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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第132話 転売対策を考えよう

 宿へと戻ってきた俺はミサキとレンにギルドから聞いた転売の話を聞かせた。


「はぁ!? 何やそれ! ぼったくりもええとこやんか!」


 案の定ミサキも憤慨する。俺よりも商人の心を持っているから当然だろう。


「俺はぼったくりよりも、偽物が発売されないかが気になるよ。認可マークを付けてなくても購入するのなら、詐欺が行われるかもしれないだろ」


 偽物のマヨネーズや調味料、自作の粗悪品のトランプなども販売されてしまいそうだ。相手が貴族だろうが、それで評判を落とされても困る。


 転売自体を止めさせることは出来ないだろうが、何とか買わなくする方法はないだろうか?


「正直な話、流通が間に合えば転売はなくなるんやろうけどな」


「ゴーレムも手に入ったし、ハンプールからかなり素材も手に入れたから急ピッチで量産してるけど、こうやって限定販売するのがやっとだもんな」


「前回は同じ人……特に商人が何周もして、大量に買うてったけど、今回は一人一回って制限をつけたらどうや?」


「転売屋がそもそも手に入れる量を少なくするわけか」


 それも一理あるな。だが、それでは偽物の販売の制限にはならない。


「やはり認可マークを付けている物しか購入せんように働きかけなあかんのやないか?」


「そうなんだけど……効果あると思うか?」


「はうっ! 本当に欲しい人は買っちゃうと思うな。私もネットオークションで絶版になった本を高くても買ったことあるもん」


 レン、それはちょっと違うような……いや、オークションでも同じことか。そういや日本でもチケットや限定販売物はすぐにネットオークションで高値で売られていたな。

 どこも一緒ってことか。



 ――――


 ひとまず考えても仕方がなかったので、今度はミサキ達と一緒に商業ギルドへ向かうことにした。

 恐らくノーマンが話を通してくれているはずなので簡単に手続きするだけですむだろう。


「バルデス商会の皆様ですね。お話は伺っております。ギルドマスターがお待ちですのでギルマス室までお越しください」


 ギルドの受付に行くと、やはりノーマンが話していてくれたらしくすぐにギルマス室に案内された。


「おお! お待ちしておりましたぞ。あなた方がバルデス商会の皆さんですか。ラスティン様の執事からお聞きしましたが、今回はこの町で商売を希望されているとか」


 既にある程度の話はついているらしい。俺達は軽く自己紹介をした後、挨拶もそこそこに早速本題へと移った。


 どうやら既に今回の販売場所も確保されているらしい。

 町の外れにはなるので、店を構えるのは向いていない場所なのだが、そこは空いている倉庫らしいので、スペースにはかなり余裕があるらしい。

 前回のように並ぶんだったら、一日限定ということを考えても、むしろ広い場所の方がありがたい。

 倉庫の外も普段は馬車を止めれる広場になっているので、当日は自由に利用していいらしい。


 これなら普通に販売するよりは、ちょっとしたお祭りにしてもいいかもしれない。

 俺の中で色々な構想が膨らんでいく。いやぁ、ノーマンや領主のお陰だろうけど、やっぱりこういう風に町が協力的だと助かるな。


「あんな、ちょっと聞きたいことがあんのやけど……ウチらの商品が高値で取引されとるってホンマか?」


 販売計画も立ったんで、ミサキが転売のことについて尋ねる。


「あぁ、幸いなことにこの町では購入するものはおらんかったが、話には聞いておる」


「なぁ、ギルドの力でどうにかならんの?」


「無理ですな。まず相手が店を構えて販売している訳でなく、個人的に交渉しておるから手出しは出来ませぬ。商人ギルドは店で購入するのに安全を保証する為にあるのだ」


「個人では取締りできないと?」


「例えば、ここにペンがある。お主がこのペンを欲したとして、私が百Gで販売する。この行為に商業ギルドとして駄目とは言えない。そんなことをしていたら仲間内や近所内での受け渡しすら取り締まらなくてはならなくなる」


