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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第100話 冒険者になろう

「お待たせしました。これがお二人の冒険者カードです」


 さっきまでの無礼な態度と違い、受付の笑顔スマイル付きで話すクリスから、満を持してカードを受け取った。


 見た目は身分証カードと変わりはない。書いてある内容は、出身地のシクトリーナがなくなって活動拠点ハンプールに変わってる。


 後は冒険者ランクと職業が書いてある。俺のランクはもちろんCで、職業は【魔物使い(テイマー)】だ。魔物を手懐けて使役する職業だ。


 職業は自己申告制で、それで補正があるとかではない。ただ、依頼を受けたりするのに、分かりやすくなっているだけだ。それぞれギルドが定めた職業に、自分がピッタリ当てはまる職業を選ぶだけだ。ちなみに、あくまで自己申告だから、虚偽の申請をしても構わない。まぁメリットとして仕事を受けやすくなるかもしれないが、能力がないと達成は出来ないので、虚偽の申告に意味はない。


 俺は他の候補として、剣士や魔法使いも考えたが、スーラやホリンのことを考えると、テイマーが一番だと判断した。

 ちなみにアイラの職業は【狩人(ハンター)】。弓や遠距離に特化した職業だ。エルフの彼女にはピッタリだろう。

 リンは【斥候(スカウト)】だ。情報収集や仲間のサポートを主とする職業だ。本人的には【踊り子(ダンサー)】的な職業が良かったみたいだが、残念ながら、ギルドの定めた職業に【詩人(バード)】はあってもダンサーはなかった。


 うーん、暫定的な職業とはいえ、かなり偏っているパーティーの気がする。前衛の職業がおらず、後衛のハンターとサポーター的役目のテイマーとスカウトだ。周りからすると、バランスの悪いパーティーだと思われてしまいそうだ。


「そうだ! リン。パーティー名はちゃんと考えたか?」


「ふっふっふっ、抜かりはないっスよ。蝶のように美しく舞いながら敵を倒す。【戦舞】ってのはどうっスか?」


「……舞って倒すのリンだけだぞ。それはむしろお前の二つ名じゃないのか?」


「私にはすでに【剣舞姫(ソードダンサー)】の二つ名があるっス」


「えっ? 何それ格好いい。……って、お前。剣は使わないじゃないか!」


 ってか職業スカウトだろ? その二つ名なら、むしろ剣士にしろと言いたい。


「一応短剣は持ってるっス! それに針だって似たようなものっス」


「そうか? ……まぁリンの二つ名はこの際どうでもいい。今はパーティー名だ。正直【戦舞】は悪くはないが、なんか物足りないな」


「色じゃないっスか? ほら【蒼穹の槍】とか【黄金の旋風】とかみたいな」


「なるほど、確かにパーティー名は単語が二つ合わさったのが多いな。じゃあ俺達も戦舞に何か加えるか」


 とは言っても、俺の紫はもちろん駄目だ。隠している意味がなくなる。かといって、他の色は……あっ、あれがいいかも。


「虹にしよう。虹でいい名前……月虹なんてどうだ? 【月虹の戦舞】いや、のはいらないか? 【月虹戦舞】でどうだ」


「何で虹なんスか?」


 そういえばリンには……いや、そもそもヒカリ、アイラにしか俺がスミレから聞いたロストカラーズのことは話していない。ヒカリとアイラは恐らくロストカラーズ復興のメンバーになるから、予め話してある。ただ、それ以外の人には話していない。まだどうなるか分からないしね。


 ただ、その内トオルにだけは話そうとは思っている。もし封印が破れそうなとき、どうにか出来そうなのは、シエラと同じ空間の魔法を使えるトオルだけだ。トオルなら最悪の場合は回避出来る可能性がある。まぁ先の話だし今は関係ないか。


「目標が、虹の七色えお集めるくらいのパーティーにしたいからだ。月なのは語呂がいいのと、何となく俺達って表ってより裏ってイメージだからかな」


 そう言って誤魔化すことにした。

 リンは今一つピンと来てないようだが、特に不満はないようだ。


「では、パーティー名を【月虹戦舞】で登録しますね。それではリニューアルが終わったら、ギルドへ来てください。初仕事を準備して待ってます」


 一体どんな仕事を準備するのか……クリスのこれ以上ないというくらいの笑顔が逆に怖い。

 ……これ、やっぱり逃げたら駄目だろうな。下手したら指名手配にされるかもしれない。

 ま、依頼を受けるって冒険者っぽいことにも興味はあるし、少しくらい構わない……か。



 ――――


 俺達が冒険者ギルドから出て、バルデス商会へ帰る途中、思わぬ顔に出会った。


「あっシオンさん。こんにちは。奇遇ですね。こんなとこで会うなんて」


「……エイミー、お前なんでこんな所にいるんだ?」


 シクトリーナにいるんじゃなかったのか?


「えへへ。お店のお手伝いに来ました! シャルティエさん達もいるんですよ。ほらあそこ」


 エイミーが指さした方向では、シャルティエ達第二メイド隊が道端でチラシを配っていた。道行く人もチラシが珍しいのか素直に受け取ってくれている。少し気になったが、変な奴らに絡まれたりはしてないようだ。


「第二が来たのか」


「一応城の外の活動ですからね。でも、当日は他の部隊も応援に来るそうですよ」


「へぇ、大がかりだな。で、エイミーは何するんだ?」


「私は護衛です!」


「エイミーが?」


 多分、シャルティエの方がエイミーより強いと思うぞ? あっでも流石に城から遠すぎるから力が出ないのか?


