8.
――キーンコーンカーンコーン
今日も学校の終了を告げるチャイムが学校に鳴り響く。
「今日は目覚まし時計買いに行かないといけないから。じゃあな」
ホームルームが終わり、未皐に一言掛けてからすぐに学校を出る。
今日は帰宅部の活動はなしで、前使っていた目覚まし時計と全く同じ時計を近くの商店街の時計屋さんに買いに行かねばならない。今でこそネットなどでいろいろなものが買えるがあの時計だけは商店街の時計屋さんでしか見たことがないし、逆に言えばあそこに行けば買うことが出来る。
急いでいるのは出来るだけ神崎のいる学校に長居するべきではないと判断したからだ。
学校を挟んで家とは反対側にある最寄の駅のそばに目的の商店街があるため、おそらく俺の家と同じ方角であろう神埼と会うことはないだろう。
その予想が正しかったのか商店街までは何の問題もなく、わざわざ急ぐこともなかったなと思うほどであった。
商店街にある時計屋である『ユア時計店』と言う店に入る。
この店は小さい時計屋さんであるがなかなかリーズナブルな値段で俺好みのシンプルで落ち着いた雰囲気をしている為に、腕時計を買うときもここの店で買ったお気に入りの店だ。
シンプルであり、かつ、センスのある時計を眺めながら目的の目覚まし時計を探す。
目的の目覚まし時計は少し探すとすぐに見つかり、前買った時と同じ500円で売っていたのですぐに購入した。
「ありがとうございました」
店を出る。
携帯を見ると亜衣からメールが来ていて、今日は母さんが早めに帰ってこれるらしいと言った内容が書かれていた。
母さんが帰ってくるなら特に早く帰る必要もなくなる。
折角駅まできたし、漫画でも立ち読みするか。
と考えた俺は古本屋『BIG OFF』に向かうと、少し昔に流行った漫画を読み始める。
漫画が全巻揃ってたので結局最後まで読みふけってしまっていた。
読み終わる頃、腕の痛みはピークに達していた。
なんでこう、立ち読みは腕が痛くなるんだろうな……
時計を見ると6時をすぎていて辺りはかなり暗くなっていた。
少し遅くなったので急いで家へと帰る。
帰り道も特に問題もなく家へ着くことが出来た。
「ただいま」
「おかえりー」
亜衣が答える。母さんはまだ帰ってきていないようだ。
「あ、なんかお兄ちゃんに手紙が来てたよ? なんか今時珍しいよね。紙の手紙なんて」
リビングに入りお茶を飲んでいると亜衣が手紙を渡しながら言った。
「手紙? 誰からだ?」
だれからのものか検討もつかない
「んー? 外にはお兄ちゃんの名前しか書いてないからわかんないよ。中に書いてあるんじゃないの?」
手紙を見る。大きさは手のひらに収まるサイズだが少し厚みがある白い封で、裏に直之様と少し丸みがかった字で書かれている。女子っぽい字だ、意味もなくワクワクしてしまう。後で部屋に戻って空けてみよう。
「それで、母さんはいつ帰ってくるんだ?」
ワクワク感を悟られないように話を逸らす。
「もうすぐ帰るってさっき電話きてたからもう帰ってくるんじゃないかな?」
「そうか」
そういって俺は部屋に戻ろうとする。
「あ、待ってよぉ。ここは一緒に見るんじゃないの?」
と亜衣が言っていたが無視して手紙が気になるため自分の部屋に戻る。
部屋に戻ると真っ先にベットのふちに座り手紙の封を切る。
中には1枚の大きな紙が入っているようだ。
取り出して中身を見る。そこには
――ずっと見ています。
と赤黒い文字で書かれていた。
文字の下には同じ色で目のような絵が描かれている。
「ぁ……あ……」
俺は驚愕と恐怖に目を見開き、心臓を鷲づかみにされたような感覚に陥る。
なんだ、この色は、なんだ、この絵は、狂ってる。
よく見ると所々にハートマークとも取れる模様が多く書かれている。
誰がこれを? それよりも、この絵は一体何で書いたんだ?
背筋を冷たいものが走りぶるっと身震いをする。
本当は分かっていた。おそらくこれは血液で書かれているのだろう。
でも、なんで?いや、でも。
そして俺は昨日の夜のことを思い出す。
まさか!!
俺は1つの答えにたどり着く。
やっぱりアレは付けられていたのか!!
ストーカーなんて、本当に、いるのかよ。いや、これは神様の?いくら俺の事を好きになってくれる人だからって……クソッ!完璧にヤバイ奴じゃねえか。あの神様は何てもんを置いていったんだ。なんであんな事を頼んじまったんだ俺は。でも、まさかこんなことになるなんて普通思わないだろ!?
そうして、俺は神様に会った事を後悔していた。
13/10/19 ちょこっと修正