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ロストカラーズ  作者: あすか
第一章 魔王城散策
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第18話 属性について考えよう

 俺達がしばらく魔力の練習をしていると、ルーナが戻ってきた。


「お待たせしました。村の方には後日伺うと連絡したので問題ありません」


「ありがとうございます。それで、さっき言ってた紹介したいシルキーは?」


「そちらは今は別の仕事をしているので、後ほどこちらに現れるでしょう」


「そっか。ルーナさんは大丈夫なの?」


「ええ、わたくしはこれからはしばらく自由ですので問題ございません」


 大丈夫のようなので、早速三人で魔法の練習を始めた。


「とりあえず現状はこんな感じかな?」


 俺達はルーナにさっきまでの練習の成果を見せた。基本は昨日やったことと同じだが、昨日よりは体内に溜められる魔力、放出する魔力が増えている気がするし、動きもスムーズになっている。


 それに、魔力も一部分だけ残して放出など、細かいコントロールも可能になってきた。


「正直ここまで上手になっているとは思いませんでした。余程練習されたのでは?」


 ルーナはお世辞じゃなくて素直に感心しているみたいだ。


「まぁこれしかやってないから」


 あっ、一応荷物整理もしたか。でも基本は魔力の練習しかやってない。


「ここまでくると、早めに属性魔法の練習に取りかかれそうですね」


「本当!?」


 基礎も大事だけど、やっぱり早く魔法の練習もしたい。


「ええ、あと残っている基礎は並行操作だけです。今は一ヶ所だけで魔力の操作を行っていますが、右手と左手で違う操作、手以外にも口や目、耳、体全体で同時に魔力の操作を行う。そうすれば言葉もしゃべれるようになると思いますよ」


