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5.

 俺は自然と目を覚ました。

 部屋は暗く、窓のカーテンの隙間からから蛍光灯による字人工の光がかすかに差し込んでいるのみである。


「少し寝すぎたかも」


 それにしても今日の学校の授業はほとんどを寝てすごした。もちろんいつもはちゃんとノートも取るし、授業も聞いているのだが、朝のことがあったために授業を受ける気がなくなってしまい机に突っ伏してがっつりと寝ていたのである。


「今何時だろ」


 そういって布団に横になったまま手探りで携帯を探し、携帯の時計を確認すると、11時を少し回ったところだった。


「結構寝てたな、ん?」


 ――新着Eメール   1件


 携帯にはメールが来ていることを知らせるマークが表示されていた。

「誰からだろ」

 携帯を操作し受信ボックスを開く。

 差出人の所を見て見るとメールアドレスが表示されていた。つまり、アドレス帳に乗っていない人からのメールだということだ。件名のところは空白であるため内容は開かないと分からない。

 迷惑メールかもしれない、とも思ったが。すぐにまあいいやと思い直しメールを開く。

 本文のところには


 ――許して。


 とだけ書かれていた。

 やっぱり迷惑メールか?少し迷惑メールにしては内容がおかしいとも思う。

 差出人のアドレスを見る。


 ――1v4ojvxll_0v3.1v4ojvxll_0v3@……


アドレスを見た感じよく分からない。初期のアドレスでランダムな文字列なのかとも思ったが同じ文字列が2回繰り返されてるようにも見える為そうじゃない可能性が高い。

 どちらにせよ分からないことは深く考えない主義なので別の方向から考える。

 受信した時間を見ると今日の6時ちょっと過ぎだ。大体俺が寝て少したった後、だと思う。寝る前に時計を確認していなかったので、そこは少し分からない。

 とりあえず何かの間違いだと言う事も考えられるのでこのことは保留する事にした。

 勿論、誰ですか?と返信するなんて怖くて出来ない。よく分からないメールは無視に限るんだ。


 それにしても帰ってから何も飲まず食わずで寝た所為で結構お腹がすいている。

 リビングの電気を付ける。今日は親は帰ってこないらしい。

 俺の両親は共働きをしているが、この家とは別に寝るだけのアパートを借りていて忙しい日などはそこで寝て帰ってこない日があるのだ。

 となると冷蔵庫の中に亜衣の作った飯が残っているはずだ。

 冷蔵庫を開けて晩飯と俺の愛飲している十八茶じゅうはちちゃを探す。

 けっして十八禁ではない、似てるけど違う。最初に買ったきっかけは十八禁に似ているからではあるが。


「……なッ!!」


 十八茶が、無い。

 俺のポリシーには十八茶以外は飲まないと言う条例がある。

 冷蔵庫の脇の十八茶置き場を見て見るがストックはない。

 それほどまでに俺は十八茶を愛飲している。


「あー……切らしてたんだったっけか……」


 ちなみに晩御飯はすぐに見つかった。

 しかしこれではコンビニに買いに行かざるを得ない。

 11時を回り18歳未満は外出をしてはいけない条例があったはずだが少しコンビニに出るくらいはいいだろう。

 そう考えた俺は自分の部屋に戻り財布を取ってくると上着を着て外に出る。


 もうすぐ冬になろうかと言う頃の深夜はやはり寒く、あまり夜間徘徊をしない俺はすこし楽しくなっていた。

 近くとは言っても家の目の前にコンビニがあるわけではなく少し歩く事になる。

 しばらく歩き居酒屋の前を通ったとき酔ったおっさんによるカラオケの音が聞こえ、それが聞こえなくなった頃コンビニへと到着した。

 手際よく十八茶を買いついでにシュークリームなんかも買う。


「ありゃーさぁーしたー」


 コンビニのにいちゃんのなんとも気の抜けた声を聞きながら帰路に着く。

 コンビニを出てすぐに2回目のおっさんのカラオケ声である。どうでもいいが今回はかなりの美声だった。

 少し歩いて、今朝神崎とぶつかった角を曲がろうとしたときだった。

 ふと視界の端に人影が見えた。見えただけなら普通なんだがなんだか気になって人影のほうを見るとその人影は隠れるように道の端に移動した。


 ……挙動がおかしい。


 少し早歩きになりながらもうひとつ角を曲がり後ろをチラ見する。

 サッっと隠れる人陰。

 つけられている?

 あたりを見回すが人はいない。つまりつけられているのは俺、と言う事になるだろう。

 もしかしたら俺の自意識過剰に過ぎないのかもしれないが、つけられているのかもしれないと怖くなって小走りになる。恐怖の所為かあれは幽霊なんじゃないかなんていう不安も出てくる。

 俺が走り出しても特に人影が走り出す気配もないのでそのまま距離を離し家に駆け込む。

 ドアをすぐに閉めてカギをかける。


「ふう」


 家について安心したが念のためリビングの窓のカギなんかも確認しにいく。

 確認が終わると俺は事態の確認に移った。

 あれは誰だったんだろう、本当に俺はつけられていたのか?

 落ち着いて考えて見るとただ道が同じだった人のような気がしてきた。

 とにかく家に着いたんだから大丈夫だよな。

 そのとき俺のお腹が空腹をアピールする音を出す。

 そうだ、思い出したら急にのども渇いてきた。

 十八茶を出してすぐにコップに注ぎ豪快に一気飲みをする。


「は~! 生き返るぅ~!」


 お腹もすいているのですぐにご飯も温めた。


「いただきます」 


 今日、亜衣は麻婆豆腐を作ったらしい。家庭環境ゆえか俺も亜衣も料理はそれなりに出来る。そのためもちろんこの麻婆豆腐も美味しかった。いやぁ、食は心の栄養でもあるね。

 食器を片付けるとお腹が膨れたからかまた眠くなってきていた。

 今日結構寝た筈なんだけどなぁと思いながらも自分の部屋に上がり、本日何度目かになるか分からないおやすみを言うのであった。

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