壱の1 桜散る川辺で―春―
頬を 冬の冷気で凍てつく頬を 銀の光が滑っていく
そうだ、あの夜もこんな景色だった あの子は青色の、空を走る汽車をバックに微笑んだ
雨のようにキラキラと降ってくる星の光は、地面に当たってはカシャンと儚く、美しく砕け散る
あいつは元気だろうか 今どこにいるのだろうか
「…今の俺は、お前にどう映っているんだろうな。」
フッと笑って、俺はイルミネーションと星の光で煌めく冬の街に背を向け、家へと帰る。
―こんな俺の、昔の話をしようか。
壱の1 桜散る川辺で―春―
俺は鈴木冬人。21歳…無職。家族はいるけど、あいつらは俺の事なんか見ちゃいない。
「よぉクズ兄貴ィ。今日も生きてんのかよ」
ひゃははと高笑いで廊下をすれ違う男は、一応俺の弟、光希。高2、外見からしてチャラい。ちょこちょこ彼女が変わる。女たらし。
「冬人!突っ立ってないで早く朝ご飯食べて頂戴!仕事行かなきゃならないんだから‼」
朝からキンキン響く金切り声を上げるのは、俺の母親、真貴。仕事と言いつつどーせ不倫しに行くんだろうが。その証拠に朝からメイクがきつい。
「あぁ分かったよ…うるさいなぁ…」
「なぁにその言い方ッ‼大体成人してるのにあんたってばまだ就職もしないで…」
あぁうるさい。好きにさせろよっての。
「…。」
こんなうるさい中でも黙々と朝食を食っているのは、父親、雅之。
「御馳走様…行ってくる。」
「いってらっしゃぁい。…ほら、早く食べなさいよッ‼」
「はいはい…。」
いつもこうだ。のろのろと朝飯を食う俺を見て、真貴は皿洗いを命じて出かけて行く。玄関には派手な赤い車がいつものように待っていた。
「…やってられっかっつの。」
ガシャンと、少々乱暴に茶碗を洗い桶に突っ込んで、部屋から財布と携帯を持ち出して外に出た。
「桜…もう散り始めてたのか。」
ここ2,3日暖かかったからなぁ、と思いつつ、いつもは行かない土手に向かった。あそこは桜並木があって、春はとても綺麗なんだ。
「おー…。」
春の少し冷たくて強い風に乗って、延々と植えられた桜は咲かせた花を散らしていく。薄桃色のカーテンをくぐっていく。
その時は、ふと顔を上げただけで
「え…?」
桜並木の中で一番大きな古木の枝に腰掛ける、白いワンピースの女の子に気付く事になるとは思っていなかった。
しばらく呆気にとられて見上げていた。すると、ザァッ…と強く風が吹いて、その女の子は体勢を崩して落ちてきた。
「危ない‼」
目の前だったから、体はすぐに動いて、女の子を受け止めることは成功した。でも
「え……?」
俺の両腕に掛かるはずだった、重さが。全くと言っていいほどに感じられなかったのだ。
「え……!?」
「…お兄さん、下ろしてもらえませんか?」
「え、あぁ…ごめん」
「いえ、助かりました。ありがとう。」
肩まで伸びた艶のある黒髪が、春風に揺れる。その姿は、
ゆらゆらと揺れて、透けていた。
突然出会ったこの少女が、俺を変えてくれるなんて、思ってもいなかった…。
あー、緊張する。初投稿でございます。文は大分拙いかと思いますが、良ければ見て行ってくださいませ。