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機神漫遊記 ~異世界生まれの最終兵器~  作者: 十月隼
四章 機神と大会
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帝都

 予約投稿をミスってしまいました。^^; 仕方がないので来週分お休みとさせてもらいます。

 時々休憩を兼ねた補給のために人が乗り降りしない駅に停まりつつ、ボクたちを乗せた魔導列車は走り続けた。夜は座席に座ったまま思い思いの姿勢で一泊。眠らないボクはいつものように趣味に没頭していたんだけど、そのうち揺れのせいでずり落ちてきたシェリアを膝枕にしてあげたりもした。朝になって目が覚めた時の慌てようがちょっと可愛かったよ。

 そんな小さなハプニングを挟みつつも快調に走り続けた列車は、予定通り昼前に帝都の駅へと到着した。拡声用の魔導器(クラフト)でも使ってるのか響き渡る案内に従って客車を降り、溢れかえる人の流れのままに帝都の土を踏みしめる。


「おおー、やっぱりレイベアとは雰囲気が違うね」

「そりゃそうだろ。国の広さだけで言えばグラフト帝国の方がでかいんだ。首都だってその分規模がでかくなるってもんだぜ」


 帝都――正式には帝都グランディアって言うらしいけど、その街並みは一言で言うと四角い。今見えるのはすぐ奥にそびえる城壁より手前にある分だけだけど、屋根じゃなくて屋上みたいになってる建築様式ばかりだ。石造りなのか外壁の色も揃ってるし、建物の大きさも区画ごとに同じものばかりで、きっちりと規格に合わせて建てられたって感じが全面に押し出されてる。レイベアは屋根付きの家がほとんどだし、外観もけっこう種類があって自由な感じだったね。レイベアが中世ヨーロッパ風の街並みとするなら、グランディアは古代ローマ風かな?

 そんな感じで脳筋国家と聞いてた割には意外と統制の取れた落ち着きを感じさせる風景なんだけど、今はそこに溢れかえるほどの人が行き交っている。前の世界の記憶にある大都市並みだ。レイベアも賑やかだけどここまでじゃなかったよ。何かお祭りでもあるのかな――って武闘大会か!


「ふぅ……そろそろ夏だけど、やっぱりレイベアより暑いな。シェリア、そのスカーフ暑くないかい?」

「……大丈夫よ」


 額に滲んだ汗をぬぐいながらリクスが尋ねれば、シェリアは首元を覆うスカーフを引っ張り上げながら素っ気なく返事をする。どうやらこの世界も南に行くほど気温が高くなるようで、グラフト帝国自体がブレスファク王国よりも南にあることで今の外気温はやや高く感じられるらしい。そう思って改めてまわりを見れば、道行く人たちは薄手で通気性の良さそうな服装が多いのがわかる。季節が移ってそろそろ夏ってこともあるんだろうね。ボクは気温の変化に頓着しない身体だからよくわからないけど。

 まあシェリアの場合、あれ外したら首元まで伸びてる命脈が見えちゃうしね。たぶんホントに暑くても絶対に外すことはないだろうな。ボクとしてはそのせいで熱中症にならないかが心配だ。


「それで、武闘大会に出るにはどうしたらいいんだろう?」

「やっぱり出る気なんだ……先に宿を探さないかい? そうしたら宿の人にでも大会について聞けると思うんだけど」

「それもそうだね。じゃ、行こうか!」


 そう思って目に入った宿屋に入ったんだけど、あいにく満室。そこからしばらく見かけた宿屋をはしごしてみたところ、どれも満室のオンパレード。宿屋の人いわく、この時期は武闘大会を見るために観光客が国中から押し寄せるため、手頃な宿屋はほとんど埋まってるそうだ。うん、予想してしかるべきだったね。

 これはまさかの街中で野宿かと危ぶんでいると、臨険士(フェイサー)――それも大会出場のためにやってきた臨険士(フェイサー)なら、組合(ギルド)が格安で宿泊場所を提供してくれるとのことなのでひとまずそっちを目指した。ちなみにグランディアは都市面積だけでレイベアの四倍を超えるらしく、あまりにも広すぎると言うことで組合(ギルド)も東西南北の四箇所に散っているとのこと。今から向かうのは駅にも近い北の支部だ。

