橙石の月、4日
昔と比べて…っていうやつ、よくありますよね。
今日の仕事は、俺がギルドに着くと同時にやってきた仕事終わりの若い冒険者さんの相談から。
仕事は無事に終わらせてきたけど、なんだかモンスターをうまく倒せないから相談に乗ってほしいという話だったけど、手に持っている剣がどう見てもボロボロ。
それじゃぁ、倒せるはずがないだろう! と正気に戻れ棒を全力で振りぬく。
顔面クリーンヒットでギルドの外へと転がっていって、ついでに剣も真ん中からぽっきりと折れてしまった。
色々文句を言われたけど、ちゃんと手入れをしてない方が悪い。
てか、俺のフルスイングすら避けられないんじゃ色々とマズイと思ったので、たまたま全部見ていた剣士さんに訓練をつけてもらうようにお願いしておいた。
そんな始まりだったのでやる気が出ないけど、傷薬の依頼が一件入っていたので、ちょっと時間をかけて作る。
一発目の仕事がああいうのが来る日は、他にも変なのが来ることが多いからやる気が出ないのだ。
傷薬が出来上がった時に、また別の相談者さんが来たと声をかけられる。
朝とは違い、今度の相談者は昔からギルドにいる冒険者さんでギルド職員さんも何事かとざわついてた。
じっくり話を聞くと前回の依頼の時から体の動きが悪いとの事。しかし、呪いとか毒に侵されている形跡はない。
どんなふうに動きが悪いのかと聞くと、すぐに息が切れるようになった。武器を長時間持ち続けられないなどなど……。
まぁ、ここまで聞いたら察しはついたので、今朝のように正気に戻れ棒をフルスイング。
そして、顔面直前で止める。俺より強い人で前なら武器を構えて防げただろうに今はそれすら出来ていない。
冒険者さんも察してくれたようで、悪かったねと一言言ってギルドを去っていった。
どんな人でも、老いには勝てないのだ。
それ以降はとくに仕事も入ることなくダラダラとしていた。
でも、あの冒険者さんの背中がちょっと忘れられない。体一つで稼ぐ仕事である以上こういった事はよくある。
見誤って死ぬこともあるだろうし、今回のように不服ではあろうけど生き残ることもあるだろう。
俺は、教会から教わった通り、正気に戻れ棒を振るうか傷薬を作るしか出来ない。
モヤモヤするけど、命は大事にしないとね。
読んでいただき、ありがとうございます。




