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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第117話 町をぶらつこう⑫ 娯楽編

 娯楽室にある遊具を一つずつ説明する。


 まず場所を取るが、スポーツとして楽しめる卓球、ビリヤード、ダーツ。

 この世界、身体能力は地球と明らかに高いが、それは冒険者に限ってだ。一般人は殆ど変わらない。だからこういった遊びは十分に楽しめる。

 まぁ俺くらいの能力になったら、どれも壊しかねないので遊べないが……それだけが残念で仕方がない。


「この卓球という遊びは、孤児院に置いたら子供達が喜びそうですね」

「ええ、この台を低くすれば、小さい子も遊べます」


「ビリヤードとダーツは貴族の遊戯で流行る気がするぞ」

「確かに貴族でもハマると思いますよ」


「酒場にダーツとかあれば流行りそうだけど、うるさそうね……うん、いらないわ」

「酒代とか賭けそうだもんな。ケンカの原因にもなりそうだし、それが賢明かもな」


 それぞれの感想に相槌を打ちながら考える。

 うーん、大体予想通りの反応だな。まぁこういったスポーツ系は、温泉宿にあればちょっと嬉しいって感じだから、今回の趣向……販売とはちょっと趣が違うかもな。


「じゃあ次はこっちだ。本来ならリニューアル時に販売したかったけど、量産が追い付かなかった商品だ」


 俺は麻雀を除外して紹介する。あの空間は今は立ち入り禁止だ。

 まずは囲碁、チェス、リバーシなど、盤を使用した二人対戦ゲーム。

 盤が量産出来なかったので販売できなかった。

 因みに将棋は……駒が漢字で書かれているから、それをこちらの言語に変えることを考えると、販売せずに、代わりにチェスでいいかって結論になった。もちろん城では将棋も遊べるから俺的には問題ない。


「ふむ……これは浸透するのに時間は掛かりそうだが、時間が経てば間違いなく流行るだろうな」

「問題はどうやって受け入れてもらうか……ですね。販売するとなると、金額も高くなり、買い控えが多くなるかと」


 ギルマスとワイズさんは流石というか、販売者視点で考えている。しかし、売れれば流行ることは間違いなさそうだ。


「じゃあ、どれだけ安く販売して受け入れ態勢を取ってもらえるか……かな?」


「安く販売か……しかし、制作費だけでも結構な金額が必要になるぞ」


 そうなんだよな。今回の千Gで販売……は流石に無理があり過ぎる。


「……盤はこれでなくてはならないのですか?」


「えっ? いや、駒とマス目さえあれば遊べるぞ……そうか! 盤のコストを下げるのか!」


「ええ、それこそ紙にマス目さえ描けば遊べるのでしたら、コストは十分に下げられるかと。高級志向の方には盤を勝ってもらえばいいだけですし」


 確かに……コンビニとかで売っている、安っぽいマグネット盤みたいなのを用意すればいいのか。それなら低予算でこれからでも量産が可能だ。いやー、ちゃんとした製品を売らないとってことばかり考えてて、完全に盲点だった。やっぱりワイズさんのように、商人視点では考え方も違うな。


「よし、じゃあその方向で動こう。ある程度量産が出来たら、試しにバルデス商会で販売してみようか」


「ええ、構いませんよ。ウチも新しい商品を置かないと、折角増えた顧客が居なくなってしまいますからね」


 ミハエルさんも賛成してくれたので、量産の目途が付いたら試しに販売してみよう。


「じゃあ次は……」


「まだあるのか?」


 ギルマスの呆れた声が響く。もうお腹一杯って感じだ。


「もう少しだな。次はパズルだ」


 俺は知恵の輪やジグゾーパズル、立体パズルなどを見せた。俺は苦手なのだが、好きな人には堪らないだろう。


 案の定、ワイズさんは知恵の輪に夢中になっている。


「力ずくで変形させて外したりしたら駄目だからな」


「分かっております。えーと、ここをこう……あれ?」


「と、まぁハマる人にはハマる。気が付くと時間が過ぎてる玩具だな」


「……受付で暇なときに思わずやっちゃいそうね」


 いや、働けよ。



 ――――


「最後に……と言いたいところだけど、これはまだ製作途中なんだ。だからちゃんと出来たら紹介したいと思う。一番の自信作だから期待してくれよな」


 今制作中のゲームはTRPGと双六の要素を組み合わせたゲームだ。

 プレイヤーは遺跡(ダンジョン)に潜って魔物を倒しお宝を手に入れる。

 単純明快なゲームだ。

 プレイヤーは冒険者の職業から一つを選びキャラ制作をする。

 キャラは属性や魔法、職業の特技等を選ぶことが出来る。


 ダンジョンは双六になっていて、ダイスを振って数に合わせて進んでいく。止まったマス目では宝箱や魔物、罠があるので、冒険者の能力を使って進んでいく。

 勿論、魔物にやられて死んでしまったり、罠に掛かって死んだ場合はゲームオーバーだ。

 ゴールではボスが待ち構えていてボスを倒すとクリアとなる。上手くお宝を手に入れて脱出することが出来るか!!


