6.
俺は顔に光を浴びて目を覚ます。
どうやら昨夜寝たときカーテンが開きっ放しになっていて朝の光が差し込んでいるようだ。
寝すぎた所為か軽い頭痛を感じながら目覚まし時計へと手を伸ばす。
「んあ?」
ない。目覚まし時計がない。遂には目覚まし時計もストライキを起こすのかなどと寝ぼけた事を考えていると。
「おにいちゃ~ん! いつまで寝てるのよ~今日も遅刻するよ~!?」
……へ? 遅刻?
俺の思考は頭に水をかけられたようにクリアになる。
そうだ、目覚まし時計は壊れているんだった。昨日は雨だった上にちょっと変わった事があって落ち込んでいたから買いに行かなかった(行けなかった、と思いたい)から勿論目覚まし時計はないし、ないから俺の目を覚まそうとあのけたたましい音が鳴るはずも無い。
慌てて携帯の時計を確認すると、8時ちょうどであった。
これはやばい。急いで準備しても間に合うか分からない。
俺は急いで着替えると自分の部屋を出る。
現実逃避をしよう。
あの出来事から3年が経った。
俺はほどほどの学力の家から近い高校に進学し高校2年となっていた。
勿論俺だけが年を取るわけもなく妹は俺の通ってい……
「なにそんなとこで寝ぼけてんの? さっさと準備しなよ、私もう行くからじゃあね!」
そういうと亜衣はさっさと家を出て行ってしまった。
何度も言うようだが寝ぼけているわけじゃない、現実逃避をしていたんだ。
俺は2日連続で同じようなやり取りをしてしまったことに
二度ある事は三度あると三度目の正直ってどっちが正しいんだろう……
などと意味のない事を考えながらも体は真面目におにぎりを直之エクスプレス(?)で、特急もぐもぐ進行中である。
やっぱりちょっと寝ぼけてんじゃないか、これ。
今日持っていくものの準備はしていないが精勤賞の為に俺はここで遅刻するわけにはいかないので、2個目のおにぎりを食べるとすぐに家を飛び出す。
「いってきま~す」
今家には誰もいないが、結構みんな誰もいなくてもただいまとか言うよね。
言うよね?
家を出て、急ぎたいのはやまやまだが鍵を閉めないといけないので急いで鍵を閉めると学校へ向かって走り出す。
1つ目の角は同じ轍は踏むまいと思い軽やかに駆け抜ける。
しかし、2つ目の角こけそうになる。
こうやって世界はバランスが取れていくのだろうな。
といらぬ事を考えたところでふと昨日の夜の事を思い出す。
まさかまたつけられてたりしないよね……?
後ろを振り向く、が誰もいない。
誰もいないことに胸をなでおろし、やはり昨日のは勘違いだったのかと思い直す。
「っと、こんなことしてる場合じゃないっつうの!」
考え事をすると遅刻する。無心になれ俺。
そう考えた俺は無心になれと心の中で反復し続け、反復してる事が無心ではないと言う事に気が付いたのは学校に着く頃だった。
学校に着くとチョッ早(死語)で靴を履き替え自分のクラスに駆け込んだ。
始業のチャイムが鳴ったのは俺が自分の席に着いた頃だった。
「はぁ……はぁ……」
ギリギリで間に合った。
1回あきらめかけた事もあったけどあきらめなくてよかった。
「今日も遅刻かよ」
いつものように後ろから未皐が話しかけてくる。
まだ先生は来ていない。
「遅刻……じゃ……な……い……」
俺は息も絶え絶えで返す。
「いつも来てる時間より遅かったらそれは遅刻なんだよ」
なんだそのドヤ顔は、名言でも言ったつもりか。
「それは相対的に……じゃねえか……」
少しずつ息がととのってくる。
「まぁいいけどさ。何で今日もまた?」
「昨日目覚まし時計買ってないから……んで……朝気づいた……」
「目覚まし時計壊れたって本当だったのか、別に携帯の目覚ましでいいだろ」
嘘だと思っていたらしい。
「俺はあの目覚ましでないと起きれないんだ」
これは本当だ、前に違う目覚ましで試したときは起きれなかったし、携帯の目覚ましを使ったときも起きれなかった。さすがに亜衣 まさかまたつけられてたりしないよね……?に起こしてもらったら起きれるだろうが毎日妹に起こしてもらう兄ってのもなんか情けないのでそんな事はしない。
「はぁ……」
未皐はあきれたようなため息をつく。
と、そこで先生が入ってきて未皐との会話は中断された。