その26 独立します!
「ねぇねぇ、オレツちゃん。ちょーっと相談があるのだけど」
との、ガンマねーちゃんが猫なで声で恐る恐る切り出してきたこの言葉から始まった。
「独立?」
「そー!なんかねぇー、みんなで話し合ったのよぉー。ほらぁー、今あたし達オレツちゃんにぶら下がっている状態じゃない??」
まぁ、保護下って意味ではそうですね。
「でねー、いい加減独立して、なにか役に立ちたいのよぉー!!ね?ほら、ルゥくんもほら」
「のよぉー!!」
「ねーちゃん。変な口癖移るから子守り役変えない??」
ガンマねーちゃんに殴られた。
痛くはなかったけど、過去の条件反射かちょっと痛い気がする。
「とりあえず、言い分はわかった」
殴られたところを擦る。
良かったたんこぶはない。
「とりあえずツマさんに相談してみるね」
と言うことで相談してみた。
「……うーーん…」
「うん。独立っていってもねぇ」
ここ魔界だし。
まだまだアンチ人間多いよ。
「とりあえずねーちゃん達はこの魔王城のみんなとは打ち解けてるの。なんだろう、アクセサリーとかの感性が合うのかな?定期的に女子会とかしてるし、にーちゃん達はドワーフの所で勉強してる」
元々柔軟で馴染むの早いだろうとは思っていたけど予想以上の早さだった。
「…ええー…。独立…」
最近プレゼントされた回転椅子(にーちゃんとドワーフの共同作品)を回しながら考えている。
小さな足をドレスのなかに埋もれさせ、更に膝を抱えるもんだからますます小さくなっている。
「どくりつぅ……」
頭から湯気が出そうなくらいに悩んでいるツマさんも可愛いけれど、そろそろ止めさせないと本当に湯気かでるか新しい魔物が生まれてしまう。
「でね、ツマさん。俺なりに考えたんだけどこういうのはどうかな?」
「?」
勇者御一行が人間界の境界を越え、久しぶりに魔界にやって来た。
ヒトライエ様の発狂でしばらく立ち入り禁止になっていたが、ようやく解禁された。
全く。これで生計を立てているんだからやめてくれよ。
食えなくなるだろ。
「なんだあれ」
魔王城に向けて歩いていると、なかったはずの村ができていた。
「ねぇ、勇者様。あの門の文字を見てくださいよ、人語で書かれてますよ」
「ほんとだ。しかも最後の村って書かれている。ええ、なに?怖いんですけど」
魔法使いがカタカタ震えている。
そりゃあ突然意味のわからないものが出来上がってて、しかも人語で書かれているとなると恐怖を覚える。
「どうする?行くか?」
戦士が提案する。
もし危険なものなら排除すればポイントがつく。
安全なら有効活用させてもらうだけだ。
「行ってみよう。ただし得たいの知れないものだ。気を抜かないように」
「了解」
村に近付くとフヨンと変な感触が体を撫でた。
しまった!結界か!!
慌てて警戒したが風景は変わらず、襲いかかってくるものもいない。
それどころか。
「ああーー!!勇者様だ!!勇者様が来たぞ!!」
「みんなー!こっちこいよ!!挑戦者だ!!」
わらわらと、人間が集まってきた。
「え?え?なんでこんなところに一般人が??」
賢者が困惑している。
「さあさあ、勇者様。ここまでの道のりは疲れたでしょう?良かったら足湯がありますよぉ」
「うわっ!?」
オカマだった。
「おいしーのも、あるよー」
ほら、とオレンジの髪の子供が葡萄を差し出した。
高級果実によだれが溢れ出す。
思わず手を伸ばしかけて、止める。
魔界だぞ。毒の可能性だってある。
「あまーいよ?」
ぱくりと子供が一粒頬張って美味しそうに顔を緩ませた。
毒ではなさそうだ。
恐る恐る手に取り食べてみると、天にも登るような豊潤の甘さに蕩ける。
「魔王戦に向けて、ここの村でゆっくり疲れを癒してくださいませ」
「あ、ああ。そうさせてもらおう」
そんな村人に混じって、変装したオレツはうまくいったと微笑んだ。
どうにかして人間側のお金を稼げないかと思っていたのだ。
お金が稼げれば、ツマさんに良いプレゼントが帰るし、何かと動きやすくなる。
そして人間界側で生きにくい弱者を連れてきて、わざと幸せですよアピールすれば、向こうの士気はガンガン落ちて、そのうち内部崩壊してくれる。
こっちは人間の器用さを手に入れ、どっちもウハウハ。
もちろんアンチもいるからゆっくり時間を掛けていかないといけないけど、これはオレツが向こうの王族に向けての嫌がらせだった。
「でも、どんな理由でも楽しそうだからいいか」
魔王城へと隠し扉を使って戻る。
ツマさんに大成功だと報告しないと。
実はこの村。
数年後には勇者を虜にする有名な温泉処に発展するのだが、それはまた別のお話。