 教えられた場所――街を区切る城壁の門のすぐそばに建っているのはやっぱり四角い帝国様式の建物だったけど、大きさだけ見ればレイベアの組合(ギルド)と同じくらいだ。これで四分の一なんだから、この街の臨険士(フェイサー)の需要量がうかがい知れるというもの。武闘大会が近いせいか頻繁に出入りのある入り口をくぐり――


「げっ」


 かなり混雑している部屋の中、お互い言い訳のできない位置に見知ったパーティがいるのを見つけて思わず小さく漏らした。当然のようにリクスたちも向こうのパーティもお互いに気づいて歩み寄る。


「『轟く咆吼』の! 君達も来てたのか」

「『暁の誓い』じゃないか! やっぱりあの話は本当だったんだな」

「話? なんのだい?」

「お前らのパーティがあの『孤狼の銃牙』に宣戦布告したって。武闘大会で勝つんだって?」

「……それをやったのはウルだけなんだけど」

「まあそんなところだろうとは思ったけど。お前も苦労してるんだな」


 リクスと軽口を叩いているのは『轟く咆吼』の弓士、トーレン。そう、イルバス率いる『轟く咆吼』である。そりゃそうだよね、同じ時に来て宿を取ろうとすればどこも満室で、それで大会出場臨険士(フェイサー)御用達の宿泊施設が組合(ギルド)で紹介してもらえるって聞いたら普通誰でも来るよね。むしろ先にいたってことはボクたちより早くその情報を掴んできたってことだ。

 だが落ち着けボク、今ここにいるのはなぜかイルバスを除いた四人だけ。リーダー不在の理由はわからないけど、一番気にくわないヤツはいないんだ。他はむしろ気のいい連中なんだから避ける必要性は――


「やはり来たんだな、リクス」


 だよねー、どうせすぐに合流するだろうと思ってたよこんちくしょう。

 ちょうどボクたちの後ろの方から聞こえてきた声に顔をしかめて振り返れば、思った通りに両手剣(ツーハンドソード)を背負った長身の青年がとびきりしかめっ面を浮かべていた。


「仲間の力を当て込んでの大会参加か? 確かに『虹髪』と『赤影』がいれば一次予選くらいは問題ないだろうな」

「いや、おれはどっちかというとウルに付き合ってる感じなんだけど――」

「実力不足の身でか。はっ、本当にいいご身分だな」

「イルバス……」


 のっけから敵意剥き出しのイルバスに、さすがのリクスも戸惑いを隠せないようだ。うん、とりあえず黙らせよう。

 そう決意して踏みだそうとしたところで素早くケレンが進路を塞いだ。なんか予測してたみたいに手際がいい。押し通るのは簡単だけど、そこまでして止めるならもう少しくらい様子を見てあげようじゃないか。


「ああ、リーダー。大会の登録も寝場所の確保も終わったぞ! さっさと荷物を置いて今日は英気を養おう!」

「……ああ、わかった。じゃあな、せいぜい気張れ」


 そうしている内にトーレンがイルバスを促して仲間共々組合(ギルド)を出て行った。去り際にこっちを見て小さく頭を下げていったところを見ると、イルバスの態度を申し訳なく思ってはいるらしい。他の面々も似たり寄ったりな顔をしてたし、やっぱりイルバス以外はいいヤツばかりだ。

 ただ、そんな彼らが自分達のリーダーの態度を申し訳なく思いつつもなんの弁明もないところを見ると、そうなっても仕方ないって思ってることになる。なにかしら事情を知ってるんだろうか? それもイルバスがリクスを一方的に敵視しても仕方がないって思えるような。


「……ねえリクス。ホントに何もないの? イルバスのあの態度、絶対に何か因縁があると思うよ?」

「……心当たりは全然ないんだ。本当だよ」


 うっそだあ。あれだけ一方的に嫌われてるのに理由がないとか普通に考えられない。むしろボクが初めて会った時よりも明らかにヘイト上がってるよね? てことはこの前一緒に受けることになった護衛依頼で余計に神経を逆なでするようなことをやらかしてるはずだ。というか、その無自覚が余計に話をこじらせてるんじゃないの?

