15.
あの後、しばらくすると看護師さんがやってきてまだ検査などがあるからと言っていた為俺は家に帰ることにした。
比那は悲しそうな顔をしていたが、明日また来るよと伝えると待ってると答えた。
家に着くと家の前にパトカーが止まっていて警官がチャイムを押しているところであった。
「あの、すいません。僕高橋です。今家には誰もいませんけど」
俺は警官に告げる。
「もしかして君が高橋直之君かい」
俺は昨日のことの聞き取り調査に来たのだろうとすぐに分かった。
「はい。昨日のことですよね」
「そうだ。それにしても君は今学校の時間じゃないのかい?」
「あの、今日は学校を休んでお見舞いに行っていたんです」
そういうと警官は納得したように頷くと
「そうか、少し君とお話をしたいんだけど良いかい?」
「もちろんです」
俺はそう答えると警官の質問に答えていった。
「なるほど。大体わかったよ。君の保護者にも話がしたいから何時頃なら居るかとかわかるかい?」
俺は犯人の特徴など細かな情報を教えたりした。
「両親は共働きなので遅くなると思います、今日は午後十時くらいにはお母さんが帰ってると思いますけど」
「じゃあその頃にもう一回尋ねるから、保護者にそう伝えておいてくれるかい?」
「わかりました」
俺はまだこのことを家族に話してはいなかったが、今日中に話さなくてはならないだろう。
「あと、ニュースで見ているかもしれないけど犯人はまだ捕まっていないから家からはあまり出ないようにした方が良い」
「捕まっていないんですか……」
あの事件の後部屋に引きこもって次の日すぐに病院に行ったためテレビなどは見ていなかった。
「まぁ、でも今回は目撃情報も多いからじきに逮捕することができると思うよ」
警官は明るくそういった。
なにか引っかかる言い方だったが早く捕まってくれることを祈る事にする。
「それでは私は仕事があるので、捜査の協力感謝します」
「いえ、犯人が早く捕まるように祈ってます」
警官はパトカーに乗り込むと静かに走って行った。
現在時刻は昼の1時頃。
家族に話すために少し内容を整理しなければならないだろう。
犯人は俺のストーカーだから、と自分の部屋の床に落ちていた封筒を拾った時に俺はやっと気がついた。
あのストーカーが神様の迷惑な置き土産なんだよな? じゃあ比那はなんだ?
俺は病院で比那が神様に頼んだ女の子だと思っていたがストーカーのことを忘れていた。
封筒の中身を見る。
中に入っていた十数枚の写真は全部俺の写真だった。
それは様々だった。殆どが後姿だったり遠くだったりの写真だった。
しかし、その中に一枚学校での俺の正面からの写真があった。
これは覚えがある。
すっかり忘れていたが最近学校で俺が比那によくわからない理由で撮られた写真だった。
写真を床に放り投げた。
携帯のメールを確認する。
ほとんどが奴からのメールだった。
妹からのメールも交じっていた。
内容を確認する。
奴はどうやら学生らしい内容をよく送ってきていた
――今日は失礼なことを聞いちゃってごめんなさい
などまるで顔を合わせたような文面が多かった。
俺は自分の確信が揺らいでいくのを感じていた。
突然携帯が震える。
――メール受信 1件
差出人は
――1v4ojvxll_0v3.1v4ojvxll_0v3@……
奴からだった。
俺は中を開いた。
――今日はお見舞いに来てくれてありがとう。直之君。
名前で呼んでもらえてすごい嬉しかったよ。明日も絶対に来てね。
「ぁ?」
俺は変な声をあげていた。
これじゃあまるで比那がストーカーだったような書き方じゃないか。
じゃあ昨日刺して来た犯人は誰だ?
俺は混乱していた。
警官の言葉を思い出す。
『今回は目撃情報も多いから』
今回ってなんだ?前回があったってことか?
俺はダイニングに戻りテレビをつける。
『昨日○○市で○○高校の女子生徒をナイフで傷つけた疑いのある~~が先ほど逮捕されました。調べによると容疑者は過去にも2度にわたりナイフでの傷害事件を起こしており、人通りの少ないところで無差別に人を襲っていたと思われます。』
む、無差別?
ということは犯人はストーカーじゃないのか?
俺は携帯を開きメールの新規作成を押す。
宛先に奴を指定する
――お前は比那なのか?
と打ったところで俺は携帯を閉じた。
鞄に手紙と写真を入れて家を出る。
向かう先は比那の入院している病院だった。
病院はまだ面会時間だったので比那の部屋に入る。
「あれぇ、直之君? 明日来るんじゃないの?」
比奈は俺に気づくと嬉しそうにそう言った。
俺は比那に近づく。
「聞きたいことがある。ちょっと携帯を見せてくれないか?」
「え? いいけど、私浮気なんてしないよ……」
恥ずかしそうに携帯を差し出す比那。
もちろんそんなことを気にしているわけじゃなかった。
俺はそれを受け取ると携帯のメールアドレスを確認した。
――1v4ojvxll_0v3.1v4ojvxll_0v3@……
奴のアドレスだった。
「比那、これに心当たりはあるか」
俺は手紙と封筒を見せながら言った。
「ぁ、それ私の……」
比那はそう言った。
私の、と言った。
「じゃあ、俺のことを隠れてつけたりは……」
「たまにしちゃったかも? でもそれで直之君を助けられたから」
褒めて褒めてと言わんばかりの表情の比那。
俺は確信した。
「ヤンデレこいつじゃねえか!!!!」
俺は叫んでいた。
この時俺は神様に会ったことを後悔していた。
やっぱりそういうことです。