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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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閑話 サクラの侍女生活

今回は閑話。

サクラ視点での話になります。

「サクラ様っ! 何度申し上げれば分かるのですか。背筋は伸ばして……手は常にお腹の下辺りで利き手を隠すのです」


「分かってるわよっ! こうでしょ?」


 もう。ルーナってば、細かい所まで本当にしつこいんだから。

 どうせ、そんな所なんか誰も見ないから少しくらい適当でもいいでしょうに。


 私はシオンとルーナに言われて、希の国の女王様を護衛しに行くことになった。

 何でも物凄く強い人が敵にいるみたい。ルーナ以外のメイドが敵わないってなら相当強いのは確か。

 だから今回は私が行くことになった。本当はいつもシオンばかり旅に出たり、強い人を相手にしてたから少し羨ましかったのよね。

 だから今回はついに私の出番と思って張り切っていたんだけど……行く前にもう心が折れそう。


 私は早く敵と戦いたいだけなのに、やれ言葉遣いが駄目、やれ姿勢が悪い、立ち振舞いが駄目。

 正直もういい加減うんざりだわ。


「ねぇ。私にはルーナみたいになれないからやっぱり辞め……」

「サクラ様が行かないと女王様が死んでしまわれるかもしれませんね。そうなるとシオン様の計画は台無し。サクラ様の株も大暴落かもしれませんね」


 本当にルーナはズルいと思う。そんなこと言われたら断れないじゃない。

 女王には城に来たときに会ったけど、優しそうな人だった。私が行かない所為で死んでしまったら目覚めが悪いわよね。


「分かったわよ! ちゃんとするから!」


「それでこそサクラ様です。では次は……」


 うう、これも皆のため。頑張らなくっちゃ。



 ――――


「それではサクラ様。行ってらっしゃいませ」


 十日間の血の滲むような努力の末、私はようやくルーナから及第点を貰った。

 そして今私はルーナに見送られて、シクトリーナから黄の国の王都へと旅立っていった。まぁ旅って言っても転移でひとっ飛びなんだけどね。


 確か城にはサクヤとシグレがいるのよね。サクヤが女王の専属でシグレは隠れて活動しているらしいわ。

 今回私はサクヤの部下的ポジションらしいから、サクヤって呼び捨てにしちゃ駄目なのよね。思わず呼んでしまわないように気を付けないと。


「サクラ様お待ちしておりました。今回はわたくしが不甲斐ないばかりに迷惑をお掛けして申し訳ございません」


 到着早々にサクヤに謝られた。別に迷惑だと思ってないから謝る必要はないんだけど。

 それよりもサクヤは私に頭を下げたきり上げようとしない。それどころかこのまま土下座にまで突入しそうな雰囲気だ。


「ちょっと止めてよ。別に気にしてないから早く顔を上げてよ……ね?」


 幸いここには私とサクヤしかいないからいいけど、ここにいる間はサクヤが私の上司になるんだから、こんな頭を下げているところを見られたら拙いのよ。


「寛大なお言葉感謝いたします。それで、サクラ様。大変恐縮ではございますが、ここにいる間はサクラと呼び捨てにさせていただくことをお許しいただければと存じます」


「えっ、ええ。もちろんいいわよ」


 元々そのつもりだし。というか会った瞬間からそのつもりだったのに、いきなり謝罪なんだもん。ビックリしちゃったわよ。

 それにしても……サクヤはルーナの直弟子らしいけど、同じ直弟子のシャルティエと違って、物凄く堅いわね。まるで出会った時のルーナのよう。

 こっちに来て初めの一ヶ月くらいはルーナもこんな風に丁寧だったわ。いや、丁寧なのは今も変わらないのだけど、どこか角が取れたというか丸くなった印象はあるのよね。……やっぱりシオンのお陰なのかしら。


「それで? 私はサクヤのことどう呼べばいいの? サクヤ様?」


「そんなっ!? とんでもないです。本来でありますと、呼び捨てと申し上げたいところではございますが、そうもいきませんので、申し訳ございませんが『さん』付けでお願い致します」


 本当にお堅い人ね。これでちゃんと出来るのかしら?


「では、これから女王の元へ参ります。あ、女王のことはシトロン様とお呼びください」


 あっ、女王様じゃなくて名前呼びなのね。まぁ女王様ってちょっと呼びにくいし丁度いいわ。



 ――――


「まぁ! サクラさん。よくいらして下さいました。そのお姿もよく似合っておいでです。あっ、侍女姿が似合ってると言われても嬉しくないですよね」


 女王の待つ部屋に行くと女王は笑顔で迎えてくれた。一回しか会ってないのに私のことはちゃんと覚えていてくれてたみたい。


「いえ、どんな姿であれ褒められて悪い気はしません」


 もし今着ているのがフリフリのメイド服なら少し複雑だったかもしれない。けど、私が今着ているのはメイド服ではあってもルーナと似たような清楚な召し使い系の服だ。

 似合ってるってことなら周りから見たら私もルーナみたいに出来る女に見えるのかしら?


