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ロストカラーズ  作者: あすか
第四章 再会
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第72話 エルフに会おう

「なるほどな。ここでようやく地図を使うのか」


「この地図……祭壇までの地図じゃなくて、祭壇からの地図だったんですね」


「正直分かりにくすぎですよ。まぁ簡単に解けたら困るのは分かりますけど……」


「まぁ今回は道に迷いそうにないっスね。それに地図を見る限り、そこまで離れてないみたいっスし、今日中に着くんじゃないんスか?」


 今まで全く活用しなかった地図は、これから使用する物だったようだ。祭壇の光を受けてから地図を見たら、詳細な情報が増えていた。道理で最初の森では迷ったはずだ。



 ――――


 俺達は地図の通りに進んで行くと、森の中から気配を感じた。


「見られてる?」


「ええ、敵意は……微妙ですね。ただ歓迎はされてなさそうですが」


「多分見張りのエルフじゃないっスか?」


「ほぇー。皆さん凄いですね。私にはさっぱりです」


 気配に敏感というか、魔族は人間よりも魔力に敏感だから、気がつくんだろう。


「で、どうするんスか?」


「どうしようか? まず大前提として殺すのは厳禁だ。俺達は戦うためには来たんじゃなく、友好を望んでいるからな」


「でも、襲ってきたらどうするんですか?」


「その時は、怪我させないように、無力化させるしかないな。まぁ俺の魔法で眠らせるか、それに近いことをするよ」


 麻痺までなら許容範囲だろう。……多分。


「ではお手並み拝見させてもらいますね」


 ラミリアがそう言うと、正面から二人のエルフが現れた。

 それから隠れているが、まだ数人森の中でこちらを伺っている者もいるみたいだ。


「そこの四人止まれ」


 現れたエルフの男性の言葉に従い、俺達は歩みを止める。


「いくつか聞きたいことがある。正直に答えてくれると助かる」


 優しい言い方だが、話さないと通さないと態度がそう伝えている。


「答えられることなら答えますよ。但しそっちも正直に答えるなら……ですけど。まさかエルフとあろう人達が、一方的に話を聞いて、こちらの質問には答えない……なんてことはないですよね?」


「シオン様……自分で友好的にとか言っておきながら、何でそんなに強気なんスか?」


「うるさいな。友好的と言っても、対等なんだよ。下手に出るだけじゃ駄目だろう? それに、あっちと違い、こっちは敬語で話したんだ。初対面の相手にタメ口なんて無礼な真似をしないだけ、こちらの方が正しいだろ?」


「……その話を、相手に聞こえるように言わなかったら良かったんスけどね。それを聞こえるように言っただけで、相手は初対面に敬語を使わない無礼な奴って言ってるようなもんっスよ」


「二人とも止めなさい。あの人、段々と我慢が聞かなくなってますよ。ルーナさんが言ってましたけど、エキドナ様と同じくシオンさんも交渉ごとは苦手のようですね。いいですか、私がやりますので見ていてください」


 そう言ってラミリアが前に出る。……だけど、正直ちょっと手遅れかもって思うぞ。


「それで一体何を聞きたいんでしょうか?」


 何だろう? 丁寧だし、ちゃんと聞いてるとは思うんだけど、何か高圧的に感じる。

 案の定、最初に話しかけたエルフは怒っていた。

 すぐにでも突っ掛かって来そうなところを、隣のエルフが制している。


「お、おい、何故止める」


「うるさい、お前はすぐに相手の挑発に乗るな。そっちも、分かってて挑発するのは止めてくれ。俺達は本当に確認したいだけだ」


「挑発……ですか? でしたら、あちらとあちらで弓を構えているエルフ、それから向こうで様子を伺っているエルフは、私達のことを挑発している訳ではないのでしたか?」


「初めて来る人間を相手に、諸手をあげて歓迎は出来ないさ。だからと言って、大人数で顔を見せたら威圧してるみたいだろ? 隠れているのはこちらなりの誠意さ」


 この男は隣の男と違って、口が回る男のようだ。こちらが反論しにくい言い方で答えてきた。


「そうですか。いえ、こちらのリーダーは見た目の通り小心者でして……あんな風に陰から威圧されるとどうしてもこう……分かるでしょう?」


 ラミリアのやつ……誰が小心者だ! ったく、ここぞとばかりに俺のことを馬鹿にしやがる。が、ここで反論したら、またややこしくなるだけだ。……あとで覚えておけよ。


「そうでしたか。確かに陰から見られているのが分かると、敏感に反応してしまうかもしれませんね。では、どちらも本意ではなかったと手打ちにしましょう」


「手打ちもなにも、こちらは質問には答えますよ。ただ先程この小心者も言ったように、こちらの質問にも答えていただきますが」


 いや、もう小心者はいいから。


「ええ、分かってますよ。では……まず、あなた方はどなたで、何の目的でここへ来たのか? それと、どうやって祭壇の魔道具と地図を手に入れたのかを教えていただけませんか?」


