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ロストカラーズ  作者: あすか
幕間
120/468

日常編 スミレの秘密

「今日は私のことを話そうと思うの。多分シオンのこれからに関係ある話だと思う」


 いつも通り、エルフと交流会を終えて帰ろうとすると、スミレに呼び止められた。

 今はスミレの家で二人で向かい合っている。


「関係あること? 一体何なんだ?」


「私のこの世界での役割と、この世界の未来のこと」


「は?」


 役割? 未来? 何を言ってるんだ?


「私は……他の人達と違う方法で、地球からこのカラーズへ来たの」


 違う方法? ゲートを使ったんじゃないのか?


「……どういうことだ?」


「私はね。召喚されたの」


「はぁ! 召喚!? 誰に?」


 いきなり突拍子もない話に、俺はひどく動揺する。


「分からないわ。だけどこっちへ来る前に声を聞いたの。『この大地を。色の失われた大地を再生してくれ』って」


「色の失われた大地……ロストカラーズ?」


「そう。おそらく私はロストカラーズを再生するために、ここに召喚されたの」


 驚きすぎて声も出ない。


「シオンはロストカラーズを再生させる方法を知ってる?」


 そんなの知る訳ない。


「いや? 死の大地ってことくらいしか知らない。あっでも、行こうと思えば、いつでも行けるぞ」


 城にある転移扉を使えば一発だ。


「はぁ!? なんで!! だって、ロストカラーズは何処にあるかも分からないのよ!」


 俺の言葉に今度はスミレが驚く。そりゃあ幻の大地に行けるって言われたらなぁ。


「何でって、俺達の城――シクトリーナにロストカラーズの転移扉があるから」


「なんてこと……それって、いつからあるの?」


「さぁ? 俺達が来る随分前みたいだけど……」


 シエラが魔王になったのが五百年前。あの城はその前後に建てられただろう。ロストカラーズの転移扉は戯れのランダム転移で見つけたって言ってたから、魔王としてゆとりが出来てからに違いない。


「多分その転移扉が出来たから、私が召喚されたんだわ」


「待てっ! ちょっと意味が分からない。一から説明してくれ」


 一体スミレとロストカラーズ。それから転移扉にどんな関係があるのか……。


「私がこの世界に来たときに聞いた声は、今説明したわよね」


「ああ、失われた大地を再生……だっけ?」


「ええ、もう少し詳しく説明すると、『失われた大地が結界の外へ現れた。このままなら失われた大地から死が溢れ出て、この大地もいずれ死の大地になるだろう』だから、それを私にどうにかしてくれって」


「何だそれ? 何でスミレがそんなことしないといけないんだ?」


 そんなの……こっちの世界のことじゃないか! 何でわざわざ地球にいるスミレを呼び出すんだよ!


「それは、私が特別な属性を持っているから」


「特別な属性?」


 そういえばスミレの属性が何か知らない。でもこんな迷いの森を作ることが出来るんだ。特別な属性なのは間違いない。


「私の属性は虹の属性。七色の色を持ち、色の無くなった世界に色を付けることが出来る能力。……のはずだった」


「だった?」


「足らなかったの。本来なら七色のないと駄目なのに、この世界に召喚された私は、六色しか持ってなかった。……紫が足らなかったの」


 その言葉を聞いて、ドクンと俺の鼓動が大きくなったのを感じた。


「む、紫が……ない?」


「そう。だから召喚されても使命を果たすことが出来なかった。まぁこの世界に来て、色々と酷いこともあったから、使命を果たす気持ちもなかったけど」


「その……もしかして、スミレが紫を持ってない原因って……」


 この先の話を聞くのが怖い。だって、紫は俺の属性と同じ色……。


「分からないわ。地球でシオンに属性を盗られたかも知れないし、元々持ってなかったかもしれない。私とシオン二人で虹の属性だった可能性もある。本来なら、シオンも一緒に召喚されるはずだったのかもしれない。今となっては何も分からないわ」


 やはり、間違いなく俺が関わっている。


「俺がスミレと一緒にいたから……」


 いや、召喚時に俺が一緒に居たら……。


「そうやって気に病むだろうから、言いたくなかったんだけどね。前も言ったように、仕方ないじゃない。ね、前を向くんでしょう?」


「スミレ……スマン。また自己嫌悪に陥るところだった」


 そうだ、前を向くって言ったんだ。後ろを振り返るのは止めよう。


「で、俺に関係するのは……」


 確かに虹の属性の話は俺に関係があった。だが、おれのこれからに関係があるとは?