「同時に……難しそうだな」


「そうでもありませんよ。お二人ならすぐに出来そうです」


 なら……と、早速やってみた。まずは右手の結晶に魔力を入れて、左手の結晶の魔力を放出。


 ちゃんと出来るようになれば、今度は魔力を外部から取り入れながら……手からだけでなく、例えば肩に結晶を置いてそこから魔力を注ぎ込む。


 後は結晶を体から離した状態で魔力を入れる特訓もした。一応俺達はあまり時間が掛からずに全部出来るようになっていた。


「本当にお二人は筋がよろしいです。こちらに書いてある内容もほとんど終了致しました」


 ルーナがクミンの教本を差し出したので受け取る。


 俺は終わった場所までページを捲ると、俺たちがやっていたところは八割は消化していた。


「すごい! 昨日ルーナさんに教わる前はまだ最初の数ページだったのに……」


「すごいのはこの本ですよ。わたくしはこの本の通りに説明しただけです」


「でも私達だけだったら、あと数日はかかってると思います。こんなに早くできたのはルーナさんのおかげですよ」


「ふふ、ありがとうございます。お二人に褒められると悪い気はしませんね」


 お世辞じゃなく本当に嬉しそうだ。


「そうだ! また何かお菓子食べます? 少し休憩にしましょう」


 キラリとルーナの目が光った気がした。どうやらルーナは相当お菓子好きのようだ。


「まぁ! よろしいのですか。あ、昨日頂きました食材は皆にも分けましたところ大変評判がよかったです。『私達も早くこの野菜を作ってみたい!』だそうです」


「それは良かった。種は十分にありますので、皆で育てていきましょう」


 そう言って俺たちは休憩することにした。



 ――――


「そういえば、差し支えなければ教えて欲しいんだけど、ルーナさんの属性は何?」


 お茶をしながら、俺は昨日から聞いてみたかった質問をぶつけてみた。


「わたくしですか。わたくしの属性は銀になります」


「銀……? 基本属性にはないよね? かなり珍しいんじゃ?」


「そうですね……文献にはいくつか存在はしているみたいでしたが、わたくし自身は、同じ銀属性にはお目にかかったことはありません」


 それってかなりレア属性ってことだよな。


「でもお二人の属性はさらに珍しい属性です。紫は銀よりも残っている記録は少ないですし、透明に至っては記録にはございませんから」


 トオルは本当にレア中のレアのようだ。


「ちなみに銀属性の魔法って、どんな魔法が使えるんですか?」


「そうですね。さすがに全部は教えれませんが、少しだけなら……」


 そう言うと、ルーナは右手の人差し指だけ立てて自分の顔の横に持っていく。


 すると、人差し指の先に銀のナイフが現れる。ナイフは空中で浮いたままだ。

 ルーナが人差し指をくるくる回すと、それに併せてナイフも空中で回っている。


「わたくしの魔法は、銀製品を自由に生み出し、それを自由に操ることができます。今はこのナイフを召喚しました。このナイフはわたくしの意思で、自由に飛び回ることが可能です」


 ルーナはさらにナイフを二本召喚し、計三本のナイフがルーナの周りを飛び回る。


「もちろんナイフ以外にも弓や槍なども作ることができますし、食器なども作ることが可能です」


 テーブルの上に銀の皿が現れる。


「便利ですね。銀製品を作れるなんて」


 毎回食器を出せば、洗い物が必要ないのか? 便利すぎる。


「もちろん弱点もあります。これはわたくしだけではございませんが、魔法で召喚した物に関しては長期間の保管は出来ません。最大で一ヶ月しか召喚出来ません。一ヶ月を過ぎてしまいますと、自動的に消滅してしまうのです」


「へぇ消えてなくなるんだ。なら一ヶ月以内に商人へ売ったりしたら? なんか詐欺師が多そう」


「ですので、魔法で出した商品の売買は固く禁じられております。売買するときは魔力検査カードを用います。魔法でできた物だと魔力検査カードが認識するため、一発でバレてしまいます」


 ああ、だから魔力検査カードがあんなに大量にあるのか。でもそれじゃあ商売は出来ないってことだな。


「じゃあ、例えば水なんかも、一ヶ月過ぎればなくなるのか?」


「そこは研究途中で曖昧な部分なのですが、どうやら物体のみが消滅してしまうようです。水や炎のような現象は一ヶ月過ぎても残っていますし、この城に張ってある結界や転移魔法のようなものも残り続けます」


 固形だけが無くなる。水は問題ないなら水不足にはならないな。


「あと、少し変わった例ですとポーションや解毒薬などは効果は一ヶ月しか持ちません。もちろん一ヶ月以内に使用すれば問題はございません」


 効果がなくなるだけでポーションの液体自体は一ヶ月過ぎても残る。同じ効果でも固形の場合は消滅する。使用さえしてしまえば効果は一ヶ月経っても継続する。


「じゃあすぐに使う分には問題ないけど、保管は出来ないんだ」


「もし保管されたい場合は、魔法を使わずに調合するか、錬金術で造るしかないです」


「調合は解るけど、錬金術って具体的になんなの? 魔法とは違うの?」


「錬金術は、主に金属性の方が使われる魔法です。金属性はドワーフが多いですね。錬金術は素材と素材を組み合わせて新しいものを作る魔法です。元の素材がないと作ることが出来ません」


 消えてなくならないのは、召喚じゃなく合成だからか?


「例えば、ここに薬草と水があるとします。調合ですと薬草を擂りつぶしたり煎じたりする必要がございますが、錬金術は魔法でこの二つを合体させて一瞬でポーションを作ることができます。今はポーションを例に出しましたが、武器や食器も素材があれば、錬金術で造ったものは無くなりませんし、効果も残ります」


「へぇ。それじゃあ錬金術があれば、調合や鍛治などの技術は必要ないんだ?」


「いえ、そういうわけではございません。一つは錬金術が使える人物が少ないこと。錬金術が使えたとしても良い物を造るのにはそれなりの魔力が必要になります。余程の錬金術師でもないと鍛冶師や調合師よりも良い物は造れません」


