」


 シャルティエと呼ばれた少女は元気に返事する。


「返事は伸ばさない」


「ごめんなさい。ルーナさま」


「ごめんなさいでもありません。そこは失礼致しました、もしくは申し訳がございません、と言うようにしなさい」


「はぃ……」


 連続で怒られてシャルティエはしょんぼりしている。


 ルーナは、やれやれと首を振るが、特にシャルティエには何も言わず、キャンピングカーに戻ってくる。


「お待たせしました。さ、シャルティエご挨拶を」


「シオン様とトオル様のお世話をさせて頂きます、シャルティエと申します。ルーナ様の補佐と言う立場では御座いますが、何卒よろしくお願い致します」


 そう言ってシャルティエは丁寧にお辞儀をする。


「僕がトオルだよ。よろしくねシャルティエくん」


 次にトオルが挨拶をする。


「トオル様、よろしくお願い致します。って、あれっ? ルーナ様のお話では、こっちの声は分かるけど会話は出来ないって?」


 シャルティエはあれっ? と首をかしげる。そして話が違いますよ? って顔でルーナの方を見る。ルーナも驚いているようだ。


 ってか、忘れてたけど、俺達本当なら会話出来ないんじゃないか!? えっ何? トオルの声が理解できてるの!?


「あっ、ちゃんと聞こえてるみたいだね。いきなりの本番だったからちょっと不安だったよ」


 どうやらトオルは自力で話せるようになったようだ。マジで!? 俺には出来ないのに。……俺にも出来るかな? 魔力を会話が出来るようにイメージしてみればいいのか? それとも会話だから口から魔力を出すイメージか? うん、分からん。


「シオンくん、何か変なこと考えてない? そうだね、まずは舐めた飴をイメージして、その飴、まぁ消化しているだろうけど、その飴がまだ体内に残ってるのをイメージして、後は結晶と同じ感覚で会話しろって念じればいいよ。魔力は僕はマッチ棒の炎程度で良かったよ。もっと少なくても良いくらいさ」


 俺の様子を怪しんだトオルが説明してくれる。どうやら口から魔力を出すのは違うらしい。

 俺はトオルの説明通りやってみた。え~と、飴があるのをイメージして……会話が出来ると念じる。


「あ、あー、大丈夫か? ちゃんと聞こえてるかな?」


 とりあえず声を発してみた。


「はい、聞こえています。シオン様ですね。よろしくお願い致します」


 どうやらちゃんとシャルティエに聞こえたようだ。


「ああ、シオンです。シャルティエさん、よろしく」


「どうかシャルティエと呼び捨てになさってください」


「そうかい、分かったよシャルティエ、これでいいかい?」


「なっ!?」


 今の声はルーナだ。物凄く驚いている。

 ルーナと違ってシャルティエは年下っぽい外見だから特に違和感もなく呼び捨てにできる。


「はい、シオン様これからよろしくお願い致します」


 そんな俺達のやり取りを見ていたルーナが、恨みがましい目で俺を見ている。おそらくシャルティエは呼び捨てにして何故わたくしのことは……などと考えているのだろう。俺は気にしないことにした。


「それで、挨拶は済んだけど、これからどうするんだ?」


 その言葉にルーナがハッと我を取り戻す。


「え、えーとそうですね。シャルティエには、わたくしがここを不在にするときに代わりにいていただきます。主に夕食後から就寝までと、午前中でしょうか。何か不都合なことがあれば何でも申し付け下さい」


 そう言われたけど特にないよな? 食事も片付けも問題ない。まぁ話し相手になってもらおう。


「それから今後の予定ですが……そうですね、お二人がもう話せるようになったのでしたら、よろしければ明日にでも村へ行かれませんか? ついでにこの城の見学でもされませんか? ご案内致します」