「別にロストカラーズを再生させるのは、虹の属性だけじゃないの。要は虹の七色の属性が揃っていればいいの」


「虹の七色って……」


「赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫の七色ね。だからこの色の属性が揃えば、ロストカラーズを再生させるのは不可能じゃない。でもね、この世界では既に属性として失われた色があるの。その色が……」


 その先は言われなくても想像がつく。


「もしかして紫なのか?」


「そう、もう何千年も現れていない属性。失われてしまったと思われた属性。それが紫。シオンの属性よ」


「俺以外は見たことがないレアだとは聞いていたけど……」


「だから、ロストカラーズを再生させるかどうかは、シオンに掛かってる。シオンが他の六色を集めて、ロストカラーズを再生させるか、このまま見届けるか決めることが出来るわ」


「じゃあ俺とスミレの二人がいれば……」


「それはもう出来ないの。一つは私にはもうその力は残っていない。使命を果たさないと思ったからかな? 急速に力が衰えちゃって……。今の私は、このエルフの村を守るので精一杯。あと、私が最も忌み嫌う赤の色が、私から出ていっちゃったの。今の私は、虹の五色っていう中途半端な属性なのよ」


「いや、普通の人間は一色だけ。あのエキドナでさえ三色なんだ。五色もあれば十分だからな?」


「ああ、少し違うの。私のはあくまでも一色。虹という一色なの。それが中途半端になってるから、本来の実力が出せなくて全部の能力が低下するのよ」


 何となく理解はできた。そして分かった。スミレの虹の属性はスミレ自身が拒否したり、無いと感じたら自信から抜けていくのだ。多分紫も……いや、もう止めとこう。


「ロストカラーズを再生させなくても、別に今すぐこの世界がどうにかなる訳じゃないんだろう?」


「ええ、実際に一番危なそうなシクトリーナが大丈夫なのでしょう?」


「多分なんの問題もないと思うけど……」


 しっかりと封印が施されてある。封印が解ける様子も死が漏れ出す様子も全くない。


「なら気にしなくても大丈夫じゃない? どうしても気になるなら七人集めれば?」


「そう……だな。スミレを召喚した奴の言いなりも嫌だし、わざわざ人探しするのも面倒だ。このままでもいいなら、しばらくは放置しておくか。ってか、今の俺の周りで七色揃うかな?」


「言っておくけど、魔王までとは言わないけど、それなりの魔力は持ってないと駄目よ」


 やっぱり多少強くないと駄目か。いや、魔力だけ強ければいいのかな?


「だとしたら……戦力的にはトオルは透明だし、姉さんはピンク、ルーナが銀で全滅じゃないか。でもヒカリがオレンジで、魔力は高いから……現状、紫とオレンジの二色だな」


 他のメイドはどうだろう? シャルティエが青……いや、城から離れることを考えると、能力の落ちるメイドは考えない方が良いか。


「……多分、その二色は七色の中で、最も探すのが困難な二色よ。あとは基本の赤、青、黄色、緑。水色は基本じゃないけど、青の派生だから結構いるみたいだしね。あ、あとアイラが赤だから、アイラを使って」


「アイラ……アイラは赤なのか?」


「どうやら私から抜け出た赤の属性が、全部アイラの中に入ったみたいなの。だから、多分普通の赤よりも強力よ」


 母親の魔力を引き継いだ感じなのか。


「なら後は四色か。ミサキとレン……青と緑で最近鍛え始めたけど、流石に今は実力不足か」


 まぁ将来のことを考えると、候補に入れてもいいのかな?


《シオンちゃん。誰か忘れてるの》


「ん? 誰か忘れてたか? いや、エイミーやセラも実力不足だろ。ってか二人の属性すら知らないな。聞いたことあったっけ?」


《違うの!! 大事な相棒を忘れてるの!!》


「いや、相棒のホリンは白だ……って、冗談だよ冗談。スーラは緑だもんな。ちゃんと分かってるって。スミレ、スーラでも大丈夫だと思うか?」


「スーラさんてそのスライムよね? ……実力があれば、多分大丈夫だと思うけど」


 スミレはスーラを普通のスライムと考えてるな? 甘いな。コイツはスライムの皮を被っているが、きっと別の生物に違いない。


「んじゃあ緑はスーラだな。後は黄色と青と水色。まぁ今度黄の国に行くから、気が向いたら探してみるか」


「黄の国に行くの?」


「ああ、元々ミサキとレンがいた国で、彼女らが働いていたバルデス商会に用があってな。ま、色々と物色してみるよ」


「また変な揉め事を起こさないでね」


「……姉さんやルーナにしこたま怒られたから自重するよ。それにもうストールも持ってないし」


 くそっ。ドワーフ事件は内緒にしてたのに、一体どこから漏れたのか。というか、スミレも知ってたのか。


「ストールが関係あるの? ラミリアさんとデート中に絡まれたと聞いたけど」


 どんなデマだよそれは! ……いや、あながちデマでもないんだが。


「デートじゃない。俺とラミリアは人間の町に慣れてないから、下手に動いて目立たないように、リンとエイミーが買い出しと情報収集を食事しながら待っていただけだ。そこにムカつく冒険者が現れて、ストールをボロいと馬鹿にしたから、ちょっとしめただけで……」


「やり過ぎ」


「反省してます」


 俺がそう言うとスミレは笑った。


「うむ、よろしい。じゃあこれ。今度は馬鹿にされても気にしないこと」


 そう言ってスミレは俺に……ペンダントを渡す。


「エルフの加護が付いたペンダント。シオンだから自分の身は守れるだろうけど、ある程度の身の危険なら防いでくれるわ」


「嬉しいよ。ありがとう」


 しかし、これを馬鹿にされて、気にしないは無理だろう。やり過ぎないように懲らしめる程度に留めようと誓った。

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