「シオン様の姉上にこのようなことをしていただくことは大変恐縮ではありますが、しばらくの間よろしくお願いします」


 そういって女王は頭を下げる。もう! サクヤといい、女王といい何ですぐに頭を下げるのよ!


「頭を上げてください。別に私もシオンも別に偉い人じゃないですから。それにせっかく仲良くなったのですから、こういう時こそ助け合いませんとね」


 でも、こんな風に申し訳なさそうに頭を下げてくれる人が悪い女王な訳がない。なんとしても守らなくちゃね!


 あらためて挨拶も終わったことだし、私達は打ち合わせを始めた。


「サクラさんにはサクヤさんの補佐という立場になります。その為、不審がられない程度にはお仕事もしていただきます」


 もちろんそれは知ってるけど、私に出来るかな?

 そういえばルーナはメイドとしての心構えや態度に関して教えてくれたけど、実際の仕事については教わってないわ。ルーナも意外と抜けてるわね。


「仕事と申しましても、サクラ様には女王の基本的にお側に付いていただき、身の回りのお世話をしていただくだけです。数日間はわたくしが行いますので、研修として後ろで見ていていただけますか」


 サクヤが詳しい内容を教えてくれたけど、どうやらいきなり働けって訳じゃなくちゃんと研修があるのね。だからルーナは教えてくれなかったのかな? でもそれなら多分大丈夫だわ。


「分かったわ。で、研修が終わったらサクヤはどうするの?」


「もちろんサクラ様と一緒に側付きの仕事も行います。それと同時に空いた時間で情報収集や城の見回り強化を行います」


 それって休み暇はあるのかな? このサクヤは働き者ね。本当にルーナそっくりだわ。


「それでは女王……いえ、シトロン様。これからしばらくの間、お世話をさせていただきますので、よろしくお願い致します」


「ふふっ、分かりました。よろしくお願いしますねサクラさん」


 こうして私の侍女生活が始まった。



 ――――


 侍女生活が始まって数日。私の主な仕事はお茶くみと着付けの手伝いくらい。

 ……シオン。OLの仕事が何の役に立つのかなんて言ってたけど、お茶くみの経験が今の所一番役に立ってるわよ。OL経験も捨てたもんじゃないわね。


 着付けの手伝いは……女王が毎日着ているドレスって大変なのね。

 あれは手伝ってもらわないと一人では着れないわ。よくあんな服で平気に過ごせるわね。感心しちゃった。


 そんなわけで、仕事自体は苦ではなかった。

 でも……女王が移動する度に付き従う訳だけど……周りの視線、主に同じ侍女達のがキツいわ。

 そりゃあどこの誰かも分からない人がいきなりやって来て女王の側仕えをやってるのだもの。下積みからちゃんと働いてる人にとっては面白くはないわよね。


 幸いなことに彼女達と一緒に働くことはないから良かったけど、会社なら陰険なイジメにあって辞めちゃう所だったわ。

 サクヤも同じ感じだったのかな? ……いえ、あの子は優秀だからむしろ仕事を完璧にこなし相手を黙らせるタイプね。


 それにしても、ここに住み始めて数日。まだ例のケインって人は見てないわ。本当にいるのかしら?



 ――――


「ケインですか? 彼は一応名目上は城の兵の顧問という立場になってます。普段は兵士宿舎や訓練場にいると思いますよ」


 女王は私の疑問に書類を読む手を止める。お仕事の邪魔しちゃったかな。


「えっ、じゃあ城の中にはいないの?」


 今は二人きりなのでしゃべり方も元に戻している。


「数日毎に報告に訪れることと、アルヴィスに呼ばれて訪れることはありますね」


 アルヴィスってこの国の宰相で黒幕よね。毎朝女王との謁見で話してるのを見てるわ。正直、敵だと知ってないと騙されそうな雰囲気はしていたわ。

 しかし……女王もアルヴィスもお互いが敵だと分かってるのに毎日よく普通にお仕事出来るわね。


「その……同じ過激派だから会うのは当然かもしれないけど、宰相と冒険者がそんな気軽に会っていいものなの?」


 いくらこの国の英雄でSランクと言っても立場が違いすぎる。それなのに堂々と会うなんて……怪しまれないのかな?


「その理由としては、アルヴィスはケインを自分の専属護衛にしたいから口説き落としている。と言ってますね」


「……それって最初から専属護衛としていれば、そもそも自由に城に出入りできたんじゃないの?」


 それこそ今の私みたいに。何でそんな面倒なことやってるんだろ?


