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機神漫遊記 ~異世界生まれの最終兵器~  作者: 十月隼
二章 機神と仲間
53/197

友達

=============


 彼は他の同胞と比べて賢く、そして臆病だった。

 同胞達が後先省みない行動でその命をあっさり散らしていく中、死ぬことを恐れて逃げ延びてきた。そうしていくつもの窮地をどうにか脱していくうちに自然と経験が蓄えられ、少しずつではあるがより上手くやることができるようになってきた。身近にいた同胞達も、彼の指示通りにすればいい目を見られるとわかってからは従うようになり、結果として生き延びることが多くなった彼とその配下達は少しずつ力を付けていった。

 そして彼が支配する集団がそれなりの数になったある日、報告を受けて彼らを危険視した臨険士(フェイサー)組合(ギルド)からの討伐隊が襲いかかった。

 抵抗はしながらも次々と同胞が討ち取られる中、彼と古参の配下達は不利を悟った途端にいち早く逃げ出した。辛くも追撃を振り切り、森の奥地でようやく安堵すると同時に彼は襲いかかってきた相手に対してひどく恐怖した。そして二度とあんな目に遭いたくないとばかりに人種族が滅多に入り込まない場所を住処に定めると、徹底して隠れることにした。

 手始めに森のあちこちで勝手気ままに暮らしていた同胞をまとめ上げ、自分達の存在が知れ渡らないようにした。次に勝手な行動を取らせないよう彼自身や古参の配下達の力を見せつけ、完全に支配者として君臨した。そして行動範囲を森の奥地だけに絞るよう言い聞かせ、同時に安全に住めるよう他の危険な生き物を狩り尽くさせた。

 そのやり方が功をそうし、彼が支配する同胞達の集団はかなりの期間平穏に過ごすことができた。その間に配下とした同胞の数も増え、いつしか規模は小さな国と言っても遜色ない程度にまでふくれあがり、彼はそれを支配する王として君臨した。

 彼の王国が崩壊の兆しを見せたのは、ある日森の外縁に足を踏み入れてしまった若い同胞が、たまたま遭遇した人種族の雌をさらってきたことに始まった。あまりにも数が多くなりすぎたため、彼の定めたことを見ていないところで破る同胞が増えてきた結果だった。危険な生き物を含めて狩り尽くした住処の周辺よりは、それまで手を出すことを禁じていた外縁部の方がより獲物を手に入れやすいというのも理由の一つだ。

 人種族の雌をさらってきたことを知った彼は、どうすべきか判断できなかった。今まで生き延びてきた課程で安易に人種族に手を出してしまった同胞の末路を何度も見ていたことから、このままではまずいということはわかっていた。安易に害せば同じ末路をたどることになるだろうが、かといって彼らの存在を知った相手をそのまま帰せば遠くない内にあの時のような襲撃に再び遭うことになるだろう。

 後にも引けず先にも進めない状態のまま時間が過ぎていき、そしてその日、住処へと何者かが侵入してきた。

 侵入者の排除に向かった配下達は、遭遇したらしい者はことごとくが打ち倒され、そして終わってみれば捕らえたままだった人種族の雌の姿が消えていた。そこで彼は侵入者が人種族であったことに思い至り、同時に自分達の存在が知られてしまったことを理解した。

 遠からず以前のように人種族が攻め入ってくる。そのことに気づいた彼は恐怖した。もはや時間の問題となった人種族の襲撃だが、幸か不幸か以前の時とは配下の数は比べものにならず、また個々の強さもそこいらにいる同胞よりもよほど上だった。

 このまま手をこまねいていても結果は変わらない。ならばいっそ滅ぼされる前に滅ぼしてしまおう。そう決断した彼は全ての配下に命じて軍団を作り上げると、彼の王国の存亡を賭けて住処を発った。

 しかし下手な小国程度なら滅ぼしうる大群は、森の外へと出る前に予想だにしない障害とぶつかり足止めを余儀なくされた。報告によればたった二人の人種族によって先鋒が甚大な犠牲が出ていると告げられ、頼みの数が減らされるのはまずいと判断した彼は前進を優先するように同胞へ指示を出したが、それから少ししてまばゆい光の柱が森の中を一直線に貫いた。

