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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第145話 会議をしよう

 冒険者ギルドから戻ってくると、すでにノーマンが本店に来ていた。


「お帰りなさいませ。無事にランクアップ……その顔はされてないようですね」


 どうやら顔に出ていたようだ。


「でも試験を受ければ問題ないだろうって。会議の日以外を試験日に空けてくれるように調整もしてくれるみたい」


「そうですか。そういえばリュート様のお姿が見えませんが」


「ああ、置いてきた。俺がクリスを独り占めして全く話せなかったんだ。で、ようやくクリスが出てきたから早速話し掛けてた。リュートに関しては会議の日時はいつでもいいらしい」


 まぁ今は俺たちと行動してるからリュートも予定はないだろう。


「そうですか。こちらもいつでもいいそうです」


「いつでもいいって……領主の仕事は?」


 領主が日頃どんな仕事をしているかは知らないが、暇なわけはないだろう。


「ラスティン様からは、今回の件以上に優先度が高い仕事はないからキャンセルしてでも駆けつけるそうです」


 そう話すノーマンは珍しく少しだけ憂鬱そうだ。キャンセルや後処理をするのがきっと彼なんだろう。


「じゃあ最優先は女王の来れそうなスケジュールで調整をして、女王が大丈夫そうなら領主の比較的大丈夫そうな日に決めよう」


 流石に一番の優先は女王だからな。


「じゃあ一旦俺は城に戻るけど……ノーマンはどうする?」


「私は帰ります。今のうちに出来る限りの仕事はしておきたいですから」


 うーん。ノーマンは本当に優秀な執事なんだろうな。俺もメイドだけじゃなく、優秀な執事が欲しいかも。



 ――――


「お帰りなさいませシオン様。早速ではございますが重要な話がございます」


 事前に帰ると連絡しておいたので、ルーナが出迎えてくれた。

 だが、そのルーナはいつもの笑顔がなく、神妙な顔をしていた。一体どうしたんだ?


 俺はまだ今回の件については詳しく話していない。

 帰ってきてから話そうと思っていたんだが……もしかしてそれどころじゃない?


「今すぐに聞いた方が良さそうだな。すぐに会議室に行こう」


 俺はそのまま会議室に向かうことにした。



 ――――


「それで一体何があった?」


「サクヤからの応援要請です」


「応援!? もしかしてピンチなのか!」


 サクヤは黄の国王都で女王の付き人として護衛をしている。そのサクヤが応援要請ってことは、女王に何かあったってことなのか?


「いえ。早急に危ないということはなさそうですが、どうやら敵側にサクヤ達よりも強い者が現れたようでして……敵も今すぐに行動を起こす真似はしないようですが、万一に備えて人数が欲しいそうです」


