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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第86話 報告しよう

「よし、なんとか諦めたみたいだな」


 町からの追手は諦めたようで、追いかけてこなくなっていた。


「逃げる必要あったん? シオンさんなら面倒って言って全員やっつけるかと思うてたわ」


「おまえ……俺のこと何だと思ってるんだ? 俺は別に快楽殺人者じゃないぞ。基本悪い人間しか殺さん。あいつ等はしつこかったけど、別に何かされたわけじゃないからな」


 だいぶ前……俺が初めて人を殺したときに姉さんに誓ったことだ。

 あれから何年か過ぎたけど、今も自分に被害がありそうな場合と、極悪人以外は殺さないようにしている。


 これがもし仲間に危害を加えたり、確実に盗賊とグルで悪どいことをしているとはっきり分かれば、遠慮はしない。

 極悪人じゃなくても殺すことに躊躇いはないし、さっきみたいに毒の罠にかかっても気にしない。

 まぁさっきは本当に関係ないオッサンがいたから治したけど、基本は治さない。


 それに奴らは命令されただけだし、あのリーダーは極力こっちに手出しはしなかった。追いかけられただけで殺す理由はない。


「もう大丈夫だと思うけど、念の為、もう少し走ってから今日は休むことにしよう」


「ルーナにも連絡せなアカンしな」


「うっ……確かに」


「ウチが代わりにしたろか?」


「えっいいのか?」


 だとしたら……と思ったけど、ミサキは不敵に笑っている。


「ええよ。さっき着替え覗いてたって言うから」


「……やっぱり俺がする」


「それがええよ。ちゅうか何でそんなに連絡するの嫌がっとるん?」


「いや、連絡するのが嫌なんじゃなくて、怒られるのが嫌なんだけど」


「……それ、もう自業自得やん。怒られることするのが悪い」


「返す言葉もない」


 いや、偶に理不尽なことで怒られることがあるぞ? 今回も怒られるほどの事は……いや、今回は流石にルーナを蔑ろにしすぎたか。


「ま、今回はしっかり怒られて、次から気をつければええんや」


「ミサキ……お前たまに男らしいな」


「たまにって何や……いやちゃう! ウチは女や!! 男らしいって何や!」


「いやー、ミサキはいいな。打てば響く」


 うん、やっぱりツッコミは大事だ。城じゃあツッコミ不足で俺がツッコミ役みたいになってるからな。


「ウチ……ホンマはボケがしたいんや」


「諦めろ。レンと組んでる時点で、お前はツッコミの運命にある」


「せやな。どう考えてもレンにツッコミは無理や。はぁ」


 ミサキは諦めてため息をつく。


 俺だって、この後のことを思うと、ため息を吐きたくなるよ。はぁ。


 ――――


『シオン様! リンにも一方的に切られて……一体さっきから何なのですか!? 二人してわたくしを何だと思っているのですか!』


 やはりというか……連絡をして、開口一番これだ。

 俺は嫌なことは先に終わらせようと思って、ミサキに運転を代わってもらった。

 今は助手席で通話をしているのだが……。


「いや、悪かったって。これでも立て込んでたんだよ」


『リンから少し伺いました。何やら町へ行かれたとか』


「ああ、そこでちょっと奴隷を買って……」


『はぁ!?』


 ルーナの声が一際大きくなる。あれっ? リンから伝わってなかったの?


「あの……リンから聞いてないの?」


『聞いておりません!! で、その奴隷というのは女性でしょうか?』


「えっ? ああ、確かに女性だけど……」


『サクラ様ーー!! ヒカリ様ーー!! ちょっと来てくださいまし!! シオン様が女性の奴隷を購入したそうです!!』


「ちょっ!! おいルーナ! 誤解だ! おいってば!!」


 俺が必死に訴えるも、ルーナはケータイから遠いのか何の反応もない。


 しばらくすると、バタバタと複数の足音が聞こえてきた。……通話を切ったら駄目かな?



 ――――


「と言うわけでして……。すでに奴隷の契約も解除してますので……。決して疚しいことは何も……」


 流石に全身の姿が見えず、助手席にいるため、正座をさせられることはなかったが、気分は正座中だ。

 あの後、姉さんとヒカリがやってきて、通話がモニター付きのグループ会話切り替わり、一方的な尋問タイムが始まった。

 隣では終始ミサキが笑いを堪えている。


『もう一度聞くけど、本当に疚しいことは何もないのね?』


「はい。誓ってありません」


「サクラ姉さん。さっき着替えを覗いてましたよ」


「あっこらミサキ!?」


 隣で笑いを堪えていたミサキが、まさかの爆弾発言。あっモニターの向こうで三人の怒気が強まった気がした。


「あっいや、違うんです。あれはただの事故で。決して故意では……」


 隣で笑いを堪えるのを止めて、大爆笑をしているミサキを尻目に、俺は必死で言い訳をすることになった。



 ――――


『それで、シオン様。今後はどうされるので?』


 ひとしきりの謝罪と小言を終えた後、今後の方針として話し合いが始まった。


「まだ、彼女…マチルダって言うらしいけど、詳しい話は聞いてないんだ。もしかしたら、今リンとレンが聞いてるかもしれないけど、もう少し安全な場所まで行ってから、晩飯の時にでも詳しく聞こうと思う」