 ……うん、まあでも、前回は極力接触は避けてたし、イルバスと顔を合わせるような時はだいたいボクも一緒にいたし、何かやらかしてたとしたらわかるはずなんだよねー。

 だけどボクにも思い当たる節はないから、心当たりが全然ないって言うリクスの言葉も頷けてしまう。あとは単に生理的に受け付けないとかいうレベルくらいしか思いつかないけど、そうだとしたらもうどうしようもない。まさか生まれ変わってこいなんて言うわけにも行かないしね。


「まあ、わからないことを深く考えても仕方ないだろ。ほら、俺らもさっさと聞くこと聞いてしまおうぜ」


 難しい顔で考え込んだリクスを励ますように、ケレンが肩を叩いてそう言った。それもそうだね。嫌われてるってわかってるなら近づかなければいいし、向こうが我慢できなくなって襲撃してきたら返り討ちにすればいいだけだし。

 若干モヤモヤを抱えつつも、ボクたちは混み合う組合(ギルド)で受付の順番待ちをした。受付の人たちはこういった混雑になれているのかなかなか手際がいいようで、そう待つこともなく順番が回ってくる。


「ようこそ、臨険士(フェイサー)組合(ギルド)グランディア北支部へ! 大会参加希望の方ですか?」

「はい、そうです。宿がどこも満室だったんですけど、宿泊施設を提供してくれるって聞いて来ました」

「はい、承りました。こちらに所在地が記載されていますのでご利用ください」

「ありがとうございます」

「それと、こちらで大会の参加登録も行っていますが、どなたが登録されますか?」


 流れるようなスピードで周辺地図が書き込まれてる紙をリクスに手渡しつつ、ついでとばかりに受付嬢の人が聞いてきた。へえ、組合(ギルド)で参加の登録までできるんだ。わざわざ参加方法を探す手間が省けたや。というかどうやらここまでテンプレート対応になっているらしく、他の受付からも似たようなやりとりが聞こえてくる。


「あ、じゃあお願いします。えっと――ウルは出るんだよな? ケレンとシェリアはどうする?」

「魔導器使い(クラフトユーザー)に何期待してるんだよ。まあパーティ単位での集団戦もあるらしいからそれくらいは出てもいいか」

「……わたしはいいわ」


 ケレンはどうやら条件付きで参加するようだけど、シェリアはどうやら出たくはないらしい。こんな祭りの前から文字通りお祭り騒ぎなのに、そんなもったいない。


「せっかくなんだし出ようよ、シェリア! 新しい武器の慣らしもするんでしょ?」

「……ウルが出るって言うから羽を伸ばしに来ただけよ。元々出る気はなかったわ」


 口ではそう言いつつも、チラッとまわりに視線を向けたのを見逃さなかった。周囲の目を気にしてるってことは……例の種族関連かー。そう言えば実質的にシルバーランクなんだよね、シェリアって。レイベアの受付嬢の人もこの若さの女の子がもうシルバーランク目前ってことはすごいって言ってたし、これ以上余計な注目を浴びるのは避けたいってところかな? うん、わからなくもない。

 だけど待って欲しい。物語的に誰からも認められるほどの有名人が実は訳あり種族の出身だったことが後から明かされて種族ごと受け入れられるって展開、よく見かけない? 逆に転落する話も結構あるけど、その辺は話の持って行きようでどうにでもなりそうだ。

 さすがに世界を救うレベルには都合よくなるわけないだろうけど、シェリアが肩身の狭い思いをしなくてすむ可能性はなきにしもあらず! よし、ここは友達のボクがラキュア族の地位向上のために一肌脱ぐとしよう!


