最終話 「告白」
光太郎が自分の部屋に戻ると携帯電話が鳴った。父・信虎からだった。
「しゃあねぇ、出るか…。」
光太郎は渋々電話に出た。
「なんの用だ。俺は戦争なんか参加しないぞ。」
「ふっ、頑固よな。だが、もしお前が戦争に参加しなかった場合、お前の可愛い彼女さんの頭と胴が離れ離れになってしまうことになるが、それでも良いのか?」
もともと低い信虎の声がより低くなった。これは脅しではない、本気だという証拠だ。
「彼女…?まさか麦子のことか!麦子になにするつもりだ!」
「お前がわしの言うことを聞いてくれるのならばなにもせんよ。」
光太郎の額に汗が流れる。
「わ、わかった。言うことを聞こう。」
「さすがわしの息子。話がわかるな。」
こうして光太郎はサイボーグ戦争に参加することになった。
「進め!一人残らず殺せ!」
光太郎の声が戦場に響く。
光太郎率いるサイボーグ部隊は圧倒的な火力をもって敵兵を蹴散らす。もはや勝利は目前であった。
しかし、その時予期せぬ事態が起こった。
「やめてぇぇぇ!」
突如戦場に響いた少女の声。声の主は麦子であった。
(な、なぜ麦子さんがここに…。一体誰から聞いたんだ…。)
光太郎は、恋人の突然の登場に驚きを隠せなかった。
(とにかくここは危ない。)
「麦子さん、にげ……」
逃げて。そう言おうとした瞬間銃声が聞こえた。
「あう…、こ、こうたろ…。」
麦子は力なく倒れた。撃ったのは西園寺か、大伴か。それは定かでないが、確かに麦子は撃たれた。
「む、麦子さああああああん!!!!」
光太郎は急いで麦子に駆け寄る。
「あ…、あ……。」
麦子は口をパクパクさせ、なにかを言おうとしていた。
「何もしゃべるな!すぐにうちの救護班を……。」
光太郎は無線で救護班を呼ぼうとしたが、麦子の手がそれを阻止した。呼んでも助からないことを悟ったのだろう。
そして、残りの力すべてを振り絞って麦子は光太郎に語りかけた。
「あ…、ありがと…う。そして…、ごめんね…。こうたろ…う。あなたのこと、大好きだったよ…。」
そう言うと麦子は眠るように目を閉じた。そして、二度と彼女が目を覚ますことはなかった。
20年の月日がたった。
いまやサイボーグ戦争など珍しくなくなり、世界中のいたるところで起きている。
そんな中、麦子の墓の前に一人の男が佇んでいた。
「あれからもう20年か…。」
男の名は西園寺光太郎。大企業『西園寺パン』の社長である。
日本にはサイボーグ派企業と反サイボーグ派企業の2種類があるが、『西園寺パン』は反サイボーグ派である。先代・信虎のときはサイボーグ派の筆頭であったが、社長が光太郎になるとすぐに反サイボーグ派となったのだ。
「俺さ、確かあの時ちゃんと答えてなかったよな…。」
光太郎は墓に語りかけた。当然墓からはなにも言葉は返ってこない。
「今さらだけど、あのときの答えを言うよ。俺も…、お前のことが好きだった。大好きだった…!」
さわやかな風が吹いた。光太郎にはそれが麦子の微笑みのように感じられた。
今まで読んでくださり、ありがとうございました!
また何か書いたら読んでくださいませ。




