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ロストカラーズ  作者: あすか
第五章 黄国内乱
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第85話 町から出よう

 リンからキャンピングカーが襲われた言われた。


「詳しく教えてくれ」


『シオン様が出ていかれた後、私はルーナ様へ連絡しました。それに関しては、後程じっくりと報告させて頂きます』


 あ、うん。そこはあんまり強調しなくていいから。


『その連絡の途中でした。町からこちらに向かって数名の男がやって来ました。どうやら最初からこの車が目当てだったようですので、恐らく例の雇い主の命令でしょう』


「そいつらは何か言わなかったのか?」


『まずは私を車から降ろそうとしました。私はもちろん断りました。あ、この時点でルーナ様への連絡を一方的に切ったので、後でフォローをお願いします』


 ちょっと!? 何しれっと爆弾発言してんの!? くそ、文句を言いたいが、俺が先にしたことなので何も言えない。


『男達は私が降りないとみると、実力行使で降ろそうとしました』


「で、車に触ったと」


『そういうことです。ちなみに無事だった男は、ホリンが一睨みすると腰を抜かして逃げていきました』


 ホリンは車の上では寝ていて殆ど動かないから、見ようによってはただの飾りに見えるんだよな。


「なら今は外に出ても問題ないな」


『ええ、大丈夫ですが』


「ならさっきも言ったように、今から一人転移させる。リンは運転席から後ろへ移動して、彼女の世話をしてくれ。俺は三人と合流したらすぐに戻る」


『畏まりました』


 俺はリンとの通話を終える。リンの方に人が行ってるなら三人の方にも行ってる可能性がある。

 急いだ方がいいな。俺は転移結晶を取り出す。


「あ、あの……」


「待たせたな。今から送るから。着いたらリンってメイドがいるから、詳しく聞くといい」


 俺は彼女の返事を待たずに転移結晶を発動させた。

 転移先はキャンピングカーの中にしているので問題ない。


 目の前の女性が突然消えたことに驚きを隠せない親父。


「旦那……あんた一体……」


「ま、俺のことは秘密で頼むわ。じゃあ俺も行くから。親父も稼ぎたかったら、もっと奴隷を丁寧に扱わないと、買い手が見つからないぞ。じゃあな!」


「えっちょっと!」


 なおも呼び止めようとする親父を俺を無視して店を出た。

 奴隷という商売は正直気に入らないが、ここで騒動を起こしても、全員を助けることは出来ない。

 だからせめて奴隷商人が良くなることを願うしかない。俺は餞別にミサキの魔法結晶を入口に置いておく。魔力の補充が出来ないから、そんなに回数は使えないだろうが、これで少しでも改善してやって欲しい。



 ――――


「あっシオンだ」

「えっホンマや。おーい!」


 店から出て大通りに出ると、アイラとミサキの声が聞こえた。

 どうやって探そうかと考ええていたが、思いの外早く見つかってよかったと安堵する。


「こっちの用事は終わったが、そっちはどうだ?」


「うーん、正直微妙やな。全部前来たときよりも、商品が高うなっとる。やっぱ赤の国がのうなって、物がなくなってるみたいや」


 それは仕方がないことだろう。ま、ここで得るものはもうないか。


「そっか。ならもういいか? リンの方が既に襲われたみたいで……だから、さっさと出て行きたい」


「襲われたって……大丈夫なん?」


「ああ、車の周りで倒れてるってよ」


「忠告無視して触ったんやな。……こっちは元々特に見たいものもなかったし、別にええですよ」


 ミサキだけじゃなく、アイラもレンも特に問題はないようなので、俺たちは町を出ることにした。



 ――――


「……で、何でこんなところに来てるんや?」


 俺達は門へと行かず、路地裏へとやって来た。


「だって絶対、門の前で待ち構えてるもん」


「シオンさん……いくらなんでも今のは笑えへんで」


「えっ? 何を言って……あっ! いや、別に意図した訳じゃ……んん、まぁいいとして、ここなら外から見えないし、転移するにはちょうどいい」


「ねぇミサキちゃん。笑えないってどういうこと?」


 あっ、こらレン、わざわざほじくるな。


「あんな、シオンさんはさっきの言葉に門と語尾のもん。を掛けたんや。普段使わない言葉を使ってる癖に、スベったからって,意図せんやったなんて言い訳するんは男らしくないで」