 城の見学はしたいなぁ。地球の家の造りとは全く違うだろう。


「そうだな、じゃあ明日は魔王城の案内をお願いするよ。ついでに村に行って挨拶でもしようか」


「かしこまりました。ではシャルティエ、今日は挨拶だけでしたので、もう戻って結構です」


「えええー! 戻るんですか? 見た感じルーナ様達お茶してましたよね? きっと昨日みたいに美味しいんですよね。ズルいです! 私も……」


 帰れと言われたシャルティエは不服そうだ。テーブルを見て羨ましそうな顔をしている。


「ちょっと、こらシャルティエ!? ああ、申し付けありませんシオン様」


 ちゃんと言い聞かせますので……とルーナは言うが、忙しくないなら一緒にいても全く問題ない。


「いいんじゃない? シャルティエも一緒で。今日は羊羮って食べ物を用意してるんでシャルティエも食べていいよ」


「いいんですか!? わーい!」と大はしゃぎのシャルティエ、それを見て大人しくしなさいと注意するルーナ。きっといつもこんな感じなんだろう。



 ――――


 四人で再開したお茶会は、シャルティエが終始会話を提供する。


 その会話中に教えてもらったのはシャルティエの属性は青属性ということだった。ルーナは銀髪で銀属性、シャルティエは薄い青髪で青属性。髪の色が何か関係があるのかな?


 しかし髪の色となると俺やトオルは黒になるよな?


「属性はその者の魂の色と言われています、髪の色や肌の色、生まれの土地などが関係していることが多いです」


 ルーナがそう教えてくれた。えっ? じゃあ俺の魂、紫色なの? それはなんかヤだな……。


「僕やシオンくんはきっと名前のせいだね」


 トオルの言葉に自分の名前を頭の中に書く。


「紫遠……まさか名前に紫の漢字が入っているからか? えっ? それだけなのか?」


「名は体を表すって言うじゃないか。僕だって多分透明なのは透の漢字のせいじゃないかな? って思ったもん。まぁ真実は分からないけどね」


「そうですね。名前と言うものは魂に刻まれるますので、可能性は高いと思います」


 ルーナも賛同する。


「じゃあ親は子供にレアな色の属性にすれば……」


 そうすればもっと色んな色が生まれそうだが?


「先ほども申し上げましたとおり、環境などの関与していますので、絶対にそうとは言い切れません。ですが、人間の王族は代々その色にちなんだ名前を継承していくそうですよ」


 今の王の名前は青の国の王がシアン、赤の国の王がカーディナル、黄色の国の女王がシトロンと言うらしい。白は聖教会と言う宗教団体で国ではないらしい。


 ソータ達の話から、赤の国は最悪の印象なのだが、他の国はどうなんだろう? 気になったが。どうやらルーナ達も隣の国である赤の国は知っているそうだが、他の国はよく知らないらしい。人間の国には興味もないようだ。


「そういえば魔法の修行ってこれからはどうなるんだ? ルーナさんが続けて教えてくれるんですか?」


「そうです。と言いたいところですが、基本はほとんど教えてしまいました。会話まで出来るようになったので、あとは魔力の量やコントロールを上げるために、ひたすら反復です」


