その25 ツルの職人
一面の白銀世界。
常に猛吹雪のこの階層は凍結層と言われる。
どんなに模様替えされても絶対にマグマ層の次に配置されているんだよな。確実に風邪を引かせようとしている意図が感じられる。
そんな中をオレツがあるところ目指して歩いていく。
「エエエー……ェェ…」
ブリザードエンペラーペンギンの鳴き声。
そちらに視線を向けると略してBEP達がノッソノッソと何処かへ歩いていく。
相変わらずデカイ。
50mあるもんなぁ。何処にいくんだろう。海層かな?
ペンギンの雛みたいな白い毛皮に覆われたBEPを見送りながら丘を登りきると、ようやく目的地が見えてきた。
古き良き日本家屋のようなものが雪に埋もれながらもたくさん建っている。
「粉雪さーん。起きてますか?」
扉を叩くと白い日本美人が開けてくれる。
「あ、小幸さん。粉雪さんは?」
「イエティさんと狩りに行きました。最近は侵入者もここまで来ないですし」
「大体最初の密林層で壊滅しますしね」
2メートルのゴキブリは、さすがの勇者も苦戦するらしい。
「じゃあ、マイツルさんはまだ…」
「いいえ」
小幸さんが横に首を振る。
とすると、マイツルさんに連絡が取れたのか。
すごい。
また一月待たされるのかと思った。
「では今は」
「あそこです」
指差された部屋から、カッタンカッタンと音が聞こえる。
やったぁ!!機織りしてくれているー!!!
鳥人のマイツルさんはとんでもない引きこもりだ。
それでもって世界一の織り師である。
しかしマイツルの好き嫌いはとても激しく、好みの糸ではない限り織ってはくれない。
流石はクラトネの作り出した糸だ。
一級品だ。
「いつから引きこもってますか?」
「三日ほど前からです」
「はぁー、良かったです。では、これ、お土産です」
「なんですか?」
袋の中からウサギを五羽取り出した。
草原層にいる野生のウサギだ。
「まぁ!粉雪さんもみんなも喜びます。ありがとうございます、オレツ様」
初めて小幸が表情を変えて笑顔になった。
「これくらい当然ですよ。今度は鹿を持ってきますね」
マイツルさんが織り始めたら後はトントン拍子だ。
そうして、来る日も来る日も貢ぎ物と称賛の手紙を持っていけば、あっという間に依頼した品が完成した。
見よ、この素晴らしき生地を。
見た目は雪原。
さわり心地は子猫の毛皮。
そしてこの魔力。
この布は主と定めたものの魔力に合わせて変化していく。
「ありがとうございます!マイツルさん!!この布は余すことなく活用させていただきます!!!!」
と、扉越しに伝えると、ほんの少しだけ開いて羽の先が揺らされた。
さーて!次にいくぞー!