「うぅ、そりゃあ私はメイドさん達よりも弱いですよ。でもでも、メイドさん達は城の外に出るのは初めての人もいるから、私がしっかりと護衛するのです」


 なんだ。要は護衛っていうより、ただの案内役か。


「エイミーとメイド以外は誰か来てるのか?」


「セラ君達を見ましたよ。冒険者ギルドに行くって言ってました」


「えっ? 俺達今冒険者ギルドから来たんだけど……すれ違ったのかな?」


「あっギルドにいたっスよ。他人の振りをしていたみたいっスね」


 あいつら……そんなに俺達の関係者だと思われたくなかったのか?


「他人の振りしても、リニューアル時に手伝ってたらすぐにバレるのにな。ま、いいか。じゃあ俺達は一旦戻るからエイミーも頑張ってくれよな」


「はい! 任せてください」


 エイミーも久しぶりの外で、嬉しいのか随分と張り切ってる。ま、気にはなるが、見た感じ問題なさそうだし大丈夫かな。



 ――――


「ただい……おおう。随分と変わったな」


「おおーー!! ええやんええやん。広くなっとるで!」


 本店へ帰ると、そこは昨日と変わって広々としていた。


 ドルクが一晩どころか朝からの数時間でやってくれたらしい。彼はもう自分の仕事が終わったと言って、さっさと帰ってしまったようだ。あとで労いの酒でも持って行ってやろう。



 店内は邪魔なものは全て排除していた。

 今はチラシ配りに参加していなかった、残りの第二のメイドが店内を改装中だ。

 メイド以外に店内にいたのはナルターさんとレン、それからラミリアだ。

 ナルターさんはメイドと話している。どうやら掃除の仕方や城から持ってきた掃除道具の使い方を聞いているようだ。

 レンとラミリアは今はお茶を飲んでいる。俺達がギルドへ行く時は外出していたが、先に帰っていたようだ。


「はぅ! ミサキちゃん。皆おかえり。……ミハエルさんは?」


「兄やんはまだギルドにいるんちゃう? 色々と打ち合わせがあるみたいやった」


 当日の混雑や近隣の迷惑、それにリニューアル後の話など色々とあるのだろう。そこらへんはミハエルさんが全て任せてくれと言っていたから、俺は何も関与していない。


「二人は何処に行ってたんだ?」


「新商品を届けに支店の方に行ってたんだよ。どれもすこく好評だったよ。ラミリアさんには荷物を持つのを手伝ってもらったんだ」


 ああ、支店の方に行ってたのか。あっちも明日から新商品を販売するから、その荷物運びか。


「偶々時間が空いてましたからね。それにしても、私も何回か人間の町には忍んで行ったことがありますが、ここは活気があっていい町ですね」


「レンとラミやんだけズルい! それウチも行きたかったな」


「はぅぅ。だってミサキちゃんはギルドへ行くって言ってたじゃない。また明日も行くから、その時に一緒に行こうね」


「では私は明日は別の場所へ行くとしましょうか。そういえばシオンさんは冒険者になられたので?」


「ああ、無事に俺とアイラは冒険者になったぞ。これで、出身がシクトリーナってバレなくなったから、これからは気兼ねなくいろんな場所に行けるぞ」


「……今までも気兼ねなんかしてなかったくせに」


「はは、まぁな。ラミリアは? 登録すると何かと便利そうだぞ。一応協力してくれる受付もいたし、ある程度は融通が利くと思うぞ」


「そうですね。……ま、これからも旅を続けるなら、必要になるかも知れないし、考えておきます」


 あとは……セラ達と行動することもあるかもしれないし、姉さんも登録していた方がいいかもしれない。後で城に帰った時に聞いてみよう。


 それにしても……着々と準備が進んでいるな。俺は何もしてないが。


 広々とした空間。今回のリニューアルのコンセプトは見本市だ。


 流れとしては、まず入口にメイドを二人配置。客に紙とペンを渡す。

 店内は食器、調味料、玩具の三ヶ所の展示スペースを準備し各ブースにはメイドがいて商品の説明をする。

 ブースを見終わった客は入口で貰った紙に欲しい商品にチェックを入れる。それをレジに渡せば売り子が奥から商品を持ってくる。

 この奥とは城の倉庫へと繋がるゲートを用意しているから商品の場所はとらない。

 またこの時に先着でスリーブを配布。スリーブは完全ランダムになっており開けるまで柄は分からない。


 商品を購入し、外へ出ると店の横に設置した簡易テントへ案内する。そこではチラシと交換でガラガラくじが引ける。

 このくじはチラシに書いてある通りハズレはなし。必ず何かが当たる。

 一番しょぼい景品で、二割引の割引券だ。

 他にも三割、五割の割引券を用意している。

 また、割引券だけじゃなく、商品もちゃんと準備している。ビールやジュース、それにお菓子など販売するのには忍びない商品だ。

 販売すると、食品の酒や飲み物を販売している商会との兼ね合いが難しいが、ただで貰える景品なら文句はないだろう。

 そして、ここで少しでも認知度を上げておけばいざ販売する際に役に立つ。

 もしくは素材やレシピをギルドや他の商会へ卸すことも視野に入れた方がいいかもしてない。その為の準備ともいえる。


 そして一つだけ大当たりとしてエリクサーを入れてみた。まぁ流石にエリクサーとしてではなく、よく効くポーションとしてだが。

 これに関しては、絶対に販売する気はないが、こういったものを手に入れることが出来る商会だということを知らしめたいという理由だ。


 俺としては何度も思っているが、こんなに大事にする気は全くなかった。が、ミハエルさんとミサキがものすごく張り切っている。やっぱり生粋の商人は稼げるときに稼ぐってのを本能的に実行するみたいだな。

 でもまぁ俺も楽しいしから別にいいか。


 さて、俺がここにいても邪魔になるだけだ。城へ行った王子達も気になるし一旦城へと戻ることにしよう。

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