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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第140話 たくさん捕まえよう

 やはり盗賊を連れて帰るとなると、かなり時間が掛かるな。


 せっかくの車も徐行運転しか出来ないので、中々進まない。これ……今日中に町に到着できるのか?


「シオン様、せめて馬車でも持ってくるべきだったっスね」


「そうだな……コイツらを馬車に詰めて連れて行けばいいんだろ? ここにコイツらが乗ってきた馬だけはあるのになぁ」


 一瞬全員馬に乗せて……と考えるが、逃げられる危険性はあるので止めておく。うーん。何かいいアイデアはないかな?


「……では、荷車を持ってくればいいだけでは? この扉をくぐればすぐですよね?」


「…………そうだな」


 ラミリアの指摘に俺は静かに頷いた。確かに転移はバレては駄目だが、キャンピングカーの中のゲートは外からバレることはないな。初めからキャンピングカーの中に荷車があったことにすれば……。



 ――――


「いやぁ、一気に早くなったな」


 荷車を出して、盗賊達の馬に引かせる。盗賊達は手足を縛ってまとめて馬車に放り込んでおく。

 一応座っているので、そこまで過酷な移動ではないだろう。


 スピードも徐行運転から原付レベルまでスピードを出すことが出来るようになったため、この調子なら今日中には一番近くの町まで行くことが出来るだろう。


 ……そう考えてた時期が俺にもありました。


「……また襲撃か?」


 これで最初の盗賊襲撃を三回目。一体この辺りにどれだけの盗賊がいるんだ?


「またただの盗賊っスかねぇ?」


 最初に襲撃してきた盗賊も二件目も背後には何もない普通の盗賊グループだった。うーん。もしかして過激派と盗賊は繋がってないのかな?


「とりあえずまた生け捕りにして話を聞くことにしようか」


 半ば無駄だろうなぁ。と思いながらも三件目の盗賊にも【毒投与・自白】を一人一人に掛けていった。

 ……まぁ予想通り何にも出なかった。仕方がないから三台目の馬車を準備して先へと進むことにした。



 ――――


「や、やっと町が見えてきた……」


 まさか日が変わるとは思わなかった。


 捕虜として盗賊を連れて移動するのがこんなに大変だとは思わなかった。

 まず、盗賊にやる食料が勿体ない。

 仕方がないから日頃あんまり使わない携帯食料を提供することにした。うう、後でアジトでたっぷりと回収させてもらうからな!


 それから手足を縛ってるから排泄関係がヤバい。流石に汚いのは嫌だし、誰も世話をしたくない、させたくないので各馬車にミサキの魔法【キレイキレイ】を設置して自動で発動するようにした。

 これでいつでも清潔って訳だ。若干非人道的な処理にも思えるが、清潔な方がいいし、悪人に人権はないと偉い人も言ってたので気にしないことにした。というか、魔法のお陰で出会った時よりも臭いもなく清潔になった気がするぞ。


 ともあれ捕まえて次の日。ようやく町に辿り着いたという訳だ。


 先頭を走る鉄の車。その後ろを付いてくる三台の馬車。そして、後ろを付いてくる多数の馬。どこからどう見ても異様な光景だろう。

 ほら、慌てて門番も駆けつけてくる。


「お、おいおいおい。お前達、あれだろ? 最近話題の……【スライム奇術団】」


「ちっがーう!! 何だよその【スライム奇術団】って?」


 駆けつけてきた門番からまさかの言葉。思わず初対面なのに盛大にツッコんでしまったぞ。


「違うのか? 鉄の車で移動するスライムを使った奇術ショーや子供ハウスを使った興行をしているんじゃないのか?」


「……間違ってない。間違ってはいないんだが違うんだ。……俺達はあくまでバルデス商会の商人で、奇術団でも雑技団でも劇団でもないんだよ」


 リンやスーラのショーやスーラハウスの印象が強すぎてそんな噂が広がったんだろうが……あれっ? 肝心の商品の話題は?


