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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第95話 リニューアル計画を立てよう

「アカンて! 絶対に売れるっちゅうねん!!」


「しかし、俺達はともかく、真似された場合は、危険極まりないぞ」


「その為の商業ギルドの特許やないか。バルデス商会のしか保障出来ないことを、きっちりとアピールすればええんや!!」


 俺達は今、バルデス商会のリニューアルに何を販売するか相談していた。

 ここにいるのは俺とミサキとミハエルさんの三人だ。

 王子達をシクトリーナへ連れて行く為に、他の皆は一旦城へ帰った。明日には戻ってくるだろう。

 レンとナルターさんは会話に参加しなくて、部屋の隅で二人で談笑している。商売のことはミハエルさんとミサキに任せる気なんだろう。


 俺としては、リニューアルに販売するのは、元々シャンプーや石鹸でのし上がった商会だから、女性受けした物を売りたいと思っていた。

 だから今回はフィーアスのリャナンシーが作っている化粧品、マニキュアやちょっとしたアクセサリーをと考えていたのだが……。


「そんなのは支店で細々と追加すればええんや。今回はもっとこの町に……いや、この国に風穴を開かせるくらいの衝撃を与えなアカンのや!」


「いや、そんなに大々的にしたら、他の店との確執が起こって、ミハエルさん達の今後に影響するだろ?」


 今後もこの町で営業するのだ。他の商会と変な軋轢を生んでも仕方がない。


「せやけどこれは他の商会が売ってないから別に影響もない! 売っても問題ないやん!!」


 ミサキがさっきから売りたがっているのは、マヨネーズを中心とした調味料だった。

 確かに調味料が少ないこの世界では、マヨネーズや醤油、ソースなんかは画期的だろう。一口食べれば売れないわけがない。


「別に塩や砂糖、他にも販売されている物を売ろうとは言わん。野菜や他の食材もや。でもマヨネーズや醤油みたいに売ったことがない調味料はええんやないか? ここで特許も取れば、絶対に今後に役立つって!」


 この世界にも特許システムが存在する。特許の申請は商業ギルドで行うことになる。特許に必要なものは現物と製法、レシピだ。


 申請した商品にすでに同じ物があれば特許の申請は取れない。その為、パクリ等は余程違う部分がないと認可は貰えない。特許が取れたら商業ギルドの認可マークを得ることが出来る。認可マークは商業ギルドが安全と認めた証になる。


 仮に認可が貰えなくても販売することは可能だ。だが、認可されてない時点で、その商品は安全が保障されない。その為、本家の劣化品という扱いを受ける。


 もちろん、偽造の認可マークを作って使用することは出来ない。商業ギルドの認可マークは特殊な製法で作られているらしく、偽造は不可能なのだそうだ。

 それに、商業ギルドカードに、自分の商会が得た特許の記録が記される。

 そのため認可表に提示されてない商品に認可マークを付けて販売するのは無理である。もしそれを行った場合は商業ギルドから罰則や酷い場合は脱退をすることになる。


 例えばバルデス商会が作った液体シャンプーや液体石鹸は商業ギルドによって特許を貰っている。

 消費者は認可マークを見て安心して購入することが出来る。

 他の商会が同じ製法でシャンプーや液体石鹸を作っても特許で守られているため、例え安全でも認可は貰えない。したがって消費者には安全の保障はない。


 だから売り上げが伸びない。まぁ金額を安くすることで差別化することでなんとか張り合うくらいか。


 また全く違う製法で似た商品を作った場合はちゃんと特許が貰える。例えば石鹸が固形なら特許をもらえたり、そもそも原材料が違えばそれは特許が貰える。他にも香りを変えたりとかも大丈夫だ。下手に一つの商会に独占をさせないように、バルデス商会もその辺りの特許は取っていないらしい。


 因みに転売は可能だ。だけど転売する場合は、認可マークを外す必要がある。

 もし認可マークを付ける場合は、同じ金額で販売する必要がある。そのため転売には全くメリットがない。もし認可マーク込みで高値で売買がバレると商業ギルドからペナルティがある。