 ポーションも下級ポーションなら錬金術でいいが、上級ポーションとなると上位の錬金術師でないと錬金術で造ることができないと。錬金術は量産型ってイメージで考えた方が良さそうだ。


「性能がいい物は、錬金術よりも専門家の方が良さそうだな」


「そういえば、魔剣などは鍛冶で難しいので、少し性能が落ちても錬金術でお手軽に創ることが多いですね」


「魔剣……ですか?」


「ええ、例えば鉄と炎の魔石を組み合わせて、炎が出せる鉄の剣などが主流でしょうか。ですが、錬金術で創ると耐久力に問題があるようで、数回しか使えないとか……」


 そういえばアイリスに貰ったナイフ、あれも魔剣の一種なんだろうか?


「ルーナさん、これも魔剣なのかな?ナイフだから剣じゃないけど。なんか穴に特別な魔法結晶を入れるとその属性に変化するんだって」


 俺はナイフをルーナに手渡す。


「確かに魔剣の一種のようですね。しかし珍しい。基本魔剣は属性が一種類しか持てないのですが、これは魔力石があれば色々な属性に変化できるみたいです。かなり上級の魔剣ですよ」


「まぁ今はその穴に入れるサイズの魔法結晶がないから、ただのナイフなんですけどね。ルーナさんはこの穴に合う魔法結晶を持ってないですか?」


「残念ながら持っておりません。この城には現在魔石を加工できる職人がいませんので、お役に立てず申し訳ございません」


「いえ、気にしないで。それよりも錬金術に話を戻したいんだけど、例えばルーナさんが銀を出して、その銀を錬金術や鍛冶で使用すればどうなるの?」


 素材が無限に出れば錬金し放題じゃん。


「失敗します。錬金術なら魔力同士が反発し合って暴発します。鍛冶の方では召喚した物体を変形させた時点で召喚物は消滅します」


 そう都合よくはいかないってことか。



 ――――


 ある程度、錬金術について聞くことが出来たので、別の話をすることにした。


「話が変わるけど、ここの魔王は何属性だったの? 空間を操る能力って色の想像がつかないけど……」


「魔王様は黒の属性でした。空間魔法は、ご自身がデュラハンで頭と胴体が離れているのに疑問を持った魔王様が、自信の首の中を覗いた時に感じた暗黒からイメージしたそうです」


 頭と胴体、つまり首の部分が空間になっている所に空間を繋げるイメージを見いだしたのか。なかなか多感な人物だったようだ。


「そういえば、お二人は属性のイメージは出来ましたか?」


「俺は……紫といえば毒ってイメージしか出なかった」


 俺がそう言うと、トオルもルーナもやっぱりと言う顔になった。


「毒……やはりそのイメージが強いんでしょうか。わたくしが知っている記録にも、紫の魔法も毒に関係しかございませんでした」


 やはりそうか。しかしイメージ悪いよな。


「紫は何千年も現れていない失われた属性と言われております。シオン様がどうするか楽しみです」


「プレッシャーをかけないで下さい。ただでさえ、未だイメージがよくわかってないものですから」


「それは申し訳ありません。でもイメージはたくさん持った方がいいですよ。何が役に立つかわかりません」


「そうするよ。そういえばトオルはどうだ? 透明って俺には全く想像もつかないが」


「イメージは色々あるよ。ただ出来るかどうかはやってみないと分からないけどね」


「ちなみにどんなイメージなんだ?」


「まだ秘密かな。出来なかったら恥ずかしいしね。実際に出来そうなら報告するよ」


「その時はわたくしにも教えて頂けませんか? 未知の属性なんて気になります」


「もちろんさ。そのためには早く属性魔法が出来るようにならないとね」


 その後も属性談義でしばらく盛り上がった。ルーナはソータが青魔法でラーニングに驚き、非常識です! と何やら憤慨していた。そんなのにわたくしの罠が……となんかショックを受けていた。

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