「属性魔法については?」


「ええ、始めに簡単に出力の方法を教えますが、基本属性は人それぞれですから教えることはありません。ちょうどいいのでシャルティエがやってみなさい」


「はい、ルーナ様」


 シャルティエは元気よく返事する。


 そういうわけで俺達はお茶会を終了し魔法の練習を再開することにした。



 ――――


「では属性に関してですが、お二人とも属性のイメージは大丈夫ですか?」


「僕は大丈夫だよ」


「俺も一応イメージはありますが、毒なので…危なくないですか?」


 練習でいきなり毒ガスが発生したら困る。


「そうですね……シャルティエ、ちょっとスーラさんを連れてきてくれませんか?」


「はーい! わっかりましたー!」


 元気よく頷いてシャルティエは走って出て行った。

 ルーナはそんなシャルティエを見て、また返事を延ばして……や、あれほど走ってはいけないと言ったのに……と呆れた様子だ。


「元気な子ですね」


「ええ、元気なのはいいんですけど、メイドとしてのマナーが……いつも言ってはいるのですが」


「まだ、若いんだし、これからじゃありませんか?」


 俺より若そうなのに、しっかり働いているので、それだけでも大したものだと思う。


「若いと言っても、彼女は生まれて百年近いです、メイド歴だけは中堅くらいの経験はあります」


 まさかの年上!? しかもかなり年上だった。


「マジか……あの見た目はてっきり十六、七位かと……」


「魔族も種族によっては違いますが、人族より寿命が長い種族が多いですね、その分成長がゆっくりなのですよ。シルキーの寿命は平均で五百年くらいでしょうか」


 エルフの寿命もそれくらいと聞いた。どうやら人間だけ特に寿命が短いようだ。


 ということはやっぱりルーナも……と考えたところで悪寒が。危ない危ない、あやうく禁忌に触れるところだった。



 ――――


「おっまたせしました-! スーラさん連れてきましたよ-!」


 しばらくするとシャルティエが戻った。

 でもどう見てもシャルティエだけなんだが?


「ご苦労様です。ですがシャルティエ、いつも言ってますが、もう少しお淑やかにしなさいと……」


「まぁまぁ、それでそのスーラさんって人は?」


 また長くなりそうだったので、俺は強引に話を打ち切った。


「そうですね。シャルティエは後でお話があります。それでスーラさん、こちらに来てください」


 ルーナがそう言うと、シャルティエのエプロンドレスの胸の部分がもぞもぞと盛り上がる。中から丸いプヨプヨした物体が……うん、どうみてもスライムだ。


 そのスライムは形丸いお椀型で、特に頭に突起物などない。色はほんのり緑の透明色で、中に赤い球体がある。きっとあれがコアなんだろう。

 そのスライム、スーラさんはシャルティエからルーナの手のひらにぽんっと飛び乗り、体をプルプルさせている。うん、かわいい。


「シオン様、トオル様、ご紹介します。こちらスライムのスーラさんです」


 ルーナの紹介でスーラは体をこっちに向け……たのか? 顔がないので、どちらが前か分からないが、方向転換をして俺の手のひらにジャンプしてくる。


《こんにちは!私、スーラだよ!よろしく》


 何だと! こいつ……直接脳内に……。


「やはりシオン様にもスーラさんの声が聞こえるのですね。実はわたくしも昨日から聞こえておりまして、驚いているのです」


 普段は聞こえてないようだ。ルーナも戸惑っている。


「えっ? スーラさんしゃべれるの!?」


 シャルティエが驚いている。彼女には聞こえていないようだ。


「やはりシャルティエには聞こえないのですね。つまりスーラさんがいきなり念話が出来るようになったわけではないようです。するとやはり…」


 間違いなく飴のせいだろうな。まさか声を発しなくても会話できるとは……。


「確か飴の効果は動物以外の言葉が解るようになる……だったか?でもまさか言葉を発しなくてもいいとは思わなかった」


 俺は手のひらにいるスーラに話しかけてみる。


「こんにちはスーラさん。俺たちの声は理解できますか?」


《うん分かるよ! あのねっ! 村の皆の声は聞こえるの。でもねでもね、私……声出せないから、私の声は皆に届かないの。だから今声が届いてるの、すっごく嬉しいの!》


 スーラは体をプルプルと震わせながら嬉しそうに答えてくれる。どうやらこっちのは普通に話せばいいようだ。それと、どうやらスーラの念話は直接触れていないと聞こえないようだ。トオルとルーナには今の会話は聞こえてないようだ。


「シオンくん、僕にも挨拶させてくれよ」


「スーラさん、あいつがトオルだ。挨拶してあげてくれない?」


《いいよ!》


 そう言って、俺の手からトオルの手へジャンプする。


 トオルは念話が送られてきたんだろう、少し驚いて、「よろしくね!スーラくん」って会話をしている。でも端から見たらスライムに独り言を呟いている可哀想な人に見えるなこれ。


「えー! 何でなの!? 何で三人ともスーラさんとお話しできるの-!」


 一人スーラの声が届かないシャルティエがズルい! と喚いている。


「シャルティエ落ち着きなさい。わたくし達はある魔道具で意思疎通が出来るようになったのです」


 ルーナが飴を舐めたことは教えられてなかったらしい。俺達のことをどうやって説明したか気になったが、どうやら他の人達には俺達の言葉は、人間の特殊な言語で共通語は練習中って伝えたようだ。そのためルーナが通訳すると伝えていたようだ。


