魔王
ある昼下がり、ヴォルフガング大佐は窓からクラリネット嬢を眺めていました。
「うーーーん、彼女はカワユィなぁ」
ぼーーっとしていたらアントニン中尉が慌ててやってきました。
「大佐!大佐!将軍様より通達だす!」
「何だって!?こんな平和なときに・・・」
「そ・・・それが急ぎだすで・・・」
ヴォルフガング大佐は通達を目にした瞬間顔色を変えました。
「少佐を呼んでくれ!ピョートル少佐だ!早く!」
「は・・・はい!!!」
そんな時ピョートル少佐は一人部屋に引きこもりマインスイーパーをしていました。
もちろん、チョコバナナパフェを食べながら・・・。
「コンコンコンコン」
「誰だよ!?」
「アントニンだす!大佐がお呼びだす!」
「大佐・・・またボクをいじめるのかなぁ?」
「そんなことないだすよ!至急だす!急いでくだすい!」
ピョートル少佐は食べかけのチョコバナナパフェを流し込み部屋を出ました。
「大佐、お呼びでしょうか」
「あぁ、少佐。先ほどグスタフ将軍から通達があったのだ」
「・・・どのような?」
「魔王ベドルジハがヴィシェフラド城にいるらしい。至急捕獲せよ」
「魔王ベドルジハ・・・一体どのような方で・・・?」
「俺もよく知らないがブラニーク付近で目撃されたのを最後に誰も見ていない」
「捕獲せよとのことなので、きっと邪悪な奴に違いないですな!」
「そうだな・・・ところで少佐」
「・・・出動ですか?」
「もし手柄を取ったならグスタフ将軍に君の昇進を持ちかけてみよう!」
「え!!!いいんですか!?ボク頑張ります!」
そうしてピョートル少佐は白鳥部隊を引き連れてヴィシェフラト城へと向かいました。
ちなみにくるみ割り部隊は現在サメ捕獲作戦に苦戦しています。
ヴィシェフラト城は狭いので中に入るのはルートヴッヒ軍曹とピョートル少佐の2人になりました。
「なぁルートヴッヒ軍曹、魔王ベドルジハを見たことあるか?」
「はぁ、一度だけ・・・」
「何!?何処でだ!」
「ヴルタヴァショッピングセンターで幼い頃迷子になったときに助けていただきました」
「は!?」
「へぇ、拙者、魔王は実は心優しいのかと・・・」
「しかしだな、今回は将軍の通達だ」
「何かの間違いではないかと、心底不安なんです・・・」
そんな会話をしていたとき隣にいかにも「デーモン」な格好をした人が現れました。
「あ!魔王!」
「嘘だぁ!」
「ふはははは!私が魔王ベドルジハだ!」
「くっ・・・お前が魔王ベドルジハだな!」
少佐はとっさに眠れる森の薬をまきました。
ルートヴッヒ軍曹が眠ってしまった!!!
「ふはははは!仲間を寝かせてどーする気だ!?あぁん?」
「くそ・・・軍曹・・・」
先日の秘密兵器勘違い事件(秘密兵器参照)を恐れ
タイタンもMATEKIも持ってきていない少佐。
どうする?
「仕方がない・・・これでも食らえ!!!」
1812発のビンタを魔王に向かって打ち続ける少佐。
少佐の手もぱんぱんに腫れあがってくる・・・。
「だ・・・ダメです・・・悪い人ではないんです。」
軍曹の寝言です。
しかし気付いたときには魔王の顔はぱんぱんで意識を失ってました・・・。
捕獲、一応成功みたいです。
「これでボクも大佐になれるかな?えへへ!」
ピョートル少佐は捕獲した魔王を連れ、グスタフ将軍の元へと向かいました。
「グスタフ将軍。魔王ベドルジハを捕獲しました!」
「よくやってくれた!ピョートル少佐。さぁ、彼を・・・って・・・」
顔がぱんぱんに腫れた魔王を見てグスタフ将軍は驚きました。
「ちょ・・・なんでこんなことなってんねん!」
「へぇ、少々抵抗されたもんで・・・」
「え?何で?抵抗?」
魔王は言いました。
「だってこいつらウチに勝手に上がりこむんだもん・・・」
少佐は反撃します。
「勝手もなにも!占拠していたのはお前らだろう!」
将軍は言います。
「人の家にはピンポン押して入ろうよ・・・」
人の家?
「ヴィシェフラド城の家賃、老朽化につき値下げするよって伝えたくて、ここに連れてきてほしかっただけなんやけど・・・」
なんだって!?
少佐は驚きのあまり外れそうなアゴをおさえながら言いました。
「え・・・じゃあ、あの通達は・・・」
「ああやって書いたら面白いじゃん!」
とことん迷惑なグスタフ将軍。
いわゆる平和ボケってやつでしょーか?
お詫びにヴィシェフラド城の家賃を1年間無料にしたとさ。
「結局ボクは少佐のまま!?」
頑張れ、ピョートル少佐。