 規模が違うが、やってることは友人の物の売買と似たようなものだそうだ。


「これが商業ギルドに登録された商人であれば、注意することが出来るのだが、特に今回の話は行商人や冒険者から買い取ったらしい」


「行商人って商人ギルドに登録しなくてもなれるのか?」


「店を構える際は必ず登録が必要になるが、行商人に関しては強制ではない。ただ商人ギルドに登録すればギルドの恩恵を受けることができるので、殆どの者は登録しておる」


「でも、商人ギルドに登録した商人カードじゃないと町から出られないんじゃないのか?」


「……もしやお主は赤の国出身ですかな? あの国は住人を逃がさないためにそうやって規制しておった。この国ではそういう法律は一切ありませぬ。貴族カードなどの差はあれど、基本的に身分カードで差などない」


 村人だろうが市民だろうが、冒険者、商人問わず出入りは自由。職も結婚も基本的には自由なのだそうだ。それを聞くと、赤の国はとことんダメな国だったと理解できる。


「話を戻すと、そもそも商業ギルドは商人が安心して店を出すためのサポートと、消費者が安心して購入するためのサポートを目的としておる。だが、ギルドに登録されてないものまでは補償は出来ない」


 ギルマスの言うことは間違ってはいない。関係ない人が関係ない場所で取引しても何か言えるわけがなかった。


「まぁ、そういう輩はごく少数だし、気にせぬ方が良いと思うぞ」


 そうは言っても気になるのに間違いはない。まぁ俺達が販売するときに注意換気していけばいいか。


 俺達はギルマスに礼を言ってギルドを出ることにした。



 ――――


 ギルドを出た俺達はその足で会場となる倉庫までやって来た。


「シオン様! こちらです」


 俺を呼ぶ声が聞こえた方を向くと、ノーマンがそこにいた。最初はさん付けだったのに、結局は様付けになってしまった。俺が様付けは苦手ってことは分かっているようだが、ノーマンの執事魂がさん付けを強要できなかったようだ。まぁこの二日で俺の性格がある程度理解できて、様付けしても怒られないと思ったんだろう。まぁいいけどね。


「ノーマン、ここにいたのか」


「ええ、私も先程来たのですが、……ここは少し分かりづらいですね。話を聞くだけでしたら十分いい条件かと思ったのですが……申し訳ございません」


 確かにこの辺りには同じような倉庫が並んでいて、一見するとどれが目的の倉庫か分からなかった。


「別に謝る必要はないさ。倉庫は広いし、目の前に広場もある。立地的には最高じゃないか。あとは目立つようにアピールすればいいんだよ!」


 目立つだけならやりようはいくらでもある。その為の準備は……城の奴等に手伝ってもらえばいいしな。


「まずは倉庫にゲートを開こう。あと、車も二台とも持ってきても良さそうだな。宿は一応借りっぱなしでいいと思うが、こっちで過ごしても良さそうだな」


 ひとまず宿へと戻って車を持ってくる。ついでに全員集合して今後の話を始めるとしようか!