 そのため転売に関しては、せいぜい行商人が買い付けで他所の町へ売る場合のみだろう。

 だからこそ皆がこの町にやって来る。国境沿いで他国から集まる商品を売るため、または自分の国へ仕入れるため。

 だからこそ、なおさら安全が約束された特許というシステムが役に立つのだ。


 因みに当然のことながら、この特許に関しては製法、レシピが存在するもの限定である。従って鉱石などの資源や野菜、塩など一部の調味料、武具や芸術品などは対象外である。それらは代わりに生産地や生産者、職人がブランドとして存在しており、そのブランドを掲げて販売できる。


 ただこれに関しては贋作がでたり、生産地を偽る可能性がある。ただし、見つかれば商業ギルドのペナルティだけじゃなくかなり悪質な犯罪として扱われるため、リスクが高く、滅多にないことらしい。


 さて、今回のマヨネーズや醤油は調味料でも、塩や砂糖と違い明確なレシピが存在する。その為特許が貰えるのだ。だから、マヨネーズや醤油の特許を商業ギルドで貰えば市場は独占状態となる。


 ただし、これらは材料自体は有り触れたものだから、手軽に作れる。

 認可マークなしで追従をかける商会が出てもおかしくはない。もしくは料理店が独自に開発する恐れもある。


 しかし、日本と違い生卵は危険だ。シクトリーナに関しては、俺が魔法で殺菌しているから寄生虫などの食中毒の心配がないだけだ。

 そのため、真似されると、とんでもないことになってしまうのだが……。


「ミハエルさんも何とか言ってやってください」


「いやシオンさん。これはミサキが正しいです。ここは勝負するところでしょう」


 はっ? 何言ってるの?


「シオンさん。商人は売れるものを売らないという選択肢はないのです。ですが、シオンさんの懸念も分かります。ですから、そのことはしっかりと商業ギルドへと報告しましょう」


 ミハエルさんは先ほど王子達と一緒にシクトリーナの料理を食べて、マヨネーズや醤油の価値に気が付いている。


「……まぁミハエルさんがそういうなら」


 ミハエルさんまで賛成するなら、俺はこれ以上口を挟めない。そもそも、この町のことも商売のことも全く知らないんだ。仕方なく俺が折れることになった。



 ―――――


 その後も商品に関しては、念入りに打ち合わせをした。

 俺もこうなったらと開き直り、お祭り感覚で騒ぐことにした。結果……。


「なぁ。やっぱりやり過ぎじゃないのか?」


 我に返った俺はそう言うが、後の二人はそうではないらしい。


「いや、これくらいなら十分イケるって。なぁ兄やん」


「ええ、これらの商品なら、他の商会と被ることはないですし、新しい物ばかりなので売れることは間違いないです。ですが……本当にこんな貴重なものを、バルデス商会で扱ってもいいのですか?」


 特許もバルデス商会名義になるので、そこが気になるのだろう。


「元々バルデス商会に販売してもらうつもりでしたし、問題はありません。それに商品自体も、シクトリーナで量産されてますから」


 仮にバルデス商会がシクトリーナに来なくても、城下町で販売するのに特許や認可は関係ない。要はここ、人間側に売るときだけなのだ。


 だが、問題なのは売ることではなく、売った後にどうなるか……だと思う。間違いなく市場は混乱するんじゃないのか?


「せやからリニューアルの三日間限定しか販売せんのや。で、折をみて小出しにしていく。それに対策もばっちり考えたやろ」


 俺には分からないが、二人が言うには、今回のリニューアルでかなりの人が来るらしい。今まで販売したことない商品にそんなに並ぶとは思えないんだが……。こういうのって、口コミで少しずつ浸透するものじゃないの? 三日間程度でそんなに売れるとは思わないんだけど……。


