第12話 魔法の勉強をしよう
第一章 魔力を認識しよう
『魔法を使うにはまずは魔力を感じる必要があるのじゃ!』
クミンの魔法入門はこのような出だしから始まっていた。
どうでもいいけど、文字まで語尾にじゃが付くんだな。
『そもそも魔力とは何なのか? 魔力とは魔素の集まりと考えるのじゃ。日本には魔素自体存在せぬから分かりにくいと思うが、まずは空気中の酸素やらと一緒に魔素と言う元素があると認識するとよいぞ』
要は目に見えない魔素と言う元素があるってことでいいのか?
『認識は良いか? じゃあ次は魔素を目で見てみるのじゃ!』
って見えるんかい! 思わず突っ込みを入れそうになった。
『見えると言ってもなんとなくじゃがの。アイリスが用意している魔法結晶を見てはくれぬか? 魔力の入ってない灰色と魔力の入ってるのを見比べてみるんじゃ。魔力の入ってる方はキラキラと耀いてキレイじゃろう? 何せ妾の魔力じゃからの!』
自分の魔力はキレイとか…自慢かよ!
『事実じゃからの』
何でその一文は別にした! 突っ込まれるのを予想しないと書けないぞそれ。俺は書いてある文章なのに会話をしているような感覚に囚われる。
『色は属性が関係しておるが、魔力を容れる量や質などで輝き方が変わるのじゃ。次に輝いておる部分に目を凝らしてみるのじゃ。そう、例えば3Dで飛び出すイラストを見るように!』
この3Dイラストとはおそらくステレオグラムのことだろう。だとすると二つの点が三つに見えるようにすることか? なんでこの子は日本に来て一日で3Dイラストとか言っちゃってるの? しかも若干のドヤ顔的な口調で。こいつは実はアホの子なんじゃないか。
とりあえず、書かれてあるように目を凝らしてみる。
すると、石の中に…なんだろう金色の粒子のようなものが見える。
例えが悪いがカーテンの隙間から差し込む日差しで見える埃って感じか? それをもっと幻想的にした感じだ。
「これが魔素……」
どうやらトオルにも見えているようだ。
『うむ、無事に見えたかの? 見えてないなら、見えるまでは、次を読むでないぞ。尚、明け方の湖や世界樹の近くだとよりよく見えるじゃろう。その景色はまさに絶景じゃ!』
それは少し見てみたいな。どうせなら色んな所を旅してみたい。
『それでは、魔素が確認出来たなら次はそれを体内に取り込むのじゃ。とは言っても、息をするのと同じような感じで、既に無意識で取り込んでおる。それを意識的に取り込むことで、魔力の操作が可能になるのじゃ。まずは体の表面付近の魔素をさっきの要領で見てみるとよい。手の甲の部分がよいかの。魔力石の中を見たときのようにじゃ。表面手の甲の辺りに魔素があるのが確認できるはずじゃ』
俺は手の甲に集中してみる。すると先程と同じように金色の粒子が確認できた。粒子は雪の結晶のように、手の甲の部分に触れると溶けてなくなった。これは取り込んだのだろうか? 心なしか魔素が当たってた部分はなんとなく暖かく感じる。
『どうじゃ? 一度認識すると解るとうになるじゃろ?なら次からは少しずつ範囲を広げていくぞ。腕、上半身、体全体とな。服の上から難しいようなら脱ぐと分かりやすいかもしれんぞ。ほれ、さっさと脱がぬか!』
こいつは……自分が見れるわけでないのになぜ脱がしたがるんだ?
気にせずに俺は右腕に意識を集中してみる。すると魔素が見えてくるが…確かに服の上からだと取り込んだイメージがしにくい。服の中に取り込まれたり、服にはじき返されたりしている気がする。
右腕の袖を捲ってもう一度挑戦してみる。すると少しずつだが、右腕に魔素が吸収されていくのが分かる。じわじわと右腕の部分が熱くなってくる。
「おお、右腕が疼く。くっ静まれ僕の右腕……」
トオルもちゃんと出来ているのか、興奮しておかしな言動を放っている。
しかし、確かに実感してくると、これは楽しいな。全身で魔素が吸収できるようになったら、金髪のスーパー化が出来そうな気がする。
「しかしこれ、どっと疲れるな」
「そうだね。ずっと集中してるもんね。体じゃなく、精神的に疲れてるんだよ。ちょっと休憩しようか」
「そうだな。飲み物、持ってくるわ」
俺はそう言ってキャンピングカーに乗り込み、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出す。
キャンピングカーから降りてトオルに声を掛けようとした時、ビックリしすぎて、思わず飲み物を落としてしまった。
トオルは俺を見てどうしたの? って顔をしている。トオルはまだ気付いてないようだ。俺はトオルよりもさらに後ろの方を見る。
そこには入口の扉が開いており、こちらを見て驚いている一人の女性がいた。




