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第十篇

○終着点

 降り注ぐ日差しは

 在りし日の恩寵の変奏でしかあり得ず

 ゴンドラ式の夢は前へ前へと進んでいく

 やけにくっきりとした鍵盤様の駅舎は

 押し広げられた寒気によって引き締められ

 夢と現の渚にある私は

 エスカレーターの終着点にあることを未だ知らない




○肖像写真

 終わった後の全てが懐かしく

 そしてこの道に繋がっていることが信じられない

 巡り巡る出会いと別れが

 国民宿舎の果ての海へと消えていく

 あの池もまた

 どこかの海へと繋がっていれば

 私は涙を流すだろう




○時空

 耳をふさぎ目を閉じて

 チャンネルを閉じてみれば

 孤独の曙に染まる世界

 ゆらゆらと立ち昇る紫色の煙が

 空を制し大地を走る

 行き行きて見える果ての滝のその先を

 我々はいつかつかもうとしているのだ


 再び耳目を開いてみる

 すると世界は外にあって内にはないことに気付く

 そのことが却って

 その手をその心をいよいよ逞しくさせる

 拡大と収縮の只中に時間のさざ波を知ったとき

 我らはここにいることを悟る


 やがて訪れる宵の口に

 きっと原始の大地を想起することはないだろう

 だが夜明けを知らぬことが日暮れのないことを意味するのではない

 じりじりと迫る閉幕のときに

 私ができることはきっと言葉を紡ぐことだけ

 そのときには地球人として死にたいとは思わないが

 安楽の中で眠りたい

 ただそう思うのだ




○寿ぎの詩

 世間が寿ぎの気分に満たされるとき

 私はいつか神社で見かけた花嫁たちのことを思い出す

 私には縁のないことではあるけれど

 そこに幸せが横たわっているのなら

 きっとどんなことよりも嬉しいに違いない

 人よ祝え

 祝え人よ

 私は少し遅れてきっと追いつくから

 どうかその先で待っていてほしい




○色褪せた言葉

 露出せる太陽の右頬に

 参集するは夜の眷属

 紅の巫女の襟元は

 乳房の香りの禁忌

 雀躍せしめる赫々たる鼠たちは

 冷暗の地で舞踏を重ねる

 雪景色を踏みしめるゲートルの

 足跡だけがいやに薄く

 緑の萌える朝焼けに

 夢を託して再び眠る


 色彩を積み重ねた末に

 ひどく色褪せた言葉だけが横たわる

 生きる言葉は

 全て無常だ

○初出

・終着点 - 平成30年11月5日

・肖像写真 - 平成30年11月20日

・時空 - 平成30年12月23日

・寿ぎの詩 - 平成30年12月31日

・色褪せた言葉 - 平成31年2月10日

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