 だからシャルティエは俺達と会話出来たのは一生懸命練習して会話出来るようになったと思ったらしい。


 なぜルーナがそんな説明したのかというと、飴の存在を表に出したくなかったからだそうだ。やはりあの飴はかなり貴重な品のようだ。


 シャルティエはルーナから改めて説明を聞いた。俺達の持っている飴を物欲しそうにしていたが、さすがにそんな貴重な物が簡単に貰えるとは思っていないようで俺達に直接頂戴とは言えないようだ。


 こっちとしても、今後どれだけ必要になるか分からないから簡単には渡せない。

 まぁ今後ここで暮らすようになって、このまま俺達の専属になるようならその時は渡してもいいかもな。


「まぁまぁ。スーラさんの言葉なら俺でよかったらいつでも通訳するから言ってくれ」


《そうだよー!これからはいつでもお話できるようになるからね-!》


 トオルの所から戻って来たスーラがプルプルしながら答える。


「じゃあ、一つだけ。スーラさんは私のことどう思ってるの?」


 シャルティエがそうスーラに問いかけてくる。


「シャルティエちゃんもルーナちゃんも大好きだよ! ルーナちゃんはいつもお仕事で大変そうだけど、スーラ達のこといつも見守っててくれるし、シャルティエちゃんはいつもお仕事サボって私たちと遊んでくれるし!」


 俺はスーラさんの喋り方そのままで通訳する。


「シオン様の口からルーナちゃんと言われると何というかその、気恥ずかしいものがありますね。わたくし照れてしまいます。いえ、スーラさんの言葉だとは分かってるんですよ? ですがやはり……それと、シャルティエは後でサボりに関してお話があります」


 ルーナは恥ずかしがるが、シャルティエへの追求は忘れない。シャルティエは大好きと言われて「やったー!」嬉しがったが、いきなりの暴露で大慌てだ。


「ルーナ様、落ち着いて、違うんです、サボりじゃないんです。その……ゴミ捨てのついでにちょっと休憩というか……コミュニケーションというか……」


「それで、俺の魔法の訓練でなんでスーラさんが必要なんだ?」


 多分このままだとまた説教タイムに入りそうだったので、俺は本題に戻した。


「シオン様が毒魔法を放つと、被害が出る恐れがございます。仮に被害が出ない場合でも、その魔法が毒なのか確かめる必要がございます、そのためスーラさんを呼びしました。スライム族は基本的に何でも消化してしまいます。もちろん毒も安全に消化してしまうようです」


《スゴいでしょ!》


 スーラが自慢げに言うので、俺は偉いぞ.とスーラの頭を撫でる。


「つまり、俺が魔法で出した毒を食べてもらうと?」


 その答えにルーナが頷く。


「その通りです。まさか出した毒をご自身で試すわけにもいかないでしょう? それに液体ならともかく気体で毒が発生したら、それだけでここにいる四人は全滅してしまいます。スーラさんなら被害が及ぶ前に処理してくれます」


「スーラさん、俺達は今魔法の練習してるんだけど、俺の魔法って毒魔法なんだ。だからスーラさん、協力してくれる?」


《任せてよ! 私、毒でも何でも食べれるよ!》


「ありがとうスーラさん。ああ、スーラさんはなんて可愛いんだ」


 俺はスーラさんを撫で回す。


《くすぐったいの。でも気持ちいいから止めなくていいよ!》


 うう、本当にかわいいやつめ。


「ああ、わたくしも撫でられたい……」

「うう、やっぱり私のスーラさんとしゃべりたいよー撫でたいよー」


 ルーナとシャルティエの羨ましい呟きが聞こえてきた。……シャルティエはともかく、ルーナの方は全力で聞こえなかった振りをした。


「それじゃあ気を取り直して練習しようか」


 両手は開けておきたいので、俺はスーラさんが落ちないように、そっと手から肩へと移動させた。

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