「ちょっと待て。サクヤって遊撃隊所属だから城から離れてもそう能力は下がらないよな?」


「ええ。少なくとも戦闘力で言えばリンよりも上です」


「そのサクヤよりも強いって……それ、とんでもない奴じゃん」


 そんなに強い人間は見たことがない。だが、魔族なら……って、待て待て、その敵って思い当たる節ありまくりじゃん。


「あー、ルーナ。俺の方の情報も合わせると多分分かりやすくなると思うから、先にこっちも説明するな」


 というか、これもう多分女王はこっちに来れないだろう。

 となれば……いつでもいいって言ってたし、面倒だからもう今から会議しよう。

 俺はハンプール組を呼び出してまとめて説明することにした。



 ――――


「まさか今日集まるとは流石に予想外だったぞ」


「仕方ないだろ。まさか城の方でこんなにピンチになってるとは思わなかったんだから」


 集まったのは領主と護衛のアルゴ。

 ノーマンは屋敷でお仕事中らしい。やはり残りの仕事を押し付けられたのか。

 後はリュートの計三人だ。今回は主に戦闘に関してのことだから他の人は関係ないと思って呼ばなかった。


 こっち側で集まっているのは王子達三人とヒカリと姉さん。それからルーナだけだ。

 王子達は三人とも神妙な顔している。すぐにどうこうあるわけではないが、不安なのだろう。


「それにしても、まさかあの【剛剣】のケインが向こう側に付くとはな」


「それだけじゃない。リュート以外のSランクは全員過激派の派閥に属してるぞ」


 デューテからの情報だから間違いないだろう。ただ、どうも単純に過激派に従っているって感じではないんだよな。

 過激派は俺達に侵略する気はない。ケインの目標は俺。過激派がケインを利用しているのかケインが過激派を利用してるのか……どちらにしろ厄介なのは間違いない。


「それで……女王の見張りをしているのは、本当にケインで間違いないのか?」


「ええ。女王に確認を取りましたから間違いないでしょう」


 こちらに来れなくてもサクヤを通じて連絡を取ることくらいは出来る。


「しかし、ケインがそこまで強いのは誤算だったな。まさかメイドよりも強いとは……。ってか、本当にそんなに強いのか? 同じSランクのデューテは確かに魔力も高くて強いことは強かったけど、リンよりは下。最大限の過大評価をして、ようやく互角位だぞ。サクヤの勘違いってことは……」


「彼女が一目見ただけで敵わないと感じるレベルだと言ってはいますが……」


「ねぇシオン。パーティーを組んでいた頃のケインしか知らないから参考程度に聞いて欲しいんだけど、当時は僕を入れて四人とケイン一人なら、確実にケイン一人の方が強かったと思うよ」


 Sランク冒険者四人よりも強いのか。一緒に行動していたリュートが言うんだから事実なんだろう。それから数年。更に強くなってるならメイドより強い可能性は高いのか。


「でも……じゃあどうする? サクヤで敵わないなら、人数を増やしてどうなるものでもないよな?」


 と言うかメイドで敵わないなら……俺が女王の護衛に入る? いやいや流石に怪しすぎて無理だろう。


「そうですね。あまり人数を増やしても怪しまれるだけです。かといって正体不明のシオン様が護衛に入るのは不自然すぎるでしょう。執事として身の回りの世話をするためなら……いや、無理ですね」


 失礼な。……とも言えないか。ノーマンの仕事っぷりを見ていたら俺には確実に無理だと思う。


「もちろんわたくしがあちらに行くことは出来ませんし……」


 ルーナなら能力が落ちていても確実に勝てるだろうが、まぁ引きこもりのルーナじゃなぁ。


「メイドよりも強くて、執事か侍女に扮することが出来る人……」


 ルーナの呟きに一人の女性が思い浮かぶ。正直考えたくない。考えたくはないが、候補は間違いなくこの一人しかいないだろう。


 俺とルーナは同時にある一人の女性を見つめた。


「…………えっ? 私?」


「ええ。この大事な作戦を任せることが出来るのは……サクラ様しかいらっしゃいません」


 姉さんなら相手がルーナやエキドナのように魔王より強くなければ負けることはない。

 問題なのは……傍若無人な姉さんに、女王の護衛や侍女の真似事が出来るとは思えない。


「ふふーん。ようやく私が活躍するときが来たのね! 任せなさい! 相手が誰だろうと全部なぎ倒してあげるわ!」


 ……不安だ。はてしなく不安だ。


「姉さん。分かってる? 戦いに行くんじゃなくて、護りに行くんだぞ。それに、正体を隠すため侍女の……ルーナのような振る舞いを行わなくちゃいけないんだけど……」


「何よ。私だってね、半年以上OLをやってたから、それくらい出来るわよ」


 何年前の話だよ! しかもたった半年じゃないか。多分殆ど覚えてないと思うぞ。


「姉さん。言っておくけど、姉さんは日本にいたときと性格が大分変化してるよ」


 正直別人レベルで違う。日本にいた頃はまだもう少し大人しかったし、頼りがいもあった。

 しかし今は……スミレといい、姉さんといいどうしてこんなにも変わってしまったのかと嘆くことしかできない。


「何よ。それを言うならシオン、貴方だって随分と変わったわよ」


 いやいや、俺はそんなには変わってないだろ。そう言い返そうとしたが、ヒカリが姉さんの言葉に大いに頷いてるのをみて、思い止まる。えっ? ヒカリから見ても俺変わったの?