「憶測でしかありませんが、元々はそのつもりだったのでしょう。ですが、専属護衛になることをケインが断った……と思われます。恐らく英雄としての立場や、今回の件が片付いた後のことを考えると、専属護衛の立場は足枷になる可能性があります」


 確かに先のことまで考えるとそうなのかなあ? よく分かんないや。


「ケインのことが気になるなら会ってみますか?」


「えっ会えるの?」


「私はこの国の女王ですよ。私の国の兵の様子を見学するのに駄目な理由はありません。視察も大事な仕事です」


 なら少し見てみたい気もする。敵がどれくらい強いか確認するのは大事だもんね。でも……こちらから出向いても大丈夫なのかな?


「……じゃあお願いしようかな」


 悩んだけど、誘惑には勝てなかったわ。私ってば意志が弱いのかしら?



 ――――


「えっ陛下!? このような場所においでになるとは……一体どうされたのですか!?」


 兵の訓練場へ行くと入口にいた兵に物凄く驚かれた。

 そりゃあいきなりアポなしで女王が来たら驚くわよね。

 兵士は慌てて敬礼をしようとして女王に止められる。


「ああ、いいのよ。今は休憩がてら新しく入った惻仕えに城の案内をしてるところなのよ」


「はぁ? 惻仕えの案内を陛下自ら案内……ですか?」


 そうよね。考えたら女王自らが案内とかおかしいにも程があるわ。


「ええ、私も少し体を動かさないと……また倒れたら大事でしょう?」


 少し前に女王がシクトリーナに遊びに来た時の不在は、二人の子が行方不明になった心労から女王が倒れたことになっていた。少しいなくなるだけで大事になるんだもの女王は大変よね。


「確かにそれはそうですが……」


 兵士はギロりと私を睨む。なんかメチャクチャ怒ってそう。

 やっぱり側仕えごときが女王を煩わせるなってことかな?

 女王に道案内させた侍女として後で噂になりそう。そしてまた侍女達に睨まれるんだわ。うぅ、胃が痛くなりそうだわ。


「しかしそれならそれで、こんな空気の悪いところではなく、もっとお体に触らない場所の方がよろしいのではありませんか?」


 ……この兵士、女王の体に気を使ってるような言動だけど、心の中では面倒なことになったとか思っていそうね。考えたら突然アポなしで支店に社長がやって来るようなものだもんね。そりゃあ面倒だわ。


 でも、この兵士の言うことも尤もかも。ここは兵士の訓練場だけあって、汗臭い……というか、男臭いわ。消臭剤とかないのかしら?

 正直不快だから用事がないと立ち入りたくない場所ね。


「いえね、今この城に英雄ケインがいると話したら、この子が是非とも拝見したいと言い出してね」


 ちょっと女王!? そんな言い方したら……ほら、兵士の私を見る目がさらにキツくなった。貴様のせいで……ってところかしら。


「確かに彼は今この訓練場におりますが、今はその……訓練中でして」


 この兵士。何とか追い出そうと必死だわ。


「ああ、別に会って話す必要はないわ。むしろ、訓練の邪魔をしないように遠くから見せてもらうだけでいいの」


 遠くでも相手の実力くらいは測れるから問題ないわ。


「左様ですか。では一応案内付けますので少々お待ちください」


 兵士も諦めたのか中に入る許可をくれる。でも案内なんか要らないんだけど……多分これ案内というより見張りよね。

 女王も断る気配はないし、そこは仕方ないよね。



 ――――


 案内されてやって来たのは訓練場の隅っこ。うん、確かにここなら訓練の邪魔にはならないし、訓練場全体を見渡せる。


「ほらサクラさん。あれがケインですよ」


 女王が指さして教えてくれるが、女王が教えてくれなくても私は既に気が付いている。

 あの人一人だけ纏っている空気が違う。遠くから見ても実力者だというのがハッキリと分かる。

 うん……確かにあれはメイドよりも強いわ。

 調べなくても分かる。プレッシャーというか、ここからでも分かるくらい感じる魔力量が異常だわ。

 もちろん私やシオンよりは少ないとは思うけど……きちんと調べたいわね。


 私は案内兵にバレないようにキューブを取り出す。このキューブにはツヴァイスにいるグリンの魔法結晶が入っている。

 グリンの魔法は相手の現在魔力と属性を知ることが出来るわ。

 これでケインの魔力量を……私が調べるためにケインの方を向くと彼が私の方を見ていた。しかも凄く真剣な表情をしている。

 もしかして私が調べようとしたのがバレた!?

 グリンの魔法は相手には認識出来ないはず。実際エキドナですら気が付かなかったのに……。


「あっケイン様が女王を見ておられますよ」


 案内人にはケインが私の隣にいる女王の方を見ていると勘違いしている。そりゃあ侍女の方を見てるとは思わないわよね。でもあれは確実に私を見ているわね。

 うーん。このまま調べてもいいのかな? まぁもう見つかっちゃったから、調べないより調べた方がいいわよね。

 私は気にせずにケインの魔力を調べることにした。そしてそれは私にさらなる衝撃を与えることになった。

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