 だけど、二人はそう思っていないらしい。初日から完売必至の大売れ状態になると言う。なのでそのつもりで計画を立てることにした。


 まずは貴重な商品の買い占めを防ぐため、一人につき一種類の購入制限は最大二個に限定した。

 さらに購入したい人は並びなおしてもらう。

 また貴族や地位の高い人も同様に並んでもらう。例外は一切なしだ。


 もし文句を言う人が居たらその人は無条件で販売を断らせてもらう。

 もしさらに文句を言ったり実力行使に及びそうなら、その時点でその日全ての販売を終える。


 商品はマヨネーズや醤油、それからメインのソース。

 何故ならば、この世界は魔物の肉がかなり極上なのだが、味付けは塩が殆どだ。

 その為、普通の中濃ソースだけでなく、ステーキソースから焼き肉のタレまで、かなりの種類を用意した。

 これらを購入してくれた人には、それを使った簡単なレシピも渡す。せっかく購入しても、使い方が分からなければ意味がない。


 これらを試食コーナー付きで準備する。試食コーナーの相手はメイド料理隊。もちろん他のメイド隊でもいいが、とにかくシクトリーナから出してもらう。防犯面や安全面を考慮した結果だ。これはすでにルーナから了解も得ている。


 後はツヴァイスで生産している陶器を販売する。この世界の食器は木製がメインなので陶器製の食器はかなり需要があるのではないかと予想する。


 後は遊具として、カルタとトランプを用意した。本来なら将棋やリバーシも準備したかったのだが、シクトリーナで盤の量産が追い付いていない。その為、比較的量産の容易いこの二つを準備した。


 カルタやトランプは子供の文字や数字を覚えるのに丁度いい。学校で利用するために、量産はしていた。そういえばこの世界。元々識字率はそんなに悪くない。

 自分の名前くらいなら子供でも書くことが可能だ。これは身分証カードがあるからだろう。ほぼ全員が取得するため、自分の名前や出身地の文字は覚えることが出来るのだ。


 そこでさらに文字を覚えるためにカルタを、数字を覚えるのにトランプは遊びながら学べて丁度いい。普及には時間が掛かるかもしれないが、ここを足掛かりにしていきたい。


 あと、俺が最初に考えていた女性に向けた商品は、支店の新商品として限定で置くことになった。

 まずは水仕事でどうしてもなりがちな、手荒れやあかぎれに効くハンドクリーム。

 他にも洗顔やボディクリームなど美肌効果のありそうなクリーム系商品を準備した。

 今までがミサキの魔法を元にした液体系をメインに扱っていたから、受け入れてもらえるか確かめる為に液体系は今回は除外した。

 ここが成功したら、次はマニキュアやリップなど様々な美容商品にも力を入れる予定だ。

 この辺りは俺には専門外なので、フィーアスのリャナンシーやメイド達に任せることにした。


 最後にオマケで三日間限定で本店に来店した人先着で、カードスリーブをプレゼントすることにした。このカードスリーブ。身分証や冒険者カード、商業カードなど皆が持っているカード、それを入れるためのスリーブだ。

 実は以前から気にはなっていたのだ。ほぼ全員が身分証カードを持っている。だけど、基本剥き出しの状態だ。まぁ殆ど日本にいたときのカードゲームの感覚なのだが、せっかく皆が持っている物なのだから、少しくらい面白みやオシャレがあってもいいと思う。


 今回は十種類のスリーブを用意した。それぞれ五十枚計五百枚だ。

 剣、盾、杖のイラスト付きの冒険者向けスリーブ、金貨や天秤、算盤のイラストの商人向けスリーブ、グリフォン、スライム、ロック、フェニックスをイメージした魔物スリーブ。

 裏面を見る際はイラストがあるので外す必要はあるが、表面は透明で、スリーブを外さなくても見えるようになっている。こういうお遊びにお金は掛けられないと思うが、サービスで貰う分には嬉しいだろう。


 スリーブは店内に入る際に入口で配布する。その時中身が見えないように、ちゃんと封はしてある。


 そして、本番は店内で食器類の見本、調味料の試食コーナー、それからトランプとカルタお使い方講座。それぞれのスペースにシクトリーナのメイドが付いている。これをコンビニの規模の本店で行う。店内改装はドルク達によって明日行われる予定だ。俺にはまだ教えられていないが、一体どういう内装になるのか今から楽しみだ。


 明日は店内改装とリニューアルオープンの宣伝、それから特許を取りに商業ギルドへ行く。

 俺はミハエルさんと一緒に商業ギルドへと行く予定だ。その後、可能であれば、町をぶらつき、出来れば冒険者ギルドへの登録もしたいけど……そっちはアイラも登録する予定だから、別の日になるか? とにかく三日後に向けて休んでいる暇はなさそうだ。

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