「ま、まぁ過去のことはこの際どうだっていい。それより本当に大丈夫?」


 過去話は分が悪いと感じたので、無理矢理話を戻す。


「だから任せなさいって。シオン達が大学で遊んでた頃に身に付けたお茶汲みと電話応対は任せなさい!」


「ないから!」


 どこの会社に行くつもりだよ!


「……冗談よ」


 本当に冗談か疑わしいんだが……ヤバい。本当に不安だ。


「シオン様。サクラ様には後程たっぷりとメイドの心得を教えますからご安心ください」


 どうやら多少は落とし込みをするみたいだ。なら少しは安心かな。


「ふっ、望むところよ。すぐに免許皆伝になってみせるわ!」


 こういうのも免許皆伝っていうんだろうか?


「ルーナ。くれぐれもよろしく頼む。姉さんの行動で同盟が破棄されないように、常識から教えてあげてくれ」


 何せ姉さんの非常識の行動で一つで黄の国が崩壊しかねない。しっかりと教育してもらおう。


「じゃあ女王のことは任せるとして、それ以外について相談しよう」


 このままでは埒が明かないと思ったのか領主が次の話題に入る。


「まずは他のSランクの動向が知りたいな。正直Sランクの四人さえどうにかなれば、過激派はもうどうすることも出来ないだろ?」


 デューテも言ってたが、切り札の王子達はこちらの手の内にある。戦力もケイン達以外はそんなに強い相手はいないだろう。


「えーと、ケインが城の中で女王を見張っていて、デューテがこの辺りで王子達を探す役目を担ってる。なら他の二人はどこにいるんだ? リュートは何か知らない?」


「パーティーを解散してからはさっぱり。先日出会ったデューテが解散後初めて会ったんだよ」


 そういえばそうだったな。


「うーん。今まで通り行商するのは危険だよな?」


 敵と判断された今ならどんな妨害工作をされるか分かったものではない。


「そうだな。盗賊くらいならともかく、相手がSランクの敵となると、こちらの戦力で対抗できるのは【月虹戦舞】とリュート殿くらいだ。あまり時間を取られる行動は控えてもらいたい」


 そっか。俺達がフェスや行商中にハンプールを攻め込まれたら、それだけで終わりだ。

 勿論、ハンプールにずっと居るわけではない。だが、フェスをしていたらそれだけで一日が費やされる。少なくとも何処にいても、すぐに転移で戻ってこれる体制は作っておきたい。


「あのさ……今、領主様が対抗できるのは【月虹戦舞】と僕だけって言ったけど、実際は一対一で確実に勝てるのはシオンだけだよね」


「いや、だからリュートはデューテよりも強いって……」


 コイツはいつまで自分を卑下すれば気がすむんだ。


「ああ、違うんだ。別に自分を蔑んでたりして言ってる訳じゃない。シオンがさっき言ってたように、僕だけじゃなく、アイラやラミリア、リンももしかしたら互角の可能性があるんだろう?」


「まぁ大分敵を過大評価したらだけど」


「それなんだけどね。相手は正々堂々戦う訳じゃない。色々な搦手を使ってくるんじゃないかと思うんだ」


 俺はデューテの事はあの時に見た印象しか知らないけど……リュートが言うならその通りなんだろう。


「そうなると、こちらが万全の体制で戦えない可能性があるよね。そうなると確実に勝てるのはシオンしかいないんじゃないかな」


「そう言われると確かにそうだな。で、何が言いたい?」


「僕はどんな状況でも負けないように強くなりたい。だから今の朝練だけじゃなく、徹底的に僕を鍛えて欲しいんだ」

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