 何かの偶然か、近くを貫いた光の柱の余波で吹き飛ばされた彼は、身を起こしてそこに見た光景に目を疑った。つい先ほどまでそこに確かにあった森が、同胞どころか地面すら巻き添えにして綺麗さっぱりと消えてしまっていた。

 個々の強さや数の力など鼻で笑い飛ばすようなその惨状にかつてないほどの恐怖を味わった彼は、慌てて生き残った古参の配下共々この場を逃げだそうとした。

 しかしその行動も遅きに失した。迫り来る脅威を本能的に感じ取った彼が逃げ出そうとする足を無意識に止めて振り返ると、先ほど消え去った森の跡を飛翔する光の球が目に入った。そしてそれを見た瞬間に彼は悟ってしまった。あれからはもう逃げることすらできないのだと。

 そうして為す術なく呆然と見守る彼の目の前で、破滅をもたらす光球がその身に秘めた全ての力を解き放った。

 一瞬にして全てが閃光に飲み込まれる中、何を感じる間もなく彼とその同胞達はこの地上から消え去っていた。


=============


「――お、あったよ、川だ! やー、これでやっと綺麗にできるね」

「あなた、別に必要ないでしょ?」

「そこは気分の問題だよ。ボクだって汚いままっていうのはイヤなんだからね」


 イバス村への帰り道、まだ朝までたっぷり時間の残った真夜中に水面に月明かりを反射させているせせらぎを見つけたボクとシェリアは、そんなやりとりを交わしながら手早く武装を外すと服を脱ぎ始めた。今回の目的はほぼ達成したんだし、お互い周囲を楽に警戒できる方法を持っているんだから少しくらい気を抜いたって罰は当たらないだろう。

 サンダロアで本命として撃ち込んだ『核撃』の魔導式(マギス)の閃光が収まった後、森の中には綺麗な円を描く直径三百ピスカくらいの更地ができていた。当然その範囲にいた小鬼(ゴブリン)は森ごと消し飛んでいて、最終的にサンダロアの『高度探査』の範囲に残った反応は百を少し超えるくらいにまで減っていた。それまでと比じゃないくらいの大規模な自然破壊になったわけだけど、あの数の小鬼(ゴブリン)をどうにかしようと思ったらこうでもしないと無理だったんだからしかたないよね。

 とりあえず役目を終えたサンダロアを亜空間に格納すると、目の前の光景に呆然としていたシェリアを正気に戻してから手分けして残った小鬼(ゴブリン)の掃討に移った。そして少ーし自然破壊の規模を拡大しつつもあらかた狩り尽くしたあと、念のためにと二人で小鬼(ゴブリン)のねぐらの様子を見に行った。ここにいただけが全部とは限らないから、まだ残っているようならそっちもどうにかしないとと思ってのことだ。

 ボクもシェリアも身体能力がブースト状態のままだったからそんなに時間もかからず辿り着き、『探査』の魔導式(マギス)も併用しつつざっと探索したところ、ねぐらはほとんどもぬけの殻になっていた。どうやらさっきの軍勢は小鬼(ゴブリン)王国の全兵力を動員した結果だったらしい。奥の方にあった他よりしっかりした造りの穴蔵に粗末な玉座みたいなのがあったから王様もいたんだろうけど、結局見る機会はなかったな。確かめる術はないけど逃げられてたら面倒なことになるだろうし、サンダロアの『核撃』に巻き込めていたらいいんだけど。

 そんな感じで探索を終えたボクとシェリアはひとまずの脅威は取り除けたと互いに結論づけて帰路についたんだけど、その途中でどうしても身体の汚れが気になった。一応村に戻ってから一度軽く埃を落としてはいたんだけど、それから大暴れした結果として再び薄汚れてしまっていた。特に『爆轟』をばらまいていたボクは埃まみれになっていて、そこに草の汁や土なんかがくっついていたりとかなり悲惨な有様だ。

 シェリアも戦いが終わったと判断して赤い結晶をどうやってか霧散させていたけど、どうやらそれと血は別物のようで、直接斬り捨てたときに浴びたらしい小鬼(ゴブリン)の返り血があちこちにべったりとくっついているというなかなか猟奇的な見た目になってしまっていた。

