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ロストカラーズ  作者: あすか
第四章 再会
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第77話 ただいま

 話し合いも終了し、俺達はシクトリーナに帰ることにした。


「じゃあ次に来るときは、ヒカリやサクラも一緒にね」


「ああ、転移で来れるからな。すぐに連れてこれるよ」


「言っておくけど、転移の条件が現在解除されてるのは四人だけだからね。次に来るときは、四人以外は必ずこのブローチを持たせて。このブローチを持ってないと、転移出来ないからね。人数分しか渡さないから、無くしたらこっちに来れる人が少なくなるだけだからね」


「分かってるよ。……色々とありがとな」


「お礼を言うのはこっちよ。シオンに会えて、憑き物が落ちたような気持ちになれたもの。これからもよろしくね」


「ああ。あっ、最後にひとつ。えーと、はい。これ」


 俺は鞄からスミレへのプレゼントを渡す。


「えっ? これ……」


「市販のもので申し訳ないけど、新しいストールだ。俺が最初に渡したストールは、巡りめぐってアイラに渡っちゃったから。代わりのストールだ。それからこれ。押し花の栞なんだけど……シクトリーナで栽培している菫の花で作った。本当なら花束で渡したかったんだけど、ここにたどり着く前に枯れてしまいそうだったから。今度来るときは、ちゃんとした花で持ってくるよ」


「……嬉しい。ありがとう。大事にするね」


 もしかしたら受け取ってくれないかも? と思ったが、ちゃんと受け取ってもらえた。


「喜んでくれたら嬉しいよ。じゃあ三人も待ってるし」


 少し照れ臭かったので俺は足早に少し離れていた三人の所へ向かった。



 ――――


「最後の最後でプレゼントなんてニクいっスね」


 だろうだろう。


「どうせ渡すタイミングを逃して、最後になったんですよ」


 うるさい! その通りだよ!


「私……プレゼントなんて貰ったことありません」


 うん。……まぁ頑張れ。


 っとに、この三人はいつもいつも……もう絶対に、この三人とは旅はしないでおこう。


「さて、じゃあ帰るか」


「待ってーー!!」


 声の方を振り返ると、アイラが走ってこちらに向かってくる。彼女らしからぬ大きな声まで出して。


「どうした?」


「はぁ……はぁ……私も、私も一緒に行く」


 余程急いでいたのだろう。息も絶え絶えにアイラは言った。


 俺はスミレの方を見る。

 スミレは小さく頷く。どうやら知っていたらしい。


「どうして俺達について来るんだ?」


「うわっ、それを聞くんスか?」

「馬鹿っ! この男は何も考えてないのよ!」

「アイラさんどう答えるのかな?」


 ほら外野! うるさいぞ。


「私も……外の世界を見てみたい。それに、貴方のことがもっと知りたい」


「えっ?」


「おお、これは予想外の大胆告白っス」

「ここまで真っ直ぐな告白は、シオンさんの好感度も高いんじゃないでしょうか?」

「ドキドキ……」


 もう三人は完全に無視だ無視。


「……昨日見せた本」


「えっ? ああ、あの俺が元ネタのやつな」


 恥ずかしくて、あまり思い出したくないが。


「他にも沢山あるの。貴方が主人公の本が」


 まだあるのかよ!? しかも沢山とか……。


「ルーナ様が聞いたら絶対に読みたがりそうっスね」

「……ちょっと興味がありますね」

「読んでみたいけど……文字大丈夫かな?」


 コイツら……いや無視無視。


「だからずっと気になってた。本の主人公が。母さんの好きだった人がどんな人だったのか」


「そっか! アイラさんはシオンさんが初恋の相手なんだね」


 あっこら! エイミーの馬鹿が!!


「初……恋?」


 ほら、勘違いするじゃないか。


「まぁ親と子の好みは似るって言われるっスからね」

「物語の主人公って憧れますからね。たとえ正体があれでも……」

「理想と現実は違いますけどね」


 言いたい放題言いやがって……。


「アイラ、三人のことは無視でいい。……まぁ動機はいいとして、母親のことはいいのか?」


「うん。見聞を広めてきなさいって」


「これは二人に強力なライバル登場じゃないっスか?」

「私はエキドナ様が言ってるだけで別に……。それより、貴女の上司の方がピンチじゃないの?」

「そうっスね。ルーナ様がどう思われるか。気が重いっス。エイミーさんは?」

「私はもう諦めてますから……」


「だー!! お前らは少し黙ってろ!」


 流石に無視できなくなったから、思わず叫んでしまった。


「違う。最大のライバルは母さん」


 ちょっと!! アイラまで何言ってんの!?


「はっ! 確かにそうっス。昨日の空気は、とても別れた者同士じゃなかったっス」

「流石は迷宮てん……ひぃっ! 何でもありません」

「なんかもう、熟年夫婦みたいな感じだったしね」

「時間の問題……」


 くそっ四人に増えて、ますます手がつけられなくなった。


《私じゃシオンちゃんのお嫁さんにはなれないけど、相棒の座は譲らないの!》


 スーラまで……。いっとくが、ホリンも相棒ポジションだからな。


「だーもう! いいからさっさと帰るぞ!!」


 俺は四人とスーラに構わずさっさと転移することにした。


「「「ちょっ!!」」」


 慌てて俺に掴まる三人。どうすればいいか分からないアイラを、ラミリアが無理矢理引っ張る。

 最後は慌ただしくなったが、俺達はシクトリーナへ戻った。



 ――――


 戻ってきたシクトリーナの様子は、変わっていなかった。

 そりゃ出発して、まだ十日も経っていないから当然だ。

 でも……長いこと離れていた感じがする。懐かしい……やっぱりここが俺の家なんだ。


 姉さんやヒカリがいつも賑やかで、城主を敬わないメイドが大勢いて、フィーアスやツヴァイスは毎日のように新しい発見がある。そんなこの城が大好きだ。


 俺は今後も今回のように旅に出ることがあるだろう。

 もしかしたら、赤の国やヘンリーのように、対立する国も出てきて戦うこともあるかもしれない。

 でも、俺は必ずこの城を守る。どこに行っても必ず帰ってくる。


 今回の旅で俺は自分の心に一区切りを付けた。

 これからは新しい出会いを求めるかもしれない。忙しくてそれどころじゃないかもしれない。

 そもそも、相手もいるか分からない。


 その相手は、今回一緒に旅をした、悪態を吐くが、俺の考えを一番理解している女性かもしれない。

 新しく仲間になった元恋人の娘かもしれない。

 そこにいるとぼけた感じの元女兵士の可能性もなくはないのか?

 それに、もしかしたらもう一度……。


 でも今は目の前にいる、笑顔で俺の帰りを待つ、完璧だけど、どこか残念なメイドに答えたいと思う。


「ただいま」

「おかえりなさい」

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。

今回で一区切り。第一部の終了とさせていただきます。


この後は、日常編を挟んで、第二部を開始いたします。

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