 道中の魔物やボスは、俺達が密かに制作中の魔物トレーディングカードを使う予定だ。

 勿論なくても自分たちでオリジナルの魔物を制作してもいいだろう。


 今は魔物トレーディングカード及び難易度の調整中だ。それが出来たら販売できるだろう。


 と、まあ最後のは完全に趣味に走ってしまったが、冒険者に憧れる子供達には人気が出ることは間違いない。それに魔物トレーディングカードのスタンダードパックのようにすれば……売れないかなぁ? と考えている。


「ま、シオン様の妄想はそれくらいにして、じゃあ次は三階だね!」


 妄想とは何だ妄想とは! ……まぁいい。完成したら覚えてろよ!



 ――――


「三階は午前中にいた人は分かってるかもしれないけど、会議室があるよ! まぁそれは良いとして、メインはやっぱりシアタールームだね! 今日は特別に、シオン様対ルーナ様の模擬戦をお届けしちゃうよ!」


「はぁ! ちょっと待て!! 聞いてないぞ!」


「言ってないもーん!」


 うわっウゼェ。確かに映像はあるってミサキ達は言ってたけど、ここで流す必要はないだろ! 何でわざわざハンプールの人達に、俺が負けてるところを見せなくちゃいけないんだよ……。


「ティティ。わたくしも聞いておりませんが……そもそも、その映像とは何なのですか?」


 あれっ? ルーナも知らなかったのか。ってか、俺と同じように映像があった事実さえ知らないらしい。


「どうやらあの卒業試験の模様をキャメリアが録画していたみたいだ。俺も先日聞いたばかりで観たことはなかったんだが……殆どのメイド達はあの模擬戦を見ているみたいだぞ」


「なっ!? ちょ、ちょっと、どういうことですか!? ではわたくしのあの格好も……」


 そういえばあの時のルーナはメイド服じゃなくて、防御力重視で体のラインがくっきりと分かるスーツを着ていたな。やっぱりあれ恥ずかしかったんだ。


「はいはい、お小言は後でキャメちゃんに言ってくださいね。さぁ皆様は好きなとこに座ってぇ! はっじまっるよー」


 部屋が暗くなる。本格的に映画館のようだ。皆は柔らかい椅子に驚きながらも着席し、メイドから配られたコーラとポップコーンを手に食い入るように映像を見つめる。


 そこで始まる映像はまさにあの時の再現だった。霧の魔法のシーンは、若干の修正――霧を薄くすることでハッキリと確認することが出来、高速での攻防は分かりやすいように、スロー再生となっている。……物凄く凝っているが……くそう、これじゃあ羞恥プレイだよ。こんな状況じゃなくて、一人でじっくりと見たかったよ。

 どうやらルーナも同じ気持ちのようだ。顔が真っ赤になってる。でもいいじゃん。ルーナは勝つんだし、カッコいいんだからさ。

 だが、恥ずかしがってるのは俺とルーナだけで、他の人は全く別の感想を抱いているようだった。


 くそう……早く終わらないかなぁ。



 ――――


「アンタ……本気で強かったのね。正直疑ってたわ」


 クリスがあの映像を観て見直してくれたようだが、負け試合で見直されても正直嬉しくない。


「あの時戦わなくてよかった……ってか、あんなの反則だよ! 僕みたいな普通の人間が敵う訳ないじゃん。なんだよくそぅ」


 リュートは力の差を見せつけられて悔しがってる。いや、Sランクは普通の人じゃないからな。


「女王、絶対に敵対しないようお願いしますよ」

「分かってますよ。でも……過激派はもう終わりですね」

「……そうですね」


 女王と領主はあれを観て、俺達に逆らう気が完全になくなったようだ。いや、二人は元々裏切る気はなかっただろうが……多分、周囲が裏切ろうとも二人は絶対に裏切らないだろう。


「シオンお兄ちゃん凄かったね!」

「そうじゃろう。しかし妾はもっと凄いぞ!」

「本当!? エキドナお姉ちゃんすごーい!!」


 ……この二人は本当に幸せそうだな。


 他の者も興奮が冷めぬ様子。戦いの行方やら映像の出来栄えやら話題が尽きることはないようだ。

 だが、俺とルーナは一刻も早くこの話題から逃げ出したかった。


「「ティティ! 早く次へ!!」」


「はいはい。そんなに息ピッタリに言わなくても分かってますよ。はいはーい! 興奮してるのは分かるけど、次は城下町に行っくよー!!」

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