 こんな状態で村に戻ろうものならドン引きされること間違いなしなため、帰り道で『探査』に引っかかった川へと汚れを落としに来たのだ。


「――あ、そうだ。せっかくだから聞いておきたいんだけど、いいかな?」


 下着姿で川の浅瀬を利用して衣服を水洗いしながら、ふと思い立って隣で同じようにしているシェリアに尋ねた。


「なに?」

「さっき武器とか身体とかに赤い結晶みたいなのがくっついてたけど、あれって何? 見てた感じだと活力とか生命力とか、そんなものの塊みたいな気がしたけど」


 推論混じりにそう聞いてみると、シェリアは普段はあまり動かさない表情を目一杯驚きの形にした。


「――なんで知ってるの?」

「知ってるわけじゃないよ。ただの勘みたいなものだけど、その様子だと当たりかな?」


 厳密に言うと前の世界の記憶にある物語の設定からの当て推量だけど、まあそこまで詳しく話すことでもないかな。似たような力は定番といえば定番だし、推測するのも簡単だった。


「……そうね、あなたの言う通りよ。ラキュア族は手にかけた相手の『生命』を奪い取ることができる。何もしなければそのまま自分の糧になるけど、力の行使に慣れればあんな感じで結晶として身にまとわせることができるの」


 なるほど、戦う相手の生命力を吸い取って身体能力を上げられるんだ。それでさっきシェリアにブーストがかかっていたわけか。しかも糧にするってことは、ひょっとしたら体力回復効果とかもあったりするのかな? それで能力の発動に血を呑む必要があって、血のように真っ赤な結晶を身にまとって戦うと。うん、確かにこれなら知らない人から見れば相手の血を吸って無尽蔵に戦う化け物にも映るか。


「なんか、ラキュア族が勘違いされてる理由がわかった気がするよ」

「そうね。わたしはハーフだから一部を覆うのが精一杯だけど、一度だけ母さんが本気で戦った時は全身を『命晶』が覆ってて、それこそお伽噺に出てくる悪魔みたいだったわ」


 しみじみと呟いたボクに合わせてそんなことを言いながら自嘲気味に笑ったシェリアだけど、今それより重要なことをサラッと言わなかった?


「シェリア、ハーフなの?」

「そうよ。母さんは純粋なラキュア族だったけど、父さんはただのヒュメル族。その間に生まれた半端者の子供がわたしってわけね」


 そう自虐するようになんでもない様子で告げるシェリアを思わずマジマジと見つめるボク。

 ハーフ。この世界じゃ基本的に異種族間で結ばれて子供が生まれても、両親どちらかの種族として生まれてくるのが常識らしいけど、片親がヒュメル族だった場合にだけ稀に例外が発生する。それがハーフという存在で、もう片方の親の種族的特性を受け継ぎながらも持って生まれた能力は劣る。

 けれど、この世界の歴史には過去にハーフとして生を受けた英雄達が数多く存在している。生い立ちによる逆境がそうさせたのかもともとそれだけのポテンシャルが秘められているのかは知らないけど、将来的には大きく成長していく可能性が高いのは間違いない。

 希少なハーフという生い立ち。しかも母親は世間的には忌まれる種族で、本人も種族のことは隠している。そのせいで基本的に人を避けているようだけど、根は優しく仲間思い。そして秘めた力は一騎当千と言っても差し支えなし。え、何この王道を地でいくパーソナリティ?


「シェリア!」

「え、ちょ、急に何!?」


 感極まって思わず大声を上げながらシェリアの手を取り激しくシェイクした。当のシェリアはボクの急な行動にわけがわからないと言いたげな顔をしているけど、そんなことは関係ない! 今この感動を伝えなくてどうする!


「ありがとう! ボク、キミと友達になれてすごくよかったと思ってる!」

「な――え、その、ちょっと! い、いきなり何を言い出すのよ!?」


 そうすればなにやら顔を赤くしてわたわたと慌てた様子で手をふりほどこうとするけど、その程度じゃ絶対に逃がさないからね! まさか偶然知り合った相手がこんな主人公属性を持ち合わせていたなんて嬉しい予想外だ! しかもその母親と父親も訳ありロマンスの臭いがぷんぷんしてる! さすがにいきなり突っ込んで聞くのは自重するけど、想像するだけでもすごくわくわくする!

 うわーどうしよう、これから先の旅がますます楽しみになってきた! これは今夜眠れないぞ! もともと寝る必要はないけどさ!


