橙石の月、9日
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この話の続きとなります。まだ読んでない方は、読んだ方が話が分かると思います。
今日は休み。
今日こそ、この間のダンジョンの報告をまとめる。
ダンジョンの入り口が人がぎりぎり通れるくらいの穴だったのに、奥へ進んでいくとどんどん道が広くなっていき、石畳の床に変わっていく。
等間隔に松明があり、まっすぐに道が続いているように見えるが、よく見ると扉のような物がいくつか見える。
さて、どうしようかと剣士さんがムキムキリーダーさんに尋ねる。
まっすぐ道が続いているようだから、まず真っ直ぐ進む。できて日が浅いダンジョンは罠の心配はいらないし、宝もないことが多いから、どんどん先に進むほうがいいと答えるムキムキリーダー。
先に話していた通り、ムキムキパーティが先頭になり、俺と剣士さんパーティは背後に注意しながら進む。
そして、松明が導くままダンジョンを進んでいく。
曲がる事はなく、モンスターも出ることもなく、ただ真っ直ぐ進む。
ダンジョンに潜ることに慣れてない俺にはとても長い時間のように感じたけど、30分ほどで下の階層へ降りる階段が見えた。
普通のダンジョンなら罠を警戒した方がいいのだろうけど、ムキムキパーティは何も気にしていないように進んでいく。
ムキムキリーダーが階段を下りながら色々話をしてくれたんだけど、ダンジョンはまずコアの周辺から複雑化していくので、最初の階層は大分時間をかけて複雑になっていくらしく、出来て二週間もたってないという話だから、5階層ちょいくらいじゃないかという予想を語ってくれた。
二階層目に着き、また真っ直ぐ進んでいく。
扉には見向きもしないで、真っ直ぐな道をただ進んでいく。
先ほどと同じくらいの時間を歩いて、階段を見つけて降りていく。
三階層が近づいてくると、なにやら音が聞こえてきた。
それは、どうやら歌のようで誰もが気づいた瞬間に足を止めた。
モンスターしかいないダンジョンで歌が聞こえてくるということは、なんらかの呪いの効果を発揮させる呪歌の可能性があったからだ。
少し階段を戻り、三階層について話をする。まず呪歌の影響を受けてないかお互いに調べあったが大丈夫そうで、俺も教会から支給されるアミュレットが何かの呪いを感知した場合、所持者に激しい痛みを与えて正気に戻すという仕組みになってるけれども、特に痛みは感じないから問題ないと伝えた。
なんだろう、なんでこう物騒な支給品ばかり目立つんだろう。正気に戻れ棒とか。
あれもただの杖なのに、殴った相手を自動で判別して効果が変わるとか、教会の技術はおかしい。
色々気になるけど、ダンジョンの続きを書いていく。
ただ歌を歌っているという余裕を見せているのか、それとも何か別の思惑があるのか。
そこらへんをはっきりさせないと危ないと判断し、ムキムキパーティから一人、剣士さんパーティから一人偵察を出すことになった。
もちろん剣士さんパーティからは俺がいった。
ムキムキパーティからは、とても大きな武器を背負っているメンバーの中では小さいめの武器を持った人が選ばれる。
小さめといっても、頭から膝のあたりまである剣を背負っているんだけど。
その人、ムキムキスカウトさんとするか。と二人で階段を静かに降りていき、三階層の床が見えるぎりぎりから様子をうかがう。
天井には照明となる謎の結晶があるようで、明りの用意はいらない。
その真下に歌を歌っている下半身が蛇のようになっている女性が6人、おそらくラミアだ。
そして、その奥にラミアを一回り大きくさせた上半身が男性のような何かがいた。
ソイツをラミアが囲んで、ただ歌を歌っているだけで何らかの儀式に使うと思われるような魔法陣、供物等はなさそうだった。
その様子をムキムキスカウトさんと二人で確認し合い、みんなのところに戻る。
見てきたことを伝え、どうするか話し合う。
ラミアより大きく、上半身が男性になっていたアレは恐らくナーガではないかという事で話が一つまとまる。
報告例はあまりないが、ラミアと一緒にいることがあり、主に魔法で戦うことが多いラミアに対して、肉体を使って戦ってくる前衛タイプのモンスターらしい。
儀式をしているのではなく、ただ歌を歌っているだけなら奇襲をかけ、一気に叩くのがいいと方針を決めていく。
ラミアたちをムキムキパーティが襲い、その隙に術士さんにナーガを魔法で大ダメージを与え剣士さんパーティで仕留める。という流れを決めて、あとは臨機応変に戦うことに。
ここが三階層であることから、まだダンジョンの奥にさらにボスがいる可能性も考えて、一番強い攻撃魔法ではなく、3番目くらいに強い攻撃魔法を術士さんに準備してもらう。
ぶつぶつと呪文を唱えていた術士さんの杖の先端に光が集まっていく。
そして、光が安定していき、剣士さんに頷く。剣士さんはムキムキパーティに合図を送り、ムキムキパーティが大声で叫びながら、三階層に突入していく。