『話次第では、予定を変更されるつもりですか?』


「うーん、あまりその気はないかな。まぁ目的地が通り道なら、送るくらいはするけど、全く別方向なら安全そうな町で別れるかもな」


『面倒見ないの?』


「俺達の用事が終わった後でもいいなら付き合ってもいいとは思うけど、やっぱり話次第じゃないかな」


『そう。なら話が終わったら、ちゃんと報告しなさいね!』


「流石に分かってるよ。ただ、どれだけ長くなるか分からないから、報告は明日になる可能性はあるよ」


『まぁ仕方ありません。こちらですることはありますか?』


「魔法結晶の青を一つ補充でくれ。貰ってた分を奴隷市場に置いてきたから。あとお小遣いを……」


 マチルダを買ったので、現金が少し乏しい。


『……畏まりました。今後のために少し多めに渡しますが……いいですか。くれぐれも無駄遣いはしないでくださいね。特に!! 奴隷などは買わないように!!』


「そういえばシオンさん。町では娼館をチェックしてましたよ」


 またミサキが余計なことを言う。くそ……ゲラゲラ笑いやがって。


「おい! チェックしてないだろ!! ちょっとオッサンと話してただけじゃないか!」


『……お小遣いに関しては、考えさせて頂いても宜しいでしょうか?』


「いや、だから違うんだって……くそっこんなことなら、盗賊の金少し貰っておけばよかった」


『ああ、忘れておりました。盗賊の宝……というには少し少ないですが、一応百万Gと宝石がございました』


「あっあれ百万もあったの?」


『盗賊の財産にしてはあまりにも少なすぎます。某調べでは、盗賊の平均財産は一千万Gと魔道具が数点はあるそうです』


 某調べってどこ調べだよ!!

 まぁ恐らくヴォイス辺りかな? 兵士時代に盗賊の討伐もやったことがあるだろう。……もしくはゼロ辺りの可能性もあるか。まあそれの平均金額なのだろう。


「確かにそれなら少なすぎるな。酒瓶はたくさんあったけど……本当に飲み代で消えたのか?」


『もしくは本命のアジトがあったか……先に持ち出したかでしょう。あ、でも問題の家紋入りの持ち物がございましたね。少し見せていただけませんか?』


 あっアジトが複数ある可能性もあるのか。それは考えなかったな。盗賊達には全部のアジトを教えろとは言わなかったから、他の場所にある可能性は十分にある。まぁ盗賊に関してはもういいとして、それよりも今大事なのはこの家紋の方だ。


「ああ、これだ。……一応持ち主のマチルダに返そうと思う」


『その家紋……わたくしも存じ上げないですね。おそらく赤の国ではない、別の国の物ではないでしょうか?』


「……まるで赤の国の家紋は全て知っているみたい言い方だな」


 家紋ってあれだろ。貴族の数だけあるんじゃないの? だとしたら赤の国だけでも随分と多い気がするぞ。


『まず家紋を持っているのは基本、男爵以上の永世貴族。ですが、印鑑まで作る貴族は男爵・子爵にはあまりおりません。伯爵以上ですと間違いなく持ってはいるでしょうが……』


 俺はあまり詳しくないが、この世界で印鑑は手紙や贈り物に蝋で封をするのに使用するらしい。そう言われれば、物語で封蝋って手紙に赤い蝋が付いているのを見たことがある気がする。


『隣国である赤の国の家紋は覚えてはいなくても、一回は見たことがございます。ですが、その家紋は記憶にはございませんので、見たことがございません。その為、赤の国の物ではないと思われます』


 仕事に関しては完璧なルーナだ。おそらく言ってることに間違いはないだろう。だとすれば、これは他国の家紋……厄介ごとにしかならない気がする。


『シオン様、あまり深入りはされない方がよろしいかと』


「そうだな。気をつけるよ」


 ほんと、深入りはしないようにしよう。



 ――――


「ふぅ終わった」


 話し合いが終わって一息つく。


「お疲れさんでした」


 ミサキはニヤニヤしながらこっちを見てる。


「ミサキ……覚えてろよ」


「はは、堪忍や」


 謝ってる割には全然悪びれてない。今度絶対にやり返してやる。

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