「こちらがシクトリーナ城の城主シオン。それから、そのメイドのリンと住民のエイミーです。私はシクトリーナと友好関係にある魔王、【重奏姫】エキドナ様に仕える最高幹部のラミリアと申します。以後お見知りおきを」


 俺達の名前やシクトリーナには何の反応を見せなかったが、ラミリアが出したエキドナの名前にエルフ達は隠れている者も含めて騒然となった。

 まぁエキドナって最強クラスの魔王の最高幹部がいきなり目の前に現れたら、誰だって驚くよな。


「おい! 静まれ……失礼しました。……それで、魔王軍最高幹部のようなお方が、このような場所になにようで?」


 うわー。明らかに態度が変わった。さっきまでは礼儀正しくも高圧的で、有無を言わせない感じだったけど、口調は変わらないながら、急に威圧的な態度から、何とか穏便にしようとこちらを窺うような態度に変わった。エキドナの名前一つでこんなにも変わってしまうんだな。


「私はただの付き添いですよ。用があるのはこちらの方ですから。ね? シオンさん」


「あ、ああそうだな。付き添いってか、勝手について来ただけだが」


「あっふーん、そのようなことを仰られるのですか?」


 ラミリアの瞳が後で覚えてなさいと訴えてる。

 本当のことだから別にいいだろ。さっき小心者って言った意趣返しみたいなものだ。


「えと、そちらの方はシオン殿と申されましたか? こちらの無知で申し訳ありませんが、シクトリーナ城と言うのを存じ上げないものでして……」


「まぁ名前が発表されたのが、ここ一ヶ月位だから……ここ最近の情報は仕入れてませんか?」


「ええ、お恥ずかしながら」


「では、赤の国が滅んだことも、【不死王】ヘンリーや【虚空】シエラが死んだこともご存じないので?」


 俺の言葉にまた辺りが騒然となる。もう姿見せたらいいのに。


「だから静まれ!! ……失礼しました。何せいきなりとんでもないお話を聞かされたもので……そうですね。お恥ずかしながら存じ上げませんでした。ただ【虚空】シエラが死んだかも知れないと言う噂だけは耳にしたことがあります」


 おっ? これは以前捕まえて解放した【蒼窮の槍】の情報かな?


「そうですか。シエラは二年前に死んでますから、聞いたことはあるかも知れません。ですがそれ以外は全てこの一ヶ月の間に起こったことです」


「それで貴方は……」


 今の話とどう繋がるかが気になってるんだろう。


「私はそのシエラの城の新しい城主です。シエラが死んだため、シクトリーナと名前を変えました。一応先程の情報とまとめて世界に発信させて頂いたのですけどね。エキドナとは同盟を結んでいるんですよ」


 さて、どう出るか?


「シエラの城の新しい城主……」


「聞いていませんか? 蒼窮の槍から? 伝言を頼んだんですけどね?」


「!? やはり……では、彼らに何があったか知っているのでしょうか?」


 ……何があった? 何かあったの?


「勝手に城に不法侵入したから捕まえたのですが、何も教えてくれなかったので、伝言だけ伝えてそのまま解放したんですけど?」


「それは嘘た!! あいつらには何か薬が使われていた形跡があった! それに伝言なんて聞いてないぞ!」


 俺の言葉に横のエルフが反応した。薬? あれー? どう言うことだ?


「……あっ! それはこっちの話かも知れません」


 突然ラミリアが大きな声を出す。


「どう言うことだ? 【蒼窮の槍】の話は、エキドナとはまだ出会う前だったんだけど……」


 存在すら知らないんじゃないのか?