叫び声を聞いたラミアたちは驚き、恐怖に戸惑う。奥にいたナーガはラミアたちを落ち着かせようとして、こちら側への注意がそれたところを狙って、術士さんが攻撃魔法を放つ。
杖をナーガに向けると、先ほどまで集まっていた光が一瞬強く輝くと、真っ直ぐにナーガに向かって飛んでいく。
ナーガが気づく直前に光が当たり、燃え始める。
そこへ向かって、剣士さんと俺とで追い打ちをかけに行く。
焼かれて暴れるナーガの燃えてない尻尾の部分をメイスで叩く、鱗が固く思っていたほどではないが傷を作り血が流れる。
剣士さんも背中に持っていた槍で燃えていない、鱗に包まれてない、そんなギリギリを突く。
暴れまわるナーガの尻尾や燃える上半身に気を付けながら、ちくちくと攻撃を続ける。
そして、どれくらいの時間がたったか分からないけど、やっとナーガの上半身は黒こげになり、動かなくなった。
ムキムキパーティも七匹いたラミアをちょうど倒し終わったところだった。
最初はいなかった七匹目は、戦闘開始してしばらくしてから現れたのだが、ムキムキパーティがうまいこと相手をしてくれて、こちらにほとんど被害が出ずに殲滅させることが出来た。
倒したモンスターは放っておくと、ダンジョンに吸収されてしまうので魔力核を取り出す。
ダンジョンに出てくるモンスターには必ず核があり、核は様々な事に利用することができるので、冒険者さんたちの稼ぎの一つとなっている。
少し休憩をいれることに。
持ってきた荷物の中からすぐに食べられるパンと干し肉、それと水筒を出して手早く食事を終える。
ちゃんとしたものが食べたいとは思うが、ここはダンジョン。
モンスターたちがうごめく場所で食べるより、落ち着いた町の中の食堂でちゃんと椅子に座って食べる方がいいに決まっている。
ムキムキパーティから、今回のダンジョンはボスに力を入れている可能性が高いから次の四階層を抜けて、五階層を今のように偵察して、強襲をかけて一気に倒すという作戦を提案される。
特に異存はなかった剣士さんは了承し、休憩を終えて四階層を目指す。
四階層は一階層、二階層よりは道が曲がっていたりと、複雑化していたが一本道なのは変わらないので先を急ぐ。
階段を見つけ、注意しながら降りていく。
三階層の時とは違い、歌は聞こえないし、モンスターの気配のようなものも感じない。
緊張して息苦しさを感じる。5階層には何がいるか気になって、恐ろしくて、体が震えてしまいそうだったけど、なんとか耐える。
そうして、五階層に着くと、広間ではなく通路のようになっていて、どうやらボスはここではないんじゃないかという考えに行きつくが。
ムキムキリーダーが、妙な空気を感じると言う。
俺には分からなかったが、剣士さんも何かを感じる言った。
油断せずに進んでいこうと言いあうと、先ほどまでと同じようにムキムキパーティが先頭に、剣士さんパーティは背後に注意しつつ進んでいく。
五階層は、四階層よりも複雑になっていて、右に曲がったかと思えば左に曲がり、左に曲がったかと思えば右に曲がりと、めちゃくちゃに進んでいく。
扉がいくつかあるけれど、一本道で奥へひたすら進む。
そして、かなりの時間歩いていたと思うけど、大きな扉が目の前に現れる。
この奥にボスがいる。そう思わせる何かを扉から誰もが感じた。
今一度装備を確認し、どんな敵が出てくるか分からないが扉を開けたらすぐに戦うことになる。
だから、術士さんには一番強い攻撃魔法を用意してもらい、僧侶さんにはいつでも回復魔法が使える準備をしてもらい、準備が出来たところで突入する事に。
扉を開けた先にいたのは、大きな虫のようなモンスターだった。
そいつは、術士さんの攻撃魔法で一瞬で炎につつまれ、そして死んだ。
あまりにあっけない最後に、一気に気が抜ける。
そういえば、ボスを倒すとダンジョンはどうなるのと聞こうとした瞬間、ダンジョン全体が揺れ始める。
ボスがやられるとダンジョンが消えてしまう、しかし、最奥のダンジョン核周辺は残るので、そこに行けばいいらしい。
が、見当たらない。慌てて、みんなで周囲を探す。
ボスがダンジョンに吸収されて姿が見えなくなったところで、ボスの真下あたりに扉のようなものを、ムキムキスカウトさんが見つける。
ムキムキリーダーが蹴りをいれて扉を開けると床すべてが崩れ、下に落ちる。
一瞬眩しい光を感じて、あとは真っ暗な闇に包まれたまま上下左右にめちゃくちゃに揺さぶられて、気を失ってしまった。
気が付いた時には、ダンジョンの入り口があったあたりに転がっていて、ムキムキスカウトさんが目の前にいて、めっちゃくちゃ驚いた。
そんなわけで、最後の最後によくわからない仕掛けで気持ち悪い思いをして、ぐでぐでになりながら、向こうの街のギルドに報告をして、また竜車に揺さぶられながら帰ってきたのであった。
本当にひどい目にあった……。
ムキムキリーダーさんが、ああいうのは初めてで個人的には面白かったと言っていたけど、俺は勘弁してほしいと思う……。
なかなか出来ない貴重な体験だったけど、しばらくはこりごりだなぁ。
読んでいただき、ありがとうございます。