「そんなこと言わないで一緒に出ようよ! シェリアの実力ならいいところまでいけるはずだよ!」

「……あなたほどじゃないわよ、ウル」

「そういう話じゃないよ! ボクは格好良く戦うシェリアが見たいんだ!」

「……格好よくなんて、ないわ」


 フイっと視線を逸らされた。照れてる……わけじゃなさそうだね。別に頬が赤くなったりなんかしてないし、気のせいか目のハイライトがなくなっているように見える。どうやら本気で言ってるらしいけど、解せぬ。


「いや、シェリアは格好いい!」


 そんなセリフを、ボクが同じことを言おうとするよりほんの少し先に言ったのはリクス。


「いつも無駄な動きも迷いもなく一瞬の隙を突いて敵を倒して、でもそれを誇るのでもなく当たり前だって感じで、そんな様子は格好いいし、憧れるんだ!」


 乏しい語彙から必死でかき集めたような賞賛が、けれどなんの曇りも恥じらいもなく真っ直ぐに投げ放たれた。ボクがシェリアのまともな戦闘シーンを見たのはごくごく限られてるけど、確かにリクスの言う通りの綺麗な戦い方だった。敵の攻撃は防ぐんじゃなく、全部を見切っては紙一重でかわして急所を一閃。特に集団を相手にしている時は『踊るような』っていう言葉がしっくりくる。


「そんなことはないわ……そんなことは、ないのよ」


 だけどリクスの賞賛は、シェリアの顔を一層陰らせるだけだった。これは素直に受け取れないとかじゃなくて、本気でそう思ってるんだろう。普段とあまり変わらない無表情の中、何か伝えたいことがあるのにそうすることができない、そんなもどかしい様子を感じた。

 ……たぶんだけど、シェリアが気にしてるのはラキュア族としての力を使った本来の戦い方の方なんじゃないかな? 相手の生命を奪っては力にしてさらなる命を奪う。何も知らずにそれだけ聞けば邪悪だなんだと騒がれそうなほど物騒な能力。おそらくは昔ラキュア族の迫害に繋がったんだろうその戦い方が、シェリアには格好いいとは思えないのかもしれない。


「――ううん。リクスの言う通り、シェリアは格好いいよ」


 だからこそ、ボクが言ってあげなくちゃね。


「特に『本気』で戦ってた時なんかすごく綺麗で格好良かった!」


 彼女の『本気』の戦い方を見せてもらった友達として、それを知らなくて届かなかったリクスの分の想いも込めて。


「わたしは――」

「『友達』がこれだけ言ってるのに、信じられない?」


 ボクの言葉に含めた想いが伝わったのか、それでも否定してきそうな雰囲気なのを遮ってダメ押しの一言。そうすれば露骨に視線を彷徨わせててきめんにうろたえ出すシェリア。前に『友達』って言葉に過剰反応してたの、ボクはちゃんと覚えてるからね?


「だからね、一緒に出よ? 友達からのお願い!」

「う……」


 トドメに手を合わせて可愛らしくお願いをしてみる。あざとい? 使えるものはなんでも使う主義なんだ、ボク。実際に効果はバツグンで、シェリアも相当揺れているようだ。


「――まあ落ち着けよ、お前ら。まだ後がつかえてるんだぜ?」


 そこにやれやれとでも言いたげに割り込んでくるケレン。もうちょっとだとは思うんだけど、確かに組合の中はまだまだ混雑しているし、受付の前でずっと話し込んでいたら他の人の迷惑になりそうだ。というかすでに『さっさとしろよ』と言わんばかりの視線が痛いほど集まっている気がする。


「とりあえず、シェリアも予選だけでも出ないか? 確か予選はパーティで出た方が有利って聞いた覚えがあるんだよな。せっかく帝国くんだりまで来たんだし、武器の慣らしがてら参加してみたらどうだ? その後は辞退するなり棄権するなりすればいいと思うぜ? ちなみに、俺もその予定だ」

「……そうするわ」


 そしてケレンの出した折衷案に同意するシェリア。ボクとしては是非とも上位入賞を狙って欲しいところだけど、本人のやる気がないならどう頑張ってもムリだし、一応出場してくれる気になっただけでも良しとしておこうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] 初めの方の分に「どうやらこの世界も南に行くほど気温が高くなるようで」とありますが、「赤道に近付くほとんど暑くなる」が正しいと思います。
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