「ああ、そうそうバルデス商会な。ってことはこの町にも商売しに来たのか!!」


「あー、すまない。今回は準備してないんだ。ここに寄ったのは近くで盗賊に出会ったから引き取ってもらいたくてやって来たんだ」


 そもそもここは過激派の町だ。本来なら立ち寄ることすらない。だが……とりあえずどこでも良かったのでこの大荷物を手放したかった。

 それに、もしかしたらここで盗賊たちと結託して証拠を掴むことも出来るかもしれないという打算もあった。


「盗賊って……おいおいおい、まさか後ろの馬車全部か!?」


 門番は一番手前の馬車を覗き盗賊がいることを確認して、それが三台あると知り驚く。


「ああ、三つの盗賊団だ。だから警備か誰かを呼んでくれないか?」


「わ、分かった。すぐに呼んでくる」


 門番は俺の言葉に頷いて、すぐに町の中へ戻って行った。


「ねぇシオン。残るとは言ったけど、やっぱり僕も一緒に行った方がよくない? だってここ過激派の町でしょ? 多分あの盗賊団もかなり買い叩かれると思うよ」


 確かに相場もよく知らない俺達だけなら買い叩かれるかもしれない。

 それなら確かにリュートが居た方が頼りになるな。あっ、ついでにノーマンもいれば貴族にも何とかなるかもしれない。

 まぁリュートの手柄になるかもしれないが、三つの盗賊団を片付けたんだ。俺達の活躍ポイントも溜まるだろう。


「リン、今のうちに一応ノーマンを呼んできてくれないか? リュートと三人で交渉をするから」


「分かったっス。すぐに戻るから先に連絡しておいてくれるとありがたいっス」


 領主の屋敷に行く為の手続きで時間がとられないように予めケータイで領主に連絡しておく。ついでに城にも連絡して遊撃隊を一人派遣してもらう。この盗賊たちが本当に犯罪奴隷になるのか、それとも裏取引があるのか調べてもらうのだ。


 現時点でこの三つの盗賊団の背後には何もない。それは確かだ。だが、この過激派の町で新たに契約が結ばれるとも限らない。そう考えると過激派の町に来たのは正解だったかもしれないな。



 ――――


「では、今回の討伐報酬はこちらになります」


 現れたのはここの警備隊で経理を扱っている男だそうだ。


「はぁ? 何を仰っているのですか? 三つの盗賊団を討伐した報酬がそれだけ? それでは話になりませんよ。第一今回は全て生け捕りですよ。この金額なら奴隷商人に売った方が余程価値があるというものです!」


 おお、スゲー。流石ノーマンだ。見た目は結構な金額っぽいし、俺ならこの金受け取って終わってたぞ。


「し、しかし、本当にこの盗賊団が、三つだと言う証拠が……もしかしたら一つの盗賊団の可能性だって」


「ほぅ? 私達が嘘を付いていると仰りたいのですね」


「い、いえ……決してそんなわけでは」


「それに仮に一つの盗賊団だとしてもこの金額はおかしくないですか? この人数で一つの盗賊団ですとかなり巨大な盗賊団です。たしか、盗賊団の規模に応じて金額も変わるはずですよね?」


「そ、それは……」


「貴方では話になりませんね。もっと話が分かる人はいないのですか?いないなら私達はこれで失礼します。他所の町の方が謝礼も高そうですからね。ああ、その際にはこの町では最初この金額で提示されたとハッキリと公表させてもらいますけどね」


 うわー、そんな事されたらこの町で取り引きしようと思う人はいなくなるかも知れないな。


「しょ、少々お待ちくだされ」


「早くしてくださいよ。遅かったら出ていくかも知れませんからね」


 男は慌てて引っ込んでいく。上司にでも相談に行ったのかな?


「やっぱりノーマンは頼りになるな。来てもらって正解だったよ」


「流石に最初の金額には納得はいかなかったけど、僕もあそこまで強気にはなれなかったと思うよ」


「俺は多分あれで終わってたかもしれないな……」


 やっぱりリュートも満足できない金額だったのか。俺も少しは相場を勉強しないといけないな。


「誉めてくださるのは嬉しいですが、まだまだこれからですよ。恐らく上の者……もしかしたら領主にまで話が及ぶかもしれません。そうなりますと、今度はリュート様にも頑張っていただく必要がございます」


「僕にも?」


「ええ、私では立場上強く言えないことでも、リュート様なら言える場合もございます。頼りにしていますよ」


「お、おれ、俺は?」


「…………シオン様は私とリュート様を見て交渉術を学んでください」


 つまり今は役立たずなんですね。くそぅ何かいつもこんな感じの気がするな。

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