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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第128話 町をぶらつこう㉓ 語り合い編

「いいですかシオン様! 口移しで飲ませるというやり方は、実はかなり危険な行為なのです。一歩間違えれば喉に詰まり本当に死んでしまいますよ」


「えっそうなの!?」


 ルーナから最後に言われた言葉はまさに衝撃の事実だった。

 結局、あの口移しで飲ませるという行為は、俺のにわか知識と恥ずかしさだけ残しただけだった。


 正直無駄な行動であったが、流石に人命救助ということだったので、殆ど怒られることはなかった。が、正直その場でいたたまれない気持ちだった。


 ラミリアからも『犬にでも噛まれたと思って我慢します』だって……どんだけ嫌だったんだよ! ちょっとショックだよ!

 うう……やっぱりテンパったり我を忘れても良いことなんか何もない。本当に気をつけよう。


 ――――


 説教が終わった後、俺はエキドナと二人で酒を飲みながら話すことにした。


 城に初めて来たスミレはヒカリの案内で城の見学が終了。今はルーナと二人で何やら語り合っているようだ。初対面同士の二人……正直気になって仕方がないのだが!

 まぁ今はエキドナともゆっくり話したい。あっちは……今度それとなく聞き出すことにしよう。


「ラミリアを危険な目に会わせて悪かったな」


 エキドナのグラスにビールを注ぎながらあらためて謝罪する。


「そう何度も謝らんでもよい。それに今回はラミリアの自業自得じゃ。まぁラミリアも反省しとったし、同じミスはもうせぬだろうて」


 今度はエキドナが俺のグラスにビール注いでくれる。

 俺達はたっぷり注がれたグラスを合わせて乾杯をする。


「ラミリアは妾が魔王になってすぐに拾うてのぅ」


 エキドナはビールを一気に飲むと唐突に語りだした。


「拾った?」


「そうじゃ。親に捨てられたか、【魔素溜まり】から生まれたかは分からぬが、赤子姿で泣いておった」


「【魔素溜まり】から赤子姿で生まれることがあるのか?」


 【魔素溜まり】からは成長した姿で生まれると聞いたことがある。


「ないとは言い切れぬ。特にレアな魔族となると、より成長をするためか、赤子姿で生まれることもある」


 少し前に討伐したイフリート達……子供っぽい感じだったけど、あれってもしかして成長した姿じゃなくて、赤子から成長している途中だったのかな?


 ラミリアに関しては普通のラミア族だが、複数の属性持ちでレアな魔族といえるだろう。


「今でこそ複数属性持ちは親衛隊を作れるくらい数はおるが、ラミリアは妾から生まれた者以外で出会った始めての複数属性持ちじゃった」


 エキドナは元々唯一の複数の属性持ち。その為、テュポーンに人体実験扱いされた過去をもつ。

 その結果エキドナの遺伝子を使って人工的に様々な魔物生み出された。

 ケルベロスやオルトロス、ヒュドラにキマイラ……俺でも知ってる有名な魔物ばかりだ。

 これらは全てエキドナの遺伝子から生み出された魔物だ。本当の子供ではないが、エキドナにとっては似たようなものだろう。


 その結果、実験は成功し、いくつかの複属性を持つ魔物が生まれた。

 その後、不必要になったエキドナはテュポーンに捨てられ、その後、魔王として君臨することになる。


「じゃから、妾はラミリアを本当の子のように育てた」


 きっと二人の間には長い間一緒に過ごした思い出が沢山あるんだろう。


「その妾から見てもシオン。お主らと出会うてからのラミリアは今まで見たこともないくらい楽しそうじゃ」


 俺はそれに何て答えればいいんだろう。答えが見つからなかった。


「シオン、お主もラミリアのことが嫌いではないはずじゃ。……じゃが、お主の中にはラミリア以上の存在がおろう? それがルーナなのかスミレなのかは妾には分からぬ。ラミリアもお主と結ばれることは考えてはおらぬじゃろう」


 俺はエキドナの話を黙って聞く。


「まぁお主の人生じゃ。お互い寿命なんぞ無いも同然じゃ。そう考えると先はまだまだ長いんじゃから、すぐに決めずとも好きに生きるが良い。じゃが、お主が身を固める決心するその時まではラミリアとも仲良くしてくれたもう」


 スミレに会ってケジメを付けたら……なんて言ってたけど、正直あまり恋愛とか考えたくはなかった。多分今の生活が気に入ってるからなのか、寿命が延びたのでそういうことに興味がなくなってしまったのか……でも、ハッキリさせないと駄目な気はする。ただこれだけは言える。


「ラミリアはもう仲間だ。将来がどうであれ、見捨てることなんかないさ」


 少なくとも旅が終わるまではずっと変わらない。そして旅が終わる時……そんな時は来るのだろうか?

 今回の黄の国の内乱が終わったとき? いや、ロストカラーズを復興させたとき? ははっ、何年、いや何十年先何だよ。


「それよりも、エキドナとラミリアの思い出話をもっと聞かせてくれよ」


 こんな時じゃないと多分話してくれない。


「ほう、よかろう。…そういえばこんなことがあっての」


 結局俺とエキドナはずっと語り合った。明け方にエキドナを探しに来たトオルとラミリアに説教を食らうまでそれは続いたのだった。

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