「――わ、わたしも聞いていい!?」


 興奮冷めやらずひたすらシェリアの手をシェイクしていたら、そこから脱出しようともがいていた当人が唐突に声を張り上げた。


「何かな? ボクに答えられることならなんでも話すよ!」

「……さっきのあれよ。なんであなたはあんな途方もない力を持ってるの?」

「それはボクが『兵器』だからだよ! いざという時のためにも、局面をひっくり返せるような切り札は絶対に必要だからね!」

「普段からあんな力を使わないのはどうして?」

「普通に暮らす分にはいらないからね! それに下手にいつでもあんなことができるって知られたら怖がられ――」


 ……あ。

 そこまで口走ってからふっと我に返って固まった。この身体に血流があったら今頃顔は真っ青になっていたに違いない。

 秘密の共有をしたからってなんとなく大丈夫な気でいたけど、シェリアはボクが身一つで大量破壊兵器をぶっ放してみせたのを目の当たりにしたんだ。いくらお互いに共有する秘密があったとしても、そんな光景を目の前で見せつけられたら誰だって恐怖を覚えるだろう。少なくともボクが同じ立場の一般人なら普通にドン引きする確信がある。

 そのことに今の今まで思い至らなかったという事実に半ば自己嫌悪に陥りつつ、ずっと握っていたシェリアの手を離してそうっと距離を取った。


「……また急にどうしたのよ」

「えっと、その、ゴメンね? さすがに恐かったよね? 無理させてたなんて思いもしなかったから……すぐにもっと離れるよ」

「あなたねぇ……」


 そう言ってから急いで離れようとしたら、なぜか呆れたような声と共にシェリアが距離を詰めてきてボクの手をしっかりと取った。


「散々好き勝手に暴れておいて、何を今更なことを言ってるのよ」

「いや、ちょっと、その……ゴメンね?」


 ふりほどくことは簡単だろうけど、さっき盛大に怖がらせたばかりでまた乱暴なことをするのは気が引けたボクは逃げようにも逃げられず、図らずもさっきとは逆のような構図になったところでぐいと引き寄せられ、意外なほどの力強さに思わず従ったところで抱き留められた。


「ウル、あなたはいつでもあの力で暴れ回りたいの?」


 思いがけない状態に一瞬思考が停止したところへ、やや高い位置から発せられた言葉がボクの耳に届いた。


「……ううん。ボクは『兵器』だけど、その活躍がない方がいいってことはわかってる。だから無駄に誇示したいわけじゃないんだ」

「今回使ったのはどうして?」

「必要だと判断したから。そうしないとイバス村とか森の周辺とか、下手したらもっと大きな範囲で被害が出ると思ったんだ」


 シェリアから重ねられる問いかけに対して、なんの意図があるのかわからないけど極めて正直に答えていく。

 神様を自称してはいるけれど、だからといってボクには起こってしまったことは変えられない。ボクができるのは被害が広がらないように、哀しむ人が増えないように、せめて最後には救いがあるようにすることだけ。それがボク、救いをもたらす者(ウルデウス・エクス・マキナ)だ。


「つまり、理由がなければあの力で攻撃しないのね。わたしのことはどうなの? 血を啜るって言われてる人の姿をした化け物の末裔よ?」

「……シェリアは誰か人を襲いたいの? 誰かが哀しむのを望んでいるの?」


 揶揄するような質問に対して逆に尋ね返せば、シェリアははっきりと首を横に振った。


「いいえ、全然」

「なら、ボクはどうもしないよ。もし『悪人』でもない人を不幸にしようとするならどんなことをしてでも止めるけど」

「――それなら、なんの心配もないわね。襲われる理由(・・・・・・)もないのに(・・・・・)何を怖がらなくちゃ(・・・・・・・・・)いけないのよ(・・・・・・)?」


 まるで強調するかのように告げられた言葉には覚えがあった。初めて互いの秘密を明かした時、自分のことが恐くないかって聞いてきたシェリアに対してボクが返した台詞とほとんど同じだ。