「いやいや、本当に意図してなかったんだって! ってか、結構使ってるぞ?」


「いや、そこ強調されても……男がもん。って日頃使ってても可愛くないですよ?」


「あーもういい。さっさと帰るぞ!」


 これ以上言い合いしても勝てるわけがない。さっさと帰ろう。



 ――――


「ただい……まぁぁあ!! ごめん!!」


 俺達がキャンピングカーへ転移すると、ちょうど着替えていた所だった。


「うわっ。シオンさん、それはないわ。引くわー」


 ミサキが俺から一歩離れる。あっ、レンも下がりやがった。


「いや、誤解だろ!! だって着替えてるとは思わないじゃないか!!」


「でもシオン様、さっき私に彼女を着替えさせろと言いましたよね? タイミングを見計らっていたのではないですか?」


 まだメイドモードのリンがジト目で俺を見る。


「あっ。やっぱり確信犯なんや」


「いやいや、確かに言ったけど! でも普通そんなピンポイントにぶち当たるとは思わないだろ!」


「……シオン、いつもは転移前に連絡するのに、今回はなかった」


 こらっアイラはそんな核心的なことを言わなくていい! ってか、さっきのもんの件で恥ずかしくて忘れていただけだ!


「うわー、確信犯的なラッキースケベを狙ってたんや。レン、ウチらも覗かれんように気をつけよな!」


「お風呂も気をつけた方が言いかなぁ?」


「くそ、お前ら好き勝手言いやがって……はぁ、俺が悪かったよ。これから気をつけるから許してくれ」


 ここは俺が折れないと話が進まない。今は結構慌ただしいんだぞ?


「ホンマに気を付けてくださいね」


 ……ミサキも城の連中に染まってきてるな。最初の殊勝なミサキはどこへいった。


「分かったって。で、リン。状況は?」


「はい。変わっておりません。今は彼女……マチルダ様を着替えさせて落ち着かせるところでした」


 そうか、彼女はマチルダって名前なのか。


「じゃあ追っ手が来ないように、急いでこの場を離れるか。ちょっと飛ばすから皆はちゃんと座っておけ。リンは助手席じゃなくてこっちにいてくれ」


「あ、じゃあウチが助手席に行くわ」


 いや、別に来なくても……まぁいいか。


 俺達はドアを開けて運転席と助手席へ向かう。


「うわっ危な! ミサキ、足下に気を付けろ」


 車を降りたところに男が倒れていた。どうやら毒にやられた奴みたいだ。生きてはいるが、辛そうだ。


「えっ? あっ、言われんかったら踏むところやった。これ全員毒にやられてるん?」


「そうだろうな。何でこんなに被害が多いんだ?」


 そこには一人二人じゃなく……五人も倒れていた。

 張り紙があって、一人が倒れたのに、何で五人も倒れるんだ?


「まぁ自業自得だし気にしな……オッサン!!」


 倒れている一人は、あの親切にしてくれた門番のオッサンだった。


「何でオッサンが倒れてるんだよ」


「いや……倒れている奴を……介抱しようとしたら……この様だ」


 オッサンは苦しみながら俺への質問に答えてくれた。よかった。話せる程度には無事みたいだ。


「いや、この毒は二次感染はしないから、車に触らない限り毒に侵されないぞ?」


「ああ……こいつらを助けてくれと……お願いするときに……つい……触って……な」


 実にオッサンらしい回答だ。


「オッサンは人が善すぎる。待ってな、今助けるから。……仕方ない。オッサンの頼みだ。ついでに他のやつも助けてやるよ」


 本来なら助けてやる気はなかったが、この町の良心であるオッサンに頼まれたら仕方がない。


 俺はこの辺りに毒の解除魔法を唱えた。ただ、速効性じゃなくゆっくりと治るようにした。すぐに治ったら、この倒れてるやつらが何するか分からないからな。


「よし、オッサン。もう大丈夫だ。多分一時間もすれば皆良くなるよ」


「……ああ、随分と楽になった。感謝する」


 元はといえば俺の毒なのだから、感謝するのはお門違いな気もするが、まぁオッサンだしな。


「じゃあ俺達は予定通り旅を続けるから。何か言われたら出ていったと言ってくれ。あとこれ。かなり強力な薬だから、もし治らなかったら使ってくれ」


 俺は余ってたエリクサーを一本オッサンの前に置く。

 これで万が一の時も大丈夫だろう。


 さてと、そろそろ気づかれるかも知れないから、急いで出発するか。


 俺が車を走らせると、門から慌てて馬に乗ったやつらが出てきた。


 だが、いくら飛ばしても無意味だ。ここは日本ではないので信号も障害物も何もない。

 時速百キロ以上を出せる車に馬が追いつけるはずもなかった。

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