「実は……ウチの諜報が、シクトリーナ……当時はまだシエラ様が死んだことすら知らなかったですが、異変は察知していて……。その時城から生きて帰ったエルフの情報を知って、ちょっと……いえ、特に乱暴はしていないとの報告でしたよ。ただ薬を使って話を聞き出したと……はははっ」


「いや、笑っても誤魔化されねーから。それ完全にエキドナ側の責任じゃないか!!」


「仕方ないじゃないですか!! そもそもシオンさん達が隠れて行動していたのが悪いんですよ! やっと見つけた情報源だったんですよ! 大体何ですかあれ。たった二年の間にあんなに好き勝手して!」


「隠れてたから、あんだけ好き勝手出来たんだよ! 大っぴらにしてたら、ヘンリーどころじゃないだろ! それに【蒼窮の槍】を解放したときは、まだツヴァイスは出来てねー……って、ちょっとおかしくないか? 俺達が【蒼窮の槍】を解放したのは一年以上前だぞ。で、エキドナが情報を仕入れたのは早くて二ヶ月前か? あいつら一年も何やってたんだ?」


「あっ、実は相当苦労したみたいですよ。冒険者ギルドに報告しようとして、殺されかけたり、犯罪者扱いされたり。隠れながら、ゆっくりとここに戻ってくるつもりだったみたいですね」


 そういえば、セラがギルドに報告したら、国が隠蔽するために消されるって。だから俺達と一緒に行動することにしたんだ。【蒼穹の槍】はまさにその目にあったんだな。


「ってことだ。あいつらが解放されてから、どんな目にあったかは流石に責任持てないぞ。俺達との取引を断って帰ったんだからな」


「……まぁあの人達の事はいいでしょう。それで、新しい魔王がここに何の用で来たのでしょうか?」


「いや、俺は魔王じゃないぞ。ってか人間だしな。普通にあそこに住んでるだけだ。で、来た目的はスミレ……じゃないツクモに会いに来ただけだ。多分あいつにシオンが来たって言えば分かると思うぞ」


「ツクモ様の本名を……おい!」


 エルフの男が奥にいる人物に声をかける。どうやら確認に行ったようだ。


「じゃあ確認が取れるまで、ここで待っていればいいか?」


「まだ、質問が終わっておりません。その魔道具と地図、どうやって手に入れたのでしょうか?」


「アイリスから貰った。ここにアイリスからの手紙もあるぞ。母親宛だからお前らには渡さないけど」


 俺は鞄から手紙を取り出す。


「申し訳ありません。中身は読みませんので、宛名だけ確認させてもらえないでしょうか?」


「ん? いいけど……宛名を見て分かるものなのか?」


「……間違いない。アイリス様の手紙だ」


「何でアイリス本人って分かるんだ? 名前なら俺が書いたかもしれないだろ?」


「エルフには、名前を書く際に、本人の印も一緒に書くのです。偽物とそれで区別します」


「……もしかしてその名前の横にある変なマークか? アイリスのお茶目かと思ってた」


 確かにアイリスの名前の横に変なマーク…ってか顔文字があった。てっきり日本で仕入れた知識を適当に書いただけかと思っていたが……まさかそんな意味が隠されていたとは。ってか、このエルフ達って皆名前の横に顔文字を書くのだろうか? ちょっと引くぞ。


「……そんな大事なこと言ってもいいのか? 俺達外部に漏れちゃマズい話だろう」


「あなたが言っていることに嘘はないようですから。それにアイリス様の手紙をお持ちのあなたは、十分に信頼に値します」


「シオン様……それを最初に見せれば、あんなやり取りすらする必要なかったんじゃないっスか?」


「シオンさんは面倒なやり取りが好きなんですか? 何でそんな免罪符がありながら、最後まで出さないんですか!!」


「シオンさん。私疲れましたよ。早く休みましょう」


「お前ら……俺だってこんなに効果があるって知ってたら、最初に出したよ。ってか、最初から切り札を出しちゃ駄目だろ?」


「全く……だからシオンさんやエキドナ様は交渉が下手くそなんですよ。良いですか、交渉ではまず切っていいカードと駄目なカードがありまして……」


 またラミリアの勉強と言う名のお説教が始まった。くそっ、帰ったらエキドナにラミリアが交渉下手くそだって言ってたことを報告してやる。


 俺達が言い合いをしていると、先ほど確認をしに行ったエルフが帰ってきたようだ。


「失礼いたしましたシオン様。ツクモ様がお待ちですのでどうぞ村の中へ」


 どうやら無事にスミレに話が通ったようだ。俺達はようやくエルフの村へ入ることになった。

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