 あの時ボクは何の気なしに言った言葉だったけど……そうか、自分のことを怖がるような理由が十分にあるはずの相手に言ってもらえたら、こんなに嬉しいものなんだね。


「……ありがとう、シェリア」

「お礼なんていいわよ。あなたのおかげでわたしも――なんていうか、気が楽になったんだしね。それに――ほ、ほら、その……と、友達、なんでしょ」


 思わぬ台詞がシェリアから出てきたことに驚いて顔を上げると、ものすごい勢いでそっぽを向かれた。ただ、その頬に赤みが差しているのを、月明かりの下でも機工の優秀な視力は見逃さない。どうやら自分でいったことに照れてらっしゃるみたいだ。

 その様子を見て、ボクはにやっと笑みを浮かべた。


「そうだね、ボクとシェリアは友達だよね」

「――そ、そうよ! 友達なら相手を励ますくらいは当たり前なんでしょ!?」


 念を押すようにそう言ってみればそっぽを向いたままてきめんに顔を赤くし、照れ隠しのつもりかちょっと逆ギレ気味にまくし立てるシェリア。やだなにこの娘、可愛い。普段がクールな感じがする分、そのギャップに萌える。

 ……それにしても、友達かぁ。考えてみればボクがこの世界に生まれてから初めてじゃないかな? ――うん、エリシェナはどっちかっていうと親戚の子みたいな感じがするし、今生初の友達はシェリアってことになりそうだ。ロヴ? あれは単に絡んでくるおっさんだから断じて友達じゃない。


「シェリア、聞いてよ。なんと、シェリアがボクの友達第一号だよ!」

「――っ!? よ、よかったじゃない」

「うん! 友達、嬉しいなー、友達!」


 新たな気づきに乗っかって無邪気を装いつつ『友達』を連呼すれば、シェリアはとうとう目に見えてうろたえ始めた。ふっ、思った通り、友達っていう存在に慣れてないみたいだね。今まで正体をひた隠しにしてきたってこともあってか、そういう親しい関係を表す言葉に弱いようだ。顔立ちが整っていることもあって、反応がいちいち可愛い。


「――そ、そんなことよりも! さっさと汚れを落としなさいよ!」


 とうとう限界に達したのか、キレ気味に喚きながらずっと抱えていたボクを突き飛ばすようにして離れるシェリア。ちょっとやりすぎたかな? せっかくの友達認定ももらえた上に反応も十分に堪能したんだし、これ以上はやめておこう。


「そうだね、あんまりのんびりしすぎてもリクスたちが起きちゃう――」


 言いながら洗濯を再開しようとして、手に何も持っていないことに今更気づいた。あれ、どこにやったっけ?

 少し過去を振り返って、そういえばシェリアの生い立ちを知ったことで興奮した時に手を離していたことに思い至る。慌てて周囲を見回すも、いくら浅くて流れが緩いからって川の中で服を手放せば当然流されるわけで。


「流しちゃった……」

「何をやってるのよ……」


 呆然と呟いたボクに呆れた顔をするシェリアは足でしっかりと服を押さえていた。うん、そのやり方は賢いと思う。ボクも今度からそうしよう。


「ちょっと待ってて! すぐに取ってくるから!」


 それだけ言い残して口頭鍵(トリガー)を口ずさむと、『本気』状態になったボクは水しぶきを盛大に蹴立てながら流されていったであろう服を追いかけていった。

 なんだか締まらない感じになっちゃったけど……里のみんなが作ってくれたまごころの結晶をなくすわけにはいかないからね!



 これで二章は終わりです。関わりの広がりと、主人公の『普通』と周囲の『普通』のズレを中心に書いてきたつもりです。やっぱり一人称視点だと掛け合いの相手がいないとその辺はなかなか描写できませんので。

 こつこつとお気に入りに登録してもらえている数も増え、毎日のアクセス数を励みにここまで頑張らせてもらってます。意見、感想なんかももらえたりしたらもっとテンション上がりそうなのでいつでも大歓迎です。レビューなんかも書いてもらえると嬉しいなー。(チラッ

 さて、ここで少し連絡を。最近リアルが忙しくなってきまして、投稿分がとうとう追いついてきてしまいました。そこでまことに勝手なのですが、二週間ほど充電期間を頂きたいと思います。6/15に三章の投稿から再開しますので、それまで少しの間お待ちいただければと。

 ひとまず、ここまでお付き合いくださりありがとうございます。少し期間は空きますが、よければこれからもウルの気ままな旅路に付き合っていただければと思います。

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