 ――――


「では、商品は基本的には前回と変わりませんか?」


 バルデス商会としての打ち合わせのため、ミハエルさん。城の代表としてシャルティエが倉庫に来てくれた。


「ああ、増やすとしたら盤を安上がりにしたリバーシくらいかな」


 紙の折り畳み式リバーシはゴーレムのお陰で大量生産に成功した。

 同じく囲碁も生産に成功したが、ルールの分かりやすいリバーシから販売した方がいいだろう。


「では、新規で販売はリバーシのみ。一応同じタイミングで本店にも新商品として置きますね」


 流石に本店のあるハンプールで売らないのはまずいか。


「ああ、だけど多分大丈夫だと思うけど、在庫には気を付けてくれよな」


 ハンプールで売れてこっちが足らなくなるようなことになったら困る。


「心配しなくても告知をせずに置くのでそんなに人は来ませんよ」


 確かにこそっと置いてるくらいじゃあ人は来ないか。


「商品はいいとして、今回はくじ引きや先着特典はどうします?」


「なんかスリーブが想像以上に人気みたいなんだよ。先着にすると大変かなぁ? って思って……どうせ一日しか販売しないし、購入特典でもいいと思うんだ」


「でも、そうすると何度も並ばれませんか?」


「だから今回は一人一回限りの購入にする。その代わり個数制限は二個じゃなくて五個とかにすればいいんじゃない?」


「それ、把握が大変じゃないですか? シオン様はお客の顔全員覚えてられます?」


 ……うん、無理だな。うちのメイドは優秀だから、ついつい無茶を言っちゃうけど流石に厳しいか。


「この倉庫……相当広いですよね?」


 ミハエルさんが倉庫を見渡しながら言った。


「え? ええ。お陰で外で並ばなくてすむので助かります」


 日射病とか気にする必要がないのは正直助かる。それに各ブースを広くして専用の販売エリアにすれば有効活用できそうだ。


「外の広場もかなりの広さですよね?」


「ええ、元は馬車を停車させて、倉庫に詰め込んだり運び出したりするようなので……」


「いっそのこと本当に祭りのようにしたらどうでしょう。シオンさんの町で見た遊園地? とまでは言いませんが、似たようなことをすることは出来ませんか?」


 俺もさっき祭りみたいに……と思っていたので、ミハエルさんの提案は大変魅力的に聞こえた。

 遊園地……は無理でも祭りか。屋台、射的やビンゴ、ステージの催し。

 それらを外でやりつつ、中では買い物。


「人が必要だな……」


 以前と同じ人数では絶対に間に合わない。


「本店から応援を出しましょう」


「そうしてくれると助かる。城からもお願いしていいか?」


「恐らく問題ないでしょうが……詳しく説明して頂けませんか?」


 いかんいかん。俺の頭の中で完結していたな。

 ミハエルさんはある程度理解できているみたいだが、シャルティエは今一つピンと来ていないようだ。


「いいか……」


 俺は日本の祭りを思い出しながら皆に説明した。



 ――――


「祭りか……夏祭りにはよう行ったな」

「はう! 花火大会も一緒に行ったよね!」


 ミサキとレンは一緒に祭りに行ったことがあるようだ。ってか、花火か。花火もいいなぁ。


「でも、シオンさん……これ、完全に行商の範囲を超えてへんか?」


「ミサキの言うことはもっともだが……楽しい方がいいと思わないか?」


「シオンさん。ウチはその考え……嫌いやないで」


 ミサキがニヤリと笑う。楽しいこと好きのミサキなら分かってくれると思ったんだ。


「楽しいこと大いに結構ですが、準備するのも実際に働くのも私達だということをお忘れなく」


「……ダメ?」


「うっ……シオン様。ルーナ様にならともかく、可愛こぶっても私には通じませんからね!」


 ルーナには通じるのか? 今度試してみよう。


「まぁ、シオン様は城主ですからどんな命令でも命じれば私達は従います」


 そんな言い方されると頼みづらいんだが?


「よし! じゃあ今回の祭りが終わったら皆に特別ボーナスをやろう!」


「そのボーナスって結局は城の財産でシオン様が自由にできる権限はないと思いますが?」


 うぅ。だって俺だってお小遣い制で皆にやれるほど持ってないんだもん。くそ……城主なのに何の権限もないとは。


「ふふ、少し意地悪でしたね。シオン様、本当に気にしなくてもよろしいですよ。私達メイドは仕事を与えられる方が嬉しいのですから」


 シャルティエ……本当に変わったな。昔はサボってスーラと遊んでいたとか言ってたのに……もう完全に一流のメイドの仲間入りしてるんじゃないのか?


「では、私の方からも一つ販売のアドバイスを致しましょう」


 シャルティエのアドバイスを聞いて、俺達は今回の方向性を完全に決めた。

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