第10話 「力に飲まれる」
「ほら、歴史上にもいるだろう?権力を握った途端横暴になる人。人はな、強大な力を得ると、力に飲まれてしまうのさ‥‥。」
川上の言葉が耳から離れない。
(私は力なんかに飲まれない‥‥!この力を自分のものにしてみせる!)
サイボーグになってから一週間たった。川上の言う通り、サイボーグでの生活は人間とたいして変わらなかった。たまに自分がサイボーグであることを忘れそうになる。せっかくサイボーグになったのだから、やはりこの力を使ってみたい。そもそも力が欲しいからサイボーグになったのだ。
「ねぇ、また戦わない?」
茜は再び武司に戦いを挑んだ。
「ああ、別にいいよ。まあ結果は同じだろうがな。」
案外簡単に武司は勝負を引き受けてくれた。
(大丈夫。私は力に飲まれたりなんかしない‥‥!)
試合が始まった。
「でやぁぁぁぁぁ!!!!」
渾身の突きを繰り出す。サイボーグになったことで威力だけじゃなく、スピードも上がっている。武司は避けることも防ぐことも出来ず、突きをまともにくらう。
「な、はや‥‥。」
武司は血を吐き、よろけている。しかし茜の拳は止まらない。
「どりゃ!」
「ぐはっ‥‥!」
また、きれいに攻撃が決まった。
「うぉりゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぐあああ‥‥!」
武司の骨が折れる音がきこえた。もはやサンドバック状態である。
(楽しい。一方的に痛めつけるこの快感。たまらない‥‥!ああ、これが川上の言ってた力に飲まれるってやつか‥‥。)
我にかえったときには、目の前に変わり果てた姿の武司がいた。もはや顔など原型をとどめていない。
「え、まさか、これ私が‥‥。」
まわりの人たちは皆おびえていた。いつも笑顔の麦子ですら、豹変した姉の姿を見てすっかりおびえている。
「化け物‥‥。」
誰かが小さな声でそう言った。鏡を見てみる。狂気に満ちた顔をした自分が映った。拳と道着は返り血ですっかり赤く染まっている。
「そうか、化け物か!確かに今の私、化け物みたいだなぁ!あははははははははははは‥‥!」
なんかもう全てを壊したい。この場にいる全ての人を殺したい。そんな衝動が沸き上がってくる。
